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第7章 超級ダンジョン攻略!

22話 反省

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 セバスがケンジのもとを離れたいと言い出したのである。これにはみんな面食らったのである。

「セバス!いきなり何言うんだ!主のもとを離れたいだなんて!」

「ギルは黙ってください!私は!」

「セバス・・・・訳を聞いてもいいか?」

「ご主人様は間違っています!私はご主人様の事を尊敬してここまで就いてきたつもりでございます。」

「俺が間違っている?」

「そうでございます!今までご主人様は理不尽な事をやられた相手にだけそれも暴力でない力を奮って対処してきました。ですが今回は聞いていていつもと違う感じがします。」

「・・・・」

「自棄にならないでください!いつものご主人様に戻ってもっと冷静に・・・」

「セバス・・・」

「ご主人様はいつもマイ様や我々の事を考えて行動してくださいました。そして、前の世界ではご主人様はようやく大人となった年齢でございます。今の生活はご主人様には理解しがたい部分は大いにあると思いますが自暴自棄になってもしょうがない部分はあるとは思いますが自棄になってはだめです!」

「お前に何がわかるんだよ!」

「ええ!本当の所はわかってないかもしれません。ですが・・・私はこの2年ご主人様を見てまいりました。今のご主人様は絶対に間違ってます!」

「何でそんな風に断言するんだよ!こっちの俺が本当かもしれないんだぞ!」

「いいえ!絶対に違います。私達はみんなご主人様を尊敬しています!これは絶対です。もしこのご主人様が本当のご主人様ならただの主人と奴隷の関係だったでしょう。」
「いいですか?今のご主人様の考え方でテンペの町の人達はどうなると言ったのですか?俺がいないと経済が回らないと言ったのですよ。そんな傲慢な考えは今までなかったはずです。それでは今までご主人様がギルドにやられていた考えと同じじゃないですか。」

「あ・・・」

 ケンジはセバスに言われ自分がやろうとしていたのは今まで我慢ならなかったギルドと同じ考えだと気づかされたのだ。

「ご主人様いいですか?あなたはいつも弱い人間に対してお優しい方だったはずです。確かに我慢ならない事もあるかもしれませんですが自棄にならないでください・・・・お願いします・・・・」

 セバスはケンジの側で片足でひざまつき頭を下げるのだった。そのセバスをみてケンジは席を立ちあがったのだった。

「主お止め下さい!」

 ギルはケンジがセバスに何かするのではないかと思って思わず大きな声を出してしまった。そのあとにマイやシスティナ達がケンジに声をかけたのだった。

「スマン・・・一人にさせてくれ・・・」

 ケンジは一人トボトボと大広間を出て行ってしまったのだ。まさかセバスにあんな事を言われるとは思わなかったのだ。なんか久しぶりに父親に叱られた感覚になったのである。

 大広間に残された面々はセバスが何もされなかったのを見てホッとため息が漏れたのだった。

「セバス!お前はなんて事を主に対して言うんだよ!俺寿命が1000年ぐらい縮んたぜ・・・」

「あたしもよ・・・」

「だけどお兄ちゃん大丈夫かな・・・」

「みんな、それにセバスありがとね。たぶんケンちゃんは大丈夫よ。」

 その時セバスは持っていた自分の暗器を素早く取り出して自分の腕を切断しようとしたのだ。それにいち早く気付いたマイがセバスの武器を払い落したのだった。
 セバスは本来主人にたてついたことにより自害したかったが奴隷は紋章によって自殺はできないようになっているのだ。だからケンジに買って貰った時の様に欠損奴隷になろうとしたのだった。


