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第9章 Freedom国の発展!

64話 女神降臨

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 ケンジ達と教皇達は、大聖堂で睨みあい誰かが一歩でも動こうとすれば、この神聖な場所が戦場と化すような状態であった。

「むぐぐぐ!」

 その時、大聖堂の入り口から冒険者達が衛兵と共に流れ込んできたのである。冒険者ギルドも、今回の騒ぎに駆けつけ、城門から続く拘束された衛兵達を解放し、教会本部に援護しに突入してきたのだった。

「ケンジとやら、それまでだ!大人しくしてもらおうか!」

「おおお!よくぞ参ってくれた!この大罪人を捕らえてくれい!」

 教皇は、冒険者と衛兵が大量に流れ込んできた事に、笑みを浮かべ勝ち誇ったのである。

「教皇!何を喜んでいるんだよ。俺達を止めたきゃ、連合国の5倍の人数を用意しないと無駄なんだよ!」

「戯言を!たった10人ほどで、この人数を相手にできるわけなかろう!」

 教皇の言う事は最もである。この大聖堂に衛兵、冒険者が集まり外にも入りきれない冒険者達が、包囲していたからである。

「皆のもの!こいつは大陸中の災害、魔王の生まれ代わりのケンジだ!かかれえい!」

 教皇が、ここにいるテンプルナイトをはじめ衛兵、冒険者に指示を出したのである。その号令と共に、テンプルナイト達が一歩踏み込んだ時だった。

『待ちなさい!』

 聖都にいる、すべての人間の頭の中に響くような声が聞こえたのである。兵士達は、この声はいったいなんだ?と騒めきだしたのである。
 ケンジとマイだけは、声の主がわかっていたようで落ち着いていたのである。

「な、なんだ?」
「頭の中に声が!」
「お前もか?なんなんだこの声は?」
「だが、暖かい声だ!」

 すると、大聖堂にある、神像のステンドグラスがあり得ないくらい輝き、神像に後光がさしたようになったのである。

 そして、天から一筋の光が舞い降り、その光の中から女神クローティアが降臨したのである。その姿を見た、教皇をはじめ大司教達は、その場にふれ伏したのである。この現世に、女神が降臨したのは実に1500年ぶりの事であった。

『皆の者!わたくしは女神クローティアです!』

 その姿に、この場にいる者全てが頭を下げていた……いや、聖都中の人間が大聖堂の方に向いて、土下座していたのである。

『ケンジさん!今回の事は本当に申し訳ございません……わたくしの信徒達が、ケンジさんにご迷惑をおかけしました』

 教皇達は、クローティアが平民であるケンジに、謝罪した事が信じれなかったのである。

「女神クローティア様!なぜこんな得体のしれない平民に謝罪なんか……」

『おだまりなさい!いつわたくしが、ケンジさんを魔王の生まれかわりと聖女に啓示したのですか!』

 クローティアは、怒りに任せて声を荒げたのである。その声に、教皇はもちろん全ての人間が恐怖したのである。

「申し訳ございません!」

『謝罪したとして、ケンジさんが許したとしても、わたくしは絶対に許しません!聖都にいるすべての信徒達よ!女神クローティアの名にかけて、Freedomは魔王の生まれ変わりではありません!全ての元凶は、ここにいる教皇と大司教にあります!』

