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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

38話 葛藤

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 ケンジは、キース王と聖女アリサの言葉に賛同した様な事を突然言った。これにはムシュダルク達は、驚き大声を上げたのである。

「ケンジ様!いきなり何を、あの関税で街道の防御の予算がやっと組めるのですよ!」

「ああ!分かっているよ!」

「だったらなぜ?」

「キース王、聖女アリサ今のを聞いたか?街道を守るために、こうして予算を組んでいるんだ」

「それは分かりますが……あそこまで税金が高いと……」

「だから解放をしてやってもいいが、どうなっても知らないが本当にいいのか?」

「それはどういうことだ?」

「キース王よ。簡単な事だよ!関税であの街道の守りは、強固になっているのは分かっただろ?だが、その関税を両国は払いたくないと言っている!だから、街道沿いにある城壁は潰し、魔物が旅人や行商人を襲っても我が国はあずかり知らないという事だ!」

「「なっ⁉そんな!」」

「自分達であの魔の森を通り抜け、流通を勝手にしてくれたらいいよ!なら、俺達Freedomも警護の予算を組まなくてもいいし、貴方達も高い関税を払わなくてもよくなるからな」

「そんな事をされては、流通自体できなくなるでは無いか!」

「それは知らないよ!貴方達が頑張って、護衛を増やすなり工夫してくれ」

「そんなバカな!今、あの一帯はテンプルナイトですら危ない地域なのですよ!」

「そんなのは知らないよ。聖女さん、あんた達が関税を払いたくないと言ったんだぞ!」

「そんな事をしたら、Freedomも影響があるんじゃないのか?あの街道が通れないとなると、町の流通が止まるんじゃないのか?」

「キース王よ……ホント、何回も言うけど自分の立場をよく考えた方がいいよ?」

「何を言っておる!実際のところ、あの街道の城壁がなくなれば、ホープとホネストの町は行き来できなくなるではないか!」

「おあいにく様!あの街道が使えなくなった場合、Freedom国民は転移マットで行き来できるようになるだけだ」

「な、なんだと!」

「そんなの当り前じゃないか!国民はFreedom国に税金を納めているんだ。今までと変わりなく商売ができるようにしてあげないといけないだろ?街道が他国の圧力で使えなくなったんだ。Freedom国として、国民をフォローするのは当たり前じゃないか!」

「だったら、転移マットをワシらにも使わせてほしい。それなら警備はいらないし、予算も組まなくてもいいであろう!」

「お願いします!ケンジ様、聖教国もその転移マットを!」

「ホント、あんた達は自分勝手な考えを押し付けてくるんだな?」

「どういう事ですか?」

「転移マットは、超級ダンジョンのボスから出る魔道具なんだぞ?言ってみたらアーティファクトだ!そんなアイテムを、他国にタダで使わせるわけないだろ?」

「それでは支店から、Freedom店に招くのはタダではないのか?」

「あれは、お客様が買い物をしてくれているだろうが!ちゃんと、お客様がお金を使って販売させて頂いている!」

「ゥぐ……」

「そんなアイテムを、他国の人間が使うのなら、今までの関税より高い値段になるのは当然だろうが!」

「それはいくらなんでも……」

「なんで、今までの関税より高くなるんですか?」

「そんなの当り前だろ?転移できるという事は安全に荷物を運べ、時間経過がなくなる事、護衛料金も安く済む事、馬の食費代もなくなる。いい事ずくめになるじゃないか?」

「むむむむ!」

「もしそれが嫌なら、関税を払わないとか言わず、今の街道を使う事をお勧めするよ」

 ケンジの提案に、キース王と聖女アリサは何も言えなくなった。そして、ムシュダルク達は安堵したのだった。

「このままだと、どうなるか分かっているのか?」

「キース王!それは脅しなのか?止めておいた方がいいぞ。貴方の父と同じ末路にはなりたくないだろう?」

「ゥぐ!」

「一つアドバイスをしてやるよ!キース王もそうだが聖女も、いつからそんな考え方になった?俺はあんた達を見直していたんだぞ?しかし、今のあんた達は……傲慢で自分勝手な事ばかりで、俺が嫌悪感を感じる貴族様そのものだよ!」

「なっ⁉」

「貴方達が、今のまま突き進むというのなら、いずれ俺は貴・方・達・を!」

 ケンジはそう言って、二人を睨みつけ言葉を止めた。その言葉に二人は震えあがったのは言うまでもなかった。だが、ケンジは二人の様子はどうでも良かった。二人についてきた側近の様子を観察していたのだ。
 やはり、元凶といえる側近の者達の顔が一瞬歪み、苦虫を噛みしめた顔になったのをケンジは見逃さなかった。

(そろそろ、こいつら自身が動くようだな……)

「いいか?どちらにしてもFreedomは、王国や聖教国が得になるような事はしないから諦めるんだな!Freedomが得になる事で、相談があるなら何時でも相談に乗るからそれだけ覚えておいてくれ!」

