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リラとグレイ5

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「うおおおーん!リラ、アン、帰ってきてくれえー!俺は、俺はあああー!」
「きゃー!ちょっとカオリ、話が違うじゃない!何が落ち着いて話し合うよ!」
「はあ…やっぱりこうなるのね…『鎮静』&『鎮静』」
「はふう…」

落ち着きを取り戻しすぎたゲイリーを香織がソファに座らせ、リラとアンもその向かいに座った。グレイはリラとゲイリーの間、所謂お誕生日席に位置する一人掛けのソファに腰掛けた。香織はゲイリーが再び興奮した時の為に、居間の隅に待機した。

「リラ、アン…俺の話を聞いてくれるか?お前達の気持ちも無視した、独りよがりの自分勝手な考えだ…」
「お父さん…これだけ落ち着くと逆に怖いわね。でも今のお父さんとなら私も冷静になれそうよ。分かったわ、話を聞く。」
「私も!直接は関係ないかもしれないけど、私も話を聞くわ!カオリ、私が興奮して話の腰を折るようなことがあったら落ち着かせてね!」
「う、うん。」

そうしてリラとアンは、普段陽気で短絡的な自分達の父親の本音を聞くこととなった。


ーーーーーーーーー


「おど、おどうざあああん!うえええーん!」
「アン…馬鹿な父さんを許してくれるか…?」
「うん、許すうう!私の方こそごめんなざい!お父さんは命がけで村を魔物から守ってくれてるのに、私、知っでだのに!酷いこと言って、ごめんなざあああい!!!」
「アン…!」

ゲイリーが一通り話をすると、アンは涙をボロボロ流しながら父親に抱きついた。自分が寂しいから、それだけの理由で娘達を嫁に行かせまいとしているのだと思っていた。そんな先のことまで、自分達を心配してくれているなんて。アンは感情の制御も忘れ、小さい子供のように父親に縋り付いて泣いた。

(これ感動っぽいけど鎮静かけたほうがいいかな?話の腰は間違いなく折ってるし…)
『良いと思いますよ。』
(よし。)

「アン、ちょっとごめんね、『鎮静』」
「ふにゃあ…」

香織が鎮静を掛けると、アンはそのまま眠ってしまった。ゲイリーは優しく娘を抱き上げると、自分の隣に座らせてやった。アンはゲイリーにもたれ掛かり、スヤスヤと寝息を立てている。ゲイリーは涙に濡れたアンの頬を手で拭いてやると、リラに向き直った。

「リラ、これが俺の正直な気持ちだ。でも、この思いをリラ達に一方的に押し付けるのは間違っていると、カオリに言われたんだ。だから、俺はもうリラの決断に反対はしない。ただ、俺はこう思っている事を伝えたかった。」
「お父さん…私の方こそごめんなさい。感情的になって、話を碌に聞かなかったのは私の方ね。お父さんの気持ち、よく分かったわ。子供を産むことが、死と隣り合わせだって言う事もお母さんを見て分かってる。それでも私は自分の子供が…グレイとの子供を望むわ。も、もちろん今すぐと言うわけじゃないけど…ちゃんと手順は踏むわ。子供を産むとか以前に、私はただグレイと一緒になりたいだけなんだもの。」
「ゲイリーさん。俺は生涯、リラを守ります。出産の時、男は無力だけど…それ以外で、リラを危険に晒すようなことはしないと、神に誓います。絶対にリラを幸せにしてみせる。だから、結婚を許してください。」
「リラ…グレイ。成人しても、まだまだ子供だと思っていた…もう二人とも立派に自立してたんだな…分かった、二人の関係を認めよう。グレイ、今の誓いの言葉、決して忘れるなよ。リラを泣かせたら今度こそ殴る。」
「はい。」
「もう、お父さんはすぐ拳で語るのやめてよ…」


ーーーーーーーーー


ゲイリーと和解したリラ達は家に帰ることにした。アンは久しぶりにゲイリーと手を繋ぎ、嬉しそうだ。ゲイリーも嬉しさを隠し切れずニヤニヤしている。リラは流石にグレイの前でそんな甘えた姿を見せたくないと、父親ではなくアンと手を繋いでいる。

「皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。」
「いや、気にすることはないさ。息子の将来に関わることだ。むしろこちらとしても状況をきちんと把握できて良かったよ。」
「カオリ、恩にきる…。カオリには本当に助けられてばかりだ、本当に、本当に…ありがとう!!うおおおーん!」
「鎮静切れちゃった…」
「もう、お父さんうるさい!お母さん達が心配してるから早く帰ろう!」
「あ、ああ…そうだな!我が家に帰ろう!リラの結婚が決まったと言ってもまだまだ先だ!家族全員揃った我が家に帰るぞ!!」
「あ!待ってよお父さん!お姉ちゃんも行こ!」
「うん。…グレイ、さっきの言葉…すごく嬉しかった。絶対に忘れない。」
「…神に誓ったんだ。絶対に守るから…」
「…うん。」
「おい!グレイ!結婚は許したが、全部許したとは言ってないぞ!結婚するまでは手を繋ぐ以上のことは絶対に禁止だ!!いいな!」
「はいはい、お父さん、もう行こう。」

こうして騒がしい一行は帰宅し、村長の家は再びいつもの落ち着きを取り戻した。

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