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3月20日月曜

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3月20日月曜

『明日、21日春分の日は、みんなで第三小学校を大掃除しましょう。』

ほうきを持った男の子と雑巾を持った女の子の、イラストが描かれたビラがこっそり配布された。配り手は中井まみ、星野明子、奥寺有希の3人だった。このビラをもらった人は、5年2組、3組それぞれクラスの一部だった。そして、中井まみが指示していたのか、僕の大切な友人達に配布されていたようだった。
「まみのヤツ、ここまでこぎつけたか…。」
僕は今更ながら、まみの企画力と実行力、期待を裏切らない誠実さに驚かされた。

…僕は満川侑子との恋で夢中になっていて、4年3組の同窓会を完全におろそかにしていた。よく思い出してみると、そういえば、僕は、まみに3月の頭に聞かれていた。

「ツーの送別会、どこでやりたい?」
「そうだな…。僕はいつも通り、第三小学校で最後にみんなと一緒にいられればそれで良いよ。」
「トミーは、スケートかスキーに行くのが良いんじゃないか、と言ってる。あの時、みんなで一つにまとまっていたし。」
「それも楽しいけど、僕は、最後にひとつだけワガママが叶うなら、この第三小学校で、みんなと一緒に、思い出を作りたい。」
「…実は、私も、それがいいと思ってる。クリスマスの日、覚えてる?うちのお母さんが、ツーの送別会もやると言ってたでしょ。」
僕は、中井家のかっこいいお父さんとおっとりしたお母さんを思い出した。また、会ってみたい素敵な大人だった。

「第三小学校でやれるイベントを考えるから。その後、私のうちに遊びに来ることも含めていいよ。何か企画があったら、私に言って。」
「まみ、いつもいつもすまないな。俺、本当にまみには感謝してる。」
「それは21日にでも言って。感謝してるなら、なんか私にアイデアをちょうだい。」
まみは、厳しく言ったが、それが全く傷つける言い方でないのが、彼女の魅力であり、人望だった。

「津山くん、中井さんから聞いたけど、私も、津山くんにお世話になったから、何か考えさせて。」
3月中旬に、いつのまにか奥寺が入り込んできた。彼女は、3月初めの落書き事件のヌレギヌの危機を僕とゆっこの知略で切り抜け、その後は保川に優しく話しかけた僕の背中をつねりあげるなど、元気な少女の一面を見せ始めた。

「私が、前にいた福島の小学校では、私、みんなと一緒に最後に大掃除をしたよ。」

そう言って、彼女はその当時のアルバムを僕と中井に見せてくれた。小柄な彼女は、実に楽しそうに掃除をして、みんなの輪の中で微笑んでいる。
「…たかが掃除で、こんなに楽しくなるかなぁ」
「津山くん、この第三小学校が好きなんでしょう。本音は離れたくないんでしょ。だったら、仲の良かったみんなと一緒にこの第三小学校をきれいにしようよ。」
奥寺は、僕の目を真っ直ぐに見つめて言った。僕は、強く、凛とした彼女に説得され、まみに伝えるよう言った。

「奥寺さん、いいこと言うなぁ。…もう、彼女は大丈夫だ。…僕の第三小学校での役割は、全て終わったのかな。」

僕は、全ての心配事が片付いた安堵感とともに、限りない寂しさも感じていた。
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