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第7章 超級ダンジョン攻略!
44話 周辺調査③
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マードック達は、ケンジが無言で【ハウス】を出し、中に入れと言うようにケンジは目で合図した事に、只ならぬ事になるのではないかと思って、背筋がピンと伸びてハウスの中に入るのだった。
「マードック!その装備を脱げ!」
マードックは、油断をして腕を失い、その時にケンジからもらった装備の、腕のパーツもろ共切断されて、壊してしまったのである。
この装備は、ヒイロカネを材料に使い、こんな装備は滅多にお目にかからない程の装備である。
その装備は、今までこんなきれいな断面を残し、破壊された事はなかったのである。それも当然で、このヒイロカネは、アダマンタイトのような硬さと、オリハルコンのような魔力を蓄え、ミスリルのような軽さを持った金属である。
並みの魔物なら、傷一つ付けることはできないのである。これは、SSランクであるハヤテにもこんな真似はできないと思うほど、丈夫な装備なのだ。
「主!申し訳ありません!もう、絶対油断をしないからこの装備を、俺から取り上げないで下さい!」
マードックは、ケンジがいきなり装備を脱げと言ったので、マードック自身、この装備を使いこなす事は無理と、判断され取り上げられるとおもったのだ。
「いいから、脱げ!」
すると、オリヴィアもまた一緒に、ケンジに謝罪をし始めたのだった。そして、その姿を見た、ギル達も一緒に謝り出したのだった。
「ご主人様・・・マードックから、その装備を取り上げないでください!お願いします!」
「そうです!マードックは、ちょっと調子の乗る所がありますが、アタッカーとしての腕はぴか一で、その装備がないとこれから、立ちいかなくなります。」
「ケンちゃん!あたしからもお願いだから、その装備をマードックに使わせてあげてよ。」
マードックは、ケンジに土下座したまま動かず、反省したままであった。
「ハウスは、このままにして一旦、町に帰る!」
ケンジはみんなを睨み、ただそれだけ伝え、マードックから装備を脱がせ、転移マットで町に帰還したのだった。
ケンジ達が、転移マットで早々に帰還した事に、セバスは驚きを隠せなかったのだ。
「ご主人様!どうかなさったのですか?」
「いや、ちょっとな・・・・」
「ギル達は、今日一日ゆっくりして、反省するんだ!」
ギル達は、ケンジに今までに無い感じで、突き放されたように指示を出され、顔が真っ青になるのだった。
「マイとセバスは、ちょっと来てくれるか?」
ケンジは、セバスとマイを連れて、自分の部屋に入って行ってしまったのだ。ギル達は、ケンジに見放されたと思い、トボトボと大部屋に戻って行くしかなかったのであった。
そして、大部屋に戻った、ギル達は反省会を始めたのだった。
「みんな、すまない!俺が・・・勝手にただのスライムだと思って、突っ走っちまってこんなことに・・・」
「マードック!あんたはいつも調子に乗り過ぎなのよ!あれほど、いつも言って注意しているのに!」
「まあ、今は待てオリヴィア・・・もう過ぎてしまったことだ。今更そんな事を言っても、元には戻らん!」
「だけど・・・」
「ギル・・・すまねぇ・・・俺が調子に乗ったばかりに・・・」
「ああ!マードックはもうちょっと、色々考えてから行動した方が良かったな。」
「だけど、今回はマードックが、こういう事になっただけで全てを全部、マードックのせいにしたらいけないと思うんだよ。」
「どういいうことよ!」
「まあ、オリヴィア落ち着けって!」
「落ち着けるわけないじゃない!マードック!あんたが、死にかけたのはこれで2度目よ!お姉ちゃんが、どんだけ言っても、あんたはちっとも変わらないじゃない!」
オリヴィアは、前にマードックがギルを庇い、死にかけていた事を引き合いに出したのだった。だが、ギルはマードックの援護をして、説明を続けるのだった。
「確かにそうなんだが、今回俺も浮足立っていたのは事実なんだ。ひょっとしたら、今マードックの立場が、俺になっていたかもしれなかったんだ。」
「マードックとギルは違うじゃない!」