 だが3次職になったマイの素早さには勝てず呆気なく武器を払われてしまったのである。

「セバス!いったい何のつもりよ!」

「私はご主人様を尊敬してます。だけどあんなことを・・・だからお詫びを・・・」

「何言ってのよ!セバスはケンちゃんの事を思って言ってくれたんでしょ。だったらお詫びなんかしなくていいんだよ。」

「今回はさすがのケンちゃんも二の句が告げないわよ。」

「ですが私は主人である人に歯向かったんです・・・何らかの罰を・・・」

「だから大丈夫だって!ケンちゃんは口が達者だったけど自分が悪いと分かるとああやって一人になりにどこか行くのよ。昔からね!」

「ですが私は・・・」

「大丈夫だって。セバスの想いはちゃんとケンちゃんに届いているから。」

 そういってマイはセバスにウィンクしたのだった。

 そしてこのセバスの忠告がケンジにとって良い選択になるのは言うまでもなくケンジは一人転移マットに乗りテンペの町に戻ってきたのだった。
 ケンジは指名手配されていると思っていたので姿を消し街をぶらぶらするのだった。そして町の人達の噂話がケンジの耳に入ってくるのである。



「おい・・・聞いたか?」
「ああ。聞いた聞いた!ケンジの奴どこかに行っちまった話だろ?」
「俺も聞いたぜ。これからこの町はどうなっちまうんだろうな・・・」
「なんだい!あんた達は昼間っからそんなところでグチグチと!」
「だってよ・・・」
「そんなんだからケン坊にこの町は見捨てられちまうんだよ!」
「そんなこと言ってももう遅いだろ?」
「馬鹿だねえ!あんた達は!」

 そんな話をしているのが聞こえてきたのだ。そしてこういう時はさすがに強いのは女性達だった。

「ホント男共はホント情けないだから!」
「こういう時はどしっと構えてだね。あんた達が町の為に働き支えるんだよ。」
「今まであんた達はケン坊に甘え過ぎだったんだ!だから今度はあんた達がケン坊の代わりに採掘に行くんだよ!」

「だけどあいつみたいに大量のオリハルコンなんか・・・」

「ホント馬鹿だねえ・・・あの子の真似したってあんた一人で出来るわけないだろ!あんた達全員で補うんだよ。」
「そうよ!そしてケンちゃんが帰って来たら今度こそおんぶに抱っこじゃなく、みんなで頑張っていったらいいんだよ。」

 生産職の人間たちはうつむき町の女性たちから叱られていたのだった。

 また、冒険者達も今までならFランクの依頼をせず少しでも割のいい依頼をしていたがここでも女性冒険者達が中心に便器が使えなくなってきた家の依頼を受け掃除に精を出し始めていたのだった。

「ちょっとあんた達最近Fランクの依頼受けてないでしょ?」

「ああ・・・でもよう。俺達も生活がかかっているんだ。今日はこっちの依頼を受けさせてくれよ。」

「しょうがないわね。でも近々またFランクの便所掃除を受けなさいよね!」

「ああ、わかっているよ。」

 こういった感じでケンジに助けられていた冒険者達はケンジがいなくなった後をカバーする様に頑張っていたのだった。その後景を見てやっぱり自分は間違っていたとケンジは反省して街中をトボトボと歩き辿り着いた所は西の城壁の上だった。

 ここはケンジがこの町でお気に入りのとこでシスティナを連れてきた場所であった。




 そのころケンジの家では騒ぎになっていたのだ。みんなケンジが一人にさせてくれと大広間を出て行ったのでてっきり自室に戻ったとばかり思っていたのだが部屋の中があまりに静かだったので確認しに行ったミナレスが部屋を開けるとケンジがいなくなっていたことがわかったのだ。

