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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

78話 ガーデニング

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 ケンジはそっとその場を離れることにした。ティアナとフィアナは、ガーデニングのゴッズが出たことを泣いて喜んでいたので、ケンジがいた事に気づいていなかったのだ。

「お姉ちゃんやったね!」

「うん、これもフィアナのおかげだよ」

「何言ってのよ。パワースクロールを出したのは、お姉ちゃんが頑張ったからだよ」

「うんん……あたし一人じゃ、ご主人様の朝の目覚めの仕事を降ろされた時、フィアナが支えてくれなきゃどうなっていたか……」

「それはわたしも一緒だよ……」

「だけど、これで二人そろって、ご主人様の役に立つことが出来るわ!」

「だね……」

 ティアナ達は、ケンジの起床の仕事が他の者に変えられてから、自分達の役目はガーデニングと農業の仕事だと割り切り、薬草を栽培できるようになると気合を入れて、一年以上ゴッドオーダーを頑張って来た。
 その頑張りがやっと今日叶って、パワースクロールのゴッズが出たのである。これでようやくスタート地点に立てたことになるが、本当に2人は嬉しかったのだ。

 二人は、ケンジの書斎に行き、ケンジに笑顔でパワースクロールの事を報告した。

「ご主人様!よろしいですか?」

 二人はあまりに嬉しくて、ケンジが許可を出す前に扉を開いてしまった。

「何ですか貴方達は!」

 勢いよく部屋に入った二人は、秘書のシャイアに怒られてしまった。ケンジは事情を知っていた為、シャイアをなだめたのだった。

「まあまあ、シャイアさん。二人も悪気があった訳ないんだし、そんな怒らなくてもいいじゃないか」

「ケンジ様はいつも優しすぎるのです!もっと奴隷達には厳しく接してもよろしいのでは?」

「まあ、そんな事言うなよ。俺は、そんなギスギスした関係は望んでないからいいじゃないか」

「ったく……ケンジ様だから許されたことに二人とも感謝しなさい!」

「「はい……申し訳ございません……」」

「で?二人とも何かあったのか?」

「「はい!ご主人様これを見てください!」」

 ティアナとフィアナは、笑顔でパワースクロールガーデニング200をケンジに差し出した。

「おお!二人ともよくやったな!」

「「えへへ」」

 ケンジは、ティアナとフィアナの頭を、ガシガシ撫でたのだった。シャイアは、そのパワースクロールを見て驚愕し、切れ長の目を見開いたのだった。

「何ですか⁉このパワースクロールは!」

「シャイアさんは、まだ知らなかったのか?」

「200って何ですか?こんなの見た事も聞いた事もないですよ!」

「二人は、このパワースクロールを手に入れる為に、ずっと頑張っていたからな。ホント頭が下がるよ」

 ティアナとフィアナは、ケンジに褒められて顔を赤らめた。

「これからがスタートだぞ?二人とも期待しているからがんばれよ!」

「「はい!」」

「ちょっと待ってください!ケンジ様は、まさかこのスクロールを二人に使わせるおつもりですか?」

「「えっ⁉」」

「はぁあ?シャイアさんは何を言ってんだ?そんなの当り前じゃないか!」

「ケンジ様こそ、何を言っているのですか?こんな世紀の大発見を、よりにも奴隷達に使用させる方がおかしいですよ!」

「いやいや……お前こそ何を言ってんだよ!このスクロールは、2人がこの一年頑張って、ようやく出したんだぞ?二人が使うのは当たり前だろ?」

「何を言っているのですか?このスクロールはFreedom国の宝ですよ。普通は国宝として宝物庫に……」

「お前は、馬鹿だなあ!」

「なっ⁉」

「これは二人が出したものだ!国宝とか関係ないよ」

「ですが、奴隷が出しだものは、主人であるケンジ様のモノではありませんか?」

「そんな古臭いルールは忘れろ!このスクロールは、二人が使って初めて役に立つアイテムだ!」

「でしたら、普通は奴隷じゃなくて一般国民が使い、役に立てるのでは?」

「だから、言っているだろ?これは二人が出したものだって!そんな横取りするような発想は駄目だ!」

 ケンジはスクロールを手に取り、ティアナとフィアナに返したのだった。

「ほら、二人とも今すぐこのスクロールを使用しろ!」

「「はい!」」

「なっ⁉二人とも待ちなさい!」

