転校サバイバーズ

藤沢 南

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広島生活スタート

新しい日々の始まり

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あの別れから、数日。
津山家は、広島市南区の社宅に引っ越してきた。

「小さいなぁ」
津山孝典は、初めて見る広島市、そして社宅にこんな印象を持った。

「さぁ。何年かここで過ごすのだから。この部屋に挨拶しよう。」
父の声で、僕たちはこの小さいサイズの社宅の部屋に
「よろしくお願いします。」
と挨拶した。

弟、津山康仁とは同じ部屋になった。埼玉の時もそうだったが、僕は思春期にさしかかっていたこともあり、自分の部屋が持てなかったのは少々残念だった。ま、弟は僕のそういう思春期特有の羞恥心を刺激するような事はなかったのが救いだった。ゆっこの事とか、ゆっこの事とか、…。

そして僕は手持ち無沙汰な毎日を過ごし、今までになく独りぼっちな春休みを過ごすことになった。TVゲームをやっては自転車に乗って、区内のあちこちに出かける…周りにたくさんの仲間がいた埼玉とはうって変わって静かな毎日に、少しばかり調子が狂った。結局、近所にある図書館に入り浸る毎日になってしまった。

弟も調子が出ないようだった。近所に年の近い子どももいないようだった。おかしい。僕たちは何度となく兄弟で話し合った。父も母も自分のことだけで精一杯のようだったし、特に母はかなり失望しているようだった。狭い社宅と、たった2棟しかない社宅。20棟もあり、引越し屋が入れ替わり立ち替わりやってきた武蔵市の社宅のような開放的な雰囲気も活気もない。そうは言っても、母は女同士ということもあり、5日後には近所のおばさんたちの仲間に入っていたようだが、僕たちは相変わらず友達ができなかった。しばらくすると、僕たち兄弟も、諦めてしまった。

「始業式まで待つしかないよ。」
…弟は入学式だったが。
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