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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

104話 談合

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 ケンジとマイの子供が生まれ、名前をタクミと名付けられた。Freedom国はそれから1ヶ月お祭り騒ぎとなり、ダイヤの月は統一元年として更に盛り上がる事となるのだった。

 そして、ホープとホネストの町に学校の建設が始まったのである。これは紙とコルク素材のおかげと言っても良かった。紙は書籍やノート以外にも店の帳簿類色んな所で使用される事になった為、パルプが一時的に足りなくなったほどだった。しかし、棟梁のゲンゴ達が必死にパワースクロールを出してくれたおかげで、120.01以上になった伐採士が増えたのである。

 紙の製造方法は、Freedom特有の物で真似することができなかったのだ。これには伐採士が、大勢いるドワーフ国も真似できないことであった。

「いったい、Freedom国はどれだけ技術を持っているのだ?」

「偵察隊の報告では、伐採をしているだけだと言って、詳細が分からないそうです」

「どういう事なんだ?」

「なんでも高スキルの伐採士が、何かをしているのは確実なのですが、こちらも同じようにしているのですが、皆目見当がつかないそうです」

「鑑定士はなんと?」

「何回鑑定しても、木材を使って製作した紙としか出ないそうです……」

「くっそぉ……うちの国でも紙を製作できれば、Freedomから購入しなくてもいいのに……」

 一方、エルフの国でも同じような事が起きていた。

「どうだ?上手くいきそうか?」

「ダメです……木材を使ってもこのような紙にはなりません……」

「森の民と言われたエルフ族の知らない技術を、どうしてFreedomが持っているのだ?」

「それは何とも……」

「まさか、エルフの国を出た誰かが技術を?」

「そんな訳絶対ない!それに、この材質はなんだ?こんな軽くて弾力のある木材、私達は知らない!」

「なんでも、Freedom国ではコルク材と呼んでいますね」

「これも、木材から採取できると鑑定で出たんだよな?」

「はい。そのように聞いておりますが、こんな材質の木材は聞いた事も見たこともありません!」

「ひょっとして、高レベルダンジョンから取れる物なのか?」

「それがさっぱりわからないのです……」

「引き続きFreedomの動向を探れ!」

「「「「はっ!」」」」

 他国は、Freedom国の商品の秘密を探る事で奮闘していた。しかし、スキルの最高値が120.00と思い込んでいる地点でどうしようもなかったのだ。
 ケンジの奴隷達も解放されたからと言って、ケンジのは恩がある為、自主的にFreedomの秘密をしゃべる者は皆無だった。
 それに、解放された奴隷達は殆どの者がそのまま、ケンジの所で働き続ける事を選んでいたので、滅多な事では技術が流出することはなかったのだ。以前の、仕事をしたいと言った者達も又、決して口にはせず、自分の仕事をこなす毎日であった。

 Freedomの技術が他国を圧倒している中、Freedom内では新たな問題がでてきていた。
 元貴族達の問題である。貴族と言う立場は諦め、商人として成りあがろうと決めた元貴族達は、勘違いした行動に走ったのである。

「ギルドマスター!これはいったい?」

「これはいったいどういう事なのだ?」

「我々ではどうなっているのか……」

「なんで、繊維がこんなに値が高くなっているんだ?」

「なぜだか全然わかりません……繊維を扱う工場の説明では資材不足ということです」

「資材不足とはどういう事だ?」

 町の周辺には綿花が自生する場所はいくつかあるが、それだけでは当然賄うことが出来る訳はなく、魔物(蜘蛛やワーム系)を討伐し、糸袋という素材を買ったりするのが普通である。

 だが、こういう素材の数は栽培がその数を支えているのである。この町、最大の規模を誇るバッカン氏の工場ですら、数が揃えられないと申告してきたのである。

「そんなバカな‼そんないきなり数が足りなくなるものなのか?」

「それが、この町の人口は急激に成長しているみたいです」

「なぜだ?何が今までと違うのだ?」

「そんなの当り前ですよ!Freedom国の跡取りが生まれたのですよ?Freedom国は、この先滅びる事は考えられにくく盤石となったのも当たり前で、これから大陸中から人が集まってきてもおかしくありません!」

