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第10章 Freedom国、経済の中心へ!
128話 葛藤
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ランスロットの部下達は、ガルドランに勝つことは当たり前の事であっさりとしたものだった。そして、その状況に連れてこられていた3人の女性達は喜ぶでもなく恐怖がある訳でもなくただ、終わったと疲弊し切っていた。
「君達は、ガルドランの奴隷だな?」
「「「……」」」
女奴隷達は、返事をする訳でもなく首を縦に振るのが精一杯だったようで、ランスロットの言葉に項垂れたのだ。
「俺は、この国の騎士団で団長をやっている人間だが、この国の王であるケンジ様の奴隷でもある。その為、君達はこれから国王様の奴隷になる事を覚えておいてくれ」
「貴方は奴隷なのですか?」
「ああ、そうだ。だから、君達は俺らが見つけた所有物になる訳だが、俺達は奴隷なので、君達は俺の主であるケンジ様のものとなる」
ランスロットの言葉に、女奴隷達は目を見開いたのだ。自分達が王族の奴隷になるという不安が押し寄せたのである。犯罪者の奴隷であった、自分達はこのまま一緒に処分されると思っていたからだ。
「あの……私達は主人であるガルドラン様の奴隷です……このまま、処分されるのでは?」
「たぶん、そうはならないだろう。君達は無理やり協力させられていたのだろう?それとも率先して協力していたのか?」
「「「そんな事はないです!」」」
「だったら、ケンジ様の事だ温情を与えてくれるだろう。しかし、君達の立場は少なからずガルドランの所業に携わってしまっている……それなりの罪は償う形になるから覚悟はしてほしい」
女奴隷達は、犯罪奴隷となる事を覚悟した。それでは、やっと楽になると思ったのに、結局は死ぬまで強制労働となり最後は娼館に売られて終わることになると思っのだ。
それならば、このままガルドランと一緒に処刑してもらった方が、楽になると思ったので、その場から動けなくなるほどであった。
そして、ガルドランの部下達も全員逮捕となった。全員捕縛されたまま、兵舎まで町の中を引きまわされたのだ。
犯罪者達が一つにつながれ、鳳凰騎士団に連れて行かれたのだった。この様子は、町の人間に全てみられたのである。そして、この事件は一気に拡がり大麻草密輸事件と称され、国民達の記憶に刻まれる事になり、Freedom国の株が上がったのは言うまでもなかった。
この事で、巻き込まれたと言っても良いのが、グドン薬店で働いていた薬士達だ。
「貴方達は、今回の事件に関して責任は一切ない!無罪とする」
「「「「「……」」」」」
この無罪に関しての判決は、真実の水晶でも証明された。この薬士達は、本当に国民の為に日々より良い薬を製作していただけであった。
それに対して薬士達は罪には問われなく無罪となったが、嬉しそうな雰囲気にはなっていなくて、これからの人生をどのように生活すればいいのかわからなかったのだ。
判決を言い渡された薬士達は、裁判所から出されてしまった。
「これから俺達は……」
「そうよね……製薬工房で雇って貰えるとは思えないし……」
「ダメ元でNFGの窓口に相談してみるか?」
「そんなの時間の無駄じゃないか?」
「だったら他の職業につくのか?俺達は薬草しか扱ってきてなかったんだぞ?」
「だったらNFGの魔道ギルドでポーションづくりをやらせてもらうか?」
「これから、錬金術を覚えるのか?」
「この年からスキルを伸ばしてどこまで伸びるか……」
「とりあえず、NFGに行ってみないか?」
すると、そこに一人の男が近づいてきたのだった。
「あの、すいません?貴方達は今回グドン薬店で働いていた人達ですか?」
「ああ、そうだが……俺達は決して悪魔の薬など作ってないぞ?」
「そうよ。裁判でも、あたし達の無罪は証明されたんだからね」
「あぁ、分かっています。俺は貴方達が無罪になり、出てくるのを待っていたので安心してください」
「えっ?俺達を待っていた?」
「どういうことですか?」
「何であたし達を?」
薬士達は、一斉に質問攻めにしたのだった。
「まあ、こんなところで立ち話は何なんですから、NFGの酒場で俺の話を聞いていただけませんか?」
「で、でも……」
「いきなり言われても貴方の事を知りませんし……」
「それに、今はこれからの事で頭がいっぱいで」
「あっ、失礼しました。俺はこの国の責任者をしているケンジと申します」
「「「「「はぁあ?」」」」」
薬士達は、その男の正体がケンジと言う事に驚きを隠せなかった。ムンシャートの町に、国王が一人で来るなんてあり得ないとばかりにケンジの事を疑ったのである。
ケンジと言う名は有名だが、こんな小さな町では国民達はケンジの顔まで把握はしていなかったからだ。
「あなたが国王?」
「そんなバカな?」
「国王がこんな小さな町に一人でくるわけ……」
するとそこに、護衛と思われる男女が6人、焦った様子で追いかけてきたのだ。
「「主~~~~~!」」
「「「「ご主人様!」」」」
「何で、一人でどこかに行ってしまわれるのですか?」
「そうですよ!あたし達はご主人様の護衛ですよ!」
「ギル、悪いな。早くしないと、この人たちを探すのが困難になると思ったからな」
「まったく、貴方というお人は……自分の立場というものを自覚してくれないと困ります」
「まあ、待て。今はそんな話をしている場合じゃないんだ。この人達をのフォローをしないといけないんだよ」
「だったら、あたし達に指示を出して、呼び出したらいいではありませんか?」
「システィナ!お前はいったい何を言っているんだ」
「何をって、ご主人様はこの国の王様なのですよ?用事があるなら呼び出したら……」
「馬鹿な事を!今回は、俺がこの人達に用事があるんだ。だったら、俺の方が出向くのが当たり前じゃないか」
「ですが……」
「システィナ、お前は俺に、俺が辟易していた貴族のような事をやれと言うのか?」
「そ、それは……」
「俺は、そんな事絶対にやりたくはないぞ?誰だって、用があるなら自分が動かないと失礼だろうが。違うか?」
「はい……申し訳ありません……」
ケンジは、システィナにそう言って、薬士達に向き直った。
「申し訳ない……それで、良かったら俺の話を聞いてくれないか?損は絶対させない。話を聞いて、それでも信じれないというなら、俺の話を蹴ってくれてもいいからさ」
薬士達は、どうせNFGに行くつもりだったし話を聞くだけならと思い、ケンジの言う話を聞くことにした。
「わかったよ。とりあえずあんたの話を聞くことにしよう」
「そうね、場所もNFGの酒場なら安心できるしね」
「どうせ時間だけはあるからいってみるか?」
ケンジ達は、NFGの酒場にやって来た。すると、ケンジの顔を見たNFGの職員達は驚き、全員がカウンターの外に出てきて整列したのである。
「国王様!何でこんな小さな支店に!今、支店長を呼んでくるので少々お待ちください!」
「あ~~~、いいよいいよ?そのまま業務を続けてくれ。今日はこの人たちと話があるだけだから、NFGに用事があった訳じゃないから」
「で、ですが……」
さすがに小さなムンシャートの町だが、NFGの職員達はケンジの顔を把握しており緊張が走ったのだった。すると慌てた様子で支店長が出てきたのだった。
「これは国王様、何でこの支店に?」
「いや、ここの酒場を使わせてもらおうと思っただけで、君達に用事はないから安心してくれ」
ケンジの言葉に、支店長をはじめ職員達は安心した様子だが、直立不動でその場を動けずにいた。
「俺達に気にせず、業務をしてくれ」
「で、ですが……」
「そんなとこに突っ立ってられたら、こっちも気になるだろ?」
「は、はい……」
支店長は、ケンジに言われたがカウンターの端で、ケンジ達が気にならない場所で直立不動になっていた。
そして、ケンジは酒場の席につき、薬士達に席に着く様に促したのだ。しかし、薬士達はNFGの支店長たちの態度で本当に国王だと思い、先ほどまでの失礼を詫びたのだった。
「「「「「申し訳ございません!」」」」」
「まさか本当に国王様だとは思いませんでした」
「まあ、俺の顔を知らなかったんだ。気にしてないから、その土下座をやめて席についてくれ」
「そ、そんな……国王様と一緒の席に着けるわけないですよ」
「俺がいいと言っているからいいよ。気にするな」
それを聞き、薬士達は遠慮気味におずおずと席につき始めたのだ。
「えーっと、改めてケンジと言います。よろしく」
「私はダインと申します!」
薬士達は順に自己紹介していったのだった。
「じゃあ、単刀直入に聞かせてもらうが、君達は働き口がないだろう?」
「はい……そのことで、私達はNFGの窓口に相談しようとしていました」
「だよな?だから、うちの工房で働かないかと思って声をかけたんだよ」
「ほ、本当ですか?」
ケンジの誘いに、薬士達は歓声を上げたのだ。
「ちょっと喜ぶのは待ってくれ。まだ事情があるからそれを聞いてから判断してくれ」
「えっ?待ってくれとはどういう意味でしょうか?」
「ああ、それは説明するからちゃんと聞いてから、判断して欲しいんだ。問題はないが、君達の気持ちの問題なんだよ」
「私達の気持ちの問題?」
「Freedom国では、奴隷達の立場を上げようとしているのは知っているか?」
「奴隷達の立場?」
「ああ、犯罪奴隷じゃない奴隷達だよ。今は解放される事が出来るだろ?」
「まだ、この町にはそういう事は噂でしか聞きませんね。それがどうかしたのですか?」
「うちの工房で働くという事は、君達の上司が奴隷となるという事なんだよ」
「「「「「なんですって?」」」」」
薬士達は、平民の上司が奴隷になると聞き信じれないと驚いたのだ。
「今はまだ、そんな信じれないと驚くだろうが、この国では借金奴隷の立場は契約社員と言う様な立場にしようとしているんだよ」
「それは聞いたことがあります。確か、借金奴隷の負債を主人が買い取るのでしたね?奴隷商人はその奴隷に価値を付けて売り、儲けを出すと聞きます」
「そうだ。その、借金を主人に返していく事で借金が減り、それが返し終わったらその奴隷が奴隷からの解放を望んだら、主人は解放に応じないといけないという事だ」
「今までは、奴隷に堕ちたら奴隷紋のせいで解放を望めなかったが、それが消えると聞きました」
「ああ、だから、借金奴隷は給料を前借しているみたいなもので、奴隷の立場があがると考えてほしいんだよ」
「で、ですが……」
「まだ、その考えが出来る人間が少ないというのは俺も分かっているよ。だから、俺の工房で働いてくれと言っても躊躇するのが分かっているから、喜ぶのは待ってくれと言ったんだよ」
「どうしても工房長は奴隷になるのですか?」
「ああ、それもユリアは奴隷の解放を望んではいないので、ずっと奴隷の立場だ」
「じゃあ、もしそこで働かせてもらっても、私達の上司はそのユリアと言う奴隷になるのですか?」
「そういうことだな」
それを聞き、ダインたちは下を向き考え込んでしまったのだ。奴隷に使われる事への躊躇があるが、このままだと職には就けないのがわかっているからだ。
「あの……ケンジ様。もし私達が頑張って、そのユリアと言う奴隷より業績を伸ばせば、私達が上司になる事は可能ですか?」
「それは当然可能だが、無理と思ってくれた方がいいよ」
「なっ?私達が、奴隷より劣っているというのですか?」
「ああ。言いにくいが経験が全然違うからな。そのユリアと言う女性はエルフであって、ヒューマンと比べる事は出来ないのは君達も分かるだろ?」
「エ、エルフ族ですか……」
エルフ族にはヒューマン族では勝てない理由があった。スキルは120が上限と思われているが、エルフは草木に関してのエキスパートだからである。
それに上司になるくらいの経験となれば、何百年と生きてきたエルフに50年そこそこの経験など太刀打ちが出来ないのは当然であった。
ダイン達はそのように思っていたが、ユリアはハイエルフである。それに、ケンジのもとでスキルを伸ばしているので、今は120以上の薬学のスキルを所持している為、どうあがいてもダイン達に勝ち目はなかったのである。
「だが、そのプライドさえ捨てれば、うちで働く事が出来ると思わないか?」
「それはそうなのですが……やはり、奴隷の下で働くのは……」
薬士達は、それだけ言って黙りこくってしまったのだ。ケンジはダイン達を責める事はしなかった。そう考えるのが今はまだ普通であるのがわかるからだ。
ケンジは、国民達の意識を変えるのはまだまだ時間が必要だと、思い知って心の中でため息をつくのだった。
「君達は、ガルドランの奴隷だな?」
「「「……」」」
女奴隷達は、返事をする訳でもなく首を縦に振るのが精一杯だったようで、ランスロットの言葉に項垂れたのだ。
「俺は、この国の騎士団で団長をやっている人間だが、この国の王であるケンジ様の奴隷でもある。その為、君達はこれから国王様の奴隷になる事を覚えておいてくれ」
「貴方は奴隷なのですか?」
「ああ、そうだ。だから、君達は俺らが見つけた所有物になる訳だが、俺達は奴隷なので、君達は俺の主であるケンジ様のものとなる」
ランスロットの言葉に、女奴隷達は目を見開いたのだ。自分達が王族の奴隷になるという不安が押し寄せたのである。犯罪者の奴隷であった、自分達はこのまま一緒に処分されると思っていたからだ。
「あの……私達は主人であるガルドラン様の奴隷です……このまま、処分されるのでは?」
「たぶん、そうはならないだろう。君達は無理やり協力させられていたのだろう?それとも率先して協力していたのか?」
「「「そんな事はないです!」」」
「だったら、ケンジ様の事だ温情を与えてくれるだろう。しかし、君達の立場は少なからずガルドランの所業に携わってしまっている……それなりの罪は償う形になるから覚悟はしてほしい」
女奴隷達は、犯罪奴隷となる事を覚悟した。それでは、やっと楽になると思ったのに、結局は死ぬまで強制労働となり最後は娼館に売られて終わることになると思っのだ。
それならば、このままガルドランと一緒に処刑してもらった方が、楽になると思ったので、その場から動けなくなるほどであった。
そして、ガルドランの部下達も全員逮捕となった。全員捕縛されたまま、兵舎まで町の中を引きまわされたのだ。
犯罪者達が一つにつながれ、鳳凰騎士団に連れて行かれたのだった。この様子は、町の人間に全てみられたのである。そして、この事件は一気に拡がり大麻草密輸事件と称され、国民達の記憶に刻まれる事になり、Freedom国の株が上がったのは言うまでもなかった。
この事で、巻き込まれたと言っても良いのが、グドン薬店で働いていた薬士達だ。
「貴方達は、今回の事件に関して責任は一切ない!無罪とする」
「「「「「……」」」」」
この無罪に関しての判決は、真実の水晶でも証明された。この薬士達は、本当に国民の為に日々より良い薬を製作していただけであった。
それに対して薬士達は罪には問われなく無罪となったが、嬉しそうな雰囲気にはなっていなくて、これからの人生をどのように生活すればいいのかわからなかったのだ。
判決を言い渡された薬士達は、裁判所から出されてしまった。
「これから俺達は……」
「そうよね……製薬工房で雇って貰えるとは思えないし……」
「ダメ元でNFGの窓口に相談してみるか?」
「そんなの時間の無駄じゃないか?」
「だったら他の職業につくのか?俺達は薬草しか扱ってきてなかったんだぞ?」
「だったらNFGの魔道ギルドでポーションづくりをやらせてもらうか?」
「これから、錬金術を覚えるのか?」
「この年からスキルを伸ばしてどこまで伸びるか……」
「とりあえず、NFGに行ってみないか?」
すると、そこに一人の男が近づいてきたのだった。
「あの、すいません?貴方達は今回グドン薬店で働いていた人達ですか?」
「ああ、そうだが……俺達は決して悪魔の薬など作ってないぞ?」
「そうよ。裁判でも、あたし達の無罪は証明されたんだからね」
「あぁ、分かっています。俺は貴方達が無罪になり、出てくるのを待っていたので安心してください」
「えっ?俺達を待っていた?」
「どういうことですか?」
「何であたし達を?」
薬士達は、一斉に質問攻めにしたのだった。
「まあ、こんなところで立ち話は何なんですから、NFGの酒場で俺の話を聞いていただけませんか?」
「で、でも……」
「いきなり言われても貴方の事を知りませんし……」
「それに、今はこれからの事で頭がいっぱいで」
「あっ、失礼しました。俺はこの国の責任者をしているケンジと申します」
「「「「「はぁあ?」」」」」
薬士達は、その男の正体がケンジと言う事に驚きを隠せなかった。ムンシャートの町に、国王が一人で来るなんてあり得ないとばかりにケンジの事を疑ったのである。
ケンジと言う名は有名だが、こんな小さな町では国民達はケンジの顔まで把握はしていなかったからだ。
「あなたが国王?」
「そんなバカな?」
「国王がこんな小さな町に一人でくるわけ……」
するとそこに、護衛と思われる男女が6人、焦った様子で追いかけてきたのだ。
「「主~~~~~!」」
「「「「ご主人様!」」」」
「何で、一人でどこかに行ってしまわれるのですか?」
「そうですよ!あたし達はご主人様の護衛ですよ!」
「ギル、悪いな。早くしないと、この人たちを探すのが困難になると思ったからな」
「まったく、貴方というお人は……自分の立場というものを自覚してくれないと困ります」
「まあ、待て。今はそんな話をしている場合じゃないんだ。この人達をのフォローをしないといけないんだよ」
「だったら、あたし達に指示を出して、呼び出したらいいではありませんか?」
「システィナ!お前はいったい何を言っているんだ」
「何をって、ご主人様はこの国の王様なのですよ?用事があるなら呼び出したら……」
「馬鹿な事を!今回は、俺がこの人達に用事があるんだ。だったら、俺の方が出向くのが当たり前じゃないか」
「ですが……」
「システィナ、お前は俺に、俺が辟易していた貴族のような事をやれと言うのか?」
「そ、それは……」
「俺は、そんな事絶対にやりたくはないぞ?誰だって、用があるなら自分が動かないと失礼だろうが。違うか?」
「はい……申し訳ありません……」
ケンジは、システィナにそう言って、薬士達に向き直った。
「申し訳ない……それで、良かったら俺の話を聞いてくれないか?損は絶対させない。話を聞いて、それでも信じれないというなら、俺の話を蹴ってくれてもいいからさ」
薬士達は、どうせNFGに行くつもりだったし話を聞くだけならと思い、ケンジの言う話を聞くことにした。
「わかったよ。とりあえずあんたの話を聞くことにしよう」
「そうね、場所もNFGの酒場なら安心できるしね」
「どうせ時間だけはあるからいってみるか?」
ケンジ達は、NFGの酒場にやって来た。すると、ケンジの顔を見たNFGの職員達は驚き、全員がカウンターの外に出てきて整列したのである。
「国王様!何でこんな小さな支店に!今、支店長を呼んでくるので少々お待ちください!」
「あ~~~、いいよいいよ?そのまま業務を続けてくれ。今日はこの人たちと話があるだけだから、NFGに用事があった訳じゃないから」
「で、ですが……」
さすがに小さなムンシャートの町だが、NFGの職員達はケンジの顔を把握しており緊張が走ったのだった。すると慌てた様子で支店長が出てきたのだった。
「これは国王様、何でこの支店に?」
「いや、ここの酒場を使わせてもらおうと思っただけで、君達に用事はないから安心してくれ」
ケンジの言葉に、支店長をはじめ職員達は安心した様子だが、直立不動でその場を動けずにいた。
「俺達に気にせず、業務をしてくれ」
「で、ですが……」
「そんなとこに突っ立ってられたら、こっちも気になるだろ?」
「は、はい……」
支店長は、ケンジに言われたがカウンターの端で、ケンジ達が気にならない場所で直立不動になっていた。
そして、ケンジは酒場の席につき、薬士達に席に着く様に促したのだ。しかし、薬士達はNFGの支店長たちの態度で本当に国王だと思い、先ほどまでの失礼を詫びたのだった。
「「「「「申し訳ございません!」」」」」
「まさか本当に国王様だとは思いませんでした」
「まあ、俺の顔を知らなかったんだ。気にしてないから、その土下座をやめて席についてくれ」
「そ、そんな……国王様と一緒の席に着けるわけないですよ」
「俺がいいと言っているからいいよ。気にするな」
それを聞き、薬士達は遠慮気味におずおずと席につき始めたのだ。
