上 下
488 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

35話 新たな商品

しおりを挟む
「いったいどうしたらいいのですか?」

「聖女様!ここはやはりFreedomに協力を……」

「何の協力を要請するのですか?町の人口が、減り始めて助けてくれというつもりですか?」

「それは……」

「そんなくだらない事を言っているなら、何かいい案でも考えてはいかがですか?」

 聖教国では、平民達の移住が止まらなくなっていた。それに伴い、ギルド本部から苦情が出始めていた。ギルドも又、聖教国や王国から平民達が、Freedomに流れる事で売り上げが落ちてきていたのだ。
 ギルドも何とかして、Freedom国に進出させてほしいと要請を出していたのだが、Freedom国独自のギルドが確立した今、同じ役割の組織はいらないと突っぱねられていた。
 ギルドは、Freedomに頼らず新しい新商品の開発を頑張っていて、新商品をFreedomに売込みしていたのだが、いまいち不便であり平民達には広まらなかった。
 どうしてもギルドの作る商品は、万人が使用できるものではなく、魔力の使用量が莫大で燃費が悪すぎるのだ。

「今回も、ギルドの商品はちょっと、Freedom店での販売は見送りさせていただきます」

「うう……これにどれだけ開発費をかけたか、それを組んでいただけて欲しいのですが!」

「どれだけかけても、こう燃費が悪いとFreedomでは売れませんよ。お客様から苦情が出ます」

 ギルドは、Freedomでも扱ってくれるような商品開発をしていた。Freedomで売り出せると、ネームバリューが付くと考えたのだ。しかし、何度も開発するが、どうしても首を縦に振ってくれるような商品が作れなかった。

 今やもう、Freedomの商品開発に携わっている生産者のスキルは、グランドマスターでは若造の部類になり殆どの者がレジェンダリーに近づいていたからだ。
 ギルドの物を、Freedomで製作しようものなら、当然それより良い物を製作できるため、どうあがいてもFreedomより良い物が製作できないのだ。

 ギルドの思惑は、Freedomに認めてもらえるような商品が出来たなら売り上げは上り、Freedom国に進出できると本気で考えていた。
 しかし、所詮は他力本願であり、Freedom国は独自のギルドがあるので余程の事がない限り、既存のギルドがFreedom国に進出できる見込みはなかった。

「でしたら、少しでいいのでケンジ様に面会をお願いしたいのですが!」

「ただいま、ケンジ様は体調不良で長期休暇しています!こういう交渉は、わたくしが一任されているのでご遠慮してください」

「ケンジ様は、いつ復帰なさるのですか?」

「精神的な事もあるので、いつ復帰かとはお約束できないので諦めてください!」

「ムぐぐぐ……」

 アーチェとモーリスは、その後が続かなかった。ギルドも又、王国や聖教国と同じく、Freedomに頼らないと後が続かなくなっていた。

「あの……アーチェさんモーリスさんその意欲は買うのですが、根本的に考え方を正さないと、いずれギルドは消滅しますよ?」

「どういう事ですか⁉」

「今の王国と聖教国とギルドは同じなんです。Freedomに依存し過ぎなのですよ」

「「……」」

「まだ、こうやって商品を売り込みに来るだけマシといえるのですが、Freedomを頼りにしているのが丸わかりなのです」

「ですが、この商品がFreedomから売り出してくれれば、その評判は上がりギルドの商品としても信頼が!」

「そこですよ!ギルドも自ら頑張るのではなく、Freedomギルドに依存しようとしているのですよ」

「そんな、依存だなんて!」
(何であたし達が、奴隷に言いくるめられないといけないんですか……)

「しかし、その通りでは?魔道具は売れると利益率が高いですが、それは誰もが使いやすいという前提があってこそだと思いませんか?」

「それは……だけど今までは!」

「今までは今までですよ。わたし達Freedom店の商品は、平民達が誰でも便利に使える商品を売っているのであって、今までのように貴族様が大金を払って、使える商品を売っている訳ではありません」

「この商品も、平民達が使えるように魔力を抑えて今までにない……」

「それは認めます。しかしながら、燃費が悪すぎるのですよ。こんなに毎日魔力を注いでいたら、その人物は魔力切れを起こしてしまい、日々の日常で倒れてしまいますよ」

「……」

「そうなるとどうなりますか?」

「それは……」

「そうです、結局は魔力提供の依頼を出す事になり、平民達では賄えない魔道具になるのです。これは貴族様をターゲットにして売った方がよろしいかと?」

「でも!」

「ご存知かもしれませんが、Freedom国には貴族様はいません!確かに商会の会長や社長はいますが、商売のプロである商人達が買う様な事もありません。ですからこの件は諦めてください!」

