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学区変更

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「これで、一旦、お別れだね、みんな。それぞれの学校へ行っても、これからもずっと仲良くしましょう」

拍手が沸き起こった。武蔵第三小学校の4年3組の同級生、中井なかいまみの、締めのあいさつだった。僕たち、幼馴染8人は、桜の咲き誇る、稲荷山公園(埼玉県狭山市さやまし)で、花見と、お別れの集いの真っ最中だった。

  僕らの世代は第二次ベビーブーム世代。増えすぎたうちの小学校のクラスを減らし、近隣の小学校に学区変更をする事で、小学生児童数の学区バランスを取る事になった。毎年プレハブ校舎を増築してもあふれる児童。僕たちの武蔵第三小学校から、学区の北半分が武蔵第一小学校、学区の東半分が武蔵第二小学校に割譲される事になった。それにより、僕たちの仲間が3つの学校に別れる事になった。

 「ツーとアッコと私は、第三小学校のままだから、いつでも遊びに来てね。」

中井まみは少しばかり残念そうな顔をして、第一小に行く事になった矢部と富山とみやまの2人の同級生男児に告げた。第二小学校に行く事になる、横山、泉、ミサコの3人は、「ま、俺らは中学で第三小と同じ中学校だから、…。」いつもあっけらかんとしている横山に比べて、泉、ミサコの2人の女児は「まみちゃんがいないと、私たちまとまらないよ」と、半べそをかいていた。

 中井まみは、誰もが認める女将さん的なタイプで、マイペースな僕とアッコはまみのその包容力でだいぶ救われていたと思う。彼女がいないとその8人の仲間は出来なかったし、富山は男子の中では中心人物だったが、誰とでも分け隔てなく接する一方で、良くも悪くも淡々とし過ぎていたところがあった。まみのようにお節介をやくことはなかった。本当に僕とアッコは恵まれていたと思う。第二小学校組は、転校して間もないうちに早くも横山と泉・ミサコとの仲が疎遠になり始めていたらしい。小5という、思春期入口の微妙な時期に、仲良しの男子1人+女子2人というスタイルに無理があったのか…。うちは中井まみが、アッコこと星野明子ほしのあきこと僕、津山孝典つやまたかのりの2人をしっかり押さえていたので、3人の良好な関係は5年生になっても変わらなかった。しかも、僕たち3人はまたも同じクラスになることができた。5年2組。そして、第一小学校に行った男2人は、変わらず僕たちの良き仲間であり続けた。月2回でこれからも第三小学校の校庭に集まる事になったが、第二小学校に行った3人は欠席が多くなっていった。
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