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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

113話 夜中の襲撃

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 ロイ達は、マーレン達の代わりに本家の方で身を隠したのである。採取士達やこの屋敷の使用人達の部屋にはデイニーが陣取った。パメラは、離れの客室に結界を張り、そこを護衛したのだった。

「パメラ、そっちはよろしく頼むぞ!」

「だから、あんたは誰に物を言っているのよ。こっちは心配しないで、あんたは職務をまっとうしなさい!」

「ったく……相変らず口が悪ぃんだからよ……」

「あんたはそんなこと気にせずしっかりしなさい!」

「分かったよ……痛ぁ~~~~~!」

 ロイは、客室を離れる時、パメラにケツを蹴られたのだった。



 そして、その時はやって来た。

「てめぇ等わかっているな!」

「「「「「はっ!」」」」」

 そのブックスの号令に、部下達は忍者のように姿を消し、マーレンの屋敷に潜入したのである。部下達は、侵入を開始してすぐに、雇われていた人間の部屋の屋根裏に侵入した。

「来たわね……」

 屋根裏にはデイニーが仕掛けた※①【ファイヤートラップ】が仕掛けられていた。部下3名程が屋根裏に入った瞬間、体の内側が燃えるような感覚に襲われ、絶命したのである。

「「「ぎゃあああああああああ!」」」
「何だ⁉いったい?」
「仲間がいきなり発火しました!」
「どういうことだ?」

 ブックスの部下達は身の危険を感じ、屋根裏から入ることをやめた。

「ふっふっふっ!貴方達には死んで頂くわ!」 

「なっ⁉」

 屋根の上に逃げ出した部下達の前には、デイニーが屋根の上に立っていた。

「ここに侵入したのは不運だったわね!」

「みんな散れ!」

 ブックスの部下は、囚われることを危惧して逃げの一手に徹したのである。

「逃げれると思っているの?」

 ブックスの部下達が、マーレンの屋敷の敷地から出ようとした瞬間、結界に阻まれ燃え上がったのである。

「「「「「ぎゃああああああああああ!」」」」」

「だから言わんこっちゃない。貴方達はもう逃げ道はないと思いなさい!」

「く、くっそぉ……」

「あんた達、馬鹿ねぇ!全員で侵入してきてくれて助かったわ。これで、あんた達は皆殺し決定ね」

「全員で、かかれぇ!」

 侵入した部下達は屋根の上に立っていたデイニーに向かって突進したのである。

 デイニーは魔法使いで、普通ならタンカーであるブンダスにフォローして貰うのが効率がいいのだがここにはいなかった。それは、デイニーが並みの魔法使いではないからだ。無詠唱に加えて火力がありすぎる為、一国の軍隊に匹敵する魔法使いなのだ。
 前にも言った通り、デイニーは魔法は詠唱時間をわざと長くすることで、火力を増している。それに加えてデイニーの装備はケンジの製作の物であり更に火力を上げ、又凶悪なスペックを持っていた。
 デュアルスペルというものだ。これは1回の詠唱で2連発する効果である。その為、10発しか撃てなかったとしても倍の20発撃てることになる。

 余談ではあるが、ここにセイラやシスティナの補助魔法が加わると、20の倍で40発そして、歌スキルで80発撃てるようになるのである。

 話は戻すが、一瞬で20人もの敵が殲滅出来る為、タンカーという職業がいなくとも、デイニーの懐に入るのは至難の業なのだ。

「フレイムアロー!」

 デイニーは、※②【フレイムアロー】を四方八方に拡散し、ブックスの部下達に狙いを定めたのだ。無詠唱で唱えた炎の矢は、敵一人に一本胸に刺さり、黒炭になり次々落下し、地面に叩きつけられ地面には人の形の炭が残ったのだ。

「楽勝だったわね。後はロイとブンダスが親玉を生け捕りにしたらミッション達成ね。頼んだわよ!」

 デイニーは、屋根から飛び降りマーレンの屋敷の門に陣取ったのだ。それらの騒動は、当然マーレン達に聞こえていたのである。

「パ、パメラさん……大丈夫なのですか?」

「大丈夫です!今、デイニーが暴れていますがいつも通りですよ」

「暴れている?」

 その時、外から叫び声が連続で聞こえてきた。

「ひっ!本当に大丈夫ですか?」

「えぇ!ここにいる限り賊は入ってこれないし、手出しすらできませんよ」

 これらの叫び声は、マーレン宅の近所にも聞こえていた。その声に、近所に住む人間もやじ馬で見に来る人間もいた。しかし、門の前ではデイニーが侵入を阻んでいた。
 そこに衛兵も、到着したのである。Freedom国領では本国フリーの町以外では最少人数の衛兵しかいない。
何か問題があれば、すぐにフリーの町から転移マットで援軍が駆けつける事になる。

「デイニー何が起こっている?」

「イチカ、久しぶりね!」

「挨拶している場合か!国民から通報があった。なにが起こっているんだ?」

「大丈夫だって!後はロイ達が親玉を生け捕りするだけだよ」

 イチカ達衛兵は、周りに住む国民達の安全とやじ馬の整理をしていた。これは、鳳凰騎士団より実力のある雷神がいたからである。イチカは雷神に任せておけば何の問題の無いことを理解し、自分達が手を出す事で、反対に足を引っ張る事になるからだった。

「皆の者!私達は念のためこの敷地の警護だ!」

「「「「「「分かりました」」」」」」

 イチカは、部下達にマーレン宅の敷地の塀の外側に衛兵を配置し、この屋敷から脱出する者がいないか警護したのだった。
 
「雷神が担当しているのに敷地から逃げれるとは思わんがな!」
「確かにそうだぜ!」
「しかし、強盗に入った賊は気の毒だよな……」
「ああ!俺ならこの段階で絶望しているぜ」

 イチカの部下達は、賊を憐れんでいたのだった。敷地には、デイニーの結界が張っていたので絶対に脱出はできないと思っていたので、衛兵達にとってこれほど楽な任務は無かったのだ。

「お前達!何を無駄話をしている。どんな時でも気合を入れないか!」

「しかし、イチカ隊長……雷神のデイニーさんの結界ですよ?脱出しようがありませんよ!」

「ああ!それはわたしも分かっている。だが、無駄話をしていいという訳ではあるまい!」

「で、ですが……」

「お前達は、鳳凰騎士団に次いで強者達で心配はしていないが、そういうのは油断に繋がるから、どんな時でも緊張感を持って任務にあたれ!」

「は、はい……申し訳ありませんでした……」

 イチカは、部下達の油断を注意し、持ち場に戻ったのだ。




 そして、外の様子が騒がしいのをおかしく思ったブックスと部下5名は嫌な予感がした。

「まさかあいつ等が気づかれたのか?」
「そんなはずが……」
「だが……この騒がしさは!」

 ブックス達は、マーレンが寝ているはずの部屋の天井裏に潜伏していた。

「ぎゃっ!」

 ブックスが、部下の一人がいきなり叫んだのでそちらの方を見ると、血を流して死んでいたのだ。

「なっ!」

「お~い!いつまで天井裏にいるつもりだ。いい加減おりて来い!」

 マーレンが寝ているはずの部屋から、男の声が聞こえてきたのである。

「ちっ!ばれてやがる!」
(ってことは、あの騒ぎは部下達もばれて……」

 ブックス達は屋根裏から出ようとしたが、すでに結界が張られていたのである。

「ぎゃああああああああ!」

 部下の一人が、いきなり発火して絶命したのである。

「なっ!」

「お~い!早く降りてこいって!仲間の結界が張っているから外に出れると思うなよ!」

 ブックスの部下は、何もしてないのに2人死んでしまったのだ。

「ちっ!しょうがねえ!」

 ブックスは逃げれないと思い、天井を踏み抜いて、部屋に飛び込んだのである。

「やっと、おりてきたか!」

 ブックスは、奥歯を噛みしめ悔しそうな顔をして部屋の中に降りると、ロイとブンダスが待ち受けていた。


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 この話で出てきた魔法

※①【ファイヤートラップ】
火属性魔法   2階位
消費MP    35
詠唱速度    1.5秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間    レベル×10分
効果対象    1つの土地
効果範囲    1m立方×レベル(大きさは任意に決めることが可能)
必要秘薬    虹パール10個
備考欄
 この魔法は土地の一角に炎の罠を仕掛ける事が出来る。
罠の範囲は任意に決めることが出来、その土地を囲み結界のようにする
事も可能である。その罠に触れたクリーチャーは身体の内部から発火する。
 ダメージはレベル×20を受ける。この罠を解除するには、ディスペル
マジックを使えば、一定の確率で解除できる。またはアンチマジックシェル
を使えば解除可能である。
 魔法使い職業レベル10、魔法スキル30.00以上で使う事が可能。

※②【フレイムアロー】
火属性魔法   5階位
消費MP    20
詠唱速度    6秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間    一瞬
効果対象    レベル×1人 (最大50人)
効果範囲    レベル×1m
必要秘薬    虹パール5個
備考欄
 この魔法は炎の矢を生み出し撃つ事が出来る。対象は複数でレベル
上がる事で矢が一本増え、最大50本の矢が撃てるようになる。
【ファイヤーアロー】と違い複数の対象が狙えることが便利である。
 一本のダメージは、レベル×50でレベルが上がれば上がるほどダメージ
量は増える。
魔道士職業レベル50と魔法スキル95以上で使用可能


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