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6章 勇者召喚編

休憩所にて

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ポッカポッカとウマオの蹄が鳴る音を聞きながら馬車内のリビングにあるソファで寛ぎながら、部下の天使が書いた恋愛小説を読んでいた。

その天使はラブエルという名前で、恋愛小説以外にもファンタジーやミステリーなども手掛けているが、全ての作品が恋愛がメインに来るという作風だ。

今読んでいるのは「女神と騎士のラブデスティニー」という女神に恋をした騎士の青年が、国をひっくり返すような大事件を起こす邪神教団と戦い、命を落としかけたり、教団の女幹部に見初められたりしながら女神への愛を貫く内容になっている。

ラブエルの作品は1冊で完結している作品が多いのでサクッと読めるので気に入っている。
長編は読み進めていると以前の内容を忘れちゃうんだよね。

天使の小説作家は10人ほどいて、書き上げるたびに私に献上されてくるのだ。
私にも好みがあるので全てを読んでいるわけではないが、大体は面白いので楽しみにしている。

「おねーちゃん!前の馬車吹き飛ばして良いです?」
コトノは私の胸に埋めていた顔を上げてそんなことを言う。

最近コトノはやたらと引っ付いてくる。
まぁ胸に顔を埋めるのは構わない、女同士だからね。でも変なものを擦り付けてくるのは許さないだけだ。
今は生やしてないので許している。

そしてコトノが言っている前の馬車とは、今朝からずっと私達の馬車の前を走ってる奴のことだ。

両脇が密集度の高い森で、道幅は馬車一台分なので追い越しが出来ないのだ。
私が前の馬車を収納して、私達の後ろに出すとかやれば追い越せるけど、別に急いでいるわけではないのでずっと後ろをついていく感じになったのだ。

そろそろ夕方なのでいい加減コトノがイライラしてきたようだ。

「やめなさい、そろそろ休憩所に着くから。」
休憩所とは旅人が野営をする為に作られた場所で、魔物避けの魔導具が設置されている。
管理しているのは国だったり冒険者ギルドだったりだ。

「野営地は泊まるです?突き進むです?」

馬車を引くウマオは走り続ける事は出来るだろうが、ウチはブラック企業ではないのでちゃんと休憩や宿泊はしているので野営地で泊まる事になる。

「泊まるよ」

前の馬車が横にそれて止まった。
野営地に着いたのだ。

前の馬車は四頭引きの馬車でなにやら家紋の様なものが付いているので、何処ぞの貴族か王族みたいだね。
立派な馬車だけど、普通貴族とかって移動時に周りに騎馬とか引き連れて移動するんじゃないのかな?馬車単体で移動するって事は、載っている人物が凄腕ってことなのかな?
正直私レベルになるとヒトの中で飛び抜けて強くないと誤差位の差しか感じない。

いや、【解析】使えばわかるけど、特に係りにならなそうな相手にわざわざ使わない。

あっちは野営の準備を手際よく行っていく。

私達も準備だ。
と言ってもウマオに水と餌をあげるくらいしかやる事はない。馬車の中が家だからね。
馬車には最初から結界機能が備わっているので、魔物や動物、人も馬車やウマオに触れることも出来ない。

『ご主人様?何やら同席してる連中、ご主人様達の馬車に近づいて結界バンバン叩いてるっすよ?』

ウマオから念話が届いた。
確かに向こうの騎士っぽい奴が1人結界を叫びながらドンドン叩いている。

「くそっ!何だこの見えない壁!?邪魔だ!くそっ!おい!お前達!我が主人トッポン伯爵様が食料を所望だ!今すぐ全てを差し出せ!!」

意味のわからんことを言う馬鹿を無視していると、騎士っぽいのが増えて4人がかりで結界を攻撃している。
それを破りたいなら少なくとも創造神ランク10位以内に入ってないと無理だと思うよ。

騎士4人の剣がボロボロになった頃、主人の貴族らしきオッサンが馬車から降りてきた。

ふてぶてしそうな顔のオッサンは無駄に高そうな衣服を着ていて、結界ギリギリまで来て大声で理不尽なことを言ってきた。

「私がトッポン伯爵である!貴様らこの偉大なる私に手持ちの食料を在るだけ全て差し出せ!もし拒否したら貴様らは指名手配されるだろう!!」

「おねーちゃん!あれ殺していいです?」

気持ちはわかるけどあんなの一々殺してられない。
どうせこっち側に来れないし防音にも出来るから煩さもカットできるのだ。

結局1時間延々と怒鳴り続けていた。



翌朝早朝に私達の馬車が発進した時を狙い進路を塞ぐ騎士っぽい奴らにイラッとして、向こう側の馬4頭を収納してあげた。
更に馬車の車輪も収納したので、馬車が車輪を失い地面に叩きつけられる。
主人の命が第一優先なので慌てて馬車へ戻る騎士っぽいの。
その間に私達はスイスイ先へ進む。
アイツらはもう私達を追いかけることも出来ないだろうね。

次の町や村までそこまで遠くないので徒歩で移動したらいい。騎士っぽいのも付いてるし死にはしないだろう。
まぁ死んでも構わないけど。
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