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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

129話 奴隷達の判決

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 ケンジは、薬士達の気持ちが分からなくもなかった。この世界の人間にとって、奴隷達は一度人生に失敗し所有物としての労働力である。そういった人間から指示をされ、働くというのはどうしても腑に落ちない感覚に陥るのだろう。

「少しいいか?」

「「「「「はい……」」」」」

「うちには、奴隷達の下で働く人間もいるが、君達はどうしても無理かい?」

「そ、それは……」

「いや、そんな恐縮しなくていいよ。俺が推奨している奴隷の立場をあげると言うのは、今この世界ではまだ無理なのは分かっているからね」

「はい……」

「それじゃ、こうしよう。君達は、この町でグドン薬店のように自分の店を持たないか?」

「えっ⁉ですが、店を開いても町の人が買ってくれるとは……」

「だから、Freedom店に卸してもらうのはどうだい?言ってみたら、Freedom店はFreedom国公式店だ。その店に卸しているとなれば、国が君達の店を認めているという事になる」

「なるほど!国が、後ろ盾になってくれているという事と同じ意味ですか?」

「後ろ盾にはならないよ。あくまでも君達の店は、悪い事をしてないから取引をするだけだ。しかし、国民が貴方達の店がFreedom店と取引がある店なら安全と思わす事が大事なんだよ」

「な、なるほど……後ろ盾と違うという事は、自分達の力で頑張ってくれということですね」

「そういうことだ。しかし、国民が噂だけを信じて誹謗中傷や不評被害はしなくなり、普通に営業はできると思う」

「分かりました!」

「君達もそれでいいのか?」

 他の人間も、今までグドン薬店でダインを責任者としてやってきたこともありおおむね賛成していた。

 おおむねと言うのは、2人だけそれに賛成しなかったのだ。

「あの……ケンジ様。少しよろしいでしょうか?」

「えーっと、ハイネスさんでしたっけ?それとマゼントさんですね。何か意見でも?」

「あの、あたし達はケンジ様の工房で働かせてもらえませんか?」

「君達はダインさんとこで働かないのか?」

「「はい……」」

 ケンジは周りを見渡した。しかし、ダイン達は引き止めようともしていなかったのだ。

「なるほど……しかし、君達だけで他の町に移住して個人店を開き、ダインさんの店のように、Freedom店と取引と言う案もあるぞ?」

「あたし達は、店の経営に自信がありません……だったら、この機会に他の所で働いてみたいのです」

「しかし、先ほども言った通りうちの工房は上司を始め全員が奴隷の身分だ。それでも大丈夫なのか?」

「だったら、あたし達はケンジ様の奴隷になります。それなら、問題は解決するはず」

「ちょっと待て!なんで、奴隷にわざわざ落ちる必要があるんだ?落ちなくともそのまま働いてくれたらいいじゃないか?」

「いえ……あたし達は姉妹のように暮らしてきましたが、やはり獣人族のハーフというのは生活しにくい世の中でした」

「だったら、フリーの町で二人で生活したらいいよ」

「いえ、私達にここまで気を使ってくれるケンジ様なら、ケンジ様の工房で他の皆さんと同じ立場となって働いていきたいです」

「だから、君達は犯罪者でもなく、借金をしたわけでもないんだぞ?奴隷にならなくとも……」

「いえ……もし奴隷に堕ちずにその工房に入った場合、私達がどうなるか分かりません……今は働かせてほしいと言いましたが、その境遇に耐えられなくなって、すぐにやめてしまう事になったら本末転倒です」 

 ケンジは、ハイネスとマゼントがこの町でどんな境遇にあったか、なんとなく分かってしまった。二人は、まだ成人前のような感じだったが親に捨てられ、今まで懸命に生きてきたのだろう。
 このように小さな町では、獣人とのハーフは差別対象として根強いからだ。その為、奴隷に堕ちると言っても、仕事仲間だったはずのダイン達からは心配などされず、自分達の店から厄介払いが出来ると言う様な感じだった。

