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第1章 イーチ村

1-18 VS魔王②

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 なんとか彼らの連携攻撃を防いだ僕たちだが、襲い来る攻撃はその激しさを増す。

 アジ・ダハーカが上空へと舞う。そしてそこからブレスを振りまく、

 アジ・ダハーカが空へ上がってすぐに僕は迎撃用の魔法を練っていた。所謂【カウンター・マジック】ってやつだ。現状僕たちが攻撃する隙が無いのでこれでなんとか突破口を思いカウンターようの魔方陣を展開する。

 ブレスが襲い来る、その時魔王が再び詠唱を終えた。

 「――― 穿て 大地の矛 【グレート・アース・ニードル】」

 唱えたのは地面を大きな針のように変形させて敵を貫く者。最初のマルチタイプと違い、攻撃範囲は狭いがその分威力は大きい。そして、その攻撃はブレスよりも至近距離で生じるため、アジ・ダハーカのブレスよりも早く僕に到達する。

 ブレスを迎え撃つつもりだった僕は完全に裏をかかれてしまった。

 待った、それは無理だ。

 このままアジ・ダハーカにカウンターを入れようと思えば僕はそのまま地面から伸びる針に串刺しにされるだろう。

 逆に魔方陣をキャンセルして針を避けよとすると、今度はホノカが逃げきれず広範囲のブレスに焼かれる。

 そうなっても僕はたぶん死なない、けどホノカはどうなるかわからない。

 ホノカへ攻撃を通すのは考えられない。くそ、自分の耐久力を信じるか?
 
 いけるか? いけないか? でもやるしか――

 「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ホノカの力の籠った剣閃が地面から伸びる巨大な針を打つ。もちろん、LVも武器の格もすべてにおいてホノカの方が魔王よりも下であるためその攻撃をキャンセルすることはできない。

 が、それで十分。

 ホノカの攻撃によりアースニードルの勢いが緩やかになり、結果ブレスの方が先に僕へと到達することになった。

 ブレスの攻撃はことごとく僕の魔方陣に防がれる、そして魔方陣の効果によりそのブレスは跳ね返される。

 ブレスが向かうのはアースニードルだ。

 一点集中してカウンターをアースニードルに当てる。

 ホノカの攻撃も助けになったのか、アースニードルは完全にキャンセルされた。

 「なかなかやるな、戦闘職でもないだろうに。本来は強力な前衛がいてその本領を発揮するんだろうが、LV差がありすぎだな」

 やっぱりこの人鑑定が使えるんだな。それがものすごい博識か。

 まぁ、どっちでもいいか。やることはかわらないし。

 「あはははは、それはどうですかね? いつ僕が全力を出したって言いました?」

 「はったりはよせ、肝心の前衛は武器を失ったぞ?」

 キシキシト音を立てるホノカの剣。

 そして、甲高いピキーン、という音共に剣が真ん中で折れる。

 「・・・・・・」

 折れたのは僕の魔法のせいでもあるんだけど、この際黙っておこう。ホノカに知られていいことはない。

 「よくも、よくもホノカの剣を!!」

 「そうよ、これでもこの世界で初めて買った剣なのに、弁償してもらうんだからね」

 「・・・・・・」

 微妙な空気が流れる。とても先まで殺伐とした戦いを繰り広げていたようには見えないだろう。
 
 が、これには理由がある。

 「坊主、これはどういった状況だ?」

 ガイルさんだ。たぶんドラゴンの姿が急に見えなくなったり、物騒な音がしたから様子を見来たんだろう。

 だが、ナイス!!

 「ガイルさん、聖剣貸してください、すぐに。ホノカに渡して!!」

 「あぁ? 何を――」

 「いいから、相手は魔王とドラゴンですよ!!」

 「なっ!?」

 僕の言葉に、状況に冷静さを欠いてなのか、逆に冷静になってなのかはわからないが聖剣は無事にホノカの元へ渡る。

 「いいんですか? 見てて?」

 「まぁな。心身ともに魔王となっても記憶はある。だから、せめて俺は自分が誇れる魔王になると決めた。だから、どんなやつがきてもすべて正々堂々と蹂躙してやる。小細工もろともな」

 彼はそう言う。

 彼の気持ちはわからないが、譲れないプライド、誇りがあるんだろうか。まぁ、今回はそんな油断とも言える彼の行動に助けられる。

 「それでガイルさんはどうするんですか?」

 「あぁ? 決まってるんだろ、助太刀するぜ。力は及ばないにしてもな。それに言ってなかったか? これでも俺は元Aランクなんだぜ」

 このおじさんそんなに強かったんだ。まぁ、ギルマスってそんなもんか?

 「それじゃ、第二ラウンド行きましょうか!」

 僕の声で、場の空気がまた変わる。

 
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