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第74話 イリスを怒らせたらいけません。

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「おや…また来訪者ですか?やれやれ、今は来て欲しくなかったのですが。さっさと迷宮の深層へ戻っておけば良かったですねぇ。」

扉を開けた前方には銀髪の男が立っており、その横には茶髪の女性が仰向けで倒れていた。
アルカードとソフィアである。

信之はアルカードではなく、倒れている女性に魔纏の瞳を使用した。

ーーーーーーー
ソフィア・モルモリュケ

職業 探索者
種族 下級ヴァンパイア
称号 なし

Lv 27/30
HP 150
MP 72
ATK 70 (75)
DEF 40
INT 50
AGE 52
ーーーーーーー

「ソフィアという女性は、既にヴァンパイアになってしまっているな…。」

信之がソフィアの現状についてぼそりと呟く。

「ほう…今までの者達とは違うようですねぇ。相手のステータスを確認できるスキルは非常にレアです。こちら側でそんなレアな人間に出会うとは思ってもいませんでしたよ。」

「こちら側?一体なんのこと…」

こちら側とはどういう意味かを聞こうとした瞬間、信之の後ろから物凄い速度で動いた者がいた。

「女の子に強引な事をしてはいけませーーーん!」

飛び出したのはイリスであった。
イリスはアルカードでは避けられないほどの速さで迫り、鳩尾にせいけん突きを放った。

「うごぉ…。」

アルカードは吹き飛んで壁に激突する。

「がはッ…!」

「まだまだお説教はこれからだよ!」

この程度では、イリスの怒りはおさまらない。

「い、イリス、あいつに聞きたいことがあるんだけど…。」

アルカードから情報を聞き出せないまま倒されてしまうことに焦った信之は、イリスを止めようとする。

「うん!お説教が終わったらね!」

「あ…うん…。」

イリスの答えに情報の収集を諦める信之。

一方でアルカードは、今までに受けたことの無いダメージを負い、混乱していた。

「ぐっ…。な、なんなのだ…あの不気味な仮面をした者は!?私にこんなにもダメージを…。」

アルカードは立ち上がろうとすると、イリスが瞬間移動でアルカードの目の前に立つ。

「ひッ!く、くるな!!」

おかめが目の前に現れ、恐怖したアルカードは声を裏返して叫ぶ。
初めの余裕が欠片も無くなっているアルカードは、咄嗟に魔法を発動しようとするが。

「今は魔法を使わないでください!」

そう言ってイリスは爆裂拳を放つ。
凄まじい拳打の嵐がアルカードを襲う!

「ぎゃ、ぐほ、ぶべ、もうやめべ…」

「ふぅ、おとなしくなったね!」

動かなくなったアルカードを確認したイリスは、コホンと咳ばらいをして話し始めた。

「じゃあ、始めますよ!ソフィアさんに自分のものになれって言ったらしいですが、初対面じゃないんですか?初対面なのにそんなこと言っても女性は怖がっちゃうだけですからね。もっと仲良くなってからアプローチは行うものですよ。あと、個人的に自分のものになれというアプローチは、あまり格好良くないというか、ちょっとイタイ人だと思われるのでやめた方がいいと思います!それと、勝手にソフィアさんをヴァンパイアにしてはいけません!ソフィアさんは、ヴァンパイアになりたいって言っていましたか?約束もしていないのにそんなことをしたら、ソフィアさんに嫌われてしまうのでちゃんと承諾を取ってください。いきなりヴァンパイアになっちゃったらソフィアさんの親御さんもびっくりしちゃいますので…」

————イリスの説教が10分程経ったところで…。

「イリスさーん。」

「信くん、ごめんなさい。まだヴァンパイアさんへのお説教が終っていないのでもう少し待ってください。」

「あ、いや、そのヴァンパイアさんなんだが…もう死んじゃいそうだぞ。」

「え?」

信之に指摘されたイリスはヴァンパイアをよく見てみると、初めて見たときよりも体が透けていることに気付いた。

「ま、さか…こちらの世界に、こんなにも恐ろしい人間?がいるとは…。ヴラド様…もう一度あなたにお会いしたかった…。」

アルカードはそう呟くと消滅し、魔石だけが残った。

「…あれ?倒しちゃった!?まだ話は終わってなかったのに…。」

「と、とりあえず、ヴァンパイアは倒したから良しとしよう。それと、ソフィアさんはイリスが説教している間に回復魔法をかけておいた。」

「あ!ソフィアさんヴァンパイアになっちゃったんだもんね。大丈夫かな…。」

イリスはそう言ってソフィアの元へと向かう。

「…お姉ちゃん、それにしてもヴァンパイアの魔族、いろいろと気の毒だったね。」

「イリスねぇを怒らせたらいけませ~ん。」

「くぅ~ん。」

絶対にイリスを怒らせてはいけないと肝に銘じる蒼汰、奏、モルであった。





「俺の場合は、怒らせてミイラにされないように気を付けないと…。」

「信くん何か言ったー?」

「何でもありませんです!」
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