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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

60話 鳳凰騎士団に……

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 ケンジとヴァンデインは、無言でお互いの目を見つめ合っていた。ケンジとしては、テンプルナイトの実力は認めていたが、Freedom国の為に動く事はしないと思い、鳳凰騎士団に入隊しても厄介事が増えるだけだと思い断りたかったのだ。
 それに、何をおもっていたのかヴァンデインは鳳凰騎士団に入隊出来たら、自分が団長になれると思っていたのである。これには本当にケンジは驚いた。確かに団長は、その騎士団で一番の実力者になるのが、セオリーな所はあるが、いきなりその部隊に入った人間が、団長になれるはずがないのに、今までテンプルナイトの看板を背負っていた事で、ヴァンデインは自分の実力が世の中で一番だと思いこんでいたようだ。

「ヴァンデインさん、こうやって睨みあっていても何も変わりませんよ?」

「それは分かっているが、女神様を追って聖教国を出てきたんだ!そう簡単にはい、そうですかと引き下がるわけにはいかんのだ!」

「引き下がるわけにはいかん!と、言われてもこっちが困るよ。騎士団に入りたいのなら、今までの栄光は全部捨て女神様の為ではなく、Freedom国民の為に動いてもらう事になるよ」

「そんなバカな‼我々は、女神様の騎士であり女神様の祝福を受けた騎士団なんだ!」

「今までの栄光を捨ててと言っているんだよ。女神様への信仰は、持っていてくれても構わないよ。ただ、守る対象がFreedom国民に変えてくれと言っているんだよ」

「女神様の為に我らは存在しているから、女神様の為に戦う存在として、Freedom国民を守ると誓おう!」

「それなら、君達は鳳凰騎士団にはいらない!Freedom国は聖教国じゃないからね。信者を増やすつもりもないし、人々を導くような事しない。あくまでも、国民達は自由に楽しく生活しやすい国をめざすだけだからな」

「馬鹿な!女神様の恩恵があって、人々は幸せに暮らせるのでしょう!」

「確かに、この世界は女神様のおかげで、資材や食糧の恵みを頂けている」

「そうですよね。だからこそ人々を導き、女神様の偉大を教えを広めねばいけないのです!」

「それは、個人でやってくれたらいいよ!わざわざ、Freedom国がやる必要はない!もし、それをやりたいというのなら、君達はやはり聖教国にもどったほうがいい」

「だから……」

「そして、もう一つ!聖教国に戻ることが出来ないからと言って、その役目をFreedom国に押し付けんな!」

「うぐっ……」

「いいかい?君達のやりたい事を否定はしないが、他人に押してけないでほしい!聖教国に帰れないかといって、それをFreedomにやって貰おうというのは虫が良い話だと思わないか?Freedom国は、そういった理念で出来上がった国じゃないんだよ?」

「ですが、聖教国の信者は、ケンジ様と女神クローティア様が友人関係にあるという事で、この国に集結しております!立派な聖教国ではありませんか?」

「その信者達は、個人的に毎朝のお祈りをやっているだけだ!国としてそれを止める事はしないし、勝手にやってくれたらいい!しかし、聖教国のように、女神生誕祭やその他の行事をやるつもりはないよ。もしやるならそれも個人でやってくれたらいい!」

「そ、そんな!」

「そして、そういった国民達を守るのが、鳳凰騎士団達の役目なんだ!今まで、君達テンプルナイトは極級ダンジョンの魔物を討伐してたと思うが、それは何の役目なんだ?」

「それは、女神様の恩恵溢れる地上の世界を守る為です。そして、信者達が幸せになるため、魔物を排除していました」

「ここFreedom国では、そんなことは考えなくてもいいんだよ?国民達が、自由に楽しく生活できればいいんだ。魔物も食材の一つであって、地上の世界を守るなんてだいそれた理由なんていらないんだ!」

「ならば、なぜケンジ様は聖教国を、ギルドから救ってくれたのですか?聖教国の考えが、正しいと思ってくれたからではないのですか?」

「違うよ!俺は、ギルドの権力者や貴族達が嫌いだったからだよ。俺は、俺の考えで動いてたにすぎないよ!その結果、聖教国が助かったにすぎない」

「そ、そんな!」

「実際、今のFreedomがどのように行動している事でよくわかると思うが、ヴァンデインさんはワザとそれを見ないようにしているのか?」

「見ないように?」

「俺は国民ファーストで動いているつもりだよ?」

「どういう事で?」

「もし、聖教国が国民に必要なら、信者や信者じゃない人達は聖教国に滞在し、Freedom国に移住なんかすると思うか?」

「……」

「移住するという事は、聖教国は国民達にとって必要ないという事だよ」

「そんな事は!現に聖教国にはまだ平民達が残っている……」

「だったら、君達はなぜ聖教国を出てきたんだ?今の聖教国に魅力を感じられなくなり、それをFreedomに求めたんだろ?」

「確かに、今の聖教国は強国ではなくなり人口が減っています!しかし、聖教国の存在は必要だと思っています!」

「だからといって、それをFreedomに求められても困るんだよ」

「ですが!」

「いいかい?もう一度言うぞ?ヴァンデインさんはワザと目をそらしているのか?」

「どういう……」

「俺は国民ファーストで動いているんだよ!国民が必要というのなら聖教国の存続に協力もしよう!だが、今この現状で、聖教国は国民に愛想を尽かされ、Freedom国を選んだという事なんだよ!」

「あ……」

「つまり、聖教国はいらないと俺は判断したからこそ、他国の事としてなにもしていないし、そんな事をしている暇があるなら、この国を選んだ国民達の期待に応える方が大事なんだよ」

「……」

「もし、君達が聖教国に帰れないというのなら、この国の住人になるのは自由だし、それを止める事はしない。しかし、鳳凰騎士団に入隊したいのなら一般枠の募集を受けて、みんなと同じ条件で入隊してくれ!その際には、テンプルナイトという経歴や考え方は一切必要ないよ!Freedom国民を守るために頑張ってもらう!」

 ケンジは、ヴァンデイン達に自分の考えを説明し、ヴァンデイン達の今までの考え方はいらないと言い、テンプルナイトの実力だけを見ると言ったのだった。

「では、鳳凰騎士団に受からなかったテンプルナイト達は?」

「それは実力不足として、何かしらの職業に就かないと生活はできないんじゃないのか?」

「そ、そんな!」

「まあ、そんな悲観することは無いさ!テンプルナイトの兵卒なら冒険者でも食べていけるだろ?この国にも、独自のギルドが存在するから、食いっぱくれになることはないよ」

「テンプルナイトが冒険者にだと……そんなことが!」

 ケンジの言葉に、ヴァンデインは怒りで拳が震えた。

「いいか?そんな薄っぺらいプライドなんか必要ないんだ」

「薄っぺらいプライドだと!なぜ、女神様に仕える気持ちが、薄っぺらいプライドなんだ!」

「何がプライドだ!そんなに人生背負っているようなプライドならなぜ最後まで貫けない!聖教国は、もうだめだと思ってFreedom国を頼って来たんだろ?」

「うっ!」

「それに、鳳凰騎士団の試験に受ける前から、落ちた時の心配するんじゃねえよ!死に物狂いで受かる様に頑張ったらどうなんだ!」

 ケンジの言葉に、ヴァンデイン達は何も言えなかった。

「でっ?ヴァンデインさんはどうすんの?このまま何も言えず尻尾を巻いて聖教国に帰るかい?それとも、Freedom国民となり一から出直すかい?」

「むぐぐぐ!」

「俺は、テンプルナイトだったからと言って、実力があるとは思っていないからえこ贔屓はしないよ。それがヴァンデインさんの人生だ!悔いの無いよう頑張ってくれ!」

「わかった!あんたの言う様にテンプルナイト全員、鳳凰騎士団の試験に受かってみせる!」

「わかった!俺としては、聖教国に戻ることをお勧めするが頑張ってくれ!しかし、言っておくが落ちたからと言って、俺は援助をするつもりはないからな?最初からあてにすんなよ!」

「誰があてになんかするか!いいか?覚悟しておけ!鳳凰騎士団に入隊し、誰が一番の実力か思い知らせてやる!そして、テンプルナイトとして成りあがり、この国で必要な団長になってやる!」

 ヴァンデインは、ケンジに宣戦布告のような事を言い、ケンジを見返すつもりでいいきったのである。


 しかし、鳳凰騎士団の試験に受かったのは、全体の3分の1程だった。その中でも、ヴァンデインはさすがといったところで、2軍に勝てそうだったが最後の所で1本を取られてしまった。
 隊長クラスの人間は3軍の兵卒からスタートで、ヴァンデインは3軍の隊長クラスとなった。残りの落ちた、部下達は、もっと実力をつけてからじゃないと、とてもじゃないが役に立ちそうになかったので、冒険者となりもっとレベルを上げてから、もう一度受けてほしいという事になった。

 なぜ、そこまでテンプルナイトが弱いかというと、単にレベルが足りないという事と、テンプルナイトの実力が発揮するのは、対人戦ではなく対魔物戦だからである。
 
「貴方達は、もっと対魔物戦で実力をつけてから、試験を受け直してほしい。以上だ!」

 その言葉を聞き、テンプルナイト達はがっくりと肩を落として試験会場を後にした。

 ヴァンデイン達は、受からなかった人間が出た時、文句を言うつもりで息巻いていたが、鳳凰騎士団の2軍の兵卒に負けてしまい実力をまのあたりにしてしまい、何の反論も出来なかった。

 自分達の実力は、女神の加護で極級ダンジョンにも潜れていたはずなのに、こうも簡単にやられてしまった事に落ち込んでしまっていたのである。
 2軍の兵卒ですら、あの実力だと知り1軍とはどんな強さであり、その中で頂点に立つランスロットの実力はどれほどのものなのか?ヴァンデイン達には想像すらできなかった。
 そして、最後にランスロットが試験に受かった人間に対して、一言いった言葉に愕然となった。

「君達は本当に実力を持った人間だと思う!だが世の中にはまだまだ実力の持った人間はいるので、頭に乗らずこれから精進してくれ!」

 その言葉を聞き、冒険者だったであろう人間がそれは団長の事ですか?と聞いたのだった。

「いいや?私の主だよ!私など、ケンジ様の足元にも及ばんよ……」

 それを聞いた、試験の合格者は顔を青くしたのだった。

「ば、馬鹿な事を!ケンジ様といえば、生産者だったはずだ!」

 思わず、ランスロットの言葉を否定して怒鳴ってしまった人間が何人かいて、その中にはヴァンデインもいた。

「信じられないのも無理はないか……だが、自分の杓子定規で測っていたらとんでもないしっぺ返しが、帰ってくるから気を付けるようにな!」

「それは団長が、奴隷という身分だからですよね?」

「そう思うなら、そう思ってもらっても構わんよ!だが、そんな考え方では絶対にお前達は強くはなれんと言っておこう!」

 ヴァンデイン達は、自分が負けた相手は2軍の兵卒だった。その上司である、この軍隊のトップが足元にも及ばないと言った相手が、生産者であるケンジだと宣言したのだ。試験に受かった人間は、全て2軍にもなれなかった。そんな中での、ランスロットの言葉は信じられないものであった。


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