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光亡き獣と元同僚の女騎士団長

…おじさん、軽く先生になっちゃいました

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【アーノルド視点】


今日も今日で快晴だねぇ~。


ふんに曇ってもなく、さらにはそこまで暑くも無い。


いやぁ、ここまでお昼寝に適した日はなかなか無いでしょうねぇ~。


いやぁ、昼寝したいなぁ~。


…まぁ、そんな時間はないですし…


出向かなきゃならない場所があるんですよねぇ…


いやぁ、おじさんもさっ?


それなりの時間を生きてきたわけですよ。


だから、それなりの経験があるのは間違いないんですけどぉ…





…まさか、王都の騎士団がこんな田舎の村に来て、しかもおじさん今日からなんかお手伝いする事になるなんて思いもませんでしたよ…本当にぃ…





……いやぁ~…正直めんどくさいなぁ…


でも、団長からボーナス弾むって話出たし…


…前金として、飲み代奢ってもらったしなぁ…





今からとんずらする?


お昼寝も魅力的ですぜ?





とまぁ…頭の中でそんな考えをしたりしてみますけどぉ…


…いやいやいや…それこそ最悪の選択だって話ですよ。


あの団長の事だし…とんずらしたなんてバレでもしたら、ご自慢の大斧を振り回しながらバーサーカーモードで追ってくるに決まってるんだからぁ…


…いくらめんどくさくてもね、おじさん自殺願望は無いのっ。


普通に無難に適当に楽しく生きる。


それがおじさんのモットーなんですよねぇ。





…というわけで…


これから騎士団の皆さんのお手伝い頑張りましょう!










…と、おじさんに似合わない意気込みを入れてみたけど…


…正直、何を手伝うって言うんですかね?












そして、しばらく歩けば目的地の木造倉庫に到着。


本来なら、普段からあまり使われていない倉庫なんですが…


急遽騎士団さん達のために、活動場所として提供したんだとか…





いや、おじさんも事情を知ってるからこう言っちゃダメなのはわかってますが…


いくらなんでも、これは不敬にあたるのでは…?


急ごしらえでしか対応出来ないと言っても…相手が相手な気もするんですがねぇ…





まぁ、向こうさんも納得してくれたらしいですし…お互いにいいんなら…おじさんは特に何も言いませんけどね?


「ん……あぁ、来ましたか」


と、おじさんが複雑な心持ちで周りを見回していると、中から昨日の騎士団長様が出てきなさった。


…わざわざそこら辺の門番のために、騎士団長様が出てくる必要ないと思うんですけどねぇ…





ちなみに、ここだけの話…


おじさん…どうやら、この騎士団長様とお知り合いらしいんですよ…これが…





…いやぁ…おじさん記憶に全く無いんですけどね?


…だってほら…


…王都で出会ったことがある…とからしいけど…


おじさんからしたらさぁ…何年前の話だって感じなんだもん。


「どうも、遅くなりましたかね?」


「貴様ッレイチェル騎士団長になんて口の聞き方を!!」


おおっと、フレンドリーな感じはダメだったかね?


昨日の感じじゃ、特に気には気にしてなかったと思いやしたけど。


「よせっ!…彼とは昨日、話し方についてはやり取りを行っただろう?」


「し…しかしっ」


と、腑に落ちないご様子。


騎士団さんだけが特殊でしたかぁ…





まぁ無理もないですよね。


団長の話じゃ、王様が信頼を置くレベルの騎士団らしいし。


名もしれない門番兵程度が…しかも騎士団長相手に話しかけられちゃ、団員として言いたくもなりますよってね。


でもまぁ…


こちらも最初に言った通り、特に口調を変えるなんてするつもりは全く無いんですけどね?


てか、無理。


話し方のマナーとか知りませんから。


「…あー…気に入らないのでしたら、退散させてもらいますよ?。こっちの団長には私の方から上手く言っときますんで」


トンズラしたらボコられるだろうけど、向こうが気に入らないと言う話なら、団長も納得してくれるだろうし。


「いえ、問題ありません。口調に関してはお気になさらず…昨日も言いましたが、不慣れな事に関して、無理強いするつもりはありませんから」


「…ですが、部下の皆さんからすれば不快極まりないと思うのが普通では?」


そう、問題はそこ。


おじさんとしても、居心地の悪い空間にいたいとは思わないし…


…まぁ、その原因を作ってるのはおじさんなんだけどね?


