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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

81話 ギルド崩壊の序曲

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 今回の事で、ギルドは窮地に陥っていた。聖教国だけなら、まだなんとか他の売り上げで賄えることが出来ていたが、ここにきての帝国滅亡は想定外の事だった。
 帝国と王国が衰退したとしても、大国である国が滅亡など予想もしていなかったからだ。

 嫌な予感がしたギルドマスターは、王国の情報を集めさせた。すると、王国も又風前の灯であり、王国領のギルドも自分の事で精一杯であった。

「おい……どうするのだ?ギルド本部からの調査依頼が来ているぞ?」
「どうすると言ってもどのように報告するのだ?」
「今まで誤魔化していたが、正直に話すか?」
「ば、馬鹿な!そんな事をすれば私達の出世はもうなくなったようなものだぞ?」
「では、どうすれば?」

 ギルドが変わったの本部とその周辺だけだった。本部から離れれば離れるほどギルドマスターの目は届きにくく、支部のギルドマスターは以前のような傲慢で自分勝手な人間が多く、ギルドの売り上げをごまかしたりしていた。

「ったく……魔人族が治める地に本部が移動になったと聞いたときは、喜ばしかったのにわざわざ連絡をよこしてくんじゃねえよ……」
「まったくです!」
「しかし、この状況をどのように説明すれば……」

 王国領にある支部のギルドマスターは、頭を抱えるのも無理はなかった。ギルドには依頼が出されてはいるが、閑古鳥が鳴き構成員達はその日の生活が出来たらいいような感じで依頼を受けるのである。
 質の良い冒険者や生産者は、Freedomにその拠点を移してしまって、残っている構成員は動いてくれないのである。依頼者も又、ギルドに依頼を出すよりFreedom店に行った方が、日数がかかるものの依頼品が揃う事になる。
 その為、王国領の大きな町のギルドはほとんど機能していないのが実状であり、中規模以下の町のギルドでは、Freedom支店が進出してない為、依頼は出されるのだが構成員が気まぐれな為、気が向かないと依頼が達成されないのである。

 そうなると依頼主が、依頼料が高く設定する事になり、そうなるとやっと構成員が動き出し、依頼が達成されるのだ。ギルドとしても最初から依頼料を高く設定して、依頼主に説明するも依頼主としても極力高いお金は出したくないのである。

 そのおかげと言っては何だが、Freedom国から出発した行商人が儲ける事が出来ていた。どの町が、どうった魔物の素材が欲しがっているのか、どういった薬草を採取したらいいかリサーチしたうえで、行商人がその町に商品を届けるのだ。

「わははは!今回の行商も大成功だな!」
「御屋形様、町に戻るまで気を抜かないでくださいよ?」
「分かっておるよ!その為に護衛の冒険者もいるではないか!」
「確かに、この辺りには魔の森のような魔物はいないですね」
「お前の方こそ、馬の操縦をちゃんとしろよ」
「わかっております!」

 今はもうヒューマン国領は、Freedomが完全に掌握している世界になっていた。グランパス王国も、今や見る影もなく、王国領に住む年寄りは10年前を懐かしむ愚痴ばかり言っていた。

 表だって愚痴を言うと、反逆罪だと衛兵がとんでくる国になってしまったグランパス王国では、近所の人たちが集まり部屋の中では、王国への悪口が止まらなかったのである。

「いったいどうなるんだろうね……」
「そうだよ!私達年寄りにはついていけない事ばかりだ」
「でも、この町はまだいい方だと聞いたよ?」
「たしかに、Freedom支店が進出しているだけマシというものさ」
「なんでも5日ほど行った町では中規模の町だという事で、Freedom支店が進出してないということだよ?」
「でも、進出してないだけで、ここまで生活が変わるなんてすごい物だね……」
「そりゃそうさ……そういった町には便所は無いし、水道や便利な物がいまだ無いのが普通だしね……」
「私も聞いたよ!物資もギルドが機能してないから、行商人が活躍しているらしいね」
「だけど、この町で普通に売っているアイテムが、安くて3倍の値をしているってうわさだよ」
「ええ!そんなんでどうやって生活が出来るんだよ……」
「とにかく私達は、若いころに頑張って大きな町に移住できるほどお金を貯めたのは正解だったよ……」

 そんな感じで、日々年寄りは愚痴を言いあっていたのだった。そして、現役で活躍する構成員達は、金を貯める事だけに執着していた。

「おい!あの依頼もうすぐ値上げするはずだから、これからは毎日ギルドに朝一で顔を出す事にしようぜ」
「そうだな!他の奴らも狙っているはずだ」

 Freedomがギルドから完全に離れたことで、ギルド構成員は町の人の為に依頼は受けておらず、値上げを待って少しでも自分達の取り分が増える事だけを考えていた。

 ギルド受付嬢も、これらの行為が普通になってきていて、依頼料の値上げがあるときはみんな憂鬱になっていた。

「ねえ、明日この依頼、値上げになるわよ?」
「えええ!最悪じゃん……」
「やったぁ!明日は休日だ!」
「あんたいいわね……」
「みんな明日は頑張ってね」
「ったく、あんたって人は!」
「でも、この間は、あんた休みだったじゃない」
「それはそうだけど……」
「あの時は、値上げ依頼3つもあったからすごかったんだよ!」
「でも、こんなこともうしたくないよ……ギルド受付嬢って、もっと華やかで良い男が見つけれる職業じゃなかったの?」
「今はそんなの夢物語よ!それよりあんた。ここを辞めるそうね?」
「うん……みんなには悪いけど、あたしはギルドに先が無いと思うわ」
「じゃあ、これからどうすんのよ!」
「あたしは、また一から頑張る事にするわ。まあ、蓄えも出来たことだしね」

