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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

2話 ケンジの苦悩

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 Freedom国の町が二つになり、増々発展し町には色んな種族が集まり出していた。本国である、フリーの町は内壁であるケンジの屋敷や店訓練場、奴隷達の宿舎等である。
 そして、中壁内は初期に移住してきた人間達が暮らしている地域で、外壁内は、Freedom国が発展した後に移住して似た人間が生活しているのだ。
 しかしながら、この5年で移住してくる人間は後を絶たず、5年前の戦争でダミーだった最外壁までの地域にも人が住み始めていた。
 ケンジはこの知らせを聞き、最外壁までの土地にも、結界をはる作業に追われる事になっていたのだ。

 そして、Freedom国はケンジの目が届きにくくなっていたのだ。町には、数多くの商会が進出していた。これはメイガン商会だけでなく、他の商会も本店をFreedom国に移していた。その為、Freedom国は着実に経済の中心となっていた。

「ケンジ様!少しよろしいでしょうか?」

「ムシュダルクさん、なにかあったのか?」

「ええ!バルデイン帝国の事を覚えていますか?」

「そりゃ覚えているよ。帝国もだいぶん領土を小さくしてしまったよな?」

「はい、その通りでございます!それで王太子であるバルガン様が、成人したようでこの度新しい皇帝に継がれたようです」

「そうか!それでその人物はどういった感じなんだ?」

「それが……前皇帝とさほど変わらないという感じですね」

「そうか……それは残念だな。帝国領は今はこの辺りしか町はなかったんだよな?」

 ケンジは、地図を広げて地球で言う広島と岡山と島根と鳥取辺りを指さした。今では兵庫県と山口県の広さの土地がなくなっていたのだ。それを見たムシュダルクは頷き、顔をしかめたのである。

「今はこの辺り(山口県)は、ドワーフ国が海を越えて、新しく町を開拓しているらしいですね」

「とうとう火の国が、本土に進出してきたのか?」

「ですが、これでドワーフの技術が広まる可能性がありますよ?」

「なるほどな……ドワーフ国は帝国を攻めたりするのかな?」

「基本的に、戦争を吹っ掛けるのはヒューマン族ぐらいですよ。ドワーフ族は頑固で付き合いにくい種族ですが、交戦的という訳じゃありませんから。それは、エルフや魔族達も一緒ですよ」

「なるほどな!獣人族はどうなんだ?」

「獣人族は荒々しいという感じで、勝負事となれば決闘とかしますが、自分から戦争を吹っ掛ける事はしませんね。その為、戦争になりやすいかもしれませんが……」

「まあ、それが普通だよな。好き好んで自分から戦争をするのは人間だけかもな。悲しい事だ……」

「それで話はもどしますが、帝国が挨拶を申し出ているのです」

「なるほど、そういうことか」

「それで新しい皇帝は、Freedom国に転移マットですぐこれる事もあり、二日後に訪問したいと言ってきております」

「わかった!それで返答しておいてくれ」

「わかりました」

 ムシュダルクは、すぐさま返答する為書簡を送る手続きをしたのだ。これはFreedom国だから出来る事で、皇帝陛下はこれから何日もかけて、グランパス王国とマルシェイム聖教国をまわることになる。帝国は人至上主義国の為、ドワーフ国やエルフ国に訪問することは無い。



 そして、二日後帝国がFreedom国に訪問したのである。

「ケンジ様、お初にお目にかかります。今度、父から皇帝の座を継いだバルガンと申す。以後お見知りおきを!」

「私はFreedom国のケンジと言います。これからどうぞよろしくお願いします」

 バルガンは、これからもFreedom国と親密な関係になりたかったらしく、目を奪われるような宝や奴隷を差し出してきたのだ。

「ケンジ様!こちらをどうぞお納めください……」

 金銀財宝やマジックアイテム、奴隷は100名程いたが獣人ハーフやエルフ等、見た目の整っている者達ばかりだった。

「これはいったい?」

「これからも色々お世話になる事でしょう!全部言わせないでください」

 今度の皇帝は、長い物に巻かれるタイプの人間なようで賄賂を贈ってきたのだ。

「これは頂けません!帝国領は今貧しく、まともに食事もできないではありませんか?だったら、国の為にこのお金は使ってください!」

「はっ、何を言っているのですか?平民共は国の為にこうして税金を納めていて、それをどう使おうが王族や貴族の勝手ではありませんか?なにもケンジ様が。気を使う事などありません!」