 それに慌てたミナレスがみんなに報告をして大騒ぎになっていたのだ。

「ご主人様もしかして一人でどっかに行っちゃったのかな?」

「ご主人様がわたし達を置いてどこかに行くわけないじゃない!ティアナ変な事言わないで!」

「ぐす・・・・ぐしゅ・・・・」

「ちょっとティアナ、フィアナやめなさいよ。サーシャが泣いちゃったじゃない。」

「ヴィア・・・」

「大丈夫だってケンちゃん絶対帰ってくるから!みんなを見捨てないから。」

「みんなすまない私があんな事をご主人様に言ったから・・・」

 セバスが突然みんなに土下座したのだった。

「セバスは悪くないよ!ご主人様の事を想って意見したんでしょ?」

「ああ・・・だがご主人様は出て行ってしまわれた・・・」

「だいじょうぶよ!今マードックとプリムとイチカ達が外を探しに行っているでしょ?」

 今家の周りをアタッカーである者とイチカ達が一生懸命ケンジの捜索をしていたのだった。だが夕方近くまで捜索に出ていたマイ達が帰ってきたのだった。

「ダメだ・・・日が暮れてきてこう暗くなってきたら見つからないよ。」

「ご主人様が帰ってこなかったら私は・・・」

「大丈夫だってケンちゃんはちゃんと帰ってくるわよ。あれ?そういえばシスティナはどこにいるの?」

 マイが周りを見るとシスティナの姿が無かったのだった。するとギルが口を開いたのだった。

「システィナならさっき俺の指輪を借してくれと言って大広間を出ていったぞ。」

 全員が何で止めなかったとギルに詰めよったがシスティナに任せたらいいと言ってニッコリ笑うのだった。
 
「あっ!ひょっとして!」

 プリムもまたシスティナがどこに向かったのか気づいたらしい。ここはさすがに一番最初にケンジに買われた奴隷だけあってケンジがどこに行ったのか気づいたようだった。

「ったく・・・システィナったら抜け駆けしてずるいわ・・・」

「ねえ!あんた達ご主人様の所がわかったの?」

「わかったなら教えろよ!」

 オリヴィアとマードックがギル達に詰め寄ったのだ。

「まあまあ、ここはシスティナに任せたら大丈夫だよ。」

「いや、そうじゃなくて主の場所をだな!」
「そうよ!ギル達ばかり分かってズルいよ!」

 オリヴィアだけじゃなくダンギやリンダ、ウラン達もギルに詰め寄るのだった。

 だがギルとプリムはニヤッと笑い一言いったのだった。

「「こういう時、主(ご主人様)はいつもなんて言う?」」

「「「「「「あっ・・・・」」」」」

「「出し惜しみは知っている者の?」」

「「「「「特権だ・・・・・」」」」」

「「そういう事!」」

 ギルとプリムは一回言ってみたかったんだ!とすっきりしたような顔で笑っていたのだった。それに納得いかない面々はぶちぶち文句を言っていたのだった。


 そして、システィナは転移マットを使いテンペの町に瞬間移動したのだった。システィナはギルから借りた※①【インビジビリティーリング】を使い姿を消しあの場所へ駆けだしたのだった。

 夕方近くにマイ達がケンジの捜索から帰って来た時、システィナはケンジが言っていた事を思い出したのだった。

「俺も一人になりたい時や落ち込んだ時もあるよ。その時ここに来るんだ・・・この場所は俺のお気に入りなんだ!この時期にしか見れない雄大な景色なんだぜ。」
「あのでっかい太陽が山と山の間に沈んでいく景色は雄大で明日も頑張ろうって思えるんだ。」

 あの時の言葉がシスティナの頭の中に浮かんだのだった。そしたら無我夢中でギルから指輪を貸してもらっていたのだ。ギルは慌てていたがギルには多分あの場所・・・あの場所にご主人様は!と言って半ば強引にリングを奪い取って転移マットに飛び乗ったのだった。

(ご主人様・・・・)

 システィナは涙を堪えながらテンペの町の西側の城壁に走っていたのだった。

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 この話で出てきたアイテム

※①【インビジビリティーリング】
 ギルスレインがケンジから貰ったマジックアイテム。
ダンジョンボスから手に入れたもので姿を1日3回
だが消すことが出来る。任意に解除するまで継続し1日3回しか使えないが
魔法より強力な効果をもつ。
 当然だが目の見えない者やアンデット、鼻の利く魔物、獣人又は
インフラビジョンを持つ人物には効果を発揮しない。

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