「確かに…ですが、それも時と場合を選びましょう。そうですよね、副団長?」


と、話しかけられたのはガタイのいい大男。


…それに、見た目だけじゃなく、かなりの実力者だねぇ…


「えぇ、その通りです。此処は王都ではありませんので…」


と、即答するガタイの良い副団長様だけど…


…声からして不満ありげ…


まぁ仕方ないですかね。


しかも、王都だったら許すつもりはないって明言してるようなもんですもんねぇ~。


…はぁ…これだから、都会の人間はこわいこわい…


「…まぁ…そこまで言ってくださるのでしたら……何のお役に立てるかわかりませんが、出来る限り、お手伝いさせていただきますよ」


「あぁ…んんっ…えぇ、期待していますよ」





…いや…何だろ…


さっきから2つほど気になってる事だけど…なんかこの人から異様に信頼されてない?


…それに、口調についても…何だか…違和感が…


「…では、早速ですが中で話を聞かせてもらえますか?」


「わかりました」


と導かれるように中へ。


倉庫内は、流石に高級な会議室…とはいかず…


急ピッチで用意した簡易会議室と言えるほど見事に大雑把な配置がされていた。


…まぁ、急いで用意したんだからなぁ。


逆にこれだけあるだけでも十分ってやつかね。


…そして、周りの目が痛いわ…早く帰りたい…


「…では、早速だが話を聞かせてほしい」


「…あー…その前にちょいといいですかね?」


「ん…何でしょうか?」


「カーミラ団長から、概要については説明がありました。“光なき森”で異様な魔力が非定期的に確認されたから、皆さんがやってきたと…」


「えぇ、その通りです」


「出来れば先に、いくつか質問させてもらいたいんですが…」


「質問…ですか?」


と不思議そうな表情を浮かべる。


そりゃそうだろうね。


本来なら、こちらに聞きたい事があって呼び出したのに、逆に質問したい事があると言われたんだからさ。


…ただまぁ…ちょいと、おじさんも何か話せるほど会話のピースが手元に無いんでね。


「いやなに、本件について機密事項を聞き出そうとかそんな物騒な話じゃありませんよ……ただ、おじ…私も、先ほどのような簡単な説明しかされていませんので…話すもなにも、何を話せば良いのかわからないんです」


「それは…確かに…」


「…あとはまぁ、変な誤解を起こさないための応急措置的な行為だと思ってもらえれば」


「…なるほど…こちらも焦っていたとはいえ……情報の伝達が不十分でしたか」


「いえいえ、事前の連絡としてはカーミラ団長から聞いた内容で十分です。限界を求めなければ、行くとこまでいっちゃいますしね」


情報不足とは言ったが、正直見方によっては問題なかったりする。


ただ、カーミラ団長から聞いた内容…


つまり、口頭による又聞きの説明程度では不十分だったって話なだけだ。


此方も変に隠すつもりとか無いですが…


そもそも、状況が十分にわからないのに何を話せばいいかわかりませんしね。


「…で、質問とは…?」


「おっ、話していただけるので?」


「機密事項については流石に無理ですが…ある程度のことであれば」


…おぅ…出来た人ですねぇ…


中には、些細なことも話したく無いって駄々こねるタイプもいるってのに…


「…副団長さん、騎士団長様はこう仰ってますが…本当にいいんですかい?」


「…私達は、騎士団長に従うまでだ」


…ふむ……なるほど…


あくまで、決定権は騎士団長さんにあると…


「…では遠慮なく…あっ、もちろん機密事項に値する事はお話し下さらなくて結構です。あくまで話せる範囲で問題ありませんので」


「えぇ」


もちろんこっちも機密事項なんてヤバげなものを聞く気はないですよ。


そんな厄介なもん背負い込みたく無いですしね。


「では1つ目ですが……高い魔力反応を観測したとの事ですが……“何の”魔力反応で?」


「え…“何の”…ですか?」


「えぇ、それについてまず教えてもらいたいんですが」


というか、そこがわからないと話になりませんからねぇ…


「……」





ん?


…あれ?


…この程度、隠すほどでも無いはずだからすぐ出てくると思ったけど…?


