上 下
536 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

83話 ギルドの葛藤

しおりを挟む
 ケンジは、久しぶりに見るアーチェ達の姿をみて、驚きを隠せなかった。見るからに睡眠がとれてなくて、目にはクマが出来てやつれていた。

「二人とも久しぶりだね」

「「お久しぶりです……」」
 
 アーチェ達の後ろにいた、ギルド職員も同様にやつれていて、返事をするのが精一杯のようだった。

「早速、本題に入らさせていただいてよろしいでしょうか?」

「その前に、ちょっと会わせたい人間がいるんだがいいかな?」

「会わせたい人間?」

「ランスロット、あいつ等を連れてきてくれ!」

「はっ!」

 ランスロット達鳳凰騎士団が、王国支部のギルド上層部を縛り上げた状態で連れてきて、アーチェ達の前に引き渡したのだった。支部のギルドマスター達は、呻き声を上げてジタバタしていた。

「こ、これは……いったい!」

 アーチェ達は、目を見開き驚いて言葉も出なかった。

「君達の仲間である元ギルド職員が、うちの国に難民として流れてきた時に情報をいくつか聞いて、こいつらがうちの国に潜伏してたんだよ」

「潜伏してたって……そんな簡単に見つかるモノでもないでしょ?」

「うちの国に、潜伏したのがこいつらの愚かな所だよ。それで、こいつ等がギルドの金を着服していたことも聞いているよ」

「そ、それで、そのお金はどこに?」

「ちょっと待ってくれ!押収品は、今持ってきているから」

 すると、後から鳳凰騎士団がギルドマスター達の押収品の金や私物をリアカーに乗せて持ってきたのだった。その押収品を見た、アーチェ達は笑顔がこぼれたのだった。これらの資金が戻ればまだなんとか、ギルドは持ち直す事が出来ると思ったのだった。

「こいつらの処分は、ギルドでやってくれたらいいからよろしくな」

「は、はい!なにからなにまでありがとうございます!」

 処分をギルドに任せると聞いた、支部のギルドマスター達は慌てたのである。Freedomで罪を裁かれるならまだいいわけがたつが、ギルドの方で罪を罰せられると罪が重くなると思ったからだ。

「ん~~~!んん~~~!」

 ギルドマスター達は、必死でケンジに訴えかけていたのだった。そして、一人のギルドマスターが何とか猿轡を解き、大声でケンジに訴えたのだった。

「ケ、ケンジ殿!わたし達も仕方がなかったのだ!罪を裁くのなら、Freedomでお願いしたい!」

「何を言っているんだ。お前は!」
「そうです!黙りなさい!」

「私達は、Freedom領で捕まった。だから、引き渡す事なんて普通じゃ考えられん!」

「お前達にそんな選択権は無いよ」

「しかし、我々もやりたくてこんな事をやったんじゃない!王国は衰退し、ギルドも何とか維持を続けて頑張っていたが、どうしようもなかったのだ!」

「だから、ギルドの金を着服して、Freedomに逃げてきたというのか?」

「そ、そうです!ワシ等もやりたくてやったのではない!」

「馬鹿な事を!お前達のおかげで、ギルドはどうなったと思うんだ?アーチェ達の顔を見てみろ!今まで必死に何とかしようとしてそれでももうどうしようもなくて、Freedomに金銭の援助に来たのが丸わかりじゃないか?」

「なっ⁉なぜ……」

「ゥぐっ……」

「いいか?お前達は、いつも自分勝手で自分さえ良ければいいと考えているから駄目なんだよ。迷惑をかけたことを後悔しながら裁かれるがいい!」

 ケンジの言葉に、捕らえられた支部の幹部達は、その場に崩れ落ちたのだった。

「それで、アーチェさん話は脱線したが、その話は資金援助だと思うが本題と言うのを聞こうか?」

「い、いえ……この押収品があれば、まだ何とか持ち直す事が……」

 ケンジは、アーチェの言葉に眉をしかめたのである。その様子にアーチェ達も言葉に詰まってしまった。

「あ、あの……ケンジ様は何か言いたいことが?」

「いや……あんた達が、それでいいなら俺から言う事は何もないよ」

「そんな気になる言い方をしなくても!」

「いやいや、俺からしたら所詮は他人事だ。そちらから何かを提案された事に対してなら、合意か拒否するかのどちらかだよ?この押収品で、何とかできるのなら俺達には関係の無いことだ」