 ユエティーは、ギルドからの売り込みを毅然な態度で断った。ここは奴隷だからといって、言いなりになってはいけない取引だからだ。
 本来なら、ケンジやムシュダルクが出る所だが、ユエティーはケンジの休暇の時に一任されていた為、自分の責任で頑張っていた。

 アーチェとモーリスは、突破口が見つける事が出来ず、引き下がるしかなかった。



 そして、Freedomでの定例会議で、ティアナとフィアナの提案した商品に注目が集まった。ガーデニングのスキルがとうとうレジェンダリーとなり、このスキルの本領が発揮される事になったのだ。

「今回あたし達は、ガーデニングのスキルで花のエキスの抽出に成功しました」

「二人ともいったい何を言っているのだ?」

 ティアナとフィアナの二人は、ガーデニングのスキルをレジェンダリーまで上げることが出来た事で、花や薬草から植物のエキスを抽出する事が出来るようになったと報告した。今まで、ガーデニングとは草花を成長させ、グランドマスターまでしかスキルを成長したという実績がなかったのだ。

「そして、錬金術士のダリアと共に製作したのがこちらです」

 ティアナとフィアナが、テーブルに出したのは石鹸と髪石鹸だった。これには他のメンバーはキョトンとした顔になったが、マイだけは喜んだのである。
 このガイアースにはシャンプーなどは無く、石鹸で洗うのである。これは平民も水道水で、体を拭き髪を洗う様になったが泡立ちがなく何となく洗ったように感じられるものだった。
 そして、石鹸で髪を洗うとごわつき、髪が爆発したように纏まらなくて、お金に余裕のある貴族達なんかはオイルで整えたりする。

「これをFreedom店で売り出すつもりですか?」

「「はい!自信の作です‼」」

「しかし、平民達は風呂の概念が無い!井戸の水で体を拭くだけだぞ?」

「ムシュダルク様!今は水道のおかげで、平民達も石鹸を使い身体を洗っていますよ?」

「それは知っている!だが、それも毎日ではないだろ?それにその髪石鹸?平民達に受け入れられるとは思えん!」

 たしかに、ムシュダルクの言う事はもっともだった。風呂の概念もない平民達が、石鹸とは別に髪の石鹸を買い求める事は無いと、ティアナ達に説明したのである。

 しかしティアナ達には、この石鹸が売れると勝算があった。今までの石鹸とは違い、バラのエキスを抽出したこの石鹸は香りが物凄くよく女性受けする事は間違いなかった。
 そして、髪石鹸にはツバキの花から抽出して、髪が艶やかになりサラサラヘアとなる。お風呂上りにオイルで整えなくてもよく良い香りが持続する逸品だった。

 しかし、この石鹸はFreedomから売り出す事は保留になった。その理由はやはり、平民達の間では風呂が無かった事にあった。
 マイもまた、この商品の良さをプッシュしたのだが、平民達が使用する事にはもう一つ強みというモノが足りなかった。

 体を拭くだけでは、売れる見込みがなかったからである。いい商品だと言う事は、ムシュダルク達にも理解はできたが、この商品は保留としてFreedomの家族達だけで使い様子を見ることにした。

「姉さん……わたし悔しいです……」

「フィアナ……あたしもそうだよ!せっかくダリアと協力して作ったのに商品化されないのは本当に残念です……」

 しかし、商品開発がそう簡単に出来る物ではないとも、二人は理解していた。ケンジが肥料を作り出した時も、神鋼魔石のせいで土がやせ細り、何回も実験を繰り返しようやく商品化したのを思い出していたからだ。
 あの万能のケンジでさえ、あれだけ苦労をして商品にできたのを知っている2人は、スキルがレジェンダリーになったからといってすぐにいい商品が出来るとも思っていなかった。
 レジェンダリーになるのがゴールではなく、これからがスタートと思いなおして別の商品開発に勤しむのだった。

 そして、ムシュダルク達はティアナ達の行動には関心を持っていた。今までは、ケンジが便利な商品を開発して、その商品を作る為だけに動いていたが、ティアナ達奴隷が自ら発信者になった事だ。
 つまり、ケンジには無い自分の強みであるスキルを生かし、商品開発をした事にある。今回残念な事は貴族向けの商品だったが、これが平民に向けた商品だった場合、Freedom国は新たなステージに立てる事になる。

 それらを踏まえて、ムシュダルクはティアナ達のやる気に期待をして微笑んだのだった。


    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです

矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。 それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。 本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。 しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。 『シャロンと申します、お姉様』 彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。 家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。 自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。 『……今更見つかるなんて……』 ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。  これ以上、傷つくのは嫌だから……。 けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。 ――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。 ◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _) ※感想欄のネタバレ配慮はありません。 ※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...