21 / 21
21.野のユリ
しおりを挟む
しかしそんなことで引く王太子ではない。
彼は次の手を打つことにした。
「残念だな。では幸運な叔父上に乾杯といこうじゃないか」
とラキシスにグラスを渡す。
ラキシスは微笑んでグラスを受け取る。
「ありがとうございます」
「叔父上に、乾杯」
「乾杯」
ラキシスはグラスの中の酒を、水でも飲むように飲み干した。
王太子は目を丸くする。
「いい飲みっぷりだね」
「さあ、殿下も」
そう言われては彼も飲まない訳にはいかない。
ラキシスは涼しげな顔で酒をあおる。
クレマン始め、周りの男達のペースも速いし、いくら飲んでも平然としている。
釣られて王太子もどんどんと杯を重ねた。
四、五杯――いやもっと飲んだだろうか。
いい加減酔いも回ってきた王太子は一向にそれらしいムードならないことに苛立った。
強引にラキシスを部屋に連れ込むことにしたのだ。
「ラキシス嬢、叔父上のことで話があるんだ」
「まあ、なんでしょうか」
王太子はラキシスに顔を近づけ、その言葉を囁く。
「私なら戦争を止めるように進言出来る」
ラキシスは顔色を変えた。
今までの余裕に満ちた表情を一変させ、真剣な眼差しで王太子を見つめる。
「国王陛下と王妃殿下に戦争をやめるよう、進言して頂けるのですか?」
「それはあなたとの話し合いによる。……付いて来てくれるね」
ラキシスは王太子に連れられ、王族用の控え室に向かった。
王族専用の控え室は豪華なものだ。
煌びやかな調度品の数々には公爵令嬢のリディアすら目を輝かせるのに、ラキシスは見向きもしない。
王太子はラキシスに椅子を勧め、自身は手ずからグラスに酒を注いだ。
そんな王太子にラキシスは椅子から身を乗り出すようにして頼んだ。
「王太子殿下、戦争をやめるよう、どうかお力をお貸し下さい」
王太子は上機嫌に微笑みながら、ラキシスの前の椅子に腰掛け、ラキシスと自分の前に杯を置く。
「悪女ともあろう人が、随分と無粋だね。もっと楽しい話をしようじゃないか?」
「殿下、その前にどうぞお言葉を。今ならまだ戦争をやめられます」
王太子はため息をつく。
「何故、戦争をやめねばならない?あなたは自分の婚約者をもっと信じるべきだよ」
「…………」
「叔父上は常勝将軍と呼ばれた男だ。此度も我々に勝利を届けてくれる。疑うなんて、ひどくはないか?」
「アルバート様は今度の戦いは負け戦だとおっしゃいました。そもそも他国に攻め入り、暴虐の限りを尽くし、何を得られましょうや。どうかお止め下さい」
王太子は大袈裟に肩をすくめる。
「やれやれ、困った人だな」
「……殿下」
「あなたがもっと楽しい話をすれば、私をその気に出来るかもしれないよ」
「…………」
「例えば、その酒を飲んでくれたらね、もう少し話を聞く気になるかも知れない」
王太子はそう言ってラキシスに酒を勧めた。
ラキシスは、にっこりと微笑んだ。
王太子が思わず見惚れるような魅力的な微笑みだ。
その笑みを浮かべたまま、ラキシスは彼に囁いた。
「殿下、このグラスに何をお入れになったの?」
王太子はタジタジになった。
「な……何を?」
「お隠しにならないで」
と言うとラキシスは王太子の前にあるグラスを持ち、二つのグラスを何度も入れ替えた。
王太子は思わず言った。
「おっ、おい。どちらが薬入りか分からなくなる!」
「お薬ですの?」
ラキシスは面白そうにコロコロと笑う。決して王太子を責める口ぶりではない。
王太子も楽しげなラキシスについ、口元をほころばせる。
「ああ、媚薬だ」
「あら、じゃあ、どちらが飲んでも同じじゃあありませんか」
ラキシスは思わせぶりにそう言うと、グラスを取って酒を煽った。
王太子も愉快になった。
「それもそうだな」
と彼も酒を飲み干す。
***
三分後、ラキシスは部屋を出る。
扉の前に立つ王太子の護衛騎士は一人で部屋を出てきたラキシスに目を見張った。
「ご令嬢、いかがなさいました?」
ラキシスは困ったようにため息を付く。
「いかがも何もありませんわ。王太子殿下ったら部屋に入ったらお話もせず、すぐに寝込んでしまわれましたの」
「そ、そうでしたか?」
確かにもう一人の騎士が部屋を覗き込むと、だらしなく椅子に凭れて高いびきを掻く王太子の姿が見えた。
「私、帰ります。兄と一緒に来ておりますの。お兄様は何処かしら?」