「…もしかして…機密事項に触れてしまいましたかね?」


「いえ…そうでは無いのですが……副団長、“何の”とは…何か知ってますか?」


「……いえ……そもそも質問の意味が…」


「…」





…えぇぇぇ…嘘ぉ…


マジで…言ってらっしゃいますん?


「…ご冗談を……と言うわけではない感じですね…」


「…詳細は省きますが……あくまで高密度の高い魔力反応があった…とだけで…それ以外は特に…」


「…」


高密度の魔力反応…


んー……


…おじさんの聞き方が悪いのかねぇ…


「…つまりあれですかい?。何かよくわかりませんが…とりあえず、文字通り“謎の”高密度な魔力の反応を観測した…と?」


「…えぇ…簡単にまとめれば…そうなるかと…」


「…魔力の塊とだけ?」


「…えぇ」


「…あの光なき森から?」


「…」


コクリと頷く騎士団長様。


この感じは…演技ってわけでもなさそうだねぇ…


「…すまんが、お前は何を言いたいんだ?…魔力は魔力だろう?」


助け舟ってわけじゃないですが…


混乱している要因の1つらしきものに対して、明確に副団長さんが聞いてきた。


なるほど…


…やっぱりかぁ…


「えぇ、魔力ですよ。ですが、魔力と言っても全部が同じってわけじゃありませんからねぇ。具体的に“何の種類に分類される”魔力なのかについて聞きたかったんですよ」


「「…」」


なぜか驚いた表情で固まっている騎士団長一行。





…え?


知らない…?


嘘でしょ?


全員?


…こんなの、基礎中の基礎なんじゃ?


「…もしかして…今じゃ、魔力って大雑把に1つの力の塊的な扱いされてます?」


嘘だろと思いつつ、騎士団さんに問いかけてみた。


「……違うのっ……違うんですか?」





えぇぇ…うそぉ…


「…えぇ、違いますねぇ」


「…これでも、私達は王都ユーリア魔術学校の卒業生でもある。だがそんな話は聞いた事もないが…?」


と、副団長さんがそう言ってきた。


ユーリア…ユーリア…





…あぁ、あそこかぁ。


王都内でも、名門校って名高い魔術学校だったかねぇ…


…だったら余計に知らなくても無理はないかもしれませんねぇ。


「……でしたら、知らなくても無理はありませんよ」


相変わらずだねぇ、あそこは。


「…え…何故?」


「……まぁ……これについては何と言いますか……学会のお偉い方ほど“否定したい物“ですからね」


「…何だと?」


と驚く副団長さん。


騎士団員達も同じ様にザワザワとしていた。


「…まぁ、長くなりますしこの話は一旦なしで」


「…いや、こちらとしては気になるのだが…」


…まぁわからなくも無いですが…


「別に隠すつもりはありませんよ…ただ、ちょとばかし話がこじれそうだなぁと……それに、明確な証拠が現時点で用意できませんし。…それに、時間も無限にあるわけじゃありませんしね。こちらとしては今の解答で十分ですから」


「………確かに……今は勉強の時間じゃありませんからね…」


そう。


おじさん達は今勉強をしてるわけじゃ無い。


だから、もっと話をしなきゃならない部分を優先すべきだ。


なら、今は時間をどう使うべきなのか…


まぁ考えるまでも無いですよね。


「お気遣いありがとうございます。では、2つ目 …光なき森のどの辺で観測が?」


本来なら、1つ目の質問を明らかにした上で行いたかったんですけどねぇ…


まぁ、ないものねだりしても仕方ありませんし。


「確認箇所は毎回異なっていたと…未開拓ゆえ、明確な地図が無いためはっきりとは……」


「なるほど…」


確かに、あの森…


いや、森だけじゃなくこの辺一体が未知の領域みたいなもんだからねぇ…


地図が無くて場所がわからない…まぁこれについては仕方ないと諦めるしかないよね…


それより、重要なのは、発生箇所がバラバラだった事…





「…なるほど…ありがとうございます」


「…質問はこれだけ…でしょうか?」


「えぇ。おおむね知りたい情報は聞くことが出来ましたので、これで大丈夫ですよ」


まぁ、1番知りたかった種類について…


そこがわからなかったのはちょっと痛手だけど…


「…前置きが長くなってすみませんね…では、本題に移りましょうか。そちらとしては、何がお聞きしたいんですかね?。ほとんどの情報はカーミラ団長にお伝えしていますが…」


「えぇ、過去分も合わせ資料には目を通しました。正直、よくもあれだけの事を確認できたのかと驚くばかりです…」


と背後に目を配る。


そこには、山のように積まれた書類の束が…





…えっ?


あれ全部読んだの?


いやいや…あれ…数年分は無い?


「…ちゃんと寝ました?」


「はい、ちゃんと1時間は休息をとりましたよ」





「…いやいや…それって休息…まぁ、休息ではあるでしょうけど……絶対まともな休憩行動になって無いですよね…体壊しますよ?」


「大丈夫です、昔から少ない時間で休息する訓練は行ってきましたので…1時間も眠れば、全開です」


「…」


流石にそれは脳筋すぎませんっ…って、めっちゃくちゃ突っ込みたくなったけど…


「…副団長さん?」


「…ノーコメントだ…」


どうやら、副団長さんも思うところはあるみたいだ。


…苦労されてるんだなぁ…


「…まぁ、そこについては…お任せするとして……正直、あれ以上の情報は無いに等しいですよ。出来るだけ細かく報告はしてますから」


後からやり直しとか嫌だからね。


「えぇ、読んでいて私もそう感じました…思っていた以上に事細かく、要点は抑えられていましたから……最初は、本人でも必要ないと思ってしまうような部分について聞ければと考えていたのですが……あれだと、その部分を漁ったところで無意味な結果にしかならないと思っています」


「お褒めいただき誠にありがとうございます…まぁあの程度、皆めんどくさがっているだけで、誰でも出来ることでしょうが…」


「いえ、それはどうかと……報告書として完璧に等しいものでした。そう簡単に誰でも出来るとは思えないのですが…」


「いやぁまたまたぁ…おじ…あー…私を煽たって、何も出やしませんよ?」


そもそも、騎士団長様とでは金銭の支払いに大きな差があるでしょうし…


満足いく物とか用意できませんっ。


「…煽ているわけではないのですが……やはり相変わらず……のらりくらり……」


「ん?」


「あっ、いえ。何でも……では、アーノルドさんから見て、何か異変らしき物は感じませんでしたか?」


「…私から見て…ですか?」


「えぇ…何だかモンスターの様子がおかしかったとか、森が騒がしかったなど…監視役として毎日監視している対象が、いつもとは異なる振る舞いを行う……もちろん、些細な事でも構いません…そういった事はありませんでしたか?」


「…」


変化ねぇ…


なるほど、確かにおじさんに聞きたいって意味合いも納得ですわ。


些細な変化は、毎日見てる人じゃ無いとわからなかったりしますからねぇ。


…変化…変化かぁぁ…


…変化と言われても…そういうのはなぁ…


「…正直、これといったものは特にないですかね…」


「…1つもでしょうか?」


「…正確には、変化と呼べる変化が無い…といったところでしょう」


「…と、おっしゃいますと?」


「理由は大きく分けて2つです。1つ目は、名前の通り光なき森…内部の様子については実際に潜って調査を行っているわけじゃ無いのでわかりません。そもそも、奥が暗すぎてよく見えませんしね」


