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第9章 Freedom国の発展!
95話 馬車の完成②
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ギルドでは、ケンジが何を作って来るのか好き勝手な事を言いながら、ケンジの言われた通りの馬車の製作をしていたのである。そして、Freedom国ではケンジ達がこれからの事を話していたのである。
「ご主人様!馬車を引く魔物は何を捕らえるのですか?」
「はっ⁉何を言っているんだよ!」
「だって、あんな重い馬車を引っ張るのなら、ハヤテのような魔物をテイムするんじゃないのですか?」
「システィナ……大陸中に販売する馬車なんだぞ?そのたびに俺が、その馬車の為に魔物をテイムするなんて、本気で思っている訳じゃないよな?」
「違うのですか?あたしテイムするものだと……だから、バードスキルの沈静化を張り切って頑張らないとと思ってたんですよ」
「馬鹿な事を言うんじゃないよ!それに魔物を譲り渡すには、相手にも獣医学と調教と動物学の3つのスキルをグランドマスターにしないと、魔物は言う事きいてくれないよ」
「じゃあ、あの馬車は何が引くのですか?」
「そりゃ当然、馬に決まっているだろ?」
「でも、馬では馬力が無いから、馬車のスピードが出ないじゃないですか?」
「ホント、システィナはちょっとは頭を使えよ!」
「なっ⁉ご主人様酷いです!」
「お前の職業はなんだよ?」
「今、それが何の関係があるのですか?」
システィナは、ケンジに馬鹿にされてむくれて拗ねてしまったのである。
「システィナ、悪かったよ……機嫌を直せ!お前の職業はパーフェクトシンガーだろ?」
「そうですけど……それが、なんの関係があるのですか?」
「お前は、日頃魔物を討伐する時、パーティーの守護神だよな?その時、どうやってみんなの壁をしているんだ?」
「それは、アクティブスキルで魔物を弱体化させ、自分は防御力や回避力を強化させて、魔物のダメージを極力減らす事でタンカーをしてます」
「だろ?日頃から自分がやっていて何故気づかない?」
「えっ?」
「だからな!馬の装備を作ってやるんだよ!今回の場合は、火属性の魔石でストレングスの効果を付与した蹄鉄を作ろうと思うんだよ」
「え⁉馬の為のマジックアイテムですか?」
「ストレングスの効果の付いた装備は安いからな。平民でも十分賄えるんだよ!」
ケンジは、この世界で思いもしないようなマジックアイテムを作ったのだ。マジックアイテムは、人が装備すると思い込んでいたため、ギルドでは馬用のマジックアイテムを製作なんて思いつきもしなかったのである。
火属性の魔石を神鋼魔石に吸収させ、神火魔石を蹄鉄に取り付ける事により、火力エネルギーにして馬の馬力を増加させる仕組みを作ったのである。
そして、もう一つは聖属性の魔石を吸収させた、神聖魔石をつくり神火魔石で無理やり動かす肉体を、癒す効果のある魔石をセットで製作したのである。
この装備により、馬は馬力が増し長時間旅が出来るのである。その結果町から町の遠い区間も走りきることが出来る事となり、大幅に野営する必要が無くなる可能性がでてくるのである。
これにより、野営の準備の必要が必要最低限となり、町で買い出しをする事で荷物が減らせるようになるのだ。
「えーっと、この馬の装備2つだけ装備するだけで、そんなに変わる物なのですか?」
「ああ!当り前だろ。こいつは神鋼魔石を使っているんだから、馬が走る事で熱を吸い取る事で、魔石の魔力を補充し、その魔力でストレングスの効果を持続させるんだよ」
「じゃあ、神聖魔石も同じように?」
「馬には、まだ解明はされていないのだが、人を癒す力があるらしいんだよ」
「そうなのですか?」
「その癒しの能力を、魔石のエネルギーに利用させてもらったんだ。それにより、馬は疲れたとしても神聖魔石からリジェネレートの効果を得る事が出来て、疲れ知らずで馬車を引くことが出来るんだよ」
「す、すごい!でも、ご主人様……普通のマジックアイテムが販売されたら、この蹄鉄って売り上げが落ちたりしないのですか?」
「それは大丈夫だと思うぞ」