「しょっ、少々お待ちを」
騎士があわてて探す前に、ラキシスの声を聞きつけ、兄のクレマンがやってくる。
「ラキシス!」
「お兄様。王太子殿下はお話もせずに寝てしまわれたの。お疲れだったのかしら」
「本当だね、お疲れなのだろう。随分お酒も召しておられたようだし。主役の殿下がこのご様子なら、私達は失礼しようか」
「ええ、お兄様」
ラキシスと兄のクレマンは会場を後にしようとするが、様々な人が呼び止める。
その度にラキシスは、
「二人きりで話したいとおっしゃるのに、お疲れなのか、殿下は眠ってしまわれまして……」
と顛末を話す。
ラキシスと王太子が連れ立って出て行くのは大勢の人間に見られている。
男女が控え室に行くというのは、『恋の火遊び』の意味だ。
ラキシスは身の潔白のために、王太子とは何もなかったと強調した。
実際、ラキシスが控え室にいたのは十分ほどなので、不貞を疑われる隙もない。
人々は王太子が大量の酒を飲んでいる姿を見ている。
ラキシスの話を誰もがあっさり納得した様子だ。
広間を出るとラキシスとクレマンは、さっさと馬車に乗り込んだ。
いや、乗り込もうとした時。
「ラキシス」
声を掛けてきたのは、元の婚約者ヘンリー侯爵令息だった。
『一体何の用だ?』
『一体何の用なの?』
と兄妹は仲良く同じことを考えた。
「話がある」
とヘンリーは言った。
「こちらはございません。気分が悪いんですの。失礼します」
ラキシスはツンと悪女らしく言うと、馬車に乗り込む。
王太子が目を覚まし、追いかけてくるかも知れない。
ことは一刻を争うのだ。
「頼む、聞いてくれ」
ラキシスとクレマンは何事か言うヘンリーを放って馬車を出させた。
馬車の中でクレマンはラキシスに尋ねる。
「ラキシス!無事か?」
「ええ、この通りです。アルバート様から頂いたお薬は良く効きましたわ」
「即効性の眠り薬らしいからなぁ。あんなに飲んでたし、ほんの少しでよく効いただろう」
と同じ量を飲んでいたクレマンはケロリとした顔で言った。
ラキシスは普段は人前で酒を飲むこともないため、弱いように見えるが、その実かなり酒に強い。
兄のクレマンも、父親のアルティス伯爵も強いので、酒豪の家系である。
ハイペースで酒を飲んで、王太子をへべれけにする計画だったが、王太子から「戦争をやめるように国王に進言する」と言われて、ラキシスは一縷の望みに掛けた。
だが、王太子に戦争をやめる気がないのはすぐに分かってしまった。
ラキシスはアルバートから「何かの時に使え」と即効性の眠り薬を渡された。
良く効く上、成分が検出されにくいらしい。
ラキシスは眠り薬をこっそりと自分のグラスに入れた。
ラキシスのグラスなので、王太子はさほど注意しない。
その上、彼は酔っ払っている。
何度も入れ替えているうちに王太子はラキシスに飲ませるはずの薬入りのグラスを見失った。
もちろんラキシスは覚えている。
ラキシスが飲んだのはただの酒だが、王太子のは媚薬と眠り薬入りだ。
グラスを飲み干すと彼はあっという間に人事不省に陥った。
「ところでお兄様、ヘンリー様は何の用だったんでしょうか?」
「分からないけど、あそこは今ちょっと揉めているようだよ」
「揉めている?」
「リディア公爵令嬢……おっとご結婚なさったから小侯爵夫人か。彼女とヘンリー卿は最近は上手く行ってないそうだ」
「まあ、そうなんですの」
ラキシスを捨てて貫いた真実の愛だというのに、新婚早々不仲とは、なんとも呆れた話だ。
***
その後は大変な騒ぎになったらしい。
王太子が目覚めた時は、あれから一時間以上経っていて、ラキシスは既にいない。
王太子は憤慨したが、もう手遅れだ。
媚薬のせいで悶々としていると、王太子が目覚めたと聞いてリディアがやって来た。
「殿下、お目覚めですの?」
もはや飽きが来ていたリディアだが、願ってもないタイミングだ。
まるで彼女が女神に見える。
「リディア、おお、君は何て美しい……」
「あら……」
熱烈に口説かれて、リディアはあっさりその気になった。
二人が組んずほぐれつしているところに、遅れて取り巻き達がやって来たのだが、その中にはヘンリーの姿もあった。
箝口令が敷かれて何一つ「なかった」ことになったが、王太子の誕生日パーティーの席である。
多くの目撃者がおり、醜聞はあっという間に広まった。
彼は次の手を打つことにした。
