上 下
428 / 619
第9章 Freedom国の発展!

93話 ケンジの条件

しおりを挟む
 ギルドが、馬車を製作し始めてから1年と半年の時が経ったのである。最新式の馬車は、スピードを2倍とはいかなかったが50%増しとなったのである。だがこれは、荷馬車に馭者しか乗っていなかった場合であった。
 これに、輸送物や護衛メンバーのパーティーが乗った場合、馬車の重さが増える為、さらにスピードが落ちる事となったのだ。

「ギルドマスター!今の技術ではこれが精一杯です……」

 現場で働く生産者達もやる事はやり、ギルドマスターに頭を下げるのであった。だが、ギルドマスターは馬車に何も積んでいない状態で、スピードが50%増しという結果に納得出来なかったのである。
 馬車のスピードが上がったとしても、輸送に使うと従来の馬車と気持ち程度上がっただけでは、誰も納得して新しく買い替える人間はいないのである。

「本当に、これが限界なのか?」

「「「「「……」」」」」

 ギルドマスターのオッシの言葉に、肯定したくない現場の生産者達は押し黙ってしまったのである。

「どうした?本当にこれが限界なのか?」

「「「「「はい……」」」」」

「そうか……わかった!みんな今まで本当に頑張ってくれた!ありがとう。これからどうするか、上層部で検討してみる!もし新しいことが決まったら又協力してくれ!」

 オッシの言葉に、生産者達は力になれなかった事に申し訳なく思い、頭を下げて馬車工房から出ていくのだった。

 オッシ達は、会議室でこれからの事を議題に上げるのだった。

「さて、みんなにも礼をいいたい。本当にこの1年半ご苦労だった!」

「「「「「ギルドマスター!申し訳ありません!」」」」」」

「何を謝っている?ワシは君達の頑張りを見てきた。これ以上できないというところまで、頑張ってくれたではないか?」

「ですが、商品化できなければ、その頑張りは無駄になるではありませんか……」

「いいや、無駄なんかには終わらせないさ!」

「この経験は、君達の糧となるはずだよ!これからはその頑張りを思い出せば、次はもっと頑張れるはずだ!」

「ですが、馬車の改良は失敗に終わりました……」

「誰が終わらせると言ったんだ?」

「「「「「えっ⁉」」」」」

「この案件はワシの責任で、Freedomに持っていく!レーラが半年前、ギルドに提案した事を今やろうとおもう!」

「ギルドマスター!」

 幹部達は、何とも言えない顔をしたのである。最終的に、Freedomに話を持っていくのなら、もっと早くしてた方が良かったのではないかと疑問に思ったのである。

「みんなは、この行動に疑問があるみたいだな?」

「なぜ?今になって、Freedomに持っていくのですか?どうせ持っていくのなら、もっと早く持っていけば予算をこんなに使わなくても良かったではありませんか……」

「お前達の言う事ももっともだが、あの段階で持って行ってもギルドに得になることは無かったよ。今の段階まで、馬車を改良出来たじゃないか?やれるところまでやれたから意味があると思わないか?」

「そ、それは……」

「あのときに、Freedomに持って行っても、それは途中で投げ出したとしかワシは思わなかったんだよ。だけど、限界までやってできないという事は、ギルドにまだその技術がなかったと諦めがつく……悔しいけどな」

「「「「ギルドマスター……」」」」
「わたし達が、不甲斐ないばかりで申し訳ございません……」

「だから、謝るでない!ワシはお前達を頼りにしているんだ!次は頑張ってくれよ!」

「「「「「「はい!」」」」」」

「それで、Freedomにアポイントメントを取ってくれ!アーチェとモーリス、それとレーラ付き添いをよろしく頼む!」

「「「はい!」」」



 次の日、ギルドマスターとアーチェ達はFreedomへと訪問したのであった。

「お久しぶりです!」

「お久しぶりです。今日はいかがなされましたか?」

 ケンジの後ろにはムシュダルク達もいて、ケンジの言う通りギルドは商品、馬車の新製品の協力を仰いでくるのかと興味津々であった。

「今日は、ギルドで新商品の事で、ケンジさんにお知恵をお借りしたく参りました。どうか、ギルドを助けていただけませんか?」

「相談事に寄りますが、どんなことでしょうか?」

 ケンジは白々しく、ギルドマスタの答えを引き出そうとしたのである。そして、ギルドマスターの口から改良した馬車の説明があり、ムシュダルクやアルバン達は目を見開き驚くのであった。

「実は、この一年半ギルドでは、町と町の流通を便利にしようと画策し、新しい馬車の開発に邁進してきました」

「だけど、その成果が思ったより出なかったと?」

「そうです!我々ギルドにある技術を総動員させたが、まだ無理だったようです……」

「それでなぜ、俺にそんな話を?」

 ムシュダルク達は、ケンジの交渉術を見て唖然としてしまうのである。ここまで、ケンジが前もって自分達に説明したとおりになっているのである。
 ギルドが、流通を活性化させようとスピードが出る馬車を開発、しかしそれに失敗とは言わないが、十分な成果が出ずFreedomに話をし協力要請してくる行動、全てを言い当てていたのである。

「昔、うちのレーラをケンジさんの馬車に乗せてくれたそうですね?」

「あっ……あぁ……そんなこともあったかな?」

 ケンジは、あえて惚けたのである。するとレーラが口を挟んできたのである。

「あの時、ケンジ様の馬車に乗せていただき、私はカルチャーショックをうけました。あんな速い速度で走る馬車を見たことがありません!どうか、あの技術をギルドの馬車に!」