このガイアースの世界では、ゴッドオーダーでマジックアイテムを製作するツールを出す事で、個人でマジックアイテムを製作する事は可能である。
雑貨屋でも、ストレングスのような簡単なアクセサリーも売っているのだが、マジックプロパティーの効果はランダムにつくのである。ケンジの製作した様な、ストレングスを任意につける事は出来ないのである。
「でも、その効果が付いた蹄鉄があれば……」
「よく考えて見なよ!ゴッドオーダーでツールを出したとして回数制限のあるツールで、誰が好き好んで馬の蹄鉄を作るんだ?そして、仮に製作をして蹄鉄の効果がHPを増やすものだったり、クリティカルが出やすかったり、馬車を引くのに、必要なストレングスが付かなかったら大損になるんだぞ」
「た、確かに……」
「そして、運よくストレングスやリジェネレートが付いたとしても、平民が買えるような値段でしか売れないと来たら、誰もそんな冒険をして製作なんかするわけないからな!」
「なるほど……」
「というわけで、又鍛冶工房は、蹄鉄部門を作らないといけないなあ!」
「えっ⁉部門を作らないといけない程、売れる見込みがあるのですか?」
「当たり前だろ!そうじゃないと、馬車の利益を2割でいいなんていう訳ないじゃないか!」
ケンジは、ギルドを騙したわけではないのだが、出し抜く事となるのである。
「なんでですか?馬車を引くための補助的なアイテムなんでしょ?」
「まあ、見てなって!この蹄鉄は爆発的ヒット商品になり、便器までとは言わないが生産待ちになるくらいのヒット商品になるはずだよ」
ケンジは笑顔でそんな事を言い、Freedomの町の奴隷商店へ、蹄鉄部門で働く職人を買いに行くのだった。
そして、ケンジは出来た蹄鉄を持って、聖教国のギルド本部に訪問したのである。
「Freedomのケンジです。ギルドが依頼したアイテムが出来たので、ギルドマスターの面会をよろしくお願いします」
「ケンジ様!ようやくできたのですか?」
「ああ!待たせて申し訳ないな!」
「では、さっそく奥の部屋へどうぞ!」
ケンジは奥の部屋に通され、ギルドマスターや幹部達が急いで部屋にやってきたのだった。
「ケンジさん!アイテムが出来たって本当ですか?」
「ああ!これがあれば、あの重い馬車も簡単に引くことが出来るよ」
「で、そのアイテムは?」
ケンジは笑顔で、鞄から蹄鉄を取り出したのである。そのアイテムを見たギルドマスターをはじめ、幹部達は眉を顰め顔を真っ赤にして怒り始めたのである。
「ケ、ケンジさん!我々を馬鹿にしているのですか⁉」
「な、何を言っているのですか!俺は本気だぞ!」
「そんな馬の蹄鉄で踏ん張りが効くだけで、あの馬車は重くてスピードなど出ませんよ!そんな事も分からないのですか?」
「なっ!そんなの百も承知、これがただの蹄鉄なわけある訳ないだろ?これを嵌めた馬に、あの新作の馬車を引かせてみなよ!」
ギルドマスター達は、ケンジの言う通りギルドの訓練場に、用意した馬車と馬の所に行くのだった。ギルドには、すでにケンジが訪問した噂が拡がり、訓練場に野次馬が集まっていたのである。
「おい!あの馬たちがあんな重い馬車を引けるのか?」
「あのFreedomの事だから引けるんじゃないのか?」
「俺、あの馬車を近くで見たけどむっちゃ重そうだったぞ?」
「確かに普通に引くことはできるとは思うけど、最低6頭はいないと今までの倍のスピードは出ないと思うぞ?」
「まあ、見てからのお楽しみだな」
「俺よう、Freedomが失敗したところ見てみてぇんだよな」
「確かに、それは面白そうだよな!」
「あんた達!何言ってんのよ?成功してもらわないといけないんだよ?」
「でも、そんなFreedomもみたいと言っているだけで、成功して欲しい気持ちもあるぜ!」
冒険者達は好き勝手な事を言って、お祭りのようにはしゃいでいたのである。それを聞いていたギル達は、眉がピクピク動き、怒りをあらわにしていたのである。
「ギルもシスティナも落ち着けって!」
「ですが!主……私は、あんな好き勝手言われて悔しいです!」
「そうですよ!ご主人様が、誰のために協力していると思っているのですか?」
「まあ、そんな気にすんな!こういったことは結果が全てなんだよ。見てな!すぐに目の色を変えて、手のひら返しをしてくるから!」
