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第2章 新たな国へ!

6話 決着!

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 ケンジは、あれよあれよという間に決闘をする事に、なってしまっていたのだった。気が付けば、決闘場のステージに立っていて、ケンジの目の前にはやらしい笑みを浮かべる、ガズンがロングソードを構えていたのだった。

 周りにある観客席には、ギルスレイン達は安心しきって応援をし、マイマールはケンジの戦闘能力の事をまだ詳しくは知らないので、心配そうに見守っていたのだった。

「ケンちゃん!無理はしないで!」

「あぁ、マイ!大船に乗ったつもりで見ていてくれ」

 この会話を聞いた、ガズンが又一層鼻息荒く、ケンジに対して今にも殺そうと息巻いていたのだった。

「マイさん、安心して見てるといいですよ。主は大丈夫です!」

「ギルスレインだったっけ?相手はあのガズンよ!実力はAランクとも言われているのに、安心しろと言われたって無理だよ!」

「私達も、主と出会った頃なら、無理にでもこの決闘は止めに入りますが、この2週間で主の凄さは、私達が一番よく分かっています。勝負は一瞬で決まるかと思います。その時、ガズンは何でこんな勝負をしたのだろうと、後悔で押しつぶされるでしょうね」

 ギルスレインは、冷静に説明しマイマールを安心させようしたのだった。それを聞いても、マイマールはケンジが凄い魔法を使えるとしても、ベースは生産職であり、Aランクの実力がある戦闘職には、勝てないと思っていた。
 そう思っていた時、審判の決闘開始の号令が大きな声と共に、笛の合図が辺りに鳴り響くのだった。

 笛の合図と共に、ガズンはロングソードを振りかぶり、ケンジに向かって突進してきたのだった。

「ほぉ~~~ら!死んだぁ~~~!」

 ガズンは、更にやらしくにやけた笑いを浮かべながら、ケンジにロングソードを振り下ろしてきたのだ。

 マイマールは、ケンジが死んでしまったと思い、両手で顔を塞ぎ下を向いてしまっていた。ケンジのいた場所は、ガズンが振り下ろしたロングソードで、砂煙が舞上がり視界が0になり、辺りが静まり返るのだった。

 その静まりをかき消すかのように、マイマールは両手で塞いでいた顔を上げて、大声を出し叫んでいたのだった。

「ケンちゃん!いやぁ~~~~!せっかく会えたのにぃ~~~‼」

「マイさん落ち着いて下さい。主は大丈夫です!あれを見てください」

 砂煙が、だんだん落ち着いてきて、そこにはガズンがロングソードを振り落とした格好の横に、少しだけ体をずらしガズンの攻撃を回避した、ケンジの姿があった。

「ケ、ケンちゃん……」

 マイマールは、目の前の事が理解できないようで、思考が停止していたのだった。だが、目の前にはさらに信じられない事が起こったのだった。攻撃をしたガズンは、次の攻撃を繰り出すのかと思ったのだが、うめき声をあげその場に倒れ込み気絶していたのだった。

「ガガ……いったい何を……貴様ぁ……」

「なんだよ……Aランクの実力って、こんなもんかよ!」

 ケンジは辺りを見回すと、観客である冒険者達は何が起こったのかわからず、無言でケンジを見ているだけであった。

「審判!判定は?」

 ケンジは、涼しい顔をして審判であるギルド員に判定を求めた。その言葉を聞き、審判であった女性はハッとし大きな声をあげ、ケンジの勝利を高々に宣言したのだった。

「この勝負ケンジ様の勝ちです!」

 それを聞いた、マイマールは観客席から飛び出し、ケンジに抱きつき涙を流し喜ぶのだった。それを見た、大部分の冒険者達は賭けに負けた鬱憤を、ガズンの不甲斐なさを非難し、暴言を叫んだり物を投げたりしたのだった。

「ケンちゃん、無事でホントによかった!」

「おいおい……俺が、あんな奴に負けるわけないって言っただろ」

「だって……ケンちゃん生産職だって言ってたから……」

「あんな奴ただレベルが高いだけで、猪突猛進な脳筋野郎だったじゃねえか!あんな奴が、Aランクの実力って本当なのか?」
 
 ケンジは、ガズンがいきなりロングソードを大振りした事が、信じられないと呆れていたのだった。




「それじゃ!ケンジ様、ギルドの受付まで、来ていただけないでしょうか?」

「ああ、わかった!」

 ケンジは、ギルドからガズンが提示した、金額を受け取るのだった。

「なあ、ちょっと聞いていいか?」

「はい、なんでしょうか?」

「このお金って、どこから出たんだ?アイツは400万ドゴンしかなかったんだろ?」

 受付嬢の説明によると、足りない分はギルドが肩代わりして、お金を払うシステムであると言ったのだった。そうしないと、ガズンは奴隷商人に売れるまで、ケンジはこの町に足止めされる事となり、ケンジに迷惑になるからである。
 ガズンの、実力はAランクかもしれないが、素行が悪くCランクである為、1億2千万ドゴンで買ってくれる、奴隷商人がいるかどうかわからないのである。そうなると、ギルドが損をする事になると思うのだが、そうはならないのである。
 こういう奴隷の使い道はいくらでもあり、攻略されていないダンジョンの魔物を間引く作業や、そこで見つかったレアアイテムや素材は、借金のかたに没収されるのである。
 だが、ここは地球のように借金を払えば減っていくような世界ではなく、死ぬまで過酷なダンジョン攻略で、働かせられるのは容易に想像ができるのである。




「はぁ……やっぱり冒険者ギルドは性に合ってないよな……」

「ご主人様は、普通にしても目立っちゃいますからね。」

 システィナは、無責任に笑いながら言うのだった。

「でも、ケンちゃん……ガズンに、どうやって勝ったの?」

「なんだよ……見てなかったのかよ」

「あんなの見れる訳ないじゃない!」

「主、砂煙がたってて、誰もあの状況が理解できる人はいないと思いますよ」

「そりゃそっか!あれはなガズンがロングソードを振りかぶって、なにも考えず振り下ろしたから、体を横に少しずらし避けただけだ」

「「「「「「ふむふむ……それで?」」」」」」

「そしたらな、がら空きだった横っ腹に一撃を入れ、そして次に後頭部めがけて、蹴りを入れただけだよ」

「あの一瞬で、そんな事を……」

「まあ、ステータスの差があったら誰でもできる事だよ」

 ケンジは、涼しい顔をして言ってのけたのだった。

「それにしても、物凄いお金が手に入ったよなぁ!ギル?何に使えばいいと思う?」

「う~~~ん……私には、そんな高額のお金の使い道はちょっと……」

「ケンちゃん、そんな急いで決めなくてもいいんじゃない?」

「確かに、そうだよな。ゆっくり考えるとするか!それに、セイラやオリヴィアやマードックの装備や、服も買わなきゃいけないしな」

「「「えっ?わたし達にも、買ってもらえるのですか?」」」

「えっ?いらないのか?なら買わないけど」

 それを聞き、セイラとオリヴィアとマードックは落ち込み、下を向きガクッと項垂れるのだった。

「3人共冗談だよ。いい加減、その奴隷根性を直せと言ってるだけだ!」

「主、意地が悪いですよ……」

「マードック、そんな事言うなら、俺の行動に早く慣れろ!」



 そう言いながら、ケンジ達は宿屋に向かうのだった。


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