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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

109話 奇襲

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 この様子を離れた所で見ていたハイド達は、この調子なら何とかなるだろうと思っていた。

「貴方達はいったい?」

「さっきも言ったでしょ?私達は、この国Freedom国の君主であるケンジ様の奴隷だって!」

「なんで、奴隷達だけで行動しているのですか?」

 パメラは、NFGのギルドカードを個人証明として採取士たちに見せた。そこには確かに、国王の名が載っていてその奴隷達だという事が記載されていたのだった。

「今まで王国や帝国があったけど、それらがFreedom国に吸収合併されたのは知っているわよね?」

「当然です!そのせいでこちらとしても色々ありましたから……」

「それで、この国の君主であるケンジ様は、魔物からの安全を確保する為、危険と思われる街道に城壁をも建てて、国民の安全を第一に政策をしているのです」

「確かに、あのジーフマウンの魔の森の街道沿いの城壁は、画期的なものですものね」

「その通りです!そして、もう一つ街道で旅をしていて危険な目にあうのが、今回の貴方達のように盗賊に襲われるケースです」

「「「「「……」」」」」

「先ほども、ここから見ていてわかるでしょうが、盗賊に攫われてきていた人がいましたが、デイニーによって救われました。しかし、ああいうのはホント運がいいだけで、世の中には助けられず犠牲になる人も多いと思います」

「確かに……あたし達も貴方達に会えなければ、今頃盗賊達にいいようにされていました……」

「ですから、ケンジ様は私達奴隷に指示を出し、Freedom国領に存在する盗賊達の討伐を命じられたのです」

「ですが、奴隷達だけで行動なんて信じられない事ですよ?」

「確かに、今までの常識ではそうなのかもしれません。ですが、この国で貴方も色んなことを体験してきているのではありませんか?」

「……」

「今まで滅亡などするはずがないと思っていた王国や、平民にぞんざいな態度をする貴族達もそうです。今まで常識とされていた普通の事が、ことごとく覆されてきたのではありませんか?」

「そ、それは……」

「当然奴隷の事もそうです。奴隷に堕ちたら最後、這い上がれる事はなく一生奴隷の身分となっていましたが、我が主の発明したポーションのおかげで、借金奴隷はその借金を返すシステムが出来て、奴隷から抜け出せるようになりました」

「た、確かに……」

「ですが、盗賊という存在を野放しにしていては、なんの罪もない貴方のような人間が、不当に奴隷に落とされるのです。我が主はそれを何とかしたいと思い、私達のような奴隷に指示を出し、Freedom国領に存在する盗賊達の討伐を命じられたのです」

「国王様は、そこまで平民達の事を考えてくれていたのですか?」

「ご主人様は、それも直したいと思っています」

「それ?」

「貴方達の立場ですよ」

「あたし達の立場?」

「先ほど貴方は、自分の事を平民とおっしゃいましたよね?」

「はい……」

「Freedom国では貴族も平民もいないのです。全員が同じ立場の国民と呼ばれます。これはご主人様が、もっとも重要視するところであります。」

「ですが……世間では……」

「はい!それはわかっております。ご主人様も、国民達の意識改革が出来るまで、時間がかかるとおっしゃってました」

「ですが……元貴族の人間がいる限り、それはなくならないのでは?」

「ご主人様が言うには、そういう事もおっしゃってました」

「……」

「ただ、今はそれもしょうがないだろうとも、いずれ貴族や平民達を忘れられる時間の長さが、平民達の意識改革となりそのことが普通になるとも……」

「それって……」

「そうです。ご主人様は、Freedom国のあらゆる常識を覆す国にする為奮闘しています。これらの事が普通になるのは、国民達の意識が早く変わることが一番の早道ですね」

 採取士達は、パメラの言っている事がなんかおかしいと思い始めていた。Freedom国の事を、聞いていたのになんだか自分達が責められているように聞こえるのだ。

「あ、あの……パメラさん?」

「何でしょうか?」

 パメラは、採取士達の言葉に笑顔で応対したのだった。

「あの……パメラさんはいったい何が言いたいのでしょうか?」

「いえ、何でもないですよ。貴方達、国民が何の不自由もなく生活できていたのなら、それはご主人様が望んでいる国の姿なのですから。ただ、何か不自由に感じてていて今までの常識で何もしないというのなら、勿体ないなとおもっただけです」

「えっ?」

「まあ、貴方達を町まで送り届けるまで時間はまだあります。それまでに、これからの事を考え直した方が貴方達の得になるという事ですよ。さてと……おしゃべりはこれぐらいにしましょう!」

 ハイドはパメラは、周りに気を移したのだ。

「貴方達は絶対にここを動かないでくださいね。死んでも知りませんよ?」

「えっ⁉いきなり何を?」

「ハイド!」

 パメラが叫んだ!すると、ハイドに向かって弓矢がとんで来たのである。当然、ハイドもそれは分かっていて矢を叩き落とした。

「「「「「な、何⁉」」」」」

「別動隊の盗賊達が帰ってきたのよ!1,2,3……50人はいるわね……」

「ハイド!よろしく頼むわよ」

「ああ!これくらい楽勝だ!」

 ハイドは、ある方向に一直線に向かって跳びこんだのである。そして、パメラは※①【セイントエリアドーム】を張ったのである。これは、光属性のサンクチュアリとよく似た魔法で、パメラは光属性を使う事が出来ない為、聖属性魔法での結界であった。

 その瞬間、パメラと採取士達に大量の矢がとんできたが、全てドームが矢を弾いたのである。

「いい?この中にいたら安全だから絶対に動いちゃ駄目よ」

 女性達は無言で首を縦に振った。それを見たパメラはドームから出て、ドームの前に仁王立ちになった。

 そして、ハイドの向かった先には、この盗賊の群れであろうリーダーに一直線にその刃を向けていた。

「なんだ、こいつ!親分に一直線に向かっているぞ!」

「お、おめえら!ボーっとしてんじゃねえ!」

 盗賊達は焦ったのである。唯一の獲物の中の男さえ仕留めれば、後は女ばかりで余裕で襲えると思っていたが、男は一直線に自分達のリーダーに標的をあわせ突っ込んできてのである。部下達は、一斉にリーダの壁になりハイドの行く手を阻んだ。

「へぇ!悪党には悪党なりのチームワークがあるのか!だが無駄だ!」

 ハイドは、リーダーの前に立ちはだかる盗賊達を、2本のダガーで斬り捨てていった。

「なんだぁ~~~?」
「と、とまらねえ!」
「ぎゃ!」
「や、やめろおお!」
「ぎゃああああ!」

 ハイドは、2本のダガーを円の動きで、盗賊達をドンドン斬り捨てていった。盗賊達は、このハイドの動きに吸い込まれ、自らこのダガーに斬られているように見えたのだ。

「お、おめえ等何をやっているんだ!」

 あまりにも、ハイドの洗練した動きに盗賊達がわざと斬られているように盗賊のリーダーには見えていたのだ。部下達からすれば、リーダーを守ろうと必死になっているのだが、なすすべもなく斬られていくだけだった。
 そして、ハイドは最後に盗賊のリーダーの男の首の部分にある頸動脈を一撃で切り捨てたのだ。

「き、貴様ぁ~~~!いったい、何者……」

 それを言い残し、その場に倒れたのである。それを見た盗賊達は自分達のアジトに助けを呼びに引き返したのだった。だが、アジト入り口では火属性魔法にたけたデイニーたちが暴れているとは盗賊達は知らなかったのだ。
 街道沿いの行商人を襲おうとして帰って来たばかりの盗賊達は、アジトが壊滅させられようとしていたことに、まだ気づいていなかったからだ。

「デイニー、後は任せたぜ!」

 パメラ達も、盗賊が引きホッとしたのは言うまでもなかった。

*-----*-----*-----*-----*

 この話で出てきた魔法

※①【セイントエリアドーム】
聖属性魔法    8階位
消費MP     150
詠唱速度     120秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間     レベル×1時間
効果対象     一個所
効果範囲     魔法をかけた場所を中心に半径5m(任意に指定)
必要秘薬     紫水晶50個
備考
 魔法をかけた範囲を聖属性魔法により清浄化し、弱い魔物や
悪意ある者から守ることが出来る。一般的な使用方法としては
野営をする場合、テントにかける事で安全度が大幅に上昇し
安全に旅を続ける事が可能になる。
 デメリットとしては結界を張る前に、結界の中に入られると意味が
無くなるので、詠唱時間が長い為魔法を完成するまで、仲間が周りを
守らないといけない。
 
 ミスティックセイント職業レベル100以上魔法スキル120.00で
使用可能。 


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