「待て待て!レーラも、あの馬車の事はよく知っているだろ?あれは、ハヤテがいてこそあの速度が出るんだ!普通の馬には、あの馬車は重くて引く事すら出来ないよ」

「ケンジさん!レーラからはそのあたりの事も聞いてます。どうか協力の程お願いしたいのです!このままでは、あの馬車は中途半端に終わり、ギルドは何もできないだけの結果が残るのです」

「オッシさん、貴方はその失敗した馬車をどのようにしたいのですか?」

「えっ⁉」

 ギルドマスターはケンジの言葉に驚いたのだった。今までギルドマスターとしか言われた事がなかったのに、いきなりさんづけで名前を呼ばれたのだ。

「えっ、じゃないよ。馬車をどのようにしたいのか聞きたいんだ。その理由によっては協力してもいいよ」

「この馬車は、行商人の命を守るのと同時に、色んな町の文化を取り入れる為のものだ。この馬車で町が繁栄してくれることを確信している!」

 ケンジは、オッシの言葉を聞き目をつむり口角を上げたのだった。ギルドの説明は利益より、町の繁栄を願ってその馬車を開発したと言い切ったのである。

「わかったよ!ギルドが変わった事を理解させてもらった。協力させてもらうよ」

「ほ、本当か?」

 ケンジの言葉に、オッシをはじめレーラ、そして幹部達も笑顔となったのである。

「ただし、条件があるけどいいか?」

「えっ⁉利益の取り分の事ですか?なるべく安くしていただけるといいのですが?」

「いや、馬車の売り上げの取り分は、Freedomは2割でいいよ!」

「「「「「「えええええ~~~~!」」」」」」

 ケンジの言葉に、オッシはもちろん幹部達も大きな声を上げたのである。そして、ケンジ側のムシュダルク達も大声で叫んだのである。

「ケンジ様!何を言っているのですか?ここはもう少し取り分を増やしても!」

「ムシュダルクさん、この馬車はギルドの命運をかけて製作した企画だよ。Freedomは本来なら口出しは出来ない商品だったんだよ」

「しかし、アイデア料としては安すぎます!」

 ギルドからしてみれば、何とも魅力のある話である。だが、水飴の時の事もあり、オッシは緊張したのである。

「ケンジさん……その条件ではあまりに怪しすぎます!少なくとも6割を、Freedomの取り分にしていただけませんか?」

「まあ、そう思うのが普通ですよね?ギルドも、少しは成長しているみたいでやりにくくなってきましたよ」

 ケンジは笑顔で、皮肉っぽく言ったのだった。

「ケンジ様には、色々勉強させていただきましたからね。もう引っかかりませんよ!」

「まあ、待ちなよ。話だけでも聞かないか?」

「Freedomに協力をしてもらうのです。条件というのを聞きましょう!」

 オッシは、ケンジが何を言うのか、緊張で生唾を飲み込んだのである。

「俺の馬車は、鋼鉄製であり色んな場所に技術が組み込んである。それを可能にするのは重量のある馬車になり、ハヤテが引くか馬を何十頭も集めて引かねば、既存の馬車より速いスピードは出ないと思うよ!」

「それは、木材では無理なのですか?」

 ケンジは、ベアリングやサスペンションを木材で等絶対無理だと思ったのである。少なくとも土台部分は、鋼鉄製じゃないと無理だとオッシに言ったのだった。

「絶対に無理だ!だが技術は教える。安定感が出て、スピードは従来より2倍は必ず出ることを約束しよう。でだ、ここで条件が出るんだが、そんな重い馬車を誰が引くのかという問題だ!」

「た、たしかに……」

「それを可能とする物を俺が作るから、そのアイテムはFreedomの売り上げにして欲しいんだよ!そういう理由で馬車の利益は2割でいいと言ったんだ」

「ちょ、ちょっと待ってください‼それでは、そのアイテムが無いと馬車が動かないっていう事ですか?」

「そうだけど?」

「では、そのアイテムが物凄く高価なものだった場合、平民達には購入できずギルドが思う馬車とは違うものになるではありませんか!」

「おいおい!何を言っているんだ?俺達Freedomが、そんなあこぎな商売するはずないだろ?貴族や王族相手なら話は変わってくるが、平民に対してそんな暴利をむさぼる事は絶対にしない!約束する」

「あっ!」

 ケンジは、オッシの瞳を力強く見つめて訴えかけたのであった。そして、オッシはケンジがそんなことするはずないと今までの行動で誤解だと思ったのである。

「まあ、でもギルドの言う通り、そのアイテムが無ければ、普通の馬では4頭引きじゃないと旅は無理になる。どういう決断をするかはギルドにまかせるよ」

「少し、話を持ち帰ってもよろしいですか?」

「ああ!かまわないよ。ゆっくり会議で話したらいいよ。納得して決断したほうがいいとおもうしね」

 オッシ達は、ケンジの条件を持ち帰るのだった。そして、すぐさまギルドでは会議を開くのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依
ファンタジー
主人公である小野田博俊(おのだひろとし)は女神ミーレヌのせいで死んでしまい、 異世界であるミストラルに転移してもらう。  そこには研磨という職業は無く、博俊は研磨でお店を開き、魔法と掛け合わせて 楽しく儲けて生活する物語。  研磨で新しい効果を生み出し、時には笑い時には悲しみありの長編小説。に、 したいとおもいます(*^-^*)

「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。

太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。 鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。 ゴゴゴゴゴゴゴゴォ 春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。 一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。 華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。 ※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。 春人の天賦の才  料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活  春人の初期スキル  【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】 ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど 【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得   】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】 ≪ 生成・製造スキル ≫ 【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】 ≪ 召喚スキル ≫ 【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

処理中です...