「いや、今回は俺も、自分の力・・・3次職になった力を、試したかったのは事実で、俺は後衛職だからな、前衛職ならマードックの様に飛び出してたかもしれないんだ・・・」
「でも、実際今は、マードックが原因でこんな事になっているのは確かじゃない。」
「ああ、そうだな!でも、だからってマードック一人のせいにするのは間違っているだろ?」
「わたしだって、そんなことはしたくないわよ!だけど、ご主人様のあの目を、ギルはちゃんと見たの?わたしは、ご主人様のあんな目は見た事ないわよ!」
「ああ・・・俺も、主のあんな目は見た事なくて、固まってしまったよ・・・」
「あたしも、ご主人のあんな目は初めてみました・・・いえ、初めて見たというか向けられたのは初めてでした。」
セイラは、普段意見を言わないのである。それは、ケンジの奴隷の中で唯一犯罪奴隷の為、自分はしゃしゃり出てはいけないと考えて、空気を読んでいると言う感じである。そのセイラが、意味深な事を言ってきてみんな、かたまってしまったのである。
「セイラも、やっぱり気づいた?」
セイラはプリムのセリフにコクンと首を一回上下に振るのだった。
「プリム、セイラ、今のはいったいどういう事だよ。」
マードックは不穏な予感がしてしょうがなくて、大きな声を出してしまったのである。
「マードック・・・言いづらいんだけど、あの目のご主人様は・・・」
プリムは、そのあとの言葉を言い出せなかったのである。ギル達もまた、プリムが何を言おうとしたのか、なんとなく察知した様な感じだった。
そして、マードックは自分からボソッと呟くのだった。
「主が、ギルドとか言っても変わらない奴らを見放した感じか・・・」
マードックは、自分で言ってそのまま、泣き伏せてしまったのだった。ギル達もまた、マードックにどんな言葉をかけていいのか分からず、その場で立ちすくむしかなかったのであった。
一方こちらは、ケンジの部屋の様子なのだが、マイとセバスは、ケンジの様子を窺(うかが)うしかなかったのであった。
「ご、ご主人様・・・いったいどうかなさったのですか?」
「セバス、今回ダンジョンに潜ったそうそう、マードックが死にかけたのよ。」
「はぁ?マードックが死にかけた?あのマードックがですか?なんで?」
マイから、理由を聞いたセバスは信じられないとばかりに、パニックを起こすのだった。
「で、ケンちゃんは出かける前にも、みんなに油断だけはするな!と言ってたじゃない?」
「ええ・・・そうでしたね。ですから、留守番をしていた人間全て、もう一度気を引き締めたはずです。」
「だけど、ダンジョンに入ってすぐに、遭遇した魔物がスライムだったの。でも、マードックは相手を侮り、ただのスライムと思い込んで死にかけちゃったのよ・・・」
ケンジは、マイの説明が終わるや否や、マードックの装備の腕の部分を、セバス見せるのだった。
「今回、腕の部分で不幸中の幸いだった。マードックがあのまま動けず、スライムの体当たりを受けたら、体が真っ二つになり、ダンジョンに吸収されていてもおかしくなかった・・・」
「もし、マードックがあのまま死亡していたら、俺は後悔してもしきれなかったと思う・・・・」
「でも、ケンちゃんのせいじゃないよ!あたしも、まさかあんなスライムがいるなんて思わなかったし、行く前にケンちゃんに言われた事を思い知らされたもの・・・」
ケンジの言った事で、地上は超級ダンジョン並みに危険は無かったが、ダンジョンの一階層で、あんな見た事もないスライムが出現するとは、思ってもいなかったのである。
「マードックは、あの性格では駄目だな・・・」
ケンジから、思いがけないセリフが飛び出し、マイもセバスも慌てるのだった。
「ちょっと、ケンちゃん!一回の失敗で、マードックを見捨てるつもり?」
「おいおい!何を言っている!」
「そうでございます!ご主人様、思い直してください!マードックはたしかにお調子者だとは思いますが、日頃からご主人様の役に立つんだといい、剣の修業をまじめに取り組んでいるのでございますよ」
「そんなこと、セバスに言われなくても分かっているつもりだよ。だけど、死にかけたのは今回で2回目だ!」
「でも、前回はギルを庇った事での名誉の負傷だっただけじゃない!だから、今回のような油断は1回目よ。」