「えーっと、改めてケンジと言います。よろしく」
「私はダインと申します!」
薬士達は順に自己紹介していったのだった。
「じゃあ、単刀直入に聞かせてもらうが、君達は働き口がないだろう?」
「はい……そのことで、私達はNFGの窓口に相談しようとしていました」
「だよな?だから、うちの工房で働かないかと思って声をかけたんだよ」
「ほ、本当ですか?」
ケンジの誘いに、薬士達は歓声を上げたのだ。
「ちょっと喜ぶのは待ってくれ。まだ事情があるからそれを聞いてから判断してくれ」
「えっ?待ってくれとはどういう意味でしょうか?」
「ああ、それは説明するからちゃんと聞いてから、判断して欲しいんだ。問題はないが、君達の気持ちの問題なんだよ」
「私達の気持ちの問題?」
「Freedom国では、奴隷達の立場を上げようとしているのは知っているか?」
「奴隷達の立場?」
「ああ、犯罪奴隷じゃない奴隷達だよ。今は解放される事が出来るだろ?」
「まだ、この町にはそういう事は噂でしか聞きませんね。それがどうかしたのですか?」
「うちの工房で働くという事は、君達の上司が奴隷となるという事なんだよ」
「「「「「なんですって?」」」」」
薬士達は、平民の上司が奴隷になると聞き信じれないと驚いたのだ。
「今はまだ、そんな信じれないと驚くだろうが、この国では借金奴隷の立場は契約社員と言う様な立場にしようとしているんだよ」
「それは聞いたことがあります。確か、借金奴隷の負債を主人が買い取るのでしたね?奴隷商人はその奴隷に価値を付けて売り、儲けを出すと聞きます」
「そうだ。その、借金を主人に返していく事で借金が減り、それが返し終わったらその奴隷が奴隷からの解放を望んだら、主人は解放に応じないといけないという事だ」
「今までは、奴隷に堕ちたら奴隷紋のせいで解放を望めなかったが、それが消えると聞きました」
「ああ、だから、借金奴隷は給料を前借しているみたいなもので、奴隷の立場があがると考えてほしいんだよ」
「で、ですが……」
「まだ、その考えが出来る人間が少ないというのは俺も分かっているよ。だから、俺の工房で働いてくれと言っても躊躇するのが分かっているから、喜ぶのは待ってくれと言ったんだよ」
「どうしても工房長は奴隷になるのですか?」
「ああ、それもユリアは奴隷の解放を望んではいないので、ずっと奴隷の立場だ」
「じゃあ、もしそこで働かせてもらっても、私達の上司はそのユリアと言う奴隷になるのですか?」
「そういうことだな」
それを聞き、ダインたちは下を向き考え込んでしまったのだ。奴隷に使われる事への躊躇があるが、このままだと職には就けないのがわかっているからだ。
「あの……ケンジ様。もし私達が頑張って、そのユリアと言う奴隷より業績を伸ばせば、私達が上司になる事は可能ですか?」
「それは当然可能だが、無理と思ってくれた方がいいよ」
「なっ?私達が、奴隷より劣っているというのですか?」
「ああ。言いにくいが経験が全然違うからな。そのユリアと言う女性はエルフであって、ヒューマンと比べる事は出来ないのは君達も分かるだろ?」
「エ、エルフ族ですか……」
エルフ族にはヒューマン族では勝てない理由があった。スキルは120が上限と思われているが、エルフは草木に関してのエキスパートだからである。
それに上司になるくらいの経験となれば、何百年と生きてきたエルフに50年そこそこの経験など太刀打ちが出来ないのは当然であった。
ダイン達はそのように思っていたが、ユリアはハイエルフである。それに、ケンジのもとでスキルを伸ばしているので、今は120以上の薬学のスキルを所持している為、どうあがいてもダイン達に勝ち目はなかったのである。
「だが、そのプライドさえ捨てれば、うちで働く事が出来ると思わないか?」
「それはそうなのですが……やはり、奴隷の下で働くのは……」
薬士達は、それだけ言って黙りこくってしまったのだ。ケンジはダイン達を責める事はしなかった。そう考えるのが今はまだ普通であるのがわかるからだ。
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