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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

71話 殺人事件

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 ケンジは、至急ムシュダルクに連絡を入れて衛兵と学校の校長に、Freedom本部の会議室に呼び出す事にした。

「ケンジ様、いきなりどうしたのですか?」

 ケンジは目をつむり、会議室にみんなが揃うまで静かに待っていた。ケンジはムシュダルクに、みんなが揃ってから説明するとだけいい、幹部達で衛兵や校長を待っていた。

 その間、ムシュダルク達は異様な緊張感で押しつぶされそうになっていた。

「なあ、ケンジ様どうしたんだ?」
「わしにもよくわからん……」
「いきなり校長と衛兵を呼べと言われて……」
「あの件ではないのか?」
「あの件って?」
「学校の生徒が不登校になったとかなんとか?」
「なんだと?私はそんな話聞いていないぞ?」

 ムシュダルク達、国の内政を担っている者達は小声で話していた。しかし、ケンジはそれに反応せず、ずっと黙って校長達を待っていた。
 そして、ようやく報告書を上げてきたランスロットをはじめ、衛兵達と学校関係者達が会議室に到着した。

「急に呼び出して悪かったな。みんな席についてくれ?」

 ケンジの言葉は、緊張感が漂っていてランスロットはそれにすぐ感づいていた。

「ケンジ様、今日はどのような事で?」

「校長達学校関係者に聞きたい。不登校になった生徒の事だ!」

「不登校ですか?」

「ああ、昨日俺の所に報告書が上がって来た。何でも3ヶ月前の事だったよ」

「ああ!確かにそんなことがあったと、現場の教師から報告があったような……」

「俺は貴方達生徒に近い存在として、くれぐれもよろしく頼むと言って任せたと思うが、不登校?の事をなぜその時に言ってこない?」

「な、何を怒って……」

「不登校ならまだよかったが、衛兵の報告書にはその不登校になった生徒の家族が、行方不明となっているじゃないか?これは一体どういうことだ?」

 なぜ、そういう事になっているのか、校長達も訳が分からなかった。確かに、不登校の生徒の家に家庭訪問を行っていたが、誰もいなくてその周りの人間にも聞いたが、誰も所在を知らないと言うので、衛兵に通報したに過ぎなかった。
 衛兵達の方でも、この世界ではいきなり誘拐される事があるので、普通の事件として処理をしていた。
 教師達も、暇を見つけては家庭訪問をしていたが、それだけであって、それ以上の事をしていなかったのだ。つまり、連携が全然取れていなくて学校では不登校、衛兵では行方不明の事で別物として処理をされて今に至っていた。

 ケンジは、頭を抱えてため息しか出なかったのだ。

「ケンジ様、不登校の生徒がどうかしたのですか?」

「ムシュダルクさん……俺は、その生徒と両親はもうこの世にいないかもしれないと思っているんだよ……そして、よくても奴隷に落とされていると思っている」

「はぁあ⁉」

「校長、あなたにはあの生徒の事は気を配っていてくれと言ったはずだぞ?確かに、俺も1週間で見張りを解いた事は不覚に思うが、何故?あの生徒が不登校になったのなら気を使わないんだ?」

「どういう事ですか?」

「今は、まだ生徒の数もそんなにも多くはないんだろ?不登校になった生徒の名前くらい気にしても良くはないか?なぜ、そんなに無関心なんだ?」

 校長は、何で自分を責めているのか分からずアタフタしていた。

「まだ、分からないのか?不登校になったのはマリちゃんだよ!」

「はっ?」

「せっかく、問題が解決したのにあのマリちゃんが不登校になるはずがないだろ?なぜ、あなたは不登校になった生徒の確認を怠ったのだ?」

「ま、まさか?あの子供が……不登校になったのがあの子だとは……」

「それと、ランスロット!」

「な、なんでしょうか……」

「お前は、部下に誘拐事件をそんな軽く見させているのか?」

「そ、そんなことは……」

「だったらなぜ、報告書が3ヶ月も遅れて俺に挙がってくるんだ!城壁の補習や物資の補給より、事件性のある方を先にあげてくるのが普通だろ!」

 ケンジの怒りが爆発したのだった。滅多に怒鳴る事がなかったケンジに、その場にいた人間全てが凍りついたのである。

 そして、ケンジはマリの担任を睨んだのだった。

「君が、マリちゃんの担任だな?なぜ、校長に報告しなかった?君は誰が、不登校になったのか分かっていたはずだが違うか?」

「申し訳ございません!」

 担任である教師は、顔が真っ青になりただ謝罪を繰り返していた。

「俺に謝罪をしても事態は変わらない!ちゃんと説明をするんだ。なぜ、報告をしなかった?」

「申し訳ございません!」

「おい、マスト!ケンジ様の言う事を聞くんだ!何を謝ってばかりいるんだ?」

 校長は、担任のマストを叱った。しかし、マストは謝罪を繰り返すだけで話にならなかった。

「マストと言ったな?じゃあ、聞き方を変える。お前は今回の事でなにをやった?なにと交換条件をだしたのだ?」

 ケンジに、核心を突かれたマストは更に顔を青白くなり、がくがくと震え出したのだった。

「ケンジ様、お許しください!何も言えないのです……申し訳ございません!」

 そう言ったとたん、マストは立ち上がり会議室から逃走したのだった。

「ま、待て!今出ていくんじゃない!」

 マストは必死の形相で、この場所から逃走し町へと逃げていった。ケンジはすぐに、マストを追う様に指示を出したが、必死に逃げようとしたマストは信じられない程早く逃げたのだった。