「だったら、今回は見逃して、また今回のような事があって、マードックが死んでしまった時、マイはしょうがないと諦められるのか?」
「それは・・・」
「だったら、今その不安を取り除かないでどうすんだよ!」
「でも・・・それじゃ、マードックはどうなるのよ?」
「じゃあ、マイ!お前は今回はたまたま油断をしました。いつもはもっとちゃんと訓練してます。だから、マードックを許せというのか?そんなバカな話はないだろう!」
「でも・・・」
「言っておくけどな!今回、たまたま運がよかっただけなんだぞ!あれがスライムでなく、もっと厄介な魔物だった場合、全滅も十分あり得る事だとなぜ想像がつかない。」
「「全滅・・・・」」
「そうなった場合、セバスたち留守をしている人間はどうなる?」
「それは・・・」
「俺達に、今回たまたま失敗しましたとか、次回はちゃんとしますなんて言い訳が本気で通ると、マイは本気で持っているのか?」
「確かに、みんな3次職になって、俺の言う通り強くなってその力を試したい気持ちはよくわかるよ。だけど、その力を自信に持つのは構わない!でも、過信したら絶対ダメだ!」
「じゃあ、ケンちゃんは、マードックを見捨てるつもりなの?」
「は?なんで俺が、マードックを見捨てることになるんだよ!」
「え?でも先ほど、マードックの性格はだめだなと、おっしゃったではないですか?」
「ああ!ダメだと言ったよ。だから、俺はマードックを思いっきり殴ったよ。だけど、それが何でマードックを見捨てる事になるんだよ。」
「だって、ケンちゃん・・・マードックから、装備も取り上げたじゃない!」
「はあ?こんな壊れた装備、修理しないと使い物にならないじゃないか!そのまま、使える訳ないじゃないか。修理してまた、渡すに決まっているだろ。」
「ご主人様・・・それならそれで、ちゃんとマードック達に説明しないと、きっとマードック達は誤解して、落ち込んでいると思いますよ。」
「ああ!それはわざとああいう態度を見せたんだから構わないよ。」
「ケンちゃん!それは、いくらなんでも酷いよ!」
「いいや・・・これは、あいつ等の気持ちを引き締める為に、一番効く方法として、俺は心を鬼にしてワザとあんな目つきをして、あいつ等を突き放したんだ。」
「ケンちゃん・・・それはいくらなんでも悪趣味すぎるよ・・・」
「これで、あいつ等も俺の言いたいことが身に染みると思うから、セバスもマイも、俺が見捨てた訳じゃないと、絶対に言うなよ。」
「でも、そのままにして、マードック達は精神的に大丈夫ですか?」
「このまま、何も対策を取らず死なれる方が重大な事だよ。」
ケンジは、ギル達の一番堪えるであろう方法を、心を鬼にしてとったのである。マードックの性格上、このまま装備を修理をして渡したとしても、また調子に乗り取り返しのつかない事をされるよりは、今回の事を教訓に活かし、また、同じことをしたら本当に、ケンジから見放されると思わせようという、荒療治に出たのであった。
これは、一見酷いように思えるが、ケンジは冒険者にとって、油断をして命を落としたらそれで何もかも終わりなのだと、マードックに判らせないといけないと思ったのである。
そうならない為にも、今ここで、ケンジは悪役をかってまで、マードックの教育をしなければならないと、この段階で強く考えたのだった。
「でも、ご主人様・・・」
「なんだ?」
「本当にいつも、我々の事を想っていただき、本当にありがとうございます。」
セバスは、ケンジに深々と頭を下げるのだった。ケンジは、セバスに改めて頭を下げられ、なんか凄く照れ臭くなってしまい、一言言って部屋を出ていってしまったのだった。
「そんなじゃないよ・・・今回は、マードック達の行動には、本当に腹がたったから憂さ晴らしのつもりでやっているだけだ!」
ケンジが出て行った部屋には、マイとセバスが残され、お互いが目を見あわせ笑顔になり、噴きだしてしまうのだった。
「まったく・・・ケンちゃんたら、照れちゃって素直じゃないんだから・・・」
「でも、ご主人様の今の気持ちを知ったら、マードック達もしっかり反省するでしょうね。」
「あたしも、今回は本当に思い知らされたわ・・・まだまだ、世の中には知られていない事が、たくさんあるから自分の経験だけで、判断しないようにしなくっちゃね。」
マイとセバスは、そんなことを話しながら、マードックが今回、本当にたまたま運がよかっただけなんだと思い、しみじみと思っていたのだった。
「マードック!その装備を脱げ!」
マードックは、油断をして腕を失い、その時にケンジからもらった装備の、腕のパーツもろ共切断されて、壊してしまったのである。
この装備は、ヒイロカネを材料に使い、こんな装備は滅多にお目にかからない程の装備である。
その装備は、今までこんなきれいな断面を残し、破壊された事はなかったのである。それも当然で、このヒイロカネは、アダマンタイトのような硬さと、オリハルコンのような魔力を蓄え、ミスリルのような軽さを持った金属である。
並みの魔物なら、傷一つ付けることはできないのである。これは、SSランクであるハヤテにもこんな真似はできないと思うほど、丈夫な装備なのだ。
「主!申し訳ありません!もう、絶対油断をしないからこの装備を、俺から取り上げないで下さい!」
マードックは、ケンジがいきなり装備を脱げと言ったので、マードック自身、この装備を使いこなす事は無理と、判断され取り上げられるとおもったのだ。
「いいから、脱げ!」
すると、オリヴィアもまた一緒に、ケンジに謝罪をし始めたのだった。そして、その姿を見た、ギル達も一緒に謝り出したのだった。
「ご主人様・・・マードックから、その装備を取り上げないでください!お願いします!」
「そうです!マードックは、ちょっと調子の乗る所がありますが、アタッカーとしての腕はぴか一で、その装備がないとこれから、立ちいかなくなります。」
「ケンちゃん!あたしからもお願いだから、その装備をマードックに使わせてあげてよ。」
マードックは、ケンジに土下座したまま動かず、反省したままであった。
「ハウスは、このままにして一旦、町に帰る!」
ケンジはみんなを睨み、ただそれだけ伝え、マードックから装備を脱がせ、転移マットで町に帰還したのだった。
ケンジ達が、転移マットで早々に帰還した事に、セバスは驚きを隠せなかったのだ。
「ご主人様!どうかなさったのですか?」
「いや、ちょっとな・・・・」
「ギル達は、今日一日ゆっくりして、反省するんだ!」
ギル達は、ケンジに今までに無い感じで、突き放されたように指示を出され、顔が真っ青になるのだった。
「マイとセバスは、ちょっと来てくれるか?」
ケンジは、セバスとマイを連れて、自分の部屋に入って行ってしまったのだ。ギル達は、ケンジに見放されたと思い、トボトボと大部屋に戻って行くしかなかったのであった。
そして、大部屋に戻った、ギル達は反省会を始めたのだった。
「みんな、すまない!俺が・・・勝手にただのスライムだと思って、突っ走っちまってこんなことに・・・」
「マードック!あんたはいつも調子に乗り過ぎなのよ!あれほど、いつも言って注意しているのに!」
「まあ、今は待てオリヴィア・・・もう過ぎてしまったことだ。今更そんな事を言っても、元には戻らん!」
「だけど・・・」
「ギル・・・すまねぇ・・・俺が調子に乗ったばかりに・・・」
「ああ!マードックはもうちょっと、色々考えてから行動した方が良かったな。」
「だけど、今回はマードックが、こういう事になっただけで全てを全部、マードックのせいにしたらいけないと思うんだよ。」
「どういいうことよ!」
「まあ、オリヴィア落ち着けって!」
「落ち着けるわけないじゃない!マードック!あんたが、死にかけたのはこれで2度目よ!お姉ちゃんが、どんだけ言っても、あんたはちっとも変わらないじゃない!」
オリヴィアは、前にマードックがギルを庇い、死にかけていた事を引き合いに出したのだった。だが、ギルはマードックの援護をして、説明を続けるのだった。
「確かにそうなんだが、今回俺も浮足立っていたのは事実なんだ。ひょっとしたら、今マードックの立場が、俺になっていたかもしれなかったんだ。」
「マードックとギルは違うじゃない!」
「いや、今回は俺も、自分の力・・・3次職になった力を、試したかったのは事実で、俺は後衛職だからな、前衛職ならマードックの様に飛び出してたかもしれないんだ・・・」
「でも、実際今は、マードックが原因でこんな事になっているのは確かじゃない。」