 シャイアが、言い切る前に2人はスクロールを使用してしまったのだった。

「あ~~~~!なんてことを!」

「シャイア、二人を咎めるなよ?」

「何でですか?奴隷の立場で、あんな強引に国宝を使用してしまって!」

「いいか?二人にはこれから重要な任務が与えられるんだ?」

「重要な任務って何ですか?」

 シャイアは、二人を睨みつけながら、ケンジの話を聞いたのだった。

「これから二人は、ガーデニングのスキルを上げて行かないといけない」

「そんなの当り前じゃないですか!200のスクロールなんてものを勝手に使用したのですよ」

「勝手じゃない!ご主人様が使用せよと言ったもん!」
「そうです……わたし達は、この一年このスクロールを出そうと頑張ってきました」

「だからって、取られない様に急いで使用したではありませんか?使用するにしても、会議で決めてから!」

「シャイアさん……よく聞くんだ。これは、二人が出したものであり、ガーデニングでこれから俺の為に役立ってくれるんだよ」

「奴隷が、主人の役に立つのは当たり前です!そうじゃなくて、国宝級のアイテムを取られない様にしたことを、私は言っているのです!」

「あのなあ……2人から、スクロールを取ろうとしていたのはお前じゃないか?」

「何で私が!」

「俺が、ティアナとフィアナに使用しろと言ったんだぞ?何の不満があるんだよ?」

「それは、普通に考えて奴隷に……」

「大体だな、奴隷奴隷と言っているが、今の奴隷の立場は違ってきているじゃないか?前のように、主人に搾取されるような存在じゃないだろ?」

「そ、それは……」

「それに、こいつらが頑張れば、Freedom国に新たな産業が生まれるはずなんだぞ?」

「新たな産業?」

「ああ!薬草の栽培だよ」

「薬草を栽培?何を馬鹿な事を!」

「なんで、馬鹿な事なんだよ?」

「薬草なんて、草木のエキスパートであるエルフでも無理なのですよ?それは一番メジャーな癒し草でもです!」

「それは今までの話だろ?」

「ですが!」

「シャイアさん、あんたはエルフの国にいた時に、ガーデニングのスキルで120.00以上のスキルを持った、エルフを見たことがあったのか?」

「そんな無いに決まっているではないですか。世間では、レジェンダリーが最高値だとされているのですよ?」

「だったら、今この段階で草木を育てるスキルが、レジェンダリー以上になった2人に、新たな能力が備わったと思うのが普通じゃないか?」

「それが、癒し草の栽培と言うのですか?」

「馬鹿な!そんなわけないだろ?」

「はっ?言っていることがめちゃくちゃじゃないですか?」

「馬鹿はお前だよ!何でスキルが200.00になる可能性があるのに、一番メジャーな癒し草なんだよ。この二人には、月光草や雷電花などレアな薬草の栽培をしてもらうんだよ」

「そんなバカなことが出来る訳ないでしょ」

「何で出来ないと言い切る?このFreedom国で、今までなかったような事が出来て、それを見てきたんじゃないのか?」

「そ、それは……」

「いいか?それらの薬草が、栽培出来たらどうなるか考えて見なよ?」

「あっ……」

「さっきのスクロールを、国宝だと言って宝物庫に入れても何の役にも立たないんだ!それより、二人がこの一年必死で目標を見据えて頑張って来た事を、応援してやらないでどうするんだよ」

「……」

 ケンジの言葉に、シャイアは黙ってしまった。どうしても奴隷に、あんな宝を使用させたことが納得いっていない様子だった。

「ったく……この国もまだまだだな……」

「何を言って……」

「まあ、いい!ティアナとフィアナよく頑張った!だが、これからがホントの勝負だ。頑張ってくれよ!」

「はい!あたし頑張ります!」
「わたしも、頑張る……必ずレア薬草を栽培します」

 ティアナとフィアナは、ケンジに頭を下げて書斎から出て行ったのだった。そして、この事はFreedomに広まり、ギルやシスティナ達家族から称賛された。
 Freedomの中で、スキルの上限が200なのは、ケンジとイチカ達アンドロイド以外には、この二人が初だった。

 この功績は、奴隷仲間達には絶大な信用と信頼がでて、筆頭奴隷のギルの次に権力を持つことになった。しかし、二人からしたら権力などどうでもよく、早くスキルを伸ばし、ケンジの役に立つ事の方が重要だったからだ。

 そして、Freedomの中では奴隷達が、今まで以上にゴッドオーダーを頑張っていたのは、言うまでもなかった。



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