上 下
66 / 111

図書委員会13

しおりを挟む
   図書委員会は、2月中旬から奥寺とのコンビが何度か続いた後、3月13日月曜日。ゆっことの最後の図書委員会だった。この日は、妙にお客が多かった。お陰で、ゆっこと話をする暇もなかった。でも、今日は助手のゆっこは、僕の司書の仕事が終わった後、夕陽を背にして僕に話しかけた。

「ツー君、今までお世話になりました。一年間、いろいろあったね。楽しかった。」
彼女はなんだかいつもよりもしおらしく、栗色の瞳は、潮の香りがした。満潮を思わせた。

「ゆっこちゃん、こちらこそ、ありがとう。ゆっこちゃんと出会えて、一緒に図書委員会出来て、本当に楽しかった。」

その一言を言い終えた後、お互いを見つめ合ったまま、しばらくの時間が流れた。珍しく、僕が沈黙を破った。

「ゆっこちゃん、僕の秘密、結局、いくつ知ってたのかな」
ゆっこは、ふふんと笑って、指を折って数えだした。
「うーんと。まず、新聞配達。そして、広島への転校。それから、武田くんの事。いつもいつも、宿題届けてたね。偉いなぁって。後、幼稚園のボランティアも。」
ゆっこは、4つも秘密を知って、つらかった。と笑いながら話した。笑う彼女の目には光が宿っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...