上 下
542 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

89話 王国の交渉

しおりを挟む
 1か月経ったある日、とうとうしびれを切らした、キース国王とその部下の上級貴族達が、Freedom国に盛大に現れたのである。
 その人数は約3000人!仰々しい隊列で、Freedom国の正面城門から侵入しようとしていた。その瞬間、フリーの町には、警戒サイレンが鳴り響き町の人間はすぐさま、自宅もしくは各地区にある避難所に向かう事になっていた。

「停まれぇ~~~!」

 城門から、拡声器のような大きな声で城門の見張り台から、Freedomの衛兵が叫んだ。その声に反応し、城門前にはイチカ率いる衛兵部隊が素早く隊陣を引いたのだった。
 すると、その仰々しい隊列から、見たことのある紋章の騎士が一人こちらに向かってきた。一人でやって来るので戦争を仕掛けてきた他国で無いことが分かり、イチカは隊陣をひとまず解いた。

「いきなり警戒させて済まぬ!我々はグランパス王国飛龍騎士団だ!この度、ケンジ国王陛下に我が主君が直々に面会を申し込みに来た。どうか、お取次ぎのほどよろしく頼み申す!」

 その言葉に、町中に響いていた警戒サイレンが止んだのだった。

「少しその場でお待ちいただきたい!すぐに連絡いたします!」

「かたじけない!」

 そう言って、伝令の騎士は自分の隊に戻っていったのである。それを見たイチカは、部下にそのことをケンジに伝令させたのである。

 すぐさま、この伝令はムシュダルクに届き、面会の準備が整えられた。そして、王国支団はパレードのように正面玄関から入場したのだった。これには、警戒サイレンの後の事もあり、大通りは何事が起きたのかと人混みで溢れたのだった。

「なんで、王国支団が……」
「見てみろよ。あれが、飛龍騎士団だぜ?」
「なんか違う騎士団みたいだな……」
「あの馬車がグランパス王国の王様の馬車なのか?」
「何かきらびやかになっているな……」

 騎士団は団長がいなくなり、2軍か雑兵でも一番実力のある者が団長に抜擢されているようで、以前のような覇気のある騎士団ではなくなっていた。しかし、貴族達は基本プライドの化け物である。舐められないように馬車や装飾品には金を存分に掛けて、自分達はまだ大丈夫とアピールをしていたのである。

 だが、以前グランパス王国に住んでいた平民達はどこか違和感を感じていた。騎士団や馬など部下達はどことなく貧相に見えていたのに、その君主や貴族達だけが目立っていてアンバランスなのである。

 本当なら、見た目を気にするのなら、部下の騎士達にも気を使うべきなのだ。

 謁見の間に通された、キース国王達は背水の陣で臨んでいた。これ以上NFGに無視をされれば、本当に永きにわたり大陸の覇者だったグランパス王国は、この大陸から名前が消えてしまうからである。

 そして、面会に現れたのはケンジではなく、若干25歳のランガスだった。これには、宰相達が目を見開いたのだった。

「貴殿は、ランガス?なんでお主がこの場に!」

「宰相様、お久しぶりです。何でっておかしなことを……私はこの国の外交官ですよ。普通に職務を、まっとうしているに決まっていますが?」

「そうではない!なぜ、ケンジ様がこの場に現れないのかと言っておるのだ!」

「またまた、おかしなことを……こんな強引な訪問をしているのに、ケンジ様のお時間がとれると思っているのですか?」

「こちらは、キース国王がわざわざこの国に訪問しているのだぞ?だったら、そちらも国のトップが対応しないでどうする?失礼ではないか?」

「こちら側としたら、こうなるのは目に見えていたからこそ、ムシュダルク様が何度も事情を説明していたと思いますが?」

「ムぐぐぐ……」

「本来なら、こういう場も設ける事自体ないですがそれでは失礼になる為、私がこうして対応しているのです。失礼どころではなく、本当なら感謝してほしいぐらいなのですよ」

「貴様ぁ、黙って聞いておれば不敬罪で訴えるぞ!」

「何が不敬罪ですか?こうして対応しているから感謝して欲しいと言ったのがおかしいのですか?」

「宰相、もうやめい!このままだと、本当にこの面会は無くなり、この国から追い出される事になるぞ」

「……」

 宰相は、キース国王に諫められた。

「早速、本題に入らせてもらう。今回訪問させてもらったのは、NFGの事だ。Freedom国管轄のNFGが、グランパス国領に開設せぬ!早急に開設してほしいのだ。NFGもFreedom国の言う事なら命令に従う。頼むこの通りだ!」

