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第10章 Freedom国、経済の中心へ!
24話 捕らえられていた女性達
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鳳凰騎士団は、ゴブリンエンペラーとマザーが率いる大集団に勝利しただが、素直に喜ぶ事が出来なかった。その戦闘は5時間に及ぶもので、鳳凰騎士団も被害が出ていた。その被害は第2隊長をはじめとする、50名程が命を落とした。
ゴブリンエンペラーとマザーが率いる想定1万5千体のゴブリンに、死者50名程ですんだのは奇跡ともいえる戦績ではあるが、仲間が死んだのはやっぱり耐えられなくもなく悲しみが押し寄せた。
そして、怪我人は更に多くセイラやオリヴィアが治療に専念していた。鳳凰魔法士団にも、元冒険者でヒーラーは何人かいてオリヴィア達と協力していた。
ケンジは、第2隊長をはじめ、その場に整然と安置している遺体に※①【神の涙】を使った。すると遺体は光り輝き、傷は元通りに治り第2隊長は目覚めることが出来た。
それを見た鳳凰騎士団は、歓声を上げ涙を流し喜んだのだ。今回初めて亡くなった人間を蘇生する、神の涙の効果が発動したのである。
「さすが主様だ!」
「奇跡だ!」
「聖教国よりよほど神のご加護がある!」
鳳凰騎士団は、ケンジの奇跡を目の当たりにして、ケンジに膝まつく。
「主様!本当にありがとうございます。我々の為に、そんな奇跡のようなアイテムを使ってくださって、感謝の言葉だけではこの恩は返せません!」
ランスロットが、ケンジに臣下のポーズをとって礼を言った。
「何を言ってんだよ!お前達はよくやった!あのエンペラーをお前達だけで討伐したんだ。十分俺の期待に応えたんだよ!」
ランスロット達は涙を流し、ケンジに頭を下げた。
「ギル!お前達はゴブリン達の解体を帰国してから頼む!大体一日何体ぐらい解体が可能だ?」
「そうですね……200から300といったところでしょうか?」
「わかった!それじゃ帰ってから忙しいとは思うがよろしく頼むぞ」
「分かりました!」
ケンジは、ギルに確認をして次々にゴブリンの遺体を、インベントリに全て収納してしまった。
ケンジは鳳凰騎士団やマイ達に頼み、捕虜となっていた女性達の事を頼んだ。捕虜になっていた女性達は、牢屋に入れられていて、その数100人以上はいた。
マイは、女性達だけで結界を張った牢屋に入っていった。
「助けに来たわよ!もう大丈夫安心して!」
ゴブリンの集落に女性が入ってきた事に、囚われた女性達はピクッと少し反応しただけであった。その女性達はエルフやヒューマンや獣人と多岐にわたり、消衰しきっていて心あらずだった。マイ達は、牢屋を破壊して中に入り、用意していた毛布を彼女達に渡し体に巻いてもらった。
「もう大丈夫よ!ゴブリン達は全部討伐したから!」
女性達は、マイの言葉を聞き涙を流した。その女性達を労わりマイ達は背中をさするしか出来なかったのである。
女性達の中には、助かったと思い気絶してしまう人間や、気がふれた様に叫ぶ人間もいた。
あんな思いをしたのだから無理はなく、とにかく精神を救わないとどうにもならないのだ。中には自殺したいがそんな勇気もなく、殺してほしいと懇願する女性もいたほどだった。
「あの……お願いがあります……」
「なんとなく言いたい事は分かるけど絶対にダメよ!」
マイは、その女性の訳を聞く事もなく断ってしまった。
「あの……」
「今は辛いのは分かるわ……だけど死んじゃ駄目だよ!そのお願いは絶対に聞けない!」
マイは女性の気持ちを考えれば、死なせてあげたいと思うが、それは完全なタブーな事である。殺してほしいと頼まれても、何の罪のない人間を殺したらどんな言い訳をしても、手をかけた人間は犯罪者となるからである。
「うううう……」
女性は、その場に泣き崩れてしまった。ここにいる女性達は、今後辛い思いをしながら生きていく事になるのは確定しているからである。
この世界では、本当に差別が多く存在しているからである。この女性達は、この先幸せには絶対になれないわけがあった。
魔物に犯されたと言う噂が流れる事になるからだ。同情をされる事になるが、嫁の貰い手は現れない。一人で生きていく事になるが就職が出来ないのである。事あるごとに、魔物に襲われた事が付いて回る事になり、結局は自ら奴隷に堕ちるか娼館に行く事になってしまうのだ。
マイは、この女性達の事を考えると、本当にやるせない気持ちになった。
「お願いします……私達はこのまま町に戻っても生活が出来ません……かといって自分から命を絶つ事も……」
「大丈夫!あたし達はFreedom国の者よ!」
女性達は、マイが何を言っているのか分からなかった。いくら噂に聞くFreedom国であっても、自分達が幸せになれるはずがないからだ。
「噂に聞くFreedom国でも、私達の身体は汚れてしまっています。結婚という幸せはもう無理でしょう……それに就職するにもイメージが悪いと言われ、自営業しても物は売れない……」
「大丈夫よ!」
「そんな無責任な事言わないでください!」
女性は、この後どういう事になるかわかっているからこそ、助けてくれたマイにも苛立を隠せなかった。
「マイ!大丈夫か?怒鳴り声が聞こえたようだが?」
「あなた……」
マイは、ケンジに今起こっている事を説明したのだった。鳳凰騎士団の女性メンバーも又説得に苦労していた。ケンジはそれを聞き、女性達の前に立ちケンジも説得し始めた。
「男の俺からして、君達の気持ちはよく分かると言っても信じられないかと思う……だが、同情とかでもないしいい加減な事を言っているつもりもないから、よくわかると言わせてほしい!」
「あなたは、何を言っているのよ!」
「まあ、待ちなよ。せっかく俺達が助けた命を無駄にしないでほしい。君達はまだ若い!これからいくらでも人生はやり直せると思うぞ?」
「何を言っているのですか?貴方も魔物に犯された女が、この後どういう目に合うか知らないわけないでしょ?」
「世間一般で言われている事は分かるが、Freedomに来たらそんな差別は俺が許さん!君達の結婚はできないのかもしれないが、就職の世話ならしてあげることが出来るよ!」
「そんな事信じられる訳ないじゃない!」
「俺はFreedom国の責任者だ!絶対に差別はさせない!」
「えっ⁉責任者って?」
隣にいた、鳳凰騎士団の女性騎士が小声で教えた。
「あの方は、Freedom国の国王様ですよ」
「はぁあ?それは本当なの?」
「そうです!そして、私達の主でもあります」
女性がその騎士を見ると奴隷だと言う事が分かる。奴隷なら嘘はつけないので本当の事だと分かるのだった。
そして、女性達は平民の身分で王族であるケンジに、失礼な事言ったのを後悔し震えながら、ケンジとマイに謝罪したのだ。
「あ~……いや、謝罪なんかしなくてもいいよ。君達の辛さは分かるから」
「本当に、知らぬ事とはいえ、すいませんでした……」
「だから、謝罪はいいよ。俺もそんな事で怒りはしないから!で、どうだ?俺の国に来ないか?信じれないかもしれないが悪いようにはしないからさ」
「あなた?あの子達に、何の職を斡旋するつもりなの?」
「Freedomのギルドと、店をつなぐ受付業務なんかどうだ?」
「私達がギルドの受付嬢を⁉」
「受付嬢といっても、冒険者が持ってきた素材の買い取り業務だけどな」
「本当に大丈夫なのですか?冒険者なんて、荒くれ者で絶対私達を差別するんじゃ……」
「絶対ないとは言い切れないが、もしそんな冒険者がいたら俺に遠慮なく報告を上げたらいいよ。俺が何としてやるから!」
ケンジの言葉を聞き、渋々だがその提案に乗った。女性達からしたら、ケンジの提案に乗るしかなかったのだ。ここで蹴ったりしたら、本当に奴隷か娼館への道しかなくなるからだ。
そして、ケンジの提案に乗った女性達は牢屋から出ることにした。しかし、半分ほどの女性だけで残りは出ようとしなかった。
「君達は出ないのか?さっきの話を……」
「あなた……あの子達は奴隷だよ。奴隷の女性が魔物に犯された場合、この後の人生は、もう生きているのがつらいだけだよ」
「君達は、俺が主人になってやる!だから安心するといいよ」
残りの女性達は目を見開いたのだ。本来ゴブリンやオークに襲われた奴隷の主人になろうと言う人間はいない。その為、奴隷商人に売られて鉱山や娼館送りになるのが関の山である。安くても全然売れない為、こき使われて人生が終わるしかないのだ。
だから、王族であるケンジが、自分達の主人になってやると言われたのは、普通ならありえない事である。
「ほ、本当ですか?」
「ああ!嘘はつかない!だけど、君達は俺の店で働いてもらうけどそれでもいいか?」
「それってどういうお店ですか?やっぱり娼館とかですか?」
「いや、ちがうよ!普通の商会のような、なんでも取り扱っている店だ」
それを聞いた女性達は、一瞬顔に笑顔が戻ったが、すぐにまた暗くなってしまったのだ。
「でも、わたし達みたいな奴隷が、商会だなんて迷惑になるんじゃ……」
「大丈夫だ!もし気になるなら、お店の裏方で働いてもらう事にしてもらうから。こう見えても、結構忙しい店なんだ。だからやれる事はいっぱいあるから気にすんな!」
女奴隷達も、もうケンジに頼る事しかできない為、結局はケンジの提案に乗ることにしたのだ。
マイは、ケンジの背中をパシッと叩き笑顔を見せた。
「あなたよくやったわ!」
「痛ぁ~~~!いきなり何すんだよ……お前は普通の女性じゃなく、武闘家なんだからもうちょっと力を抜け!」
「な、な、な、なんですって!あたしのどこが普通の女性と違うっていうのよ!」
「なんだ?自覚がなかったのか?だったら教えてやるよ!普通の女性は大岩を素手で破壊なんかしねえんだよ!今の叩いたのだって、普通の男性なら胴体が真っ二つになっている!」
「むぐぐぐ!言ったわね!」
ケンジは一足先に、マイに殴られる前に脱兎のごとく逃げてしまった。
「ったく……あのひとは!」
ケンジとマイのやり取りを見ていた女性達は、到底王族のやり取りとは思えなくてクスクス笑ってしまっていた。
「ちょっとは元気が出て来たみたいね。貴方達は何も心配はいらないわ。あたしの旦那に任せていたらいいわよ」
マイの言葉に、女性達は何か気が楽になった感じがした。理由がある訳ではなく只そんな感じがしたのである。そして、牢屋から出てマイの後についていくのだった。
*-----*-----*-----*
この話で出てきたアイテム
※①【神の涙】
錬金術のスキルが180.50になった時に、製作可能となる
ポーション。振りかけるだけで、欠損やダメージまた、毒や石化や呪い
等の異常状態が浄化され、生き返ることが出来る。
ただし、死んでから24時間以内とする。魔法のリーンカネーションは
10時間以内であるのと1時間たつたび蘇生する可能性が10%づつ
減っていく為、ポーションの方が蘇生する格率が100%であるので、
確実に蘇生できるのである。
癒しの四葉のクローバー50本、秘薬高麗人参、黒大蒜、紫水晶各50個
聖水100ml、ホワイトドラコンの肝臓10g
ゴブリンエンペラーとマザーが率いる想定1万5千体のゴブリンに、死者50名程ですんだのは奇跡ともいえる戦績ではあるが、仲間が死んだのはやっぱり耐えられなくもなく悲しみが押し寄せた。
そして、怪我人は更に多くセイラやオリヴィアが治療に専念していた。鳳凰魔法士団にも、元冒険者でヒーラーは何人かいてオリヴィア達と協力していた。
ケンジは、第2隊長をはじめ、その場に整然と安置している遺体に※①【神の涙】を使った。すると遺体は光り輝き、傷は元通りに治り第2隊長は目覚めることが出来た。
それを見た鳳凰騎士団は、歓声を上げ涙を流し喜んだのだ。今回初めて亡くなった人間を蘇生する、神の涙の効果が発動したのである。
「さすが主様だ!」
「奇跡だ!」
「聖教国よりよほど神のご加護がある!」
鳳凰騎士団は、ケンジの奇跡を目の当たりにして、ケンジに膝まつく。
「主様!本当にありがとうございます。我々の為に、そんな奇跡のようなアイテムを使ってくださって、感謝の言葉だけではこの恩は返せません!」
ランスロットが、ケンジに臣下のポーズをとって礼を言った。
「何を言ってんだよ!お前達はよくやった!あのエンペラーをお前達だけで討伐したんだ。十分俺の期待に応えたんだよ!」
ランスロット達は涙を流し、ケンジに頭を下げた。
「ギル!お前達はゴブリン達の解体を帰国してから頼む!大体一日何体ぐらい解体が可能だ?」
「そうですね……200から300といったところでしょうか?」
「わかった!それじゃ帰ってから忙しいとは思うがよろしく頼むぞ」
「分かりました!」
ケンジは、ギルに確認をして次々にゴブリンの遺体を、インベントリに全て収納してしまった。
ケンジは鳳凰騎士団やマイ達に頼み、捕虜となっていた女性達の事を頼んだ。捕虜になっていた女性達は、牢屋に入れられていて、その数100人以上はいた。
マイは、女性達だけで結界を張った牢屋に入っていった。
「助けに来たわよ!もう大丈夫安心して!」
ゴブリンの集落に女性が入ってきた事に、囚われた女性達はピクッと少し反応しただけであった。その女性達はエルフやヒューマンや獣人と多岐にわたり、消衰しきっていて心あらずだった。マイ達は、牢屋を破壊して中に入り、用意していた毛布を彼女達に渡し体に巻いてもらった。
「もう大丈夫よ!ゴブリン達は全部討伐したから!」
女性達は、マイの言葉を聞き涙を流した。その女性達を労わりマイ達は背中をさするしか出来なかったのである。
女性達の中には、助かったと思い気絶してしまう人間や、気がふれた様に叫ぶ人間もいた。
あんな思いをしたのだから無理はなく、とにかく精神を救わないとどうにもならないのだ。中には自殺したいがそんな勇気もなく、殺してほしいと懇願する女性もいたほどだった。
「あの……お願いがあります……」
「なんとなく言いたい事は分かるけど絶対にダメよ!」
マイは、その女性の訳を聞く事もなく断ってしまった。
「あの……」
「今は辛いのは分かるわ……だけど死んじゃ駄目だよ!そのお願いは絶対に聞けない!」
マイは女性の気持ちを考えれば、死なせてあげたいと思うが、それは完全なタブーな事である。殺してほしいと頼まれても、何の罪のない人間を殺したらどんな言い訳をしても、手をかけた人間は犯罪者となるからである。
「うううう……」
女性は、その場に泣き崩れてしまった。ここにいる女性達は、今後辛い思いをしながら生きていく事になるのは確定しているからである。
この世界では、本当に差別が多く存在しているからである。この女性達は、この先幸せには絶対になれないわけがあった。
魔物に犯されたと言う噂が流れる事になるからだ。同情をされる事になるが、嫁の貰い手は現れない。一人で生きていく事になるが就職が出来ないのである。事あるごとに、魔物に襲われた事が付いて回る事になり、結局は自ら奴隷に堕ちるか娼館に行く事になってしまうのだ。
マイは、この女性達の事を考えると、本当にやるせない気持ちになった。
「お願いします……私達はこのまま町に戻っても生活が出来ません……かといって自分から命を絶つ事も……」
「大丈夫!あたし達はFreedom国の者よ!」
女性達は、マイが何を言っているのか分からなかった。いくら噂に聞くFreedom国であっても、自分達が幸せになれるはずがないからだ。
「噂に聞くFreedom国でも、私達の身体は汚れてしまっています。結婚という幸せはもう無理でしょう……それに就職するにもイメージが悪いと言われ、自営業しても物は売れない……」
「大丈夫よ!」
「そんな無責任な事言わないでください!」
女性は、この後どういう事になるかわかっているからこそ、助けてくれたマイにも苛立を隠せなかった。
「マイ!大丈夫か?怒鳴り声が聞こえたようだが?」
「あなた……」
マイは、ケンジに今起こっている事を説明したのだった。鳳凰騎士団の女性メンバーも又説得に苦労していた。ケンジはそれを聞き、女性達の前に立ちケンジも説得し始めた。
「男の俺からして、君達の気持ちはよく分かると言っても信じられないかと思う……だが、同情とかでもないしいい加減な事を言っているつもりもないから、よくわかると言わせてほしい!」
「あなたは、何を言っているのよ!」
「まあ、待ちなよ。せっかく俺達が助けた命を無駄にしないでほしい。君達はまだ若い!これからいくらでも人生はやり直せると思うぞ?」
「何を言っているのですか?貴方も魔物に犯された女が、この後どういう目に合うか知らないわけないでしょ?」
「世間一般で言われている事は分かるが、Freedomに来たらそんな差別は俺が許さん!君達の結婚はできないのかもしれないが、就職の世話ならしてあげることが出来るよ!」
「そんな事信じられる訳ないじゃない!」
「俺はFreedom国の責任者だ!絶対に差別はさせない!」
「えっ⁉責任者って?」
隣にいた、鳳凰騎士団の女性騎士が小声で教えた。
「あの方は、Freedom国の国王様ですよ」
「はぁあ?それは本当なの?」
「そうです!そして、私達の主でもあります」
女性がその騎士を見ると奴隷だと言う事が分かる。奴隷なら嘘はつけないので本当の事だと分かるのだった。
そして、女性達は平民の身分で王族であるケンジに、失礼な事言ったのを後悔し震えながら、ケンジとマイに謝罪したのだ。
「あ~……いや、謝罪なんかしなくてもいいよ。君達の辛さは分かるから」
「本当に、知らぬ事とはいえ、すいませんでした……」
「だから、謝罪はいいよ。俺もそんな事で怒りはしないから!で、どうだ?俺の国に来ないか?信じれないかもしれないが悪いようにはしないからさ」
「あなた?あの子達に、何の職を斡旋するつもりなの?」
「Freedomのギルドと、店をつなぐ受付業務なんかどうだ?」
「私達がギルドの受付嬢を⁉」
「受付嬢といっても、冒険者が持ってきた素材の買い取り業務だけどな」
「本当に大丈夫なのですか?冒険者なんて、荒くれ者で絶対私達を差別するんじゃ……」
「絶対ないとは言い切れないが、もしそんな冒険者がいたら俺に遠慮なく報告を上げたらいいよ。俺が何としてやるから!」
ケンジの言葉を聞き、渋々だがその提案に乗った。女性達からしたら、ケンジの提案に乗るしかなかったのだ。ここで蹴ったりしたら、本当に奴隷か娼館への道しかなくなるからだ。
そして、ケンジの提案に乗った女性達は牢屋から出ることにした。しかし、半分ほどの女性だけで残りは出ようとしなかった。
「君達は出ないのか?さっきの話を……」
「あなた……あの子達は奴隷だよ。奴隷の女性が魔物に犯された場合、この後の人生は、もう生きているのがつらいだけだよ」
「君達は、俺が主人になってやる!だから安心するといいよ」
残りの女性達は目を見開いたのだ。本来ゴブリンやオークに襲われた奴隷の主人になろうと言う人間はいない。その為、奴隷商人に売られて鉱山や娼館送りになるのが関の山である。安くても全然売れない為、こき使われて人生が終わるしかないのだ。
だから、王族であるケンジが、自分達の主人になってやると言われたのは、普通ならありえない事である。
「ほ、本当ですか?」
「ああ!嘘はつかない!だけど、君達は俺の店で働いてもらうけどそれでもいいか?」
「それってどういうお店ですか?やっぱり娼館とかですか?」
「いや、ちがうよ!普通の商会のような、なんでも取り扱っている店だ」
それを聞いた女性達は、一瞬顔に笑顔が戻ったが、すぐにまた暗くなってしまったのだ。
「でも、わたし達みたいな奴隷が、商会だなんて迷惑になるんじゃ……」
「大丈夫だ!もし気になるなら、お店の裏方で働いてもらう事にしてもらうから。こう見えても、結構忙しい店なんだ。だからやれる事はいっぱいあるから気にすんな!」
女奴隷達も、もうケンジに頼る事しかできない為、結局はケンジの提案に乗ることにしたのだ。
マイは、ケンジの背中をパシッと叩き笑顔を見せた。
「あなたよくやったわ!」
「痛ぁ~~~!いきなり何すんだよ……お前は普通の女性じゃなく、武闘家なんだからもうちょっと力を抜け!」
「な、な、な、なんですって!あたしのどこが普通の女性と違うっていうのよ!」
「なんだ?自覚がなかったのか?だったら教えてやるよ!普通の女性は大岩を素手で破壊なんかしねえんだよ!今の叩いたのだって、普通の男性なら胴体が真っ二つになっている!」
「むぐぐぐ!言ったわね!」
ケンジは一足先に、マイに殴られる前に脱兎のごとく逃げてしまった。
「ったく……あのひとは!」
ケンジとマイのやり取りを見ていた女性達は、到底王族のやり取りとは思えなくてクスクス笑ってしまっていた。
「ちょっとは元気が出て来たみたいね。貴方達は何も心配はいらないわ。あたしの旦那に任せていたらいいわよ」
マイの言葉に、女性達は何か気が楽になった感じがした。理由がある訳ではなく只そんな感じがしたのである。そして、牢屋から出てマイの後についていくのだった。
*-----*-----*-----*
この話で出てきたアイテム
※①【神の涙】
錬金術のスキルが180.50になった時に、製作可能となる
ポーション。振りかけるだけで、欠損やダメージまた、毒や石化や呪い
等の異常状態が浄化され、生き返ることが出来る。
ただし、死んでから24時間以内とする。魔法のリーンカネーションは
10時間以内であるのと1時間たつたび蘇生する可能性が10%づつ
減っていく為、ポーションの方が蘇生する格率が100%であるので、
確実に蘇生できるのである。
癒しの四葉のクローバー50本、秘薬高麗人参、黒大蒜、紫水晶各50個
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