「残念だな。では幸運な叔父上に乾杯といこうじゃないか」
とラキシスにグラスを渡す。
ラキシスは微笑んでグラスを受け取る。
「ありがとうございます」
「叔父上に、乾杯」
「乾杯」
ラキシスはグラスの中の酒を、水でも飲むように飲み干した。
王太子は目を丸くする。
「いい飲みっぷりだね」
「さあ、殿下も」
そう言われては彼も飲まない訳にはいかない。
ラキシスは涼しげな顔で酒をあおる。
クレマン始め、周りの男達のペースも速いし、いくら飲んでも平然としている。
釣られて王太子もどんどんと杯を重ねた。
四、五杯――いやもっと飲んだだろうか。
いい加減酔いも回ってきた王太子は一向にそれらしいムードならないことに苛立った。
強引にラキシスを部屋に連れ込むことにしたのだ。
「ラキシス嬢、叔父上のことで話があるんだ」
「まあ、なんでしょうか」
王太子はラキシスに顔を近づけ、その言葉を囁く。
「私なら戦争を止めるように進言出来る」
ラキシスは顔色を変えた。
今までの余裕に満ちた表情を一変させ、真剣な眼差しで王太子を見つめる。
「国王陛下と王妃殿下に戦争をやめるよう、進言して頂けるのですか?」
「それはあなたとの話し合いによる。……付いて来てくれるね」
ラキシスは王太子に連れられ、王族用の控え室に向かった。
王族専用の控え室は豪華なものだ。
煌びやかな調度品の数々には公爵令嬢のリディアすら目を輝かせるのに、ラキシスは見向きもしない。
王太子はラキシスに椅子を勧め、自身は手ずからグラスに酒を注いだ。
そんな王太子にラキシスは椅子から身を乗り出すようにして頼んだ。
「王太子殿下、戦争をやめるよう、どうかお力をお貸し下さい」
王太子は上機嫌に微笑みながら、ラキシスの前の椅子に腰掛け、ラキシスと自分の前に杯を置く。
「悪女ともあろう人が、随分と無粋だね。もっと楽しい話をしようじゃないか?」
「殿下、その前にどうぞお言葉を。今ならまだ戦争をやめられます」
王太子はため息をつく。
「何故、戦争をやめねばならない?あなたは自分の婚約者をもっと信じるべきだよ」
「…………」
「叔父上は常勝将軍と呼ばれた男だ。此度も我々に勝利を届けてくれる。疑うなんて、ひどくはないか?」
「アルバート様は今度の戦いは負け戦だとおっしゃいました。そもそも他国に攻め入り、暴虐の限りを尽くし、何を得られましょうや。どうかお止め下さい」
王太子は大袈裟に肩をすくめる。
「やれやれ、困った人だな」
「……殿下」
「あなたがもっと楽しい話をすれば、私をその気に出来るかもしれないよ」
「…………」
「例えば、その酒を飲んでくれたらね、もう少し話を聞く気になるかも知れない」
王太子はそう言ってラキシスに酒を勧めた。
ラキシスは、にっこりと微笑んだ。
王太子が思わず見惚れるような魅力的な微笑みだ。
その笑みを浮かべたまま、ラキシスは彼に囁いた。
「殿下、このグラスに何をお入れになったの?」
王太子はタジタジになった。
「な……何を?」
「お隠しにならないで」
と言うとラキシスは王太子の前にあるグラスを持ち、二つのグラスを何度も入れ替えた。
王太子は思わず言った。
「おっ、おい。どちらが薬入りか分からなくなる!」
「お薬ですの?」
ラキシスは面白そうにコロコロと笑う。決して王太子を責める口ぶりではない。
王太子も楽しげなラキシスについ、口元をほころばせる。
「ああ、媚薬だ」
「あら、じゃあ、どちらが飲んでも同じじゃあありませんか」
ラキシスは思わせぶりにそう言うと、グラスを取って酒を煽った。
王太子も愉快になった。
「それもそうだな」
と彼も酒を飲み干す。
***
三分後、ラキシスは部屋を出る。
扉の前に立つ王太子の護衛騎士は一人で部屋を出てきたラキシスに目を見張った。
「ご令嬢、いかがなさいました?」
ラキシスは困ったようにため息を付く。
「いかがも何もありませんわ。王太子殿下ったら部屋に入ったらお話もせず、すぐに寝込んでしまわれましたの」
「そ、そうでしたか?」
確かにもう一人の騎士が部屋を覗き込むと、だらしなく椅子に凭れて高いびきを掻く王太子の姿が見えた。
「私、帰ります。兄と一緒に来ておりますの。お兄様は何処かしら?」
「しょっ、少々お待ちを」
騎士があわてて探す前に、ラキシスの声を聞きつけ、兄のクレマンがやってくる。
「ラキシス!」
