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晃生誕7 おまえが、おれだけのものであること(視点切替)

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「っぁ……?」
「──あさひ、起きた」

 息がくるしい。熱い。
 全身が浮いているのか沈んでいるのか分からない中、ふと意識が微かに浮上した。

 薄らと開いた視界の中で、丁子染が覗き込んでくるのははっきりと見えた。
 覆い被さるようにして笑いかけてくる男の両耳で、金色と真紅が煌めいている。

 重い腕をゆっくりと持ち上げて、まだ薄らと血を滲ませている場所に触れる。
 鮮やかな赤の珠に触れれば、晃が擽ったそうに微笑った。


 晃の産まれた日付を知ってから、今まで一度も忘れたことはない。流したこともねえ。
 何をくれてやった時も、プレゼントなんざ公言はしてこなかったから晃は偶然だと思ってるみてえだが。
 偶然がンな毎年続くわけねえだろ、鈍いやつだな。

 今年は、やっと晃の中から余計なもんがなくなって最初の年なんだよな。
 おれが生まれた日には、外せねえ拘束の証なんざ嵌めてきたしなァ……

 最初はゆりかごに行ってみた。ピンとこずにすぐ戻り、今どこ行ってたと不思議がる男に何でもねえよと口吻ける。
 すぐに応えて角度を深めてくる晃に腕を回し、ふと手首に巻き付く金色が目に止まる。

 ……晃はわざわざ主張するまでもなくおれのだが。
 おれと晃の血で彩ってやるのは、存外悪くないかもしんねえ。

 そう決めて、なら揃いのもんで作るかと思い至る。
 すぐに金の樹液を齎してきた原種トレントを呼び戻したが、世界を超えての伝達がすぐに届かないことは分かっていた。

 結局、反応があったのは前日の夜。他の世界の魔力を半端に纏って戻ってきたようだったから、晃は連れて行かずに受け取りにいった。
 折角魔王の魔力に慣れてきてんのに、今余計な外部の空気に触れさせんのはバランスを崩す恐れがあるからなァ。

 受け取って戻ってみりゃ、拗ねた様子の晃に人通りのある場所のすぐ側で抱かれる羽目になったが……まあ、暴走してたってほどでもねえし。晃がヤりたかったならそれはいい。
 体のキツさより、晃の耳で煌めいてるピアスがずっと重要だ。……ああ。悪くねえ。

 薄く笑みを浮かべれば、晃も甘く双眸を細めた。

「……旭陽」
「ん……」
「ありがとな。──最高の誕生日プレゼントだ」
「っぁ、あ……ッは、ン……っ」

 そっと身を寄せてきた男に肌を重ねられて、いつの間にかどろどろになっていた服をお互い脱いでいたことに気付く。意識飛んでる間に晃が剥いだってとこだろうが。

 まだ過敏なままの体が、触れ合う体温に容易く熱を上げた。
 煌めくふたつの赤が、気分の良さを煽ってくるのも感度が上がる理由の一つ。

 びくびくと震える体をおれからも擦り寄せる。小さく頷いて額を押し付ければ、晃が唾液を飲み込む振動が伝わってきた。
 興奮してんのかよ。相変わらずだな、晃は。
 おれに煽られねえおまえなんざ有り得ねえんだから当たり前だが。

「ん……」
 軽く顎を上向けてみせる。
 すぐに口吻けが降ってきて、ぬるりと舌が差し込まれてくる。

「っふ、ぁ、ッァ……! っは、ぁふ……っ」

 舌を淡く擦り合わせるだけの柔らかなキスでも、全く収まっていない体は勝手に震える。
 うっとりと瞳を細めた晃が、後頭部と腰に腕を巻き付けてきた。

「ッぁ、ンっ、んっんッ、ふぅア……ッ、ぁ、あっ……!」

 不意に深く舌を絡め取られて、全身を抱き竦められながら強く吸い上げられる。
 がくがくと体が揺れ、清められていた肌にまた精が噴き零れていく。ぐらぐらと世界が揺れるのを感じながら、目の前の熱い体に腕を回した。

 あつい、晃。
 もっと寄越せ。服越しも悪くねえが、物足りねえんだよ。

 唇を深く塞がれる快感に浸りながら、もう回復しつつある場所に腰を押し付ける。
 小さく息を飲んだ男が、口腔をぐるりと舐め回して口を離した。

「っ、んぁッ!」
 跳ねた腰が撫でられ、頬にキスが降ってくる。

「っふ……ぅ、……ぁ、ん……っ、ぁき、……っくすぐっ、てえ……」

 目尻へ、耳へ、額へ。
 次々に降ってくる唇の感触が心地良い。
 思わず喉を鳴らして笑えば、晃が酷く甘ったるい視線を注いできた。

「旭陽」
「んー……?」

 ひたすらに甘い、甘やかしたがっているような快感。
 晃の体温に包まれながら心地良さばかりを注がれて、意識がふわふわと浮き沈みし始める。
 勃ち上がりきったモノが擦り付けられ、激しさは一切ない触れ方で擦り合わされる。

「ッは、ァッ、んぁあ……っ」
 びくびくと腰が跳ねる。

 甘く尾を引く、深いばかりの絶頂が全身を浸してますます意識がぐらつく。
 閉じられない唇から零れた唾液を舐め上げられ、また触れるだけのキスが無数に降ってきた。

「ありがとな、あさひ。嬉しかった。……俺、しあわせだ」

 うとうとと微睡む中、うっとりと微笑む晃の声が聞こえる。

 当たり前だろ。
 おまえが、おれに逢うために生まれ落ちた日だ。
 おれが祝ってやるのも、おれに祝われたおまえが喜ぶのも、当然の一日だ。
 これからもずっと、そうやってとろとろの目ェして悦んでろ。

 今にも落ちそうな腕に力をこめて額を擦り寄せれば、甘い声が堪らないとばかりに低く笑った。
 おまえの声は、いくら聞いても飽きねえなあ。

 うとうとと現と夢の間で揺蕩うおれの髪に、そっと藤に似たものが差し込まれる。

「……お前も、あの時俺に飾ってくれたもんな。……お揃い」

 嬉しそうにまたキスしてくる男の匂いに、甘い花の香りが混じった。

 ……は。服に仕舞ってたモンも見付けたのか。
 好いコだ、あきら。


 重い瞼を持ち上げて、ゆっくりと頬を擦り合わせる。
 今度は声を上げて笑った晃が、ぎゅうぎゅうと強く抱き締めてきた。



◇◇◇

ルピナス:花言葉「想像力」「いつも幸せ」「貪欲」「あなたは私の安らぎ」
(3月10日誕生花)
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