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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

51話 モデル

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 ムシュダルクは、ケンジの言葉に驚愕するしかなかった。ケンジは国のトップより、生産者であり商人の方が性に合っていたからだ。

「ケンジ様は、どこからそんな考えが?」

「まあ、前の記憶があるしな。それに、商品を売る相手はこのガイアースでは高い商品を金持ちにと思っている節があるだろ?」

「そりゃ、お金を持っている貴族に売る方が利益が上がりますからね」

「実は、そうではなくて売る相手にあわせてターゲットは女性か子供かオタク!この3人にターゲットを絞るのが良いんだよ」

「はっ⁉女性や子供?それにオタクって何ですか?」

「オタクというのは、趣味にお金を使ってくれる人の事だ!まあ、この世界に趣味というのは殆どないから、分かりやすく言えばドワーフ族なんかは酒が好きだろ?酒には高くても金を出すだろ」

「な、なるほど!ドワーフ族に幻の酒を見せたら、どんなに高くても金を出しますね」

「要は、絶対手に入れたいと思わせる商品を売ることが大切なんだよ」

「ですが、女性と子供はちょっとよくわかりません……」

「何を言ってんだよ。女性に対しては美容や化粧服や宝石を自分のご褒美と言ってお金を使ってくれるじゃないか!特にギルド受付嬢を見たら一目瞭然じゃないか。今回のファッションショーなんかは入場料は高いかもしれないが、ギルド受付嬢は花形職業で、給料も高いから多分押し寄せてくるはずだぞ」

「な、なるほど……では、子供はどういう事でしょうか?子供なんて、どう考えてもお金なんか持っていないはずですよね」

「まあ、子供の方は今はまだ売る物がないからな。これからだよ!」

 ガイアースには玩具がないから、子供相手に商売などできない。子供達は親の手伝いをするのが当たり前であり、遊びという概念は幼少期にするかくれんぼや鬼ごっこぐらいなのだ。
 しかし、ケンジは学校という友達の輪が広がった中に、玩具という概念を広げようと思っていたのだ。今はまだ、そんなことをしても無駄なのでやることはしないが、他の町に学校が出来て、子供達の家庭にも余裕が出来てからの事を考えていた。

 ケンジは、ツバキに女性用の服や下着の新デザインを頼んでいた。これには、マイも一緒に製作していたのだ。

「ツバキ?どんな感じだ?」

「ご主人様!新デザインはマイ様と一緒に考えてこんなにいっぱいできてます」

「ちょっと作り過ぎだ!」

 そこには100種類を超える新デザインがあった。確かに定期的に開くつもりだったが、10種類づつ発表しても10回先まで出来る数の、新作がそこには出来上がっていた。

「ですが、ご主人様下着のモデルをする女性がいないですよ?」

「な、なんでだ?」

「だって、下着姿であのランウェイでしたっけ?あそこをポーズをつけて歩くのは、中々勇気がいりますよ」

「だが、観客は女性ばかりだし……」

「それでもですよ!私達魔物ならいざ知らず、ヒューマンにはそのような事はしないんじゃないんですか?私達も、人間社会で生きてきて10年経って、何となくそれが普通だってわかりますもの」

「そっか……」

 ケンジは、裁縫工房で働いている女性達に目を向けた。すると、工房で働いていた女性達はケンジの視線をさっと外し、誰もケンジを見ようとしなかったのだ。

「おいおい!誰も視線を合わせようとしないなんて酷いじゃないか!」

「ホント、今のは凄かったですね……誰もこっちを見ようとしませんでしたよ」

 ツバキはみんなを見て、苦笑いを浮かべたのだった。

「で、マリだったっか?」

「えええええ~~~~~!あたしですか⁉」

「ああ!それに今、俺の視線を外したフランソアだったっけ?お前確かエンペラーに捕まっていた人間だよな?」

「ちょ、ちょっと待ってください!わたしは無理です!下着モデルなんか……」

「なに!お前達、下着モデルをやってくれるのか?」

「「えっ⁉」」

「俺は何も言ってないだろ?お前達の方から、話を振ってくれて助かったよ!」

 ケンジは、惚けた風に話し始め、天井を見ながら乾いた笑いをした。それに焦ったのはマリとフランソワだった。

「ちょ、ちょっとご主人様!何を勝手に話を進めているのですか!私達は承諾なんか……」

 すると、周りで働いていた女性達も、マリ達をフォローしだした。

「「「「「そうですよ!」」」」」
「ご主人様、そんな嵌めるような事を!」

「嵌めるって失礼だな!確かお前はユイだったけ?俺は、何も言ってないのにそちらから話を振ったんじゃないか」

「いや……あんな話をしていて、こちらを向いたらその話だと思うじゃないですか!」

「いや、だってお前達プロポーションも良いし美人だからさ……モデルをやっても似合うと思うぞ?」

「「「「「いやです!」」」」」

「はぁぁ……どうしよう……」

「ご主人様、そんなせこい手を使うだなんて……もっと命令してもよろしいんじゃないのですか?」

「「「「「なっ!」」」」」」
「ツ、ツバキ!余計な事を言わないでよ!」

 ツバキの言う通り、ここにいるのはケンジの奴隷ばかりである!主が命令すれば逆らえる者はなく、下着のモデルをやれと一言命令すればいいのである。

「な、なるほど!そういうのもありだよな!