「わ、分かりました。今回の事は本当にありがとうございます。引き続き、馬車の蹄鉄のお付き合いは、これまで通りよろしくお願いいたします」

「ああ!それに関しては納品数を発注してくれれば問題はないよ。こちらこそよろしくお願いいたします」

 アーチェとモーリス以外の人間は、これで何とかなると思い笑顔で帰還した。アーチェとモーリスは、ケンジの最後の顔がどうしても引っかかり、ギルドに帰ってから眠れない日が続いた。

 帰還した後、横領した幹部達はギルドを潰しかけたという大罪で全員処刑されてしまった。そして、王国領にはギルドが一切なくなってしまったのである。王国領のギルドを建て直す事が出来なかったのである。



 この事に、グランパス王国はギルドに苦情を申し立てることになった。

「これはどういうことだ!早くギルドを元にもどしてくれ」

「そうは言いますが、王国はもう国として機能していないじゃないですか?おかげで、王国支部のギルドがつぶれたと言っても過言じゃないんですよ?」

「それを国のせいにするのか?」

「だったら、住みやすい国にして人口を増やしていただきたい!」

「それが出来たなら苦労はせんわい!」

「逆切れですか?そのせいで平民達の暮らしはどんどん苦しくなって、若い人間はグランパス王国を見限り、Freedomに移住しているんじゃないですか?」

「それじゃ、町の結界はどうするつもりだ‼このままでは結界がきれてしまう
だぞ?」

「今のギルドにそれを何とかしろと?無理に決まっているではないですか?」

「馬鹿な事を……無責任すぎる!」

「貴方達がそれを言うのですか?」

「何を言っておる。今は結界の事を!」

「大体もっと貴方達がしっかりしていれば、国の経済がまわりギルドがつぶれる事は無かったのです。私達からすれば貴方達の方が無責任と言うものです!」

「なっ⁉貴様ぁ~!不敬罪に処すぞ!」

「ふん!何か言えばすぐに不敬罪といえば、こちらが言いなりになるとでも思っているのですか?」

「な、なんだと!」

「ここは、グランパス王国ではありませんよ。貴方達の国ならば通用しますが、ここは魔人族が治める領地です。その土地で、私達を処分したら貴方達が罪人になるのでは?」

「ぐうううう……」

「とにかく、今のギルドは王国のせいで窮地に立っているのです!そこまで余裕がないのです!」

「だったら、契約違反としてギルドを訴える!訴えられなかったら、すぐさま結界の準備を整えろ!」

「ゥぐ……」

 契約違反として訴えられることはギルドとしても予想していた。だが、実際の所ギルドにそこまでの余裕がなかったのだ。
 押収品でなんとかできると思っていたのだが、予想に反して王国支部の赤字が他の支部を圧迫していたのである。

「いいか?もう一度言う!すぐさま王国にギルドを開設するんだ!」

「そんな凄まれても、ギルドではどうしようもないのです。王国支部のせいで、本部がガタガタで王国支部を又開設するには、数年の時間がかかるのです」

「馬鹿な!数年だと?そんなに待てるわけなかろう」

「では、ギルド開設の援助を、グランパス王国がしてください!」

「何を言っておる!ギルドは国とは関係ない独自の組織じゃないか?何で王国が協力せねばならん!」

「ですが、王国も間接的に、ギルドを潰した原因の一つでもあるのですよ」

「そんなのこぎつけではないか?」

「ギルドが、今王国にギルドを開設すれば、ギルド全体が揺らぎかねません。申し訳ないですが、30ほどの町の為に、大陸中にあるギルドを潰すわけにはいけないのです」

「むぎぎぎ!お主達は、グランパス王国を切り捨てるつもりか!」

「そうではありませんが、実際の所王国より自分の事で精一杯なのです!」

「では、契約金は返していただこう!それが出来ないのであれば、ギルドの再開は無理でも、結界だけは張っていただく!」

「そ、それは……」

「こっちも譲歩しているのだ!まずは、王都から結界を張っていただく。結界が切れる期間はあと2週間だ。それでも、出来ないとなれば契約金を返してもらう」

 王国の使者は、そのように言い残し、国へと帰っていったのである。これには、ギルドも流石にお手上げ状態だった。ここで王国の要望を聞くと、本当にギルドの経営は立ち行かなくなり、潰れるしかなかったのだった。



しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

処理中です...