「…確かに…」


ミーアちゃんは多少見えるみたいだけど、おじさんはただの人間種だからね。


見えないものは見えないし。


「そして2つ目…これは、ちょっと意味合いが特殊ですが…結論から言えば、変化は常に起こっています」


「「っ!?」」


一瞬、ざわっと雰囲気がピリたつ。


「…先ほど、変化と呼べる変化が無い…とのお話だったかと思いますが…」


「えぇ、そうですね」


「…私達を馬鹿にしているのかね?」


「いや、そういうわけじゃありませんよっ……単純に、常に環境というのは変わっていくものだと言いたいんです」


「…」


「人間が成長するように、植物だってモンスターだって成長しますよ。その中で変化が無いなんて事あり得ないでしょ?」


「…話の論点がずれている。私達が求めているのはそういった情報では」


「ずれてませんよ、こちらとしては一切ね。というか、ずれているのは…いや、そもそも始まりにすら立てていないんですよ」


とおじさんは携帯している小石を机の上に。


「…これは?」


「あぁ、お気になさらず。単純にわかりやすくするために出したものですから」


「…?」


訳がわからないといった様子の2人を放って、おじさんはまず小石を1つ前にだす。


「…では聞きましょう。今回の事について目的は?」


「…謎の高密度魔力発生に関する調査だ」


「ではこの小石にはそう言う意味があると言うことで」


「……はぁ…?」


「では他…何かあります?」


「…他となれば…魔力発生による影響の調査でしょうか?」


「…では、此方の小石はそういう意味で…」


と2つ目の石を前に出す。


「…さて…まだ深めてもいいですが…あえて聞きましょうか……これらの目的について、あなた方は“何を知っていて”“何を知る必要があって”“何をしなければならないのか”…お答えできますか?」


「「…」」


と、問いかけると2人は答えられなかった。


いや、正確には何と答えてはいいかわからない…


そういう状態なんだろうねぇ。


「……まぁ、こう言うのは失礼ですが……あなた方の言った事は、あくまで過程と結果でしかありません。しかも、あやふやな…ですね」


「…どういう意味でしょうか…?。過程を経て結果を見る…それが重要では?」


「ええ、それはそうです。ですが…“足らなさすぎる”」


「「…」」


どうやら、この2人…


いや2人だけじゃなく、周りの騎士団員達も分かってなさそうだねぇ…


やれやれ…頭が硬いなぁ…


「…確かに、騎士団長様の言ってる事は間違ってません。最終的にはそこに行き着きます……ですが…」


と、最後の小石を前に。


「…あなた方は“始まり”について…何もわかっていない…これで一体何が出来ると言うんですかね?」


「…始まり…」


「…いや、だからこその調査を」


「あー……まどろっこしいのはおじさんも苦手なのでもう答えみたいなの出しますけど……結果から言えば、今の皆さんじゃ奇跡でも起こらない限り、始まりを知るのは無理に等しいですね」


「…何だと?」


「そもそも、始まるを調べるなんて不可能ですよ。なんたって、始まりがあるからこそ次があるんですしね……まぁ要するに、“何一つ分かっていない原因不明な事象を明らかにしようと踊っている”……おじさんにはそうにしか見えないんですよ。ざっくりとまとめればですが…」


とおじさんは立ち上がった。


「…アーノルド殿?」


「…さて、騎士団長さん…これからすぐに動けますかね?」


「…動けるとは…」


「光なき森に…少なくとも近づけるかどうかという事です」


ザワッと空気が一変。


…ありゃ、いきなり過ぎたかな?


「っ……準備はいつでも万全ではある…だが、安全を考慮するならば…」


「えぇ、少なくて構いませんよ。もとよりすく無い方が良いですしね」


「…今から向かうのですか?」


「えぇ…“大体の事はわかった”ので、確認がてら見てこようかと」


「なっ!?」


「で、何ならご一緒にいかがかと思いましてね?。なんせ、王都に報告するのであれば…ご自身の目で見られた方がいいでしょうし」


「…」


おじさんの問いかけに、騎士団長はしばらく考える。


いきなりの連続…さらには、意味不明なことを言われて戸惑っているのだろうか。


まぁ、それが普通だよね。


「…わかりました…では、私が同行しましょう」


おっ?


「騎士団長!?」


「…副団長は他の人員の指揮を…万が一の場合を備え防衛を」


「いやそれでは騎士団長の身は!?」


「…私の強さ…それは知っているでしょう?」


と、眼光が強くなり、ヒヤッとした空気が…


…副団長もなかなかだったが…やっぱり騎士団さんはその上を言ってたかぁ…


「…た…確かに、そこについては…ですが事情が違いますっ。光なき森は、他の場所に比べて比較的穏やかとされていますが、それはただ単に被害が少ないという意味でっ」


おぉ。


なんだかんだ調べてるんですねぇ。


確かに、光なき森は他に比べて被害数は少ない。


だけど、それはただ単に森からモンスターが滅多に出てこないだけ。


中に入れば話は全く違う。


…少なくとも、騎士団長1人を向かわせても良い場所とは言い難い。


「大丈夫です…なんせ、彼が一緒ですからね」


「え…」


と騎士団長様がおじさんを見る。


さらには、副団長…それに他の団員達も…





え…何…?


…おじさんなんか…めっちゃ変な期待されてない?


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