 そして、マストがFreedom国の内壁を出た瞬間大通りを逃走していた時、いきなり呻き声を上げて倒れたのだった。
 周りでいた人間は、いきなり倒れた人間にどうしたのかと思い、近づき肩を揺すり声をかけたのだった。

「どうした?あんた大丈夫かい?」
「何だ?どうしたどうした?」
「いやねえ、いきなりこの人が走ってって足がもつれたみたいで倒れたんだよ?」
「なんだ?兄ちゃんもっと落ち着かないと怪我をするぜ?」

 周りの人が、心配で覗き込むとマストは瞳孔が開き息をしていなかった。それに気づいた人達は、後づ去りしてパニックになった。

「し、死、死、死んでる!」
「きゃああああああ!」
「わ、私は何もしてないよ!いきなりこの人が倒れたんだ……」
「「「「「どうした?どうした?」」」」

 その場はパニックに陥り騒然となっていた。そして、そこにランスロット達がマストが倒れていた現場に辿り着いたのである。

「こ、これはいったい……衛兵さん!聞いておくれ!私は何もしてない!」

「どういう事だ?」

 その女性は、今起こった事を丁寧に説明したのである。そして、周りにいた人間もその女性に気を使いそのように証言をした。しかし、ランスロットはその証言をこの場ですぐに信じる訳にはいかなかった。
 会議室での、マストの取り乱しようと、そして内壁を出た瞬間に死亡してしまったのである。どう考えても口封じされたと考えてよかったからだ。

 そこに、ケンジもやって来たことで、周りは騒然とした。町の人間がその場に土下座し出したのである。

「みんな、土下座などしなくていい!ちょっと聞きたいのだが、ここで何が起こった?詳しく状況を説明をしてくれないか?」

 すると、マストを救護した女性が震え出し説明をし出した。

「ケ、ケンジ様……わたしは何もやっていません!ただ、その男性がわたしの前から、必死の形相で走って来たんです。すると足を縺れさせて転んだから、心配になって駆け寄っただけなんです!」

 女性は、自分の無実を必死で、ケンジに訴えかけたのだった。

「そんなに焦らなくていいから、何も貴方が犯人だと思っていないから大丈夫だよ」

 ケンジは女性を落ち着かせる為に、笑顔で対応したのである。すると周りからも同じように説明があった。

「主殿!これはどういう事でしょうか?」

「分からん……けど……ここで言ってもしょうがない!マストの死体を運んでくれ」

「はっ!」

 ランスロット達は、マストの死体を屋敷の方に運び、ギル達斥侯部隊にマストの家族の護衛の指示を出した。そして、ツバキ達アラクネ部隊には、フリーの町の警護をさせ怪しい人間の確保を命令した。

 この地点で、ケンジ達はマリの事件性から、バンチェス達元貴族を疑っていたが、証拠が何もないのを歯がゆく思っていた。

 証言した女性達には、丁寧にお礼を言うとホッとした表情となり、ドッと疲れが出ていたようだった。この女性がここまで精神的に疲れていたのは、自分が平民だったことにある。
 今までなら、こういう場合冤罪を擦り付けられる事が殆どだからである。他国なら、99%責任を取らされ奴隷へと落とされていたであろう。それほどまでに、この世界の治安は悪くてどうしようもないのである。

(まさか……10年経ち、闇ギルドが不可侵条約を破棄してきたのか?)

 ケンジは、心の中でそう思った。だからこそ、ツバキ達に町の警護をあたらせて、フリーの町に闇ギルドのアジトが出来ていないのか探らせたのだった。

 ギル達は、マストの家族の所に行き、家を訪問したが誰も出てくる気配がなかった。ギルは何かおかしいと思い、すぐに衛兵に通報し家宅捜索を依頼した。周りにいた人たちは、朝に挨拶をしてから見てないと言うだけだった。

 衛兵が到着して、家の中に侵入したらそこは見るに堪えない惨状だった。マストの奥さんであろう女性は、ソファーに座り何もなかったように、胸を一撃で刺され絶命しており、子供も泣き叫んだ様子が無く絶命していた。

 本当に、血まみれでなかった場合、日常の風景を切り出したような光景がそこにあった。

 ギルは、衛兵達に死体をケンジの屋敷に運ぶように指示を出した。そして、イチカ達は部下にそう指示を出しタンカで死体を運ぶのだった。

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