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消失

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    図書室の鍵の件は、また満川に任せた。というより、僕は、逃げるように彼女の前を離れた。とうとう武田の一件がバレたのだ。走って、武田家まで向かった。「どうしたの?」武田のお母さんが、僕に問いかけた。僕は、息を整えてから、おばさんに告白した。
「おばさん、ごめんなさい。僕が武田くんのお手伝いしていることが、バレたかも」しかし、武田のお母さんは意外な反応を見せた。
「いいのよ。隠してもしょうがないことだし。それに、津山くんも、いろいろ頑張っているのに、さらにうちの息子のことまで世話をしてくれてありがとうね。…うちの子、あさってから、学校に行く事になったから。」
「本当ですか。」
「うちの子、新聞配達やお母さんのお手伝いとかしている津山くんに、これ以上迷惑をかけられない、って言ってくれたの。」
そう言って、おばさんは目頭を押さえた。
「良かった。良かった。」僕は、その場でへたり込んだ。全て、これでうまく行く。力が抜けてしまった。そのまま、僕は武田君の家の中で、倒れてしまった。

   意識が戻った時、僕は武田君のおばさんと武田君に付き添われて、タクシーで僕の家に帰ってきていた。
「あらあら、こんなにしていただき、本当にすみません。」母は恐縮していたようだった。
「とんでもない、うちの子のために、どれだけ津山くんがお世話してくれたか。」
母とおばさんの会話の詳細は覚えていない。でも、武田の顔は少し前向きに感じた。

   久々の熱だった。僕はこのところいろいろ頑張りすぎていたようだった。母に連れられ、近所の小児科へ行ったが、インフルエンザではなかった。普通の風邪のようだった。「お母さん、ごめんね。心配かけて。」母親は白湯を作ってくれた。「孝典、本当にあなたは成長したね。今まで、看病されてもごめんね、なんて言うことなかったのに。」「そうかな。…」少し僕は照れた。明日の新聞配達は、母から販売店に連絡してくれるようお願いした。…古河っち、すまん。そして僕は眠りに落ちた。
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