ケンジ達は、冒険者を横目に内緒話のように話していたのである。そして、馭者が馬に蹄鉄を嵌め、馬車を動かす準備が整ったのである。
その馬車は長距離用の、幕の張った荷馬車であり、中には荷物が十分に積んだ状態の馬車であった。
「ケンジさん!本当にあんなに荷を積んで良かったのですか?」
「ああ!構わないよ。あれぐらい積んだ状態で、この訓練場を何周もしないと実験にならないだろ?」
「それはそうですが……」
「では、馭者さんゆっくり発進してくださいね。馬のパワーがあると思うんで、いきなりだと操縦が難しくなりますからね」
馭者は、ケンジの言う通り鞭を優しく振るい、馬車をゆっくり発進させたのだ。馬の様子は、普通に走っている様子で、従来の馬車のスピードだったのである。
「どういう事だ?馬2頭しかいないよな……」
「えぇ……」
観客である冒険者達も、その様子に口をポカンと開けて驚いていたのである。ギルドマスターも、目の前で起こっている事が信じれなかったのだ。
そして、一周してきた馬車に向かって、ケンジは大きな声で言ったのである。
「馭者さん!少しづつスピードを上げてください」
馭者は、ケンジの言葉に黙って頷くのだった。すると、徐々に馬車はスピードを上げ始めたのである。
「おいおい!どういう事だよ……」
「俺は夢を見ているのか?」
「多分大丈夫だ……俺達も同じものを見ていると思うぞ……」
「「「「「……」」」」」
観客は口々に、信じられないと言い、ギルドマスターのオッシも目をこすり、幹部達も何が起こっているのか理解できなかったのだった。
そして、30分その速度のまま馬車は走り続けたのである。ケンジ達からしたら、ハヤテの速度に慣れてしまっているので凄く遅く感じられたのだが、ギルドのメンバーからしたら、長距離の旅がこの時から、新しい時代の幕開けのような感じで湧き上がっていたのである。
「ケンジさん!本当にありがとう……これで、ギルドは本当に吹き返す事になります!」
オッシは、ケンジの手を力強く握り、頭を下げ何回もお礼を言ったのだった。ケンジも又、オッシの手を握り返し笑顔になっていたのだった。
そして、ケンジ達はギルドの部屋に戻り、契約をすましたのである。
「ケンジさん、契約はすみましたが、本当に馬車の利益は2割で良かったのですか?」
「ああ!それで十分だよ。俺の本命は、この蹄鉄なんだからさ!この蹄鉄の売り上げは、ギルドには全く入らないだろ?まあ、取られたらFreedomの利益が出ないんだけどな……」
「でも、そんなに安くしてしまっていいのですか?」
「だけど、普通の蹄鉄よりかは高いよ」
「そりゃ、マジカルアイテムですからね!もうちょっと高くしても、行商ですぐに取り戻せるから、購入した人達も損したと思いませんからね」
「損したと、思わない値段設定がちょうどいいのですよ」
「それでは、月末には500セットの納品をお願いします!」
「ええ!わかってますよ。絶対にギルドはその値段で売ってくださいよ!」
「ああ!わかってます。中間マージンを取って、あなたを怒らせて売ってもらえなくなったら、馬車も使えなくなるのですからね」
「いいですね?この間言った、前の政権で好き勝手やっていた部下達には十分注意してくださいよ」
「ああ!肝に銘じておくよ」
ケンジは、ギルドの上層部に念を押して、Freedomへと帰還したのだった。
そして、横を見た時、ギル達護衛メンバーは笑顔であったのだった。理由は、馬車の成功で冒険者や生産者達が、ケンジの側に寄ってきて観客席で言っていた無礼な言葉を、丁寧に謝罪したからであったからだ。
その謝罪は、ギル達奴隷にもあったのである。
「お前達の、主に失礼な事を言って、お前達の気分も害してしまって本当にすまなかった!」
「「「「「「えっ⁉」」」」」」
ギル達が驚いたのは、奴隷に対して冒険者達、平民の立場にある人間が頭を下げたからであった。
この行動は、ガイアースにて信じれない事であり、その行動からしてもギルド全体が変わってきていたことを、証明できる出来事だったのだ。
ギル達は、その行動だけで本当に謝罪していることが分かり、反対に恐縮したほどだったのだ。
「ご主人様……ギルドは、本当に変わってきているのですね」
「ああ!そうだな……」
ギル達奴隷は笑顔で、Freedom国に帰っていったのだった。
「ご主人様!馬車を引く魔物は何を捕らえるのですか?」
「はっ⁉何を言っているんだよ!」
「だって、あんな重い馬車を引っ張るのなら、ハヤテのような魔物をテイムするんじゃないのですか?」
「システィナ……大陸中に販売する馬車なんだぞ?そのたびに俺が、その馬車の為に魔物をテイムするなんて、本気で思っている訳じゃないよな?」
「違うのですか?あたしテイムするものだと……だから、バードスキルの沈静化を張り切って頑張らないとと思ってたんですよ」
「馬鹿な事を言うんじゃないよ!それに魔物を譲り渡すには、相手にも獣医学と調教と動物学の3つのスキルをグランドマスターにしないと、魔物は言う事きいてくれないよ」
「じゃあ、あの馬車は何が引くのですか?」
「そりゃ当然、馬に決まっているだろ?」
「でも、馬では馬力が無いから、馬車のスピードが出ないじゃないですか?」
「ホント、システィナはちょっとは頭を使えよ!」
「なっ⁉ご主人様酷いです!」
「お前の職業はなんだよ?」
「今、それが何の関係があるのですか?」
システィナは、ケンジに馬鹿にされてむくれて拗ねてしまったのである。
「システィナ、悪かったよ……機嫌を直せ!お前の職業はパーフェクトシンガーだろ?」
「そうですけど……それが、なんの関係があるのですか?」
「お前は、日頃魔物を討伐する時、パーティーの守護神だよな?その時、どうやってみんなの壁をしているんだ?」
「それは、アクティブスキルで魔物を弱体化させ、自分は防御力や回避力を強化させて、魔物のダメージを極力減らす事でタンカーをしてます」
「だろ?日頃から自分がやっていて何故気づかない?」
「えっ?」
「だからな!馬の装備を作ってやるんだよ!今回の場合は、火属性の魔石でストレングスの効果を付与した蹄鉄を作ろうと思うんだよ」
「え⁉馬の為のマジックアイテムですか?」
「ストレングスの効果の付いた装備は安いからな。平民でも十分賄えるんだよ!」
ケンジは、この世界で思いもしないようなマジックアイテムを作ったのだ。マジックアイテムは、人が装備すると思い込んでいたため、ギルドでは馬用のマジックアイテムを製作なんて思いつきもしなかったのである。
火属性の魔石を神鋼魔石に吸収させ、神火魔石を蹄鉄に取り付ける事により、火力エネルギーにして馬の馬力を増加させる仕組みを作ったのである。
そして、もう一つは聖属性の魔石を吸収させた、神聖魔石をつくり神火魔石で無理やり動かす肉体を、癒す効果のある魔石をセットで製作したのである。
この装備により、馬は馬力が増し長時間旅が出来るのである。その結果町から町の遠い区間も走りきることが出来る事となり、大幅に野営する必要が無くなる可能性がでてくるのである。
これにより、野営の準備の必要が必要最低限となり、町で買い出しをする事で荷物が減らせるようになるのだ。
「えーっと、この馬の装備2つだけ装備するだけで、そんなに変わる物なのですか?」
「ああ!当り前だろ。こいつは神鋼魔石を使っているんだから、馬が走る事で熱を吸い取る事で、魔石の魔力を補充し、その魔力でストレングスの効果を持続させるんだよ」
「じゃあ、神聖魔石も同じように?」
「馬には、まだ解明はされていないのだが、人を癒す力があるらしいんだよ」
「そうなのですか?」
「その癒しの能力を、魔石のエネルギーに利用させてもらったんだ。それにより、馬は疲れたとしても神聖魔石からリジェネレートの効果を得る事が出来て、疲れ知らずで馬車を引くことが出来るんだよ」
「す、すごい!でも、ご主人様……普通のマジックアイテムが販売されたら、この蹄鉄って売り上げが落ちたりしないのですか?」
「それは大丈夫だと思うぞ」
このガイアースの世界では、ゴッドオーダーでマジックアイテムを製作するツールを出す事で、個人でマジックアイテムを製作する事は可能である。
雑貨屋でも、ストレングスのような簡単なアクセサリーも売っているのだが、マジックプロパティーの効果はランダムにつくのである。ケンジの製作した様な、ストレングスを任意につける事は出来ないのである。
「でも、その効果が付いた蹄鉄があれば……」