「ちょ、ちょっとご主人様うそですよね?そんな命令……」

 ツバキの言葉に納得して頷いていたケンジを目の前にしてマリ達裁縫士は顔を青くした。

「お前達!」

「いや!本当に命令するつもりですか?止めてほしいのですが……」

「そんなに嫌なのか?お客様も女性しか入れないんだぞ?」

「そんな好き好んで、舞台の上で下着姿になりたくないですよ!私達の下着姿を見れるのは、ご主人様だけでいいんですよ!」

 マリの言葉に、裁縫士達は力強く頷いていた。

「分かったよ……下着モデルの件は無かったことにするよ」

 ケンジの言葉に、女性達はホッと胸をなでおろしたのだった。そして、ツバキはケンジを横目で見ていた。

「ツバキ何か言いたそうだな!」

 ツバキは小さな声で一言

「弱っ!」

「何か言ったか?」

「いえ!何も言ってませんよ!」

「むぐぐぐ!」

 ケンジは、ツバキの言葉に何一つ言い返すことが出来なかったのだ。すると、ツバキの周りにキキョウ達が寄ってきて、ツバキを叱り始めたのだった。

「ちょっと、ツバキ姉さん!ご主人様になんて口の利き方をしているの?」

「だって、ご主人様ったら、もっと強気に出てもいいと思って……」

「だからって、ご主人様はわたしを蘇生してくれた命の恩人なんだよ!アラクネ族は、返しきれない程の恩をもらったんだよ?」

「それは分かっているけど、マイ様もご主人様はこの世界の常識を覚えないといけないって言ってたじゃないの!ご主人様が、奴隷の言いなりになってるって、魔物のわたしでもおかしいとおもうよ?」

「それは、私達がどうこう言うものじゃ!」

「でも、キキョウだって少しはそう思うところもあるんじゃないの?」

「もう!ツバキ姉さんは!」

「ツバキぃ~~~!ちょっといいことを考えたんだが、協力してくれるか?」

 ケンジは、ツバキ達を呼んだ。ツバキ達アラクネ達はケンジに呼ばれて少し嫌な予感ががしたが、ケンジの側に行ったのだった。

「ご主人様!いい案ってなんですか?」

「キキョウやサクラ達も聞いてくれ!」

「「「「はい!」」」」

「お前達って人化できるよな?」

「「「「「えっ⁉」」」」」

「まさか、ご主人様わたし達に人化させて、下着のモデルをさせようと……」

「さすが、ツバキだ!よく分かったな」

「ちょ、ちょっと待ってください!何で私達が!」

「だって、お前達魔物の私達なら、いざ知らずって言ったじゃないか!だったら、下着姿ならOKって事じゃないのか?」

「いやいやいや!私達も、もう人間社会にどっぷりつかっていて、こうして上半身は服や下着を着ているじゃないですか!」

「でも、下半身は何も履いてないだろ?」

「そういう問題じゃありません!」

「なんだよ!他の人には厳しく自分には甘いのかよ……」

「ったく……ご主人様はこういえばああいうんだから!」

「ああ!そういう事言うんだ?だったら、テイマースキルで言う事聞かせちゃおうかな!」

「ちょっと、ご主人様嘘ですよね?私達は関係ないじゃないですか?言ったのは、ツバキ姉さんだけであって、私達には関係ないじゃ……」

「だって、キキョウ言ったじゃないか?自分達アラクネは、俺に返せない程の恩を受けたって!」

「それは言いましたが、私達はこうして裁縫で恩を返していこうと……」

 キキョウの言葉に、サクラやガーベラやナデシコ達は、勢いよく首を振っていたのだった。

「しょうがないか……だったら、ツバキだけでも!」

「ちょ、ちょっと待ってください!私はプロポーションに自信がありません!キキョウの方がスタイルはよくて!」

「ちょっと、ツバキ姉さん!わたしを巻き込むのは卑怯よ!ツバキ姉さんは、マリ達に命令したらいいと言ったんだから責任を持つべきよ!」

「でも、キキョウ達も私に、ご主人様に恩を受けたからっていう事聞かないといけないって、わたしに注意したじゃないの?だったら、キキョウ達もご主人様のお願いは聞かないと!」

「姉さんズルい!そんないいかたしなくても……」

 ツバキ達は、やはり人前で下着姿になるのは、やはりいやみたいで責任を擦り合っていた。これを、面白そうな顔をしてケンジは笑っていたのだ。
 キキョウ達は、ケンジの声が聞こえてこないのを変に思い、ケンジに視線を送ったらニヤニヤしていたのだった。

「「「「「あぁぁ~~~~~!ご主人様騙したわね!」」」」」

「いや、悪ぃ悪ぃ……お前達がなんか面白くて見入ってしまったよ」

「「「「「ご主人様って、時々意地わるいんですね……」」」」」

「しかし、困ったなあ……本気でモデルがいないじゃん……」

 それを、横目で見ていたマイは、フッとため息をついていたのだった。


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