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「キャアア!」

全裸にされた女は局部を隠すようにしゃがみ込んだ。何このセクシー攻撃。レオってそういう趣味なの?

「警告したにも関わらず俺のペットに手を出したな。リナは一度言えば言うことを聞く。つまりお前は人間以下だ。」
「い、いやあ…魔王様…」

羞恥に目を潤ませ、頬を赤く染める全裸女。でもその目には少しの期待がこめられている事に、私は気づいた。
私の裸を見たかったの?そんなに私に興味があるのね。
女の顔にそう書いてある。

「隠すな、立て。」
「は、はい…」

女はプルプルと震えながら立ち上がった。頬が上気して息も荒い。興奮してるのかな。変態だ。
しかし変態女の期待とは裏腹に、レオは一度も女に目を向けない。レオはそのまま興味なさげに女に言い放った。

「ま、魔王さまあ…」
「今日からお前は獣だ。服を着ることは許さん。隠すことも許さん。」
「え…?」
「帰れ。二度と城に入ることは許さん。」
「え?え?」
「服を着ている報告を受ければすぐさま殺す。侯爵家も潰す。」
「そ、そんな…!このまま帰れというのですか!?」
「当たり前だろ。」
「裸のままでしてよ!?」
「お前は獣だ。堂々としていろ。」
「そんな…!」
「飼い主が迎えに来た。もう行け。」

レオが向いている方向を見やると、キール侯爵が真っ青な顔をして謁見の間に入ってきたところだった。

「ま、魔王様…!こ、これは!?」

全裸の娘と無関心の魔王を見て、キール侯爵は状況がつかめないようでオロオロしているばかりだった。すっかり興味を失ってしまった様子のレオに変わり、サムエルが口を開いた。

「貴方の元娘が魔王様のペットであるリナ様に危害を加えようとしたので罰したところですよ。彼女の以降の扱いは獣となり、獣に服を着せるのは虐待ですので全裸にしました。キール侯爵、貴方は『飼い主』としてこの獣を飼育、躾をする義務があります。屋敷に帰り次第、首輪をはめ、鎖で繋ぐように。魔族扱いすることは許しません。命令を破ったとの報告を受け次第その獣は殺処分、一族も取り潰しです。」
「な、な…」
「お、お父様…」
「さっさと失せろ。」
「さあ、侯爵の謁見時間はとうに過ぎていますよ。お引き取りください。これ以上、罰されたくはないでしょう?」
「は、はひ…」
「お父様!私に一生全裸でいろというの!?」
「いいからお前は黙っていなさい!それでは、失礼致します…」
「お父様!!」

キーキー喚く変態全裸女は引きずられようにしてこの場を去っていった。
魔王様、マジパネエっす。マジ鬼畜っす!真似できない、人間には真似できないっす!服着せてもらえるだけマジ感謝っす。
そういうわけだからレオの言うことはよく聞いて良い子でいよう。また全裸にされるのはごめんだ。

「今日の謁見は中止だ。」
「しかし…」
「俺のリナが襲撃にあったのだ。謁見を中止する充分な理由になる。残りの奴らに伝えておけ、恨むならキール侯爵家を恨めとな。あの馬鹿女の処遇も広めろ。二度と馬鹿が現れないように。」
「かしこまりました。」

サムエルは颯爽と謁見の間を後にした。大変そうだな、宰相って。

「餌の時間がまだだったな。」
「うん。」

レオが懐から例の音のならないベルを取り出し、一振りした。しばらくすると食事の乗ったカートを押したミーアが現れた。

「お待たせいたしました。」
「うむ。」

隣の部屋にいたはずの私がここにいると言うのに眉一つ動かさないミーア。これはあれだな、私以外の皆はグルだったんだ。わざと私を一人にして、危険因子を炙り出したってことか。
少しムカつくけど、危ないところはレオが守ってくれたし、ただのペットの私は何か言える立場にはない。働かなくても衣食住与えられてるんだから、これくらいは我慢しないと。

謁見は終わったからと、この場で昼食を取ることになった。従者らしき人がテーブルを持ってきてくれたので、私はレオの膝の上で食事を始めた。食事と言っても、自分で食べるのではなくレオに手ずから食べさせてもらっている。要は餌付けだ。
しばらく食べるとお腹一杯になったので、今度は攻守交代。私はフォークを手に取り、レオの口の中に残飯をポイポイ放り込んでいく。

「美味しい?」
「普通だな。」

素っ気ない態度だけど、私の差し出したものは全部食べてくれる。目の前のお皿はあっという間に空になった。


ーーーーーーーーー


「俺は仕事がある。また遊んでいろ。」
「はい。」

皆で執務室に移動し、レオは書類仕事を始めた。魔王って忙しいんだな。起きてる間は殆ど仕事してるよ。偉いって良いことばかりじゃないんだ。
私は言われた通り大人しくミーアと遊び始めた。本を読み上げてもらっていると、サムエルがふと思いついたというような態度で話し始めた。

「そういえば…」
「なんだ。」
「先ほどの襲撃の際、光属性の魔力を感知しました。魔王様もお気づきになったのでは?」
「うっ…」

忘れてた。さっき、どうせ死ぬならと、魔法を使ってみたんだった。魔法を使える人が、他人の魔法を感知できても不思議ではない。サムエルは相変わらずニコニコしているが、目が笑ってない。私にはわかる、これは尋問再びだ。多分どこかに真実の宝玉を持っている。

「ふむ…」

対して、レオはあまり興味なさげだ。六属性使いこなす天才からしてみれば、矮小な人間が魔法を使おうが使うまいが、どうでも良いことなのかもしれない。飼っている犬が芸ができるかできないかみたいなレベルなのかも。

「リナ。」
「は、はい。」
「先ほどの女が言っていたな、勇者の末裔か、と。それは事実か?」

会話もバッチリ聞かれてるじゃん。魔力を感知したとかじゃない、普通に通抜けじゃん!
もしかしてさっきの態と一人にする作戦は、危険因子の炙り出しの他にも、私の正体を見極めるためでもあったのかな…まあ、得体の知れない人間の子供を、なんの対策もなしに最高権力者の隣に据え置くなんて、いくら人間が魔族の敵ではないからって警戒心がなさすぎるよね。レオは気にしないかも知れないけど、宰相のサムエルなら色々懸念してもおかしくない。頭が切れそうだし。いや、実際切れるから宰相なんてやってるんだろうし。
ここは嘘をついてもなんの得にもならない。むしろ殺されるかも、サムエルに。私は覚悟を決めてレオの目を見て口を開いた。
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