 このように、ギルド受付嬢や冒険者達はもう他人を構っている状況ではなくなっていた。冒険者達も少しでも高い依頼料をこなす事で、グランパス王国から出ようとしていたのである。新天地、ようはFreedom国領の町に移住する為、何があってもいいようにお金を貯めていたのである。
 そして、この受付嬢のようにお金を貯めた人間は、グランパス王国から逃げるように出国していったのだった。

 もう現役を引退した者達は、王国の滅亡を望んでいる者も少なからずいたのである。王国が滅亡すれば、聖教国や帝国のようにFreedom国に吸収合併されて、生活の保障が受けられると思っていたからだ。

 こういう情況下では国がまともに動く事は出来ず、王国領のギルドも又生産性が上がるわけがなく、支部のギルドマスターや上層部も又、前のような情況になるのはしょうがなかったのだ。

 ギルドマスター達は、王国のギルドを任されているとはいえ、国がこういう状況ではどうしようもないと思っていた。だから、依頼料をなんとか釣りあげたり、消耗品も入荷が厳しいといいギリギリ払えるであろう高値で販売し、その売り上げの一部を横領し私腹を肥やしていた。

「どうすればよいのだ?」
「本部からいきなり連絡など何故来たのだ?」
「わしにもわからん……だが、報告せねば怪しまれるがどうすればいいか?」
「わしは知らんぞ?今更報告と言われても、どうしようもない状況なのは、お主も分かるであろう!」
「わしは、もうすぐこの国を去る身だからな!勝手にしてくれてかまわんよ」
「な、なんじゃと!そんな事が許されると思うのか……」
「許されるも何も、もうこの国は終わりなのはお主達も分かるであろう?」
「「「「「そ、それは……」」」」」
「わしからすれば、そんな沈み行く船に乗っていく方がどうかしているよ!」

 ギルド上層部でも、責任の擦り合いは続き、どうしようもない情況になっていた。先見の目がある、上層部の人間は、横領でも何でも構わず貯金をして逃げ出すタイミングを計っていた。
 この意見を聞いた他の権力者は、この時からなりふり構わず権力を暴走し始めたのである。本部への報告は、少し苦しい情況にはあるが、何の問題もないと報告したのである。
 そして、権力者達は自分達が助かる為に、更に私腹を肥やし始めたのだ。これには、受付嬢や職員達にシワ寄せがいく事になる。人件費の削減という愚かな行為だった。
 ギルド職員はこれには猛反発したが、ギルドマスターは一言言っただけで、職員達を押さえつけたのだった。

「「「「ギルドマスター!どういう事ですか⁉」」」」」
「どうもこうもあるか!お前達が不甲斐ないからこうなったのが分からんのか?」
「しかし!」
「しかしも、かかしもあるか!ギルドがこういう状況になったのは、国のせいでもあるが、この状況を何とかするにはお前達の人件費を削るしかもう手立てがないのはしょうがないであろう!」
「だからって!」
「わしも同じく給料削減になったんだ!これ以上文句言うのなら、辞めてもらって結構だ!その分、人件費が浮くことになるんだからな!」

 ギルド職員達は、今この状況下で首を切られると本当ににっちもさっちも行かなくなると思い、押し黙るしかなかったのだ。 
 ギルドマスター達、幹部は心の中でほくそ笑んだ。従業員達の給料を幹部達で山分けをするだけで、ドンドン資産が増えていくからである。
 そして、半年もすれば十分な資産が貯まるであろうと計画を立てたのである。その半年の間、本部には嘘の報告をし誤魔化し続けて、やり過ごせばいいと幹部達は思っていた。
 



 そして、ギルド本部ではそんなことが起こっているとは思ってもいなかったのだ。各町のギルド支部の報告書によれば、苦しいながらもなんとか経営は続けて行けるとしか書いていなかったのだ。

「ギルドマスター、本当にこれを信じてもよろしいのでしょうか?」

「アーチェは、何か不審な事でもあるのか?各支部のギルドマスターの報告書には、何とやれているとあるではないか?」

「ですが……」

「確かに、王国は衰退しているが、各支部の人間が全員なんとかやれると全員が書いておるのだぞ?もし、危なかったらこんなに各町の意見が揃うと思うのか?」

「た、確かに……」

 ギルドマスター達はこの報告書を見て、王国領の各支部は危ないながらも頑張ってくれていると判断を下したのである。 そして、その半年後それは間違いであり、アーチェが持った不信感を信じるべきだったと、ギルド本部では騒然とすることになるのだった。



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