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中井まみの迷い
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そんな中、矢部、富山、横山の3人が東京ドームで野球観戦をしたという話を聞いた。いつもなら僕にも一言誘いがあるのだが…。うじうじ不審がる僕を気遣ってか、まみは「3人は巨人ファンだからよ。ツーだけが西武ファンでしょ。」と助け船を出してくれた。そうか。僕はまみに言われて少し気が晴れた。「それより、ちょっと相談に乗って。」とまみが言った。傍らには影のようにアッコこと星野明子がいた。
「1組の高野さんて、知ってる?」
「ううん。去年同じクラスだったっけ?」
「うん。高野さんが、私たちの仲間に入りたいと言うの。私、ちょっとあの子好きじゃなくて。」
「そう。」
まみに嫌いなタイプの女の子がいることが意外だった。「まあ、まみの好きにすれば。僕は高野さんとしゃべったことがないから、何とも…。」
「アッコもそういうのよ…。」
まみは少し沈んだ顔を見せた。でも、少し考えて吹っ切れたのか、「来月は、根岸先生のところへ遊びに行く予定よね。そこで高野さんを呼ぶから、みんなが歓迎してくれるといいんだけど。」
根岸先生は、初老の女の先生で、4年3組の担任だった。僕にとってはかなり苦手な先生だった。正直、遊びに行きたくなかった。明らかに優等生の富山と矢部の事がお気に入りで、僕は一番相手にされていなかった。…と子供心に感じていた。でも、今第二小学校の連中がまとめられずに苦労しているまみを見捨てるわけに行かなかった。アッコは「私はいつもまみの決めた事を信じる。」と言って、その後、僕の目をじっと見ていた。
複雑な話を昼休みにしている僕たち3人を、他のクラスメイトが黙って見ているわけはなく、はやされたものだった。小5の女子と男子ほど、幼稚さに差がつく世代もないのかもしれない。はやす男子と、3人の様子を遠巻きに観察する女子という構図はしっかりと出来上がっていた。ただ、僕の中ではいかに根岸先生のお宅訪問を回避するかで、頭がいっぱいだった。それも出来るだけまみを傷つけずにしないといけない。
「1組の高野さんて、知ってる?」
「ううん。去年同じクラスだったっけ?」
「うん。高野さんが、私たちの仲間に入りたいと言うの。私、ちょっとあの子好きじゃなくて。」
「そう。」
まみに嫌いなタイプの女の子がいることが意外だった。「まあ、まみの好きにすれば。僕は高野さんとしゃべったことがないから、何とも…。」
「アッコもそういうのよ…。」
まみは少し沈んだ顔を見せた。でも、少し考えて吹っ切れたのか、「来月は、根岸先生のところへ遊びに行く予定よね。そこで高野さんを呼ぶから、みんなが歓迎してくれるといいんだけど。」
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