「「なっ!」」
「女神様!そんな根も葉もない……」

『貴方は、女神の言葉を否定するほど、偉い神なのですか?』

「ぃ……ぃぇ……そんなことは……」

『テンプルナイト達よ!この者二人を捕らえなさい!』

「「「「「はっ!かしこまりました!」」」」」

「「……」」

 教皇と大司教は、女神からの命令で大人しく捕縛されてしまい、大聖堂から出されてしまったのである。

『ケンジさん、このたびは本当に申し訳ございません。教会の責任はこれで許してもらえませんか?』

「ああ!女神直々に裁いたんだ。俺がどうこう言えるわけないよ。だけど、この後どうするつもりだ?」

 女神クローティアはニコリと微笑み、聖女の方を向いたのである。

『聖女アリサ。長年監禁されていて助け出すことが出来なくて、申し訳ありません……』

「女神様一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

『なんなりとお聞きください』

「なぜ、今まで私を助けてくれなかったのですか?こうして降臨して頂けたら、わたしは今まで聖女として監禁されなかったはずです」

『わたくしが、こうして降臨できたのはここ信徒が集まる場所。聖職者が少なくとも他の町よりも多い事と、ケンジさんが、この場所に来てくれたからです』

「と言う事は、降臨したくとも出来なかったという事でしょうか?」

『はい……貴方には、辛い思いをさせていてもどうしようもなかったのです。申し訳ありません……」

「いえ。それがわかった事で、わだかまりが消えました」

『それで、聖女アリサにお願いがあります!今度は貴方が、聖教国を導いてくれませんか?』

「わ、わたしがですか?」

『はい!今、聖教国には教皇も大司教もいません!先導者が必要なのです。聖女のあなたなら、人の痛みもわかるでしょう!』

「私は、もう……この国から出たいのが正直な気持ちです……」

『そ、そうですか……いくら女神でも無理強いは出来ませんね……』

 すると、テンプルナイトや司教達が聖女に向かいひれ伏すのである。

「聖女様!お願いであります。我々がこんな事を言える義理がないのはわかっています!ですが、我々の先導者になってください!」
「お願いします!」
「この聖教国は、聖女様に出られては崩壊してしまいます」

『皆の者!やめなさい!聖女アリサは、今まで辛い境遇にあったのです!この国を出たいと言うのは、当たり前ではありませんか?』

「ゥぐ……ですが、教皇はいなくなり、この上聖女様までが……」

『それも致し方ありません!この国は無くなり、他の国へと移り変わるでしょう!わたくしとしては、少々寂しい気がしますが……』

「あの……女神様この国が無くなると、女神様はどうなるのでしょうか?」

「聖女アリサ、それを聞いてどうするのですか?貴方は、聖女でない普通の人生を歩みたいのではないのですか?』

「それはそうですが……なんか女神様のその寂しいと言う言葉が……」

『この聖教国が無くなれば、信徒達はいなくなると言う事です。聖職者以外の方でも、毎朝お祈りをしてくれている方もいます。だけど、聖教国が無くなり何十年何百年と経つと、人々はわたくしの事を忘れ去る事になるでしょう!
それが寂しいと言ったのです』

「そんな事がある訳!」

 聖女アリサが慌てて否定しようとしたが、ケンジが口を挟むのであった。

「まあ、そうなるだろうな!今はそんなことは無いけど、人間の一生なんて良く生きて80年だ!世代交代が進むにつれ、こういった聖教国みたいな国が無くなれば、あっという間に人間は忘れてしまうよ!」

「そんな事はない!」

「本当に、そう思うなら頭の中がめでたいと思うよ!エルフや長命種族なら、言い伝えられるかもしれないが人間には絶対無理だね」

『ええ……ケンジさんの言う事が正しいと思いますよ!その昔、わたくしとコンタクトが取れる人間はたくさんいましたが、今はどうですか?」

 クローティアの言葉に、周りにいた人間が騒めいたのである。この時代では唯一聖女だけが神とコンタクトが取れると信じられていたからである。

『疑いますよね?ですがこれは事実であり、人間達がわたしとコンタクトがとれなくなったのは、まだ数百年しかたっていないのですよ?』

 それを聞き、アリサをはじめ聖職者たちは愕然としたのである。人間とはなんとも忘れやすい種族だという事を、思い知らされたのである。
 そして、聖女アリサは胸の奥に何か決意したように、クローティアに話しかけるのだった。

「女神様!やっぱり私に先導者をやらせてください!お願いします‼」

『本当によろしいのですか?やるとなると、貴方は聖教国のトップとなり自由は無くなるのですよ?』

「はい、覚悟のうえでございます。わたしの自由より、聖女としての人生を歩みたいと思います。そして、未来永劫クローティア様を人間社会から忘れないよう布教していきたいと思います」

『そ、そうですか……でしたらしっかり頼みましたよ!テンプルナイト達司教達もしっかり聖女を支えないといけませんよ。分かりましたね』

「「「「「「はっ!女神クローティア様の御心に誓いまして!」」」」」」

『それでは、わたくしはいつも貴方達を見守っていますよ。そのことを努々忘れぬように!』

 女神クローティアは、そう言い残し天界へと帰っていってしまったのである。そして、聖女はケンジに向き直り、ひざまついたのである。

「ケンジ様!女神と友人である貴方の国と、親交をさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

「はっ⁉聖教国は俺達に戦争を仕掛けたんだぞ?それがわかっているのか?」

「それはわかっております!ですが、それは皆が教皇に騙されていた事で、これからは私がちゃんとしていきます!だからどうか!」

 聖女の言葉に、司教や騎士達も一同頭を下げたのである。そして、ケンジの頭の中に、女神の言葉が響いたのである。

(ケンジさん、わたくしからもよろしくお願いします)

「ったく……しょうがないな……」

(ありがとうございます)

「えっ?」

「いや、何でもないこっちの話だ!ティアさんに感謝しろよ。聖教国とは、親交させてもらう事にするよ」

「あ、ありがとうございます!」

 ケンジ達は、そう言い残し教会本部を後にしたのである。


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