「ああ、そうだな!でも、だからってマードック一人のせいにするのは間違っているだろ?」
「わたしだって、そんなことはしたくないわよ!だけど、ご主人様のあの目を、ギルはちゃんと見たの?わたしは、ご主人様のあんな目は見た事ないわよ!」
「ああ・・・俺も、主のあんな目は見た事なくて、固まってしまったよ・・・」
「あたしも、ご主人のあんな目は初めてみました・・・いえ、初めて見たというか向けられたのは初めてでした。」
セイラは、普段意見を言わないのである。それは、ケンジの奴隷の中で唯一犯罪奴隷の為、自分はしゃしゃり出てはいけないと考えて、空気を読んでいると言う感じである。そのセイラが、意味深な事を言ってきてみんな、かたまってしまったのである。
「セイラも、やっぱり気づいた?」
セイラはプリムのセリフにコクンと首を一回上下に振るのだった。
「プリム、セイラ、今のはいったいどういう事だよ。」
マードックは不穏な予感がしてしょうがなくて、大きな声を出してしまったのである。
「マードック・・・言いづらいんだけど、あの目のご主人様は・・・」
プリムは、そのあとの言葉を言い出せなかったのである。ギル達もまた、プリムが何を言おうとしたのか、なんとなく察知した様な感じだった。
そして、マードックは自分からボソッと呟くのだった。
「主が、ギルドとか言っても変わらない奴らを見放した感じか・・・」
マードックは、自分で言ってそのまま、泣き伏せてしまったのだった。ギル達もまた、マードックにどんな言葉をかけていいのか分からず、その場で立ちすくむしかなかったのであった。
一方こちらは、ケンジの部屋の様子なのだが、マイとセバスは、ケンジの様子を窺(うかが)うしかなかったのであった。
「ご、ご主人様・・・いったいどうかなさったのですか?」
「セバス、今回ダンジョンに潜ったそうそう、マードックが死にかけたのよ。」
「はぁ?マードックが死にかけた?あのマードックがですか?なんで?」
マイから、理由を聞いたセバスは信じられないとばかりに、パニックを起こすのだった。
「で、ケンちゃんは出かける前にも、みんなに油断だけはするな!と言ってたじゃない?」
「ええ・・・そうでしたね。ですから、留守番をしていた人間全て、もう一度気を引き締めたはずです。」
「だけど、ダンジョンに入ってすぐに、遭遇した魔物がスライムだったの。でも、マードックは相手を侮り、ただのスライムと思い込んで死にかけちゃったのよ・・・」
ケンジは、マイの説明が終わるや否や、マードックの装備の腕の部分を、セバス見せるのだった。
「今回、腕の部分で不幸中の幸いだった。マードックがあのまま動けず、スライムの体当たりを受けたら、体が真っ二つになり、ダンジョンに吸収されていてもおかしくなかった・・・」
「もし、マードックがあのまま死亡していたら、俺は後悔してもしきれなかったと思う・・・・」
「でも、ケンちゃんのせいじゃないよ!あたしも、まさかあんなスライムがいるなんて思わなかったし、行く前にケンちゃんに言われた事を思い知らされたもの・・・」
ケンジの言った事で、地上は超級ダンジョン並みに危険は無かったが、ダンジョンの一階層で、あんな見た事もないスライムが出現するとは、思ってもいなかったのである。
「マードックは、あの性格では駄目だな・・・」
ケンジから、思いがけないセリフが飛び出し、マイもセバスも慌てるのだった。
「ちょっと、ケンちゃん!一回の失敗で、マードックを見捨てるつもり?」
「おいおい!何を言っている!」
「そうでございます!ご主人様、思い直してください!マードックはたしかにお調子者だとは思いますが、日頃からご主人様の役に立つんだといい、剣の修業をまじめに取り組んでいるのでございますよ」
「そんなこと、セバスに言われなくても分かっているつもりだよ。だけど、死にかけたのは今回で2回目だ!」
「でも、前回はギルを庇った事での名誉の負傷だっただけじゃない!だから、今回のような油断は1回目よ。」
「だったら、今回は見逃して、また今回のような事があって、マードックが死んでしまった時、マイはしょうがないと諦められるのか?」
「それは・・・」
「だったら、今その不安を取り除かないでどうすんだよ!」
「でも・・・それじゃ、マードックはどうなるのよ?」
「じゃあ、マイ!お前は今回はたまたま油断をしました。いつもはもっとちゃんと訓練してます。だから、マードックを許せというのか?そんなバカな話はないだろう!」
「でも・・・」
「言っておくけどな!今回、たまたま運がよかっただけなんだぞ!あれがスライムでなく、もっと厄介な魔物だった場合、全滅も十分あり得る事だとなぜ想像がつかない。」
「「全滅・・・・」」
「そうなった場合、セバスたち留守をしている人間はどうなる?」
「それは・・・」
「俺達に、今回たまたま失敗しましたとか、次回はちゃんとしますなんて言い訳が本気で通ると、マイは本気で持っているのか?」
「確かに、みんな3次職になって、俺の言う通り強くなってその力を試したい気持ちはよくわかるよ。だけど、その力を自信に持つのは構わない!でも、過信したら絶対ダメだ!」
「じゃあ、ケンちゃんは、マードックを見捨てるつもりなの?」
「は?なんで俺が、マードックを見捨てることになるんだよ!」
「え?でも先ほど、マードックの性格はだめだなと、おっしゃったではないですか?」
「ああ!ダメだと言ったよ。だから、俺はマードックを思いっきり殴ったよ。だけど、それが何でマードックを見捨てる事になるんだよ。」
「だって、ケンちゃん・・・マードックから、装備も取り上げたじゃない!」
「はあ?こんな壊れた装備、修理しないと使い物にならないじゃないか!そのまま、使える訳ないじゃないか。修理してまた、渡すに決まっているだろ。」
「ご主人様・・・それならそれで、ちゃんとマードック達に説明しないと、きっとマードック達は誤解して、落ち込んでいると思いますよ。」
「ああ!それはわざとああいう態度を見せたんだから構わないよ。」
「ケンちゃん!それは、いくらなんでも酷いよ!」
「いいや・・・これは、あいつ等の気持ちを引き締める為に、一番効く方法として、俺は心を鬼にしてワザとあんな目つきをして、あいつ等を突き放したんだ。」
「ケンちゃん・・・それはいくらなんでも悪趣味すぎるよ・・・」
「これで、あいつ等も俺の言いたいことが身に染みると思うから、セバスもマイも、俺が見捨てた訳じゃないと、絶対に言うなよ。」
「でも、そのままにして、マードック達は精神的に大丈夫ですか?」
「このまま、何も対策を取らず死なれる方が重大な事だよ。」
ケンジは、ギル達の一番堪えるであろう方法を、心を鬼にしてとったのである。マードックの性格上、このまま装備を修理をして渡したとしても、また調子に乗り取り返しのつかない事をされるよりは、今回の事を教訓に活かし、また、同じことをしたら本当に、ケンジから見放されると思わせようという、荒療治に出たのであった。
これは、一見酷いように思えるが、ケンジは冒険者にとって、油断をして命を落としたらそれで何もかも終わりなのだと、マードックに判らせないといけないと思ったのである。
そうならない為にも、今ここで、ケンジは悪役をかってまで、マードックの教育をしなければならないと、この段階で強く考えたのだった。
「でも、ご主人様・・・」
「なんだ?」
「本当にいつも、我々の事を想っていただき、本当にありがとうございます。」
セバスは、ケンジに深々と頭を下げるのだった。ケンジは、セバスに改めて頭を下げられ、なんか凄く照れ臭くなってしまい、一言言って部屋を出ていってしまったのだった。
「そんなじゃないよ・・・今回は、マードック達の行動には、本当に腹がたったから憂さ晴らしのつもりでやっているだけだ!」
ケンジが出て行った部屋には、マイとセバスが残され、お互いが目を見あわせ笑顔になり、噴きだしてしまうのだった。
「まったく・・・ケンちゃんたら、照れちゃって素直じゃないんだから・・・」
「でも、ご主人様の今の気持ちを知ったら、マードック達もしっかり反省するでしょうね。」
「あたしも、今回は本当に思い知らされたわ・・・まだまだ、世の中には知られていない事が、たくさんあるから自分の経験だけで、判断しないようにしなくっちゃね。」
マイとセバスは、そんなことを話しながら、マードックが今回、本当にたまたま運がよかっただけなんだと思い、しみじみと思っていたのだった。
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