 キース国王は、ランガスに交渉したのだった。だが、ランガスはケンジの意向を聞いていた為、首を縦に振ることは無かった。

「申し訳ありません……我が国も、今はそこまでの余裕はないのです」

「なっ⁉」

「考えてもみてください。今、Freedom国は、元ギルドの建て直しているのですよ?」

「だから、その資金を調達する為にも、我が王国にNFGを進出するのではないか」

「それは、貴方達王国側の意見です。Freedom国はギルドの組織の中を見直さないと、同じことの繰り返しになるのです。だから、今は新しく進出するのは愚策と言う以外なにものでもありません」

「では、王国はどうすればいいのだ!」

「それは貴方達が考える事だと思いますが?」

「むぐぐぐ!」

「少なくともFreedom国は、NFGを新しい事をさせることは無いです。これはFreedom国の考えであり、それに反してNFGが勝手に動くことは絶対にありません!」

「では、半年後には必ず約束を守ってもらうぞ?」

「約束と言うのは?」

「馬鹿な事を!書簡には半年後にNFGを進出させると!」

「いやいや……ムシュダルク様の書簡には半年後まで、Freedomは動けないとあったはずです」

「だから、半年後に動くという事だろ?だったら、半年後から……」

「検討に入るとあったはずです!検討と言うのは、動くか撤退するかを決める判断を会議で決定するという事です」

「「「「「馬鹿な!」」」」」
「そんな事になれば本当に王国は!」

「そうならないように頑張ってください!わたし達からそのようにしか言えませんよ」

「なぜだ!なぜそこまで王国を追い込む真似をする?」

「追い込むだなんて言いがかりですよ。王国の事などFreedomには本来関係の無いことです。半年後、王国が持ち直す事が出来れば、まだ国交の価値はありますが、この半年で滅亡すればそれは時代の流れに追いつけなかった王国のせいであって、Freedom国のせいではありません」

「な、な、なんだと!」

「実際そうですよね?Freedomが、グランパス王国に国の事に対して発言権があるというのですか?何か口出ししたら、何か変わっていくのですか?」

「そ、それは……」

「だったら、今の状況を建て直すのは、Freedomではないという事です」

「ムぐぐぐ……」

「まあ、助言の一つでも言ってあげましょう。貴方達のプライドで、着飾って贅沢をしているようですが、そんなプライドは捨てて、その資金を町の為に使った方が、国を建て直すのはより有効ですよ」

 ランガスは、キース国王達の凱旋の様子を見て皮肉を言ったのだった。

「ば、ば、ば、馬鹿にするでないわ!お主では話にならん!ケンジを出せ!」

「だから、言っているではないですか。ケンジ様は、忙しくて王国の相手をしている時間が無いと!」

「そんな事言っていいのか?」

「何を言っているのですか?」

「いいか?今、フリーの町の中には、飛龍騎士団の精鋭が3000騎潜入しているのと同じ状況なのだぞ?ワシが一言……」

「馬鹿な事を!」

「それが嫌なら、早くケンジをここに呼べ!」

 その言葉を聞き、宰相達もFreedomの首根っこを掴んだと思って、ニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべていた。
 ただ、ランガスの言った馬鹿な事とは、そんな事をすればタダで済まないのが王国側だったからだ。ランガスは思っていた。あんな兵士なら鳳凰騎士団が出るまでもなく、町の衛兵だけで十分に対処できると。

「さあ、どうするのだ?町にいる平民達がどうなってもいいと申すのか?」

「それは、Freedom国に戦争を仕掛けると取られてもしょうがないと思うのですが?」

「はっ!町の中に、敵の騎士が入り込んでいて戦争になると思っているのか?」

「そうですか……分かりました……」

「そうか!分かってくれてお互い無血で、話し合いが出来て良かったというものだ!わはははははは!」

 キース王とその重鎮である上級貴族達は勝ち誇ったように大笑いした。



「ったく……ランガスの言う事を聞いて、引き下がったなら王国も半年以上は永らえたものを……」

 王国の人間を見て、辟易したようにケンジが謁見の間に姿を現したのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

処理中です...