「よく考えて見なよ!ゴッドオーダーでツールを出したとして回数制限のあるツールで、誰が好き好んで馬の蹄鉄を作るんだ?そして、仮に製作をして蹄鉄の効果がHPを増やすものだったり、クリティカルが出やすかったり、馬車を引くのに、必要なストレングスが付かなかったら大損になるんだぞ」
「た、確かに……」
「そして、運よくストレングスやリジェネレートが付いたとしても、平民が買えるような値段でしか売れないと来たら、誰もそんな冒険をして製作なんかするわけないからな!」
「なるほど……」
「というわけで、又鍛冶工房は、蹄鉄部門を作らないといけないなあ!」
「えっ⁉部門を作らないといけない程、売れる見込みがあるのですか?」
「当たり前だろ!そうじゃないと、馬車の利益を2割でいいなんていう訳ないじゃないか!」
ケンジは、ギルドを騙したわけではないのだが、出し抜く事となるのである。
「なんでですか?馬車を引くための補助的なアイテムなんでしょ?」
「まあ、見てなって!この蹄鉄は爆発的ヒット商品になり、便器までとは言わないが生産待ちになるくらいのヒット商品になるはずだよ」
ケンジは笑顔でそんな事を言い、Freedomの町の奴隷商店へ、蹄鉄部門で働く職人を買いに行くのだった。
そして、ケンジは出来た蹄鉄を持って、聖教国のギルド本部に訪問したのである。
「Freedomのケンジです。ギルドが依頼したアイテムが出来たので、ギルドマスターの面会をよろしくお願いします」
「ケンジ様!ようやくできたのですか?」
「ああ!待たせて申し訳ないな!」
「では、さっそく奥の部屋へどうぞ!」
ケンジは奥の部屋に通され、ギルドマスターや幹部達が急いで部屋にやってきたのだった。
「ケンジさん!アイテムが出来たって本当ですか?」
「ああ!これがあれば、あの重い馬車も簡単に引くことが出来るよ」
「で、そのアイテムは?」
ケンジは笑顔で、鞄から蹄鉄を取り出したのである。そのアイテムを見たギルドマスターをはじめ、幹部達は眉を顰め顔を真っ赤にして怒り始めたのである。
「ケ、ケンジさん!我々を馬鹿にしているのですか⁉」
「な、何を言っているのですか!俺は本気だぞ!」
「そんな馬の蹄鉄で踏ん張りが効くだけで、あの馬車は重くてスピードなど出ませんよ!そんな事も分からないのですか?」
「なっ!そんなの百も承知、これがただの蹄鉄なわけある訳ないだろ?これを嵌めた馬に、あの新作の馬車を引かせてみなよ!」
ギルドマスター達は、ケンジの言う通りギルドの訓練場に、用意した馬車と馬の所に行くのだった。ギルドには、すでにケンジが訪問した噂が拡がり、訓練場に野次馬が集まっていたのである。
「おい!あの馬たちがあんな重い馬車を引けるのか?」
「あのFreedomの事だから引けるんじゃないのか?」
「俺、あの馬車を近くで見たけどむっちゃ重そうだったぞ?」
「確かに普通に引くことはできるとは思うけど、最低6頭はいないと今までの倍のスピードは出ないと思うぞ?」
「まあ、見てからのお楽しみだな」
「俺よう、Freedomが失敗したところ見てみてぇんだよな」
「確かに、それは面白そうだよな!」
「あんた達!何言ってんのよ?成功してもらわないといけないんだよ?」
「でも、そんなFreedomもみたいと言っているだけで、成功して欲しい気持ちもあるぜ!」
冒険者達は好き勝手な事を言って、お祭りのようにはしゃいでいたのである。それを聞いていたギル達は、眉がピクピク動き、怒りをあらわにしていたのである。
「ギルもシスティナも落ち着けって!」
「ですが!主……私は、あんな好き勝手言われて悔しいです!」
「そうですよ!ご主人様が、誰のために協力していると思っているのですか?」
「まあ、そんな気にすんな!こういったことは結果が全てなんだよ。見てな!すぐに目の色を変えて、手のひら返しをしてくるから!」
ケンジ達は、冒険者を横目に内緒話のように話していたのである。そして、馭者が馬に蹄鉄を嵌め、馬車を動かす準備が整ったのである。
その馬車は長距離用の、幕の張った荷馬車であり、中には荷物が十分に積んだ状態の馬車であった。
「ケンジさん!本当にあんなに荷を積んで良かったのですか?」
「ああ!構わないよ。あれぐらい積んだ状態で、この訓練場を何周もしないと実験にならないだろ?」
「それはそうですが……」
「では、馭者さんゆっくり発進してくださいね。馬のパワーがあると思うんで、いきなりだと操縦が難しくなりますからね」
馭者は、ケンジの言う通り鞭を優しく振るい、馬車をゆっくり発進させたのだ。馬の様子は、普通に走っている様子で、従来の馬車のスピードだったのである。
「どういう事だ?馬2頭しかいないよな……」
「えぇ……」
観客である冒険者達も、その様子に口をポカンと開けて驚いていたのである。ギルドマスターも、目の前で起こっている事が信じれなかったのだ。
そして、一周してきた馬車に向かって、ケンジは大きな声で言ったのである。
「馭者さん!少しづつスピードを上げてください」
馭者は、ケンジの言葉に黙って頷くのだった。すると、徐々に馬車はスピードを上げ始めたのである。
「おいおい!どういう事だよ……」
「俺は夢を見ているのか?」
「多分大丈夫だ……俺達も同じものを見ていると思うぞ……」
「「「「「……」」」」」
観客は口々に、信じられないと言い、ギルドマスターのオッシも目をこすり、幹部達も何が起こっているのか理解できなかったのだった。
そして、30分その速度のまま馬車は走り続けたのである。ケンジ達からしたら、ハヤテの速度に慣れてしまっているので凄く遅く感じられたのだが、ギルドのメンバーからしたら、長距離の旅がこの時から、新しい時代の幕開けのような感じで湧き上がっていたのである。
「ケンジさん!本当にありがとう……これで、ギルドは本当に吹き返す事になります!」
オッシは、ケンジの手を力強く握り、頭を下げ何回もお礼を言ったのだった。ケンジも又、オッシの手を握り返し笑顔になっていたのだった。
そして、ケンジ達はギルドの部屋に戻り、契約をすましたのである。
「ケンジさん、契約はすみましたが、本当に馬車の利益は2割で良かったのですか?」
「ああ!それで十分だよ。俺の本命は、この蹄鉄なんだからさ!この蹄鉄の売り上げは、ギルドには全く入らないだろ?まあ、取られたらFreedomの利益が出ないんだけどな……」
「でも、そんなに安くしてしまっていいのですか?」
「だけど、普通の蹄鉄よりかは高いよ」
「そりゃ、マジカルアイテムですからね!もうちょっと高くしても、行商ですぐに取り戻せるから、購入した人達も損したと思いませんからね」
「損したと、思わない値段設定がちょうどいいのですよ」
「それでは、月末には500セットの納品をお願いします!」
「ええ!わかってますよ。絶対にギルドはその値段で売ってくださいよ!」
「ああ!わかってます。中間マージンを取って、あなたを怒らせて売ってもらえなくなったら、馬車も使えなくなるのですからね」
「いいですね?この間言った、前の政権で好き勝手やっていた部下達には十分注意してくださいよ」
「ああ!肝に銘じておくよ」
ケンジは、ギルドの上層部に念を押して、Freedomへと帰還したのだった。
そして、横を見た時、ギル達護衛メンバーは笑顔であったのだった。理由は、馬車の成功で冒険者や生産者達が、ケンジの側に寄ってきて観客席で言っていた無礼な言葉を、丁寧に謝罪したからであったからだ。
その謝罪は、ギル達奴隷にもあったのである。
「お前達の、主に失礼な事を言って、お前達の気分も害してしまって本当にすまなかった!」
「「「「「「えっ⁉」」」」」」
ギル達が驚いたのは、奴隷に対して冒険者達、平民の立場にある人間が頭を下げたからであった。
この行動は、ガイアースにて信じれない事であり、その行動からしてもギルド全体が変わってきていたことを、証明できる出来事だったのだ。
ギル達は、その行動だけで本当に謝罪していることが分かり、反対に恐縮したほどだったのだ。
「ご主人様……ギルドは、本当に変わってきているのですね」
「ああ!そうだな……」
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だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
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