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プロローグ
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異世界転生?憧れていた時期もありました。チートで無双、美少女になって逆ハー。何度妄想したことか。だって現実はこんなに辛い。異世界だってどこだって、ここから逃げられるのならなんだっていい。
私は柴田恵理奈、20歳。苦学生。母子家庭で育ち、贅沢のできる暮らしではなかったが、母が頑張って東京の大学に行かせてくれた。これ以上負担を増やしたくなくて、家賃や生活費は自分で稼ぐからと、仕送りを断った。
母に楽をさせてあげたくて言ったことだけど、私は入学してから数ヶ月で自分の発言を後悔していた。バイト、バイト、バイト。生きていくためには、お金を稼ぐしかない。田舎と違って都会はお金がかかる。日中は講義に出席し、その後は深夜までバイト。サークルもゼミも、入る余裕なんてなかった。勿論友達だってできない。生活が落ち着くまではそれでも良いと思っていた。友達なんて居なくったって、生きていけるわけだし。
でも私の判断は間違っていた。レポートを書くにしても、試験勉強するにしても、大学での縦と横の繋がりがあるかないかで、その難易度は雲泥の差だ。
何が過去レポだ。何が過去問だ。講師達もそれ前提で話を進めるな。
それでも私は頑張った。勉強にバイト、寝る間を惜しんで頑張った。でも単位はたくさん落とすし、寝不足でミスしてバイト先でも怒られる日々。いつしか私は大学に行かなくなっていた。このままでは留年する。分かってはいても、もう足が進まない。授業の内容についていけない、助けてくれる知り合いもいない。
私は生きるためだけに、ただ働き続けた。将来の不安はあったが目を逸らし続けた。母にも嘘をつき続けた。
「はあ…異世界転生でもして消えてなくなりたい。」
そんな事を呟きながら眠りについたせいか、起きたら知らない世界にいた。あたりを見渡しても木、木、木。頭上で私を照らすのは、二つの月。
「ほ、本当に異世界に来ちゃったの…?」
私は戸惑いながらも、嬉しさが湧き出てくるのを感じた。もう馬車馬の如く働かなくて良いんだ。大学に行っていない事に後ろめたさを感じることも。母に会えなくなるのは悲しい事だが、もうそんな事はどうでも良くなるくらい私は追い詰められていた。
「夢なら覚めないで…」
でもそんなおいしい話ってないよね。数分後、私は血溜まりの中に突っ伏していた。
転生直後、はしゃいでいる私の前にでかい狼みたいなのが群で現れて、私はあっという間に喉元を噛みちぎられた。魔法?色々唱えてみたけど何も出てこなかった。魔法のない世界なのかもしれない。とにかく目立ったチート能力もなく、私は異世界に来てたった数分でもう虫の息。呪いの言葉を吐きたくもなる。
「ヒュー、ヒュー…」
喉に穴が開いているから声も出ない。狼達は私が死ぬのを待っているのか、私を囲みその場から動こうとはしない。目の前が徐々に暗くなってきて、ああ死ぬ時ってこんな感じなんだな、なんて冷静に考えながら、私は目を閉じた。
ーーーーーーーーー
「城内に侵入者がいると報を受け来てみたが…まだ子供ではないか。」
「しかし人間です。狼達に見つからずここまで来たとなると、普通の子供のはずがありません。親が捨てたとも考えにくいでしょうし。」
「ふむ…」
「しかしもう虫の息ですね。このまま捨て置けば勝手に死にましょう。狼達の餌にしても?」
「そうだな…」
男は血溜まりに横たわる小さな身体を覗き込んだ。血で汚れていて顔立ちは分からない。しかし閉じられた眼からは涙がポロポロと流れ続け、その血を洗い流していく。なんとなくその光景から目を逸らすことができず、男はしゃがんだまま死にゆく少女を眺めていた。
「魔王様?いかがいたしますか?」
「ふむ…城に連れて帰ろう。回復を。」
「かしこまりました。」
私は柴田恵理奈、20歳。苦学生。母子家庭で育ち、贅沢のできる暮らしではなかったが、母が頑張って東京の大学に行かせてくれた。これ以上負担を増やしたくなくて、家賃や生活費は自分で稼ぐからと、仕送りを断った。
母に楽をさせてあげたくて言ったことだけど、私は入学してから数ヶ月で自分の発言を後悔していた。バイト、バイト、バイト。生きていくためには、お金を稼ぐしかない。田舎と違って都会はお金がかかる。日中は講義に出席し、その後は深夜までバイト。サークルもゼミも、入る余裕なんてなかった。勿論友達だってできない。生活が落ち着くまではそれでも良いと思っていた。友達なんて居なくったって、生きていけるわけだし。
でも私の判断は間違っていた。レポートを書くにしても、試験勉強するにしても、大学での縦と横の繋がりがあるかないかで、その難易度は雲泥の差だ。
何が過去レポだ。何が過去問だ。講師達もそれ前提で話を進めるな。
それでも私は頑張った。勉強にバイト、寝る間を惜しんで頑張った。でも単位はたくさん落とすし、寝不足でミスしてバイト先でも怒られる日々。いつしか私は大学に行かなくなっていた。このままでは留年する。分かってはいても、もう足が進まない。授業の内容についていけない、助けてくれる知り合いもいない。
私は生きるためだけに、ただ働き続けた。将来の不安はあったが目を逸らし続けた。母にも嘘をつき続けた。
「はあ…異世界転生でもして消えてなくなりたい。」
そんな事を呟きながら眠りについたせいか、起きたら知らない世界にいた。あたりを見渡しても木、木、木。頭上で私を照らすのは、二つの月。
「ほ、本当に異世界に来ちゃったの…?」
私は戸惑いながらも、嬉しさが湧き出てくるのを感じた。もう馬車馬の如く働かなくて良いんだ。大学に行っていない事に後ろめたさを感じることも。母に会えなくなるのは悲しい事だが、もうそんな事はどうでも良くなるくらい私は追い詰められていた。
「夢なら覚めないで…」
でもそんなおいしい話ってないよね。数分後、私は血溜まりの中に突っ伏していた。
転生直後、はしゃいでいる私の前にでかい狼みたいなのが群で現れて、私はあっという間に喉元を噛みちぎられた。魔法?色々唱えてみたけど何も出てこなかった。魔法のない世界なのかもしれない。とにかく目立ったチート能力もなく、私は異世界に来てたった数分でもう虫の息。呪いの言葉を吐きたくもなる。
「ヒュー、ヒュー…」
喉に穴が開いているから声も出ない。狼達は私が死ぬのを待っているのか、私を囲みその場から動こうとはしない。目の前が徐々に暗くなってきて、ああ死ぬ時ってこんな感じなんだな、なんて冷静に考えながら、私は目を閉じた。
ーーーーーーーーー
「城内に侵入者がいると報を受け来てみたが…まだ子供ではないか。」
「しかし人間です。狼達に見つからずここまで来たとなると、普通の子供のはずがありません。親が捨てたとも考えにくいでしょうし。」
「ふむ…」
「しかしもう虫の息ですね。このまま捨て置けば勝手に死にましょう。狼達の餌にしても?」
「そうだな…」
男は血溜まりに横たわる小さな身体を覗き込んだ。血で汚れていて顔立ちは分からない。しかし閉じられた眼からは涙がポロポロと流れ続け、その血を洗い流していく。なんとなくその光景から目を逸らすことができず、男はしゃがんだまま死にゆく少女を眺めていた。
「魔王様?いかがいたしますか?」
「ふむ…城に連れて帰ろう。回復を。」
「かしこまりました。」
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