「な、なるほど……」

「だから、この町も人口が急激に増えたのだと思います」

「それじゃ、バッカン氏の繊維工場だけでなく他の繊維工場はどうなんだ?」

「そ、それが他の工場も栽培が上手く行かなかったと言って、バッカン氏と同じような値段を提示してきているのです」

「そんなバカなことがあるのか?」

「ただ、マーレン氏の工場だけは協力的ですが、やはり多少の値上げはしょうがなく、ここ一店舗だけでは在庫が揃いそうにありません」

「どうしたらいいのだ……バッカン氏に訪問をして協力要請をしにいくぞ」

「わかりました!」

 NFGの職員達を引き連れ、ギルドマスターはこの町最大の繊維問屋に赴いたのだった。しかし、店員からバッカン氏は今回の緊急事態の為、在庫をかき集めているとのことだった。

「申し訳ございません……主人は今回の事に胸を痛めて、他の町にある知り合いの綿花の栽培業者に協力をお願いしに行きました」

「では、いつおもどりになるのだ?」

「いつになるかは、私共ではちょっとわかりかねます」

「そ、そうか……いないのでは、ここにいてもしょうがないな……」

「本当に申し訳ございません……」

「では、バッカン氏が帰って来たらギルドに至急連絡を頂きたい」

「承知いたしました」



「ギルドマスター、どうするおつもりですか?」

「町中の繊維工場をまわるしかあるまい……」

 ギルドマスターと職員達は、焦りながらバッカン氏の店を後にした。その様子を見て、対応した店員はニヤニヤしながら、店の奥に戻っていくのであった。

 その店員は、奥の部屋の扉をノックして部屋の中に入ると、そこには繊維問屋の店をやっている商人たちが一堂に集まっていた。

「旦那様、今NFGのギルドマスター達が帰っていきましたよ」

「そうか、どんな様子だった?」

「布の在庫が揃いそうになくて、焦っている様子でしたよ」

「そうかそうか!それは愉快だ。ガハハハ!」

「しかし、バッカン殿……本当に大丈夫なのですか?」

「町中の在庫が無いとなれば、商品が高くなるのは世の常ではないか?心配はいらんよ」

「お主達も、ワシの言う事を聞かなければ、どうなるかわかっておるだろ?」

「「「「「そ、それは……」」」」」

「わしの言う事を聞かねば、自分の栽培畑が不作になるのはわかるであろう?」

「「「「は、はい……」」」」」

「まったく馬鹿なやつよ。あ奴だけはワシの言う事を聞かなかったから、自分の首を絞めることになったのだ」

「「「「「……」」」」」

 バッカンは在庫を隠し、他の店の店主を脅し自分の言いなりにさせたのである。本当は在庫はうなるように蓄えており、近場に自生する綿花を狩りつくし、当分の間採取依頼をできないようにしたのである。
 そして、町での栽培畑では不作としたのである。その時に、バッカンの言いなりにならなかったのが、唯一の商人であるマーレンだった。

 マーレンはバッカンの怒りを買い、自分の所有する栽培畑をめちゃくちゃにされてしまい、今の在庫が最後の綿花だったのである。
 しかし、マーレンはなんとかやりくりをして、在庫の糸を今までより多少多めの値段で放出していたのである。

「マーレンの在庫はもうすぐ切れるはずだ。そうなればワシらの持っている在庫の綿花は、通常の3倍の値でも十分に売れるはずだ!」

「ですが、バッカン殿?NFGは、その値段で本当に買ってくれるのですか?」

「ああ!その為に種まきはしておるよ。あのギルドマスターはもう、ワシの言う事には逆らえんよ!」

 バッカンは、食事会を何回も誘い、結局はその行為に気分がよくなったギルドマスターは、調子に乗ってしまっていた。
 酒の席だったこともあり、気分がよくなったギルドマスターは、賄賂を何回か受け取っていたのである。その額は小遣い程度の物だったが、誘惑に負けてしまっていたのである。

 その為、バッカンは自分の勢力を急激に拡大し、他の店に影響が出るほど短期間で成りあがったのである。

 この事で分かるだろうが、バッカンのやっていることは談合であった。町の商品を出し惜しみ、他の店舗と協力し品物の最低価格を釣り上げたのである。



 一方、マーレンはこのままでは繊維が高騰し不味い状態になると考え、在庫が無くなる前に何とかして、自生している綿花を探しださなければと思って、部下に綿花を探し出してほしいと、指示を出したのである。マーレンの部下は、お抱えの採取士と護衛の冒険者を連れて、急いで町を出発したのだった。


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