93 / 111
3月20日月曜
しおりを挟む
3月20日月曜
『明日、21日春分の日は、みんなで第三小学校を大掃除しましょう。』
ほうきを持った男の子と雑巾を持った女の子の、イラストが描かれたビラがこっそり配布された。配り手は中井まみ、星野明子、奥寺有希の3人だった。このビラをもらった人は、5年2組、3組それぞれクラスの一部だった。そして、中井まみが指示していたのか、僕の大切な友人達に配布されていたようだった。
「まみのヤツ、ここまでこぎつけたか…。」
僕は今更ながら、まみの企画力と実行力、期待を裏切らない誠実さに驚かされた。
…僕は満川侑子との恋で夢中になっていて、4年3組の同窓会を完全におろそかにしていた。よく思い出してみると、そういえば、僕は、まみに3月の頭に聞かれていた。
「ツーの送別会、どこでやりたい?」
「そうだな…。僕はいつも通り、第三小学校で最後にみんなと一緒にいられればそれで良いよ。」
「トミーは、スケートかスキーに行くのが良いんじゃないか、と言ってる。あの時、みんなで一つにまとまっていたし。」
「それも楽しいけど、僕は、最後にひとつだけワガママが叶うなら、この第三小学校で、みんなと一緒に、思い出を作りたい。」
「…実は、私も、それがいいと思ってる。クリスマスの日、覚えてる?うちのお母さんが、ツーの送別会もやると言ってたでしょ。」
僕は、中井家のかっこいいお父さんとおっとりしたお母さんを思い出した。また、会ってみたい素敵な大人だった。
「第三小学校でやれるイベントを考えるから。その後、私のうちに遊びに来ることも含めていいよ。何か企画があったら、私に言って。」
「まみ、いつもいつもすまないな。俺、本当にまみには感謝してる。」
「それは21日にでも言って。感謝してるなら、なんか私にアイデアをちょうだい。」
まみは、厳しく言ったが、それが全く傷つける言い方でないのが、彼女の魅力であり、人望だった。
「津山くん、中井さんから聞いたけど、私も、津山くんにお世話になったから、何か考えさせて。」
3月中旬に、いつのまにか奥寺が入り込んできた。彼女は、3月初めの落書き事件のヌレギヌの危機を僕とゆっこの知略で切り抜け、その後は保川に優しく話しかけた僕の背中をつねりあげるなど、元気な少女の一面を見せ始めた。
「私が、前にいた福島の小学校では、私、みんなと一緒に最後に大掃除をしたよ。」
そう言って、彼女はその当時のアルバムを僕と中井に見せてくれた。小柄な彼女は、実に楽しそうに掃除をして、みんなの輪の中で微笑んでいる。
「…たかが掃除で、こんなに楽しくなるかなぁ」
「津山くん、この第三小学校が好きなんでしょう。本音は離れたくないんでしょ。だったら、仲の良かったみんなと一緒にこの第三小学校をきれいにしようよ。」
奥寺は、僕の目を真っ直ぐに見つめて言った。僕は、強く、凛とした彼女に説得され、まみに伝えるよう言った。
「奥寺さん、いいこと言うなぁ。…もう、彼女は大丈夫だ。…僕の第三小学校での役割は、全て終わったのかな。」
僕は、全ての心配事が片付いた安堵感とともに、限りない寂しさも感じていた。
『明日、21日春分の日は、みんなで第三小学校を大掃除しましょう。』
ほうきを持った男の子と雑巾を持った女の子の、イラストが描かれたビラがこっそり配布された。配り手は中井まみ、星野明子、奥寺有希の3人だった。このビラをもらった人は、5年2組、3組それぞれクラスの一部だった。そして、中井まみが指示していたのか、僕の大切な友人達に配布されていたようだった。
「まみのヤツ、ここまでこぎつけたか…。」
僕は今更ながら、まみの企画力と実行力、期待を裏切らない誠実さに驚かされた。
…僕は満川侑子との恋で夢中になっていて、4年3組の同窓会を完全におろそかにしていた。よく思い出してみると、そういえば、僕は、まみに3月の頭に聞かれていた。
「ツーの送別会、どこでやりたい?」
「そうだな…。僕はいつも通り、第三小学校で最後にみんなと一緒にいられればそれで良いよ。」
「トミーは、スケートかスキーに行くのが良いんじゃないか、と言ってる。あの時、みんなで一つにまとまっていたし。」
「それも楽しいけど、僕は、最後にひとつだけワガママが叶うなら、この第三小学校で、みんなと一緒に、思い出を作りたい。」
「…実は、私も、それがいいと思ってる。クリスマスの日、覚えてる?うちのお母さんが、ツーの送別会もやると言ってたでしょ。」
僕は、中井家のかっこいいお父さんとおっとりしたお母さんを思い出した。また、会ってみたい素敵な大人だった。
「第三小学校でやれるイベントを考えるから。その後、私のうちに遊びに来ることも含めていいよ。何か企画があったら、私に言って。」
「まみ、いつもいつもすまないな。俺、本当にまみには感謝してる。」
「それは21日にでも言って。感謝してるなら、なんか私にアイデアをちょうだい。」
まみは、厳しく言ったが、それが全く傷つける言い方でないのが、彼女の魅力であり、人望だった。
「津山くん、中井さんから聞いたけど、私も、津山くんにお世話になったから、何か考えさせて。」
3月中旬に、いつのまにか奥寺が入り込んできた。彼女は、3月初めの落書き事件のヌレギヌの危機を僕とゆっこの知略で切り抜け、その後は保川に優しく話しかけた僕の背中をつねりあげるなど、元気な少女の一面を見せ始めた。
「私が、前にいた福島の小学校では、私、みんなと一緒に最後に大掃除をしたよ。」
そう言って、彼女はその当時のアルバムを僕と中井に見せてくれた。小柄な彼女は、実に楽しそうに掃除をして、みんなの輪の中で微笑んでいる。
「…たかが掃除で、こんなに楽しくなるかなぁ」
「津山くん、この第三小学校が好きなんでしょう。本音は離れたくないんでしょ。だったら、仲の良かったみんなと一緒にこの第三小学校をきれいにしようよ。」
奥寺は、僕の目を真っ直ぐに見つめて言った。僕は、強く、凛とした彼女に説得され、まみに伝えるよう言った。
「奥寺さん、いいこと言うなぁ。…もう、彼女は大丈夫だ。…僕の第三小学校での役割は、全て終わったのかな。」
僕は、全ての心配事が片付いた安堵感とともに、限りない寂しさも感じていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる