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暗雲

第41話 スライムは嫌なのか

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「あ゛ァアぁあ゛アアーーーッッ!」

 壁を抉じ開け、一気に全てを捻じ込む。
 逞しい体が激しく跳ね回って、大量に精液を吐き出した。
 スライムが体を震わせ、体内に放出される白濁をごくごくと飲んでいく。

「イぁ゛ううッ! ひぅッぁあううっ!」

 尿道と胎内の両方で、意思を持った粘体が蠢き吸い上げられている。
 人間の手では到底不可能な責め苦に、いつも性器だけでもイき狂っている男が悲鳴を引き攣らせた。

「く……っ」

 泣き声が大きくなる中、俺も小さく息を飲む。

 あつい。でも、冷たい。
 引き抜かないまま押し入った場所で、肉璧の熱さとスライムの冷たさを同時に味わう。

 俺も驚いたが、旭陽の体はそんなものでは済まなかったらしい。
 慣れない刺激に怯えていた璧が、知っている熱と形に悦んで一斉に絡み付いてきた。
 ……俺しか知らないって感じがして、凄くイイ。

 いつもよりも激しく吸い付いてくる隘路に、我慢を考える余裕もなく射精感が高まる。

「ッ旭陽、出る……っ」

 両腕を旭陽の体に回し、美味そうに色付いている項に歯を立てた。
 びくりと震える動きを腕の中に閉じ込め、結腸の奥に大量の白濁を流し込む。

「ヒッぁ゛あアアあーーッッ!」

 びゅくびゅくと注ぎ込まれる熱に、旭陽がまた射精した。
 まだイってるのは分かってるけど、こっちは昨日から我慢していたんだ。もう僅かたりとも我慢できない。
 俺自身もイったばかりだが、すぐに腰を引いて抉じ開けた壁から抜け出す。

「ッヒぅう!」

 跳ね上がった頭が、後ろから抱き締めている俺の肩にぶつかった。
 前立腺目掛けて腰を注ぎ込めば、どろりとまた精液がスライムの中に吐き出された。

「ッィ゛ぁッあ!?」

 がくっ、と肩が大きく揺れた。
 強く奥を穿って、また行き止まりを抉じ開ける。
 腹に回した腕が、手で押さえた時と同じくまた中から押し上げられるのを感じた。

「ッきハァアああ゛ぁッ!」

 飲み込めない唾液を伝わせながら、震える唇から淫気に染まった悲鳴が迸る。
 さっきまで完全に拒否していたのに、今は嫌がっている声には聞こえない。

 全身に淫毒が浸透しきっているという状況は、今もさっきも変わらないはずなんだけど――
 自意識過剰だろうか。俺が挿入したら、拒否の色が消えたように思うのは。

「ァッ、ひぅッ、ウ゛っ! アッぁ゛っきィッ、ぃアあッ!」

 突き上げる度に泣きながら精液を吐き出している男を見ていると、どうしても血を飲みたくなってきた。
 疼く牙から意識を逸らすため、甘い匂いを纏っている体に何度も歯を食い込ませる。

 ……もっと密着したいな。僅かな隙間もないくらいに。
 前のめりになっていた足を折り畳み、膝の上に旭陽を無理矢理引き上げた。
 旭陽自身の自重によって、一層深く俺が突き立つ。

「ッっヒッゃ゛うァアあ゛あーーッ!」

 シーツの上で、褐色の足がのたうち回る。
 旭陽の体が跳ねる度に、俺の腕とペニスに挟まれている弱点を自ら押し潰している。

「ヒゃうッあアアッ! ひっぃイ゛ああッ!」

 びゅるびゅると吐き出され続ける精液は、ペニスの外に出るより前にスライムが直接吸い付いて取り込んでいる。
 俺が結腸を穿てば、前立腺に取り付いた粘体が微弱な電気をシコリに流す。

 ぎゅうぎゅうと締め上げられて、俺もまた旭陽の中で吐精した。
 奥に吐き出される熱さに反応して、射精中の男が体液を伴わない絶頂にも陥る。

「ッかっあ゛ひっヒぐぅッ! ぁっア゛ー……っ!」

 頭上で縫い止められた腕が、掴むものがない指先を強く握り込んで震えている。
 今にも爪が掌の皮膚を突き破ってしまいそうだ。

 そんなことするより、俺に縋れば良いのに。
 自分で旭陽の両手を届かなくさせておきながら、ついそんな不満を抱いてしまう。

 その直後、褐色を拘束する桃紅色がするすると降りてきた。
 がたがたと震える腕は上に向けて持ち上げられたまま、肘から先が俺を挟んで下方へと引かれる。
 仰け反った背中が俺の胸板に押し付けられ、粘液に包まれた手首は首裏へと回された。

 正面から腕を回されれば一番だったが、後ろから貫いていたのは俺自身なのだから仕方がない。
 俺の頭を挟む形で動かせなくなった腕に軽く歯を立て、頭を傾げただけで届く位置にきた腋に舌を這わせた。

 前に本気で嫌だと言われた行為だが、すぐ近くで晒されていれば我慢できない。
 俺はいつでも、甘い体の全部を味わいたいんだから。
 
「ッひ、ゃ゛っあ! ャあッぁう……っ!」

 微かに頭が振られる。
 何を嫌がっているのか言葉にされていないからと、気にせずに朱の痕を残した。
 言葉にしないんじゃなく、感じすぎて碌に喋れないんだって理解してるけどな。

 触れて欲しそうな乳首を指で押し潰し、摘み上げて爪を立てる。
 バチッ、とまた前で電流が弾けた。

「ッぁ゛うアッ! ヒッぃあア゛! ア、きッ、ぁっ、ゃ゛めぇえ……ッ!」
「何をやめて欲しい?」

 旭陽が首を振る度に大粒の涙が散っている。
 耳に噛み付いてみれば、びくりと腰が跳ねた。
 僅かに抜けた分だけ、自重で自ら飲み込んでいく。

 硬直しては脱力して、自分でももう制御できていない体を俺に預けきっている男にもう一度囁いた。
 ぶれている瞳が空中を彷徨い、俺と視線を合わせようとしている。
 一応、何を尋ねられたかは辛うじて認識しているようだ。


 いつもなら旭陽に求めさせることはあっても、まだ意識があるのに中断したりはしない。
 でも、今日は――本当は、こんなに泣かせるべきですらないだけの理由があった。
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