「ふう……わかったよ。君達を奴隷として迎えよう」

「「あ、ありがとうございます!」」
「私達どんなことでもやります」

「ああ、だが先に言っておくが、奴隷の立場が辛かったら何時でも言ってくれ。解放はいつでもするから安心してくれたらいいよ」

「「だ、大丈夫です……どんなに辛くともがんばります」」

「わ、わかったよ」

「じゃあ、ダインさん達はそれでだいじょうぶだな?」

「はい。国王様の温情ありがたく思います。我々は今まで通り頑張っていきます」

 ダイン達は、笑顔で帰っていき、自分の店の開店準備を進めた。



「じゃあ、ハイネスとマゼントは俺達についてきてくれ」

「「はい!よろしくお願いします」」

 ケンジは、二人をフリーの町の奴隷商店へと連れて行き奴隷契約を結んだ。この二人は借金奴隷でも犯罪奴隷でもなく、特別奴隷としての契約である。奴隷の種類が明確化してきた為、特別奴隷は訳あって奴隷になってしまった奴隷をさすのである。

「じゃあ、これからはうちの工房でよろしく頼むぞ」

「「はい。よろしくおねがいします」」

 ケンジはその日のうちに、二人をユリアに紹介し二人の事を任せたのだった。そして、当然だが二人は奴隷の立場になり重労働になる事を覚悟していた。
 しかし、それでも今までのような差別的な暮らしと比べてまだましだと思っていたのだ。しかし、ここは奴隷の生活ではなく、貴族以上の生活が待っていて驚いたのはいう間でもなく快適な暮らしだったのだ。

「ハイネス、マゼント今日はもう終わりだよ。早く仕事道具をしまって汗を流しなさい」

「「えっ?」」

「最初に言ったでしょ?うちは朝8時から夕方5時までだって、それから7時になったら晩御飯だよ」

「「ええええええ!」」
「私達は奴隷ですよね?そんな生活平民の時でもした事なかったですよ?」

「まあ、驚くのも無理はないけど、うちはこれがルールだから早く慣れなよ」

 二人は、ケンジの言った奴隷の立場を上げると言った意味を痛感した。しかし、これは平民より上げ過ぎな感じだとも思ったのである。その後も、風呂には入れるし、ご飯も奴隷食ではなく、平民の時にご馳走だと思っていたオオカミの肉より豪勢な肉を食べれた事に驚いたのだ。

「あの……これって、何の肉ですか?すごく美味しいです」

「これはスワンプだよ」

「「スワンプってなんです?」」

「スワンプドラゴンだよ。ここでは、これが普通に出てくるよ」

 二人は、ドラゴンと聞き手に持ってたフォークを落としてしまった。

「まあ、初めてここに来た人間はそんな感じになるね。ははははは!」

 二人は、この選択は正解だったと心の底からそう思ったのだった。そして、ケンジの言った奴隷の立場が嫌になったらいつでも解放すると言われても、反対に開放を望む者がいるのかと疑問に思う程だった。

 そして、二人は顔を見合わせて冷や汗を流したのだった。



 そして、時は遡りダイン達が法廷を出された後、裁判所では奴隷達の処分が行われていた。グドン薬店の地下で働かされていた奴隷達とグレーマンのアジトで働かされていた奴隷達だ。
 奴隷達の人権は無い。つまり、犯罪者の所有物である奴隷は真実の水晶にかけられた。

「貴方は、この犯罪を認識していて手伝っていたのか?」

「いいえ」

 真実の水晶の回答【認識はしていたが奴隷の為仕方なく協力していた】

「フム、貴方は奴隷の為しょうがなく手伝っていたのだな?」

 真実の水晶に見破られ、次々に奴隷達は顔を青くしていく。その中で、グドンの秘書をしていた女奴隷の番になった。
 そして、裁判官はこの女奴隷にも同じ質問をした。

 真実の水晶の回答【認識はしていた。グドンに憧れ、自分がいい思いが出来る為、自ら率先して協力していた】

「こ、こんなの嘘よ!でたらめだわ!」

 さすが秘書を務めていただけはあり、裁判官が水晶の文字を読む前に大声を出したのである。

「黙りなさい!ここは法廷だ。それに、このアーティファクトに嘘偽りはない」

「何でそんなことが分かるのよ!」

「貴方は、この国の王ケンジ様の事は知っていますか?」

「そりゃ、奴隷の立場でもあんな凄いお方の事を知らない訳ないじゃない」

「ふむ、それはよかった。その凄いお方は、女神クローティア様とご友人である事も知っておられるかな?」

「それは当然です!たしか、数年前ケンジ様の為に女神クローティア様が現世にご降臨されたとかなんとか?」

「よく知っているではないか。感心だな」

「それと何の関係があるのよ!」

「アーティファクトとはな、神が作られたと言われておるのだよ。つまり、この水晶はその女神様がお作りになって嘘偽りのないアイテムなのだよ」

「えっ……」

「つまり、貴女は自分がいい思いをする為、大麻草の事を知ってなお、グドンに気に入られるため協力したのだよ」

「でも、私は奴隷です。逆らう事など出来ようもございません……」

「えぇ、そうですね。だから判決を待ちなさい。他の皆さんもそのようにしているはずです」

「でも、このままでは!」

「いいですか?あなたは奴隷なのです。本来ならばこのような裁判などされず、主人と同じ判決を言い渡されるのが普通です」

「で、でも……こうして裁判をやってもらえるなら……」

「そうです。ケンジ様は奴隷にも温情をあたえてこのように指示を出され、この国では奴隷にも人権を与える様にと言われました。よろしいですか?奴隷だけでなく平民いえ国民は悪い事をすれば捕まるのです。捕まってから言い訳してもそれは遅い事が分からない貴女ではないはずです。違いますか?」

 裁判官は静かに、それでもきつく諭すように言ったのだった。その言葉に、秘書だった女は何も言えなくなってしまった。



 そして、奴隷達の判決が言い渡されたのだった。

 ほとんどの奴隷は、グドンやガルドランに無理やりやらされていて、悪いと思いつつしょうがない情況で行動していたので、無罪が言い渡され泣いて喜んだのだった。
 しかし、奴隷という立場なので所有権はケンジに移ることが決まった。ここには、最後ガルドランと一緒の部屋にいた3人の女性達もいた事はいう間でもなかった。

 そして、グドンの秘書だった女性を始め、20人の奴隷だが犯罪奴隷にされることが決定。鉱山送りとなり強制労働となり女奴隷は鉱山勤務の男達の相手をさせられることになった。

 ここに送られると、強制労働であり1日20時間労働は当たり前であり、絶対に脱出は出来ない。本当の無期懲役であり死ぬまで働かされることになる。

「何で、私達が!鉱山送りにされるのよ~~~同じ奴隷じゃないの!」
「そうだ!なんで俺達が鉱山なんかに」
「こんなの納得できない!」

「静粛に!貴方達は悪い事を分かっていてなお、率先して悪に手を染めたのだ。君達のせいで、どれだけの者が麻薬中毒になり、死んだ者もいたと思っている?」

「それは、私達が悪いのではなく、その人間が弱かったからだ!私達が大麻を売らなくとも、いずれ麻薬に手を染めていたはずだ」

「黙りなさい!そんなわけがなかろう。貴方達のような自分勝手な人間がいるから、被害者は減らないのです!貴方達は、自分のやったことを反省し残りの余生を過ごしなさい。以上だ!その者達を引っ立てい!」

「「「「「はっ!」」」」」

 奴隷達はわめき騒いだが、衛兵達に連れて行かれてしまった。そして、残った奴隷達は、ケンジの屋敷に案内されたのだった。



 
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