「何を言っているのですか?これらのお金を、Freedomに使っても平民達は豊かにならないんですよ?それにこの奴隷達も、国の為に労働力に使ってください」

「資金はこうして国に税金としてあがってくるし、この奴隷どもはハーフや亜人どもだ。こうして貢物にしかならんから遠慮しなくとも大丈夫ですよ」

 ケンジは、初めて他国がどのように平民や奴隷を扱っているのか、直接目の当たりにしたのだ。今までは、ギル達に説明を受けてたり、テンペの町に始めてきた時に少し見たことはあったが、意識的に見ない様にしていたようで、バルガンの言葉を聞き呆気に取られてしまった。

「そんな考え方で、帝国が前のようになると思っているのですか?」

「なるかどうかやってみないと分からんし、国の事をとやかく言われてもこっちとしても困るよ。ただ、Freedomには支店を各町に置いてもらってるし、こちらとしてはそれで十分だ」

 ケンジは、バルガンの言葉に何も言えなくなった。当然、帝国領には帝国のやり方があり、それに対してケンジが口出しなどできないからだ。
 帝国は、先の戦争の責任を取り前皇帝は身を引き、息子のバルガンにその座を譲ったのだ。そして、そのバルガンを中心に新しい体制でやると、こうして挨拶回りをしていた。

「このお金を受け取らなかった場合、無駄金として王族の給料となるし、奴隷どもは役に立たなかったとして処分することになるんだが、それで本当に良いのか?」

 バルガンの言葉を聞き、奴隷達は震えあがったのだ。処分というのは奴隷商人に売却ではなく、王族や貴族達の玩具となる事を意味していた。
 ケンジはその意味を知らなかった為、バルガンが何を言っているのか分からなかった。

 ケンジが、言葉の意味を理解していなかった為、ボーダンが耳打ちをした。

「ケンジ様……バルガン様の言葉の処分という意味は、本当に玩具にされて使いつぶすと言う意味ですよ」

 ボーダンは、今は没落した帝国領の貴族で、エリスの父でリルヴェルト家である。その為、帝国領の事はよく分かっており、すぐさまケンジに説明することができた。

「なっ……」

 奴隷達を見ると、尻尾や耳が力なく垂れ下がっていて、恐怖で震えていたのだ。

「ケンジ様、どうするのですか?私達はどちらでも構いません」

「そんな命を簡単に……」

「何を言っているのですか?こいつらは奴隷ですよ?生死与奪権など主人の気の向くままです。言ってみたら主人の財産をどのように扱おうが勝手なのです」

「そんなわけ!」

「そんなわけあるのですよ!だからこうして貢物として持参したのです。その証拠に、こいつら亜人どもはなにも逆らえないではありませんか?」

「それは……隷属の首輪の為じゃないか!」

「そう!こいつらは奴隷なのです。奴隷に人権などあるわけがないじゃないですか?まあ、ヒューマン以外は平民であっても人権があるとは思えませんが」

 新しい皇帝陛下である、バルガンは前皇帝より人至上主義者だった。ムシュダルクが地図を見ながら顔をしかめたのはここにあったようだ。
 しかし、ケンジはこれら貢物を受け取る事を躊躇していた。これらを受け取ると後々厄介事にしかならない為である。これらの賄賂を受け取った場合、帝国はFreedomの足元をみてくる事になるのだ。
 この賄賂を受け取る事で、今まであった国と同じような事となり、犯罪に巻き込まれる恐れもある。ケンジは、この場で苦渋の選択を迫られる事となったのだ。



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