「お兄様。王太子殿下はお話もせずに寝てしまわれたの。お疲れだったのかしら」
「本当だね、お疲れなのだろう。随分お酒も召しておられたようだし。主役の殿下がこのご様子なら、私達は失礼しようか」
「ええ、お兄様」
ラキシスと兄のクレマンは会場を後にしようとするが、様々な人が呼び止める。
その度にラキシスは、
「二人きりで話したいとおっしゃるのに、お疲れなのか、殿下は眠ってしまわれまして……」
と顛末を話す。
ラキシスと王太子が連れ立って出て行くのは大勢の人間に見られている。
男女が控え室に行くというのは、『恋の火遊び』の意味だ。
ラキシスは身の潔白のために、王太子とは何もなかったと強調した。
実際、ラキシスが控え室にいたのは十分ほどなので、不貞を疑われる隙もない。
人々は王太子が大量の酒を飲んでいる姿を見ている。
ラキシスの話を誰もがあっさり納得した様子だ。
広間を出るとラキシスとクレマンは、さっさと馬車に乗り込んだ。
いや、乗り込もうとした時。
「ラキシス」
声を掛けてきたのは、元の婚約者ヘンリー侯爵令息だった。
『一体何の用だ?』
『一体何の用なの?』
と兄妹は仲良く同じことを考えた。
「話がある」
とヘンリーは言った。
「こちらはございません。気分が悪いんですの。失礼します」
ラキシスはツンと悪女らしく言うと、馬車に乗り込む。
王太子が目を覚まし、追いかけてくるかも知れない。
ことは一刻を争うのだ。
「頼む、聞いてくれ」
ラキシスとクレマンは何事か言うヘンリーを放って馬車を出させた。
馬車の中でクレマンはラキシスに尋ねる。
「ラキシス!無事か?」
「ええ、この通りです。アルバート様から頂いたお薬は良く効きましたわ」
「即効性の眠り薬らしいからなぁ。あんなに飲んでたし、ほんの少しでよく効いただろう」
と同じ量を飲んでいたクレマンはケロリとした顔で言った。
ラキシスは普段は人前で酒を飲むこともないため、弱いように見えるが、その実かなり酒に強い。
兄のクレマンも、父親のアルティス伯爵も強いので、酒豪の家系である。
ハイペースで酒を飲んで、王太子をへべれけにする計画だったが、王太子から「戦争をやめるように国王に進言する」と言われて、ラキシスは一縷の望みに掛けた。
だが、王太子に戦争をやめる気がないのはすぐに分かってしまった。
ラキシスはアルバートから「何かの時に使え」と即効性の眠り薬を渡された。
良く効く上、成分が検出されにくいらしい。
ラキシスは眠り薬をこっそりと自分のグラスに入れた。
ラキシスのグラスなので、王太子はさほど注意しない。
その上、彼は酔っ払っている。
何度も入れ替えているうちに王太子はラキシスに飲ませるはずの薬入りのグラスを見失った。
もちろんラキシスは覚えている。
ラキシスが飲んだのはただの酒だが、王太子のは媚薬と眠り薬入りだ。
グラスを飲み干すと彼はあっという間に人事不省に陥った。
「ところでお兄様、ヘンリー様は何の用だったんでしょうか?」
「分からないけど、あそこは今ちょっと揉めているようだよ」
「揉めている?」
「リディア公爵令嬢……おっとご結婚なさったから小侯爵夫人か。彼女とヘンリー卿は最近は上手く行ってないそうだ」
「まあ、そうなんですの」
ラキシスを捨てて貫いた真実の愛だというのに、新婚早々不仲とは、なんとも呆れた話だ。
***
その後は大変な騒ぎになったらしい。
王太子が目覚めた時は、あれから一時間以上経っていて、ラキシスは既にいない。
王太子は憤慨したが、もう手遅れだ。
媚薬のせいで悶々としていると、王太子が目覚めたと聞いてリディアがやって来た。
「殿下、お目覚めですの?」
もはや飽きが来ていたリディアだが、願ってもないタイミングだ。
まるで彼女が女神に見える。
「リディア、おお、君は何て美しい……」
「あら……」
熱烈に口説かれて、リディアはあっさりその気になった。
二人が組んずほぐれつしているところに、遅れて取り巻き達がやって来たのだが、その中にはヘンリーの姿もあった。
箝口令が敷かれて何一つ「なかった」ことになったが、王太子の誕生日パーティーの席である。
多くの目撃者がおり、醜聞はあっという間に広まった。
35
お気に入りに追加
184
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる