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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

16話 行き詰まり

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 ケンジ達は、7階層のボス部屋の魔法陣から地上へ帰る事となった。それを見ていたダンジョンマスターはホッと安堵してその場に崩れ落ちたのだ。

「ご主人様!あの侵入者が帰っていきました!」

「あっ、ああ……まさか、あそこで帰っていくとは思わなかったな……」

「ご主人様!これからどうするつもりですか?」

「このダンジョンのコアをコピーし移住することにする!また一から、力を蓄え戦略を練り直すとする!エンジェルお前と、竜王と獣王は私についてきてほしい」

「わかりました!」

 ダンジョンマスターは、ケンジの存在を知り、今のままではとてもじゃないが地上を征服することはできないと判断した。
 そして、極級ダンジョンを引き払い、違うダンジョンへと移動したのである。これはケンジにとってまさかの出来事だった。その昔暴れまくっていた魔王が、勇者に封印されたことで慎重な人物へと変わってしまった。
 変わってしまったというより、元々慎重だった人物だったのかもしれない。ただ、地上では魔物を操るダンジョンマスターを、魔王と呼んでいただけなのかもしれなかった。

「この屈辱いつか晴らしてみせる!それまでせいぜい生を楽しむが良い!」

 ダンジョンマスターは、悔し紛れのセリフを吐きエンジェルと竜王と獣王の3人だけで、この極級ダンジョンを脱出したのだ。竜王と獣王は人化スキルで人のようになりダンジョンマスターに付き従っていた。



 そして、ダンジョンの入り口付近に魔法陣が現れて、そこからケンジ達が脱出してきた。それに驚いた騎士団達の面々は、急いでケンジのもとへと駆け寄ったのだ。

「ケ、ケンジ殿!まさかダンジョンを攻略したのですか?」

「いや……7階層で帰って来た!」

「え⁉たった7階層とは、どういう事でしょうか?」

 この極級ダンジョンでは、どちら側の魔法陣が中ボスか最終階層のボスの魔法陣が証明されていない為、攻略出来たのかもわからないのだ。
 そして、騎士団の言ったたった7階層と言う言葉もしょうがなかった。このダンジョンが、どのくらいの階層があり、ケンジ達が潜る前には、鳳凰騎士団でさえ10階層は行けるだろうと言っていたためだ。

「ケンジ様!この後はどうするおつもりですか?」

「まあ、待ちなよ。ここは司祭様や侯爵と話し合うつもりだ。ここにきているんだろ?」

「はい!それにFreedom国のアルバン様も、ここの陣頭指揮を取っていただいています」

「そっか!ありがとな!それで、魔物は何匹か外に出ていたか?」

「はい!一日一回と多くなってきておりましたが、今日はまだ一匹も出てきてはおりません!」

「そうか!ご苦労だった」

「いえ!ケンジ様こそご苦労様です!」

 ケンジは、騎士団達に引き続きここの守りを気を引き締めさせた。そして、作戦本部にそのまま、マイと共に入っていった。

「ギル達は、一緒に作戦本部に!ロイとツバキ達は、鳳凰騎士団の兵舎に行ってランスロット達の業務を手伝ってくれ!」

「「「「「はい!」」」」」

 ケンジはそのように指示を出し作戦本部にはいった。すると、そこには3国の重鎮達が話し合いをして、軍の食事や物資の相談をしていたのだ。

「ケ、ケンジ様!こんな早くダンジョンから出てきたのですか?」

 司祭や侯爵もまた、ケンジが言っていた期間よりずっと早い事に驚き椅子を引き立ち上がり驚いた。

「みんな、すまない!思ったよりこのダンジョンは強力な魔物がいっぱい生息くしていて、7階層のボスで帰って来たんだ……」

「ケンジ様が7階層で⁉」

「しかし、このダンジョンは他のダンジョンと違うところがたくさんあったのも事実だ!」

「「「他のダンジョンと違うところ?」」」

 アルバンと司祭と侯爵が見事にハモったのである。ケンジは7階層までの事を詳しく説明した。

「そんな事があり得るのか?」
「そうだ!普通は10階層ごとにボスの部屋があるのに、1階層ごとにボスなんて……」
「そして、普通のエンカウントでボス級の魔物だなんて……」

「だがこれは事実なんだよ……しかし、5階層でフィールドエリアが出現したのは一緒だったかな?」

「しかし、ケンジ様これからどうしたら?」

「そうだな……」

「あなた!これから、繰り返しこのダンジョンに潜るのでしょ?」

「マイの言う様にそれしかないよな?」

「ケンジ様?国の事はどうするのですか?」

「そうです!王国も聖教国も主要部隊がここに集結しているのです!国の方も守らないといけないし、長期間になるとここの防衛費が底をつき、他の所にシワ寄せをくらうことに!」

 今ここの防衛には各国予算をだいぶん多く取っているのだ。それほどまでに、このダンジョンは危険なものとされていて、他のダンジョンより予算を多くとり兵士を派遣していた。
 だが、今回スタンピードが起こるかもしれないと聞き、いつもの倍の兵士達がこの場所に集まっているのだ。単純計算で倍の予算を組み直さなければ守ることが出来なくなる。その為、ここにいる2人は顔を引きつらせる事となった。

「司祭様と侯爵様、聞いていただきたい事があるのだがいいか?」

「「なにか妙案が?」」

「ああ!今回、スタンピードが起こるかもしれないと言う事で、兵士達をここに集結させているんだろ?」

「ええ!そうです」
「だから、予算がこのままでは……」

「それは今のままだったらだろ?」

「どういう事でしょうか?」

「これから俺達がここに通う事になる!だったらもう、倍の兵士をここに派遣しなくてもいいんじゃないのか?今まで通りで十分だろ?」

「な、なるほど!それなら今まで通りの……」

「ケンジ様、それはちょっとお待ちください‼もし、万が一スタンピードが起こった場合、通常の人数で防げると思いか?」

「今まで、それでここを守って来たんだろ?」

「しかし、ここ数日毎日のように魔物が一匹地上に這い出ているのです。こんな事は今までになく、いつか大量に這い出てきたら、兵士達は無駄死にするのですぞ?」

「だが、さっき聞いたがそれは俺達が潜ってからの事で、今日はまだ這い出てきていないと言うじゃないか?」

「そんな予想で言われても、もし溢れた場合真っ先に被害が合うのは王都なのですぞ。もっと、確実性が欲しいのです!」

「じゃあ、聞くがその確実性の安全って、今まであったのかい?」

「それを言われては何も言い返す事はできませんが、スタンピードが起こりかけていたんです!少しでも安全材料を求めるのは、当たり前だと思うのですが!」

「だから、その安全材料が俺達がここに通うと言うのは駄目なのか?少なくとも、今までは兵士達が1階層の魔物だけを間引いていたのだろ?」

「た、確かに……」

「少なくとも今の現状は、今までにない魔物が間引かれているはずだぞ?」

「では、何故……毎日一匹の魔物が這い出ていたのでしょうか?」

「それは俺にもわからんよ……」

 司祭と侯爵は頭を抱え込んでしまった。兵士をここに駐留させ続けると、予算が本当に出なくなるのは明らかだった。しかし、安全のためには兵士を多く駐留させない事にはいけないのだ。

「なあ、少し提案があるのだがいいか?」

「「なんでしょうか?」」

「鳳凰騎士団を一部隊、ここの守りに加えることはできないか?」

「あなた、それは無理じゃないかしら?」

 マイが、ケンジの意見に反論してきたのだ。

「なんでだ?」

「そんなの決まっているじゃない!あたし達がここに入るときの事を忘れたの?」

 司祭も侯爵もまた、困ったような顔をしていた。確かに、鳳凰騎士団の戦力があれば今まで通りの予算で組めるのだが、鳳凰騎士団は力があっても奴隷の騎士団なのだ。これがネックになり、騎士団同士の連携がうまくいかないのである。

「あ……そういう事か」

「そういう事よ!騎士達が奴隷と連携を取るなんてあり得ないわ!」

「どうしても無理なのか?」

 ケンジは、司祭と侯爵に聞き返した。しかし、二人は渋い顔をして首を縦に振った。二人もここ、数日で鳳凰騎士団の戦力は認めていた。しかし、騎士達のプライドが邪魔をして反対に連携が取れなくなっていた。
 その為、交代制でここを守っていたのだが、鳳凰騎士団と連携を組むときのやる気が全然違うのである。

 この話し合いで、ケンジ達はもちろん、アルバンも司祭と侯爵も頭を悩ませるのだった。

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