 ケンジは、王国と聖教国に対して足元を見るような駆け引きをした。そして、両国を負い返してしまった。



 両国を負い返して、ムシュダルク達はケンジに問い詰めたのだった。

「ケンジ様!何であんな事を言うのですか?ハラハラしましたよ!」

「何を言ってんだよ。それにあそこまで、はっきり言わないとあいつ等は理解しないよ」

「ですが……」

「それに、そろそろあいつ等が動き出しそうだぞ」

「はっ⁉何を言っているのですか?」

「国王と聖女の側近の顔を見ていなかったのか?」

「どういう事ですか?」

「最後、あいつ等苦虫をかみつぶしたような顔をしていただろう?そろそろ横領が出来ない程、困窮してきているはずだ!まず聖教国で騒ぎが起きると思うぞ」

「はああ?」

「聖女には悪いが、もう止められんよ……聖教国滅亡の序曲だな……」

「ちょっと!あなた!それが分かっていて何で放って置くのよ!」

「マイ!俺は言ってたはずだよ!他国の事には興味ないし、貴族達はもう必要が無いと!」

「だからと言って、聖女は被害者みたいなものでしょ?周りの人間に監禁されやっと自由になったら、今度は操られて聖女の人生って何なのよ!」

「聖女は人間達を導く存在だが、それを利用して利権を手に入れる権力者や貴族が悪いんだよ!」

「それは……」

「もう、俺は本当に傲慢な貴族達はいらないと思っているんだ。この考えが、傲慢だと言うのならそれは構わない!だが、あいつ等のおかげで、平民達は自分の住んでいた場所を追いやられ、国に簡単に見捨てられるんだ」

「……」

「税金を納めているのに、貴族達の横領や賄賂で自分達の私欲を満たす事をそれが当たり前だと思っている!そんな貴族達が本当に必要か?」

「だけど、貴族全員がそうじゃ……」

「そんな事わかっているよ!ムシュダルクさんみたいな、貴族様もいるのは重々承知している」

「それと聖女が、犠牲になるのは関係ないじゃない!」

「ああ!確かに関係ないよ。俺が聖教国を滅亡させると思っているが違うからな。俺は、この世界の通例にのっとり城壁内に入場したから税金を取っていただけだ」

「それはそうだけど……」

「その税金を使って。街道の城壁や守りの予算を組んでいただけだろ?その税金を横領したか?してないだろ?それなのに、その状況を飲み込めず聖教国が勝手に暴走するだけなんだよ」

「だけど、そこまで分かっているなら!」

「分かっていたら?俺にどうしろと?」

「それは……」

「何もできないのはマイも分かるだろ?だから言っているじゃないか!他国の事であって、Freedomには関係のない事だよ」

「ケンちゃん!ケンちゃんなら何とかできるんじゃないの?」

 マイは久しぶりに、ケンジの事をケンちゃんと呼んだ。これは自分の言う事を聞いてほしいという意思表示そのものだった。

「久しぶりに、その呼び方で呼んだな!」

「ケンちゃんが、気に入らないのは貴族なんでしょ?だったら、聖教国が滅亡するのを、見ていなくてもいいじゃない!」

「そうです!ケンジ様、これはいくらなんでもやり過ぎだと思います!」

「やり過ぎ?俺達、Freedomは王国は聖教国に何かやったのか?何かやってきたのは、王国と聖教国だと思うが俺の勘違いだったか?」

「そうではありません!確かに最初、厄介事を丸投げしたのは王国と聖教国です」

「だよな?俺達が悪いと言うのは違うと思うぞ?」

「しかし、ケンジ様はそれを利用して、聖教国が滅亡に導くように誘導しているのですよ!これはどう説明するのですか?」

「そうか、ムシュダルクさんには俺がこうなるように、誘導しているようにみえるんだ」

「ケンジ様は、どのようにもすることが出来るではありませんか?だったら、もっと違う未来にする事も可能ではありませんか?」

「甘い行動をして、貴族達や権力者を救って、のうのうとのさばらせると言うんだな?」

 ケンジは、ムシュダルクの言葉に結構ショックを受けていた。まさかマイ達に、否定されるとは思っていなかったからだ。

「わかったよ!お前達の考えはよく分かった……少し考える!」

「ケンちゃん!」
「ケンジ様!」

 ムシュダルク達の静止も聞かず、ケンジは会議室から出て行ってしまった。ケンジの想いは、やはりここガイアースでは通じない物なのか?それとも王国制度で、貴族の存在は世の中に必要なのかと、ケンジは思い悩んでいた。
 もしそうなら、Freedom国もそういった制度にしてしまった方が早い。だが、そんな事をすればケンジ自身暴君となるのは火を見るのも明らかである。
 ケンジの考え方は、やはり地球のものでありその考えを、ガイアースに持ってくるのは無理なのかと諦めに近いものになってきていた。



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