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第1章 イーチ村

1-4 確認は痛みが伴う

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「なぁ、ちょっといいか」

 僕は現状をお互いで確認した後、穂乃果を立ち上がらせて正面に立ってもらうように話をした。そして装備を全て外してもらうように言う。もちろんインナーは着たままだ。

 その間に僕は自身に防御力アップの魔法をかけておいた。

 「先に謝っておく、ごめん」

 この謝罪と魔法が空振りに終わればいいけれど・・・。

 そうはならなかった。

 目を閉じ両手をのばした僕はにやわらかい感触が手に平を通して伝わる。手に納まるかどうかという柔らかいものを僕は今両手でつかんでいる。

 確か手にすっぽり収まるとCカップって誰かが言ってたから、それよりも大きい、Dか、Dなのか? 脅威度はDなのか、いやそんなものじゃないこれは脅威度Sだぁー。

 あまりに気持ちがよかったので揉んでもみた。それは何回も、ええ。

 「あ、あ、あ、あんたーーー。なにしてるのよぉーーー」

 目を開けると見たこともないような鬼の形相で僕を睨む穂乃果、そして彼女の右手が大きく振りかぶられる。

 あぁ、やばい。やりすぎた、思った以上に僕は理性が飛んでいたようだ。だが、もう遅い。

 部屋に置いてあった机やタンスを吹き飛ばし僕は壁に激突する。

 い、痛い。骨の2,3本折れたんじゃないか? 

 パトラッシュ、僕はもうダメだよ・・・・・・。

 「なに寝てるのかしら? まだ寝るのには早いわよ。起きたくないのなら、私が無理やり起こしてあげましょうか? 愛という名の暴力でね」

 僕は慌てて起き上がり、両手をあげて降参のポーズをとる。

 「まって、それどころじゃないかもしれないんだ。まず話をきいて、お願いだから。僕がこんなことしたのは理由があるんだ」

 拳を握りしめる彼女の動きが止まる。とりあえず猶予はもらえたようだ。

 「それで、いったい何を言いたいのかな? くだらないことだったら、二度とお天道様を拝むことないようにしてあげるわよ?」

 僕は生まれて初めて恐怖で死ぬかと思った。

 『思ったよりも穂乃果って胸あるね! 服を着てるとわからないもんだね!』

 と思ったけど、これを口にしたら僕は本当に死んでしまうかもしれないので、ぐっとこらえた。お約束だけど、自分の命はかけられない。彼女はここをゲームって思ってるから次は本気で殺しにくる。

 「あほなこと言ってるって思うかもしれないけど、ここって現実かもしれないよ」

 ぽか~んとする穂乃果。まぁ、それが普通の反応だ。
 
 「何言ってるの? 吹っ飛ばされて頭おかしくなっちゃった? ここが現実ってどういうことよ?」

 「穂乃果はあまりゲームをしないと思うから詳しくないかもしれないけど、このゲーム違和感が多いことばかりなんだよ。小さいところで言うと、グラフィックのディテールや表情表現の豊かさ、NPCの対応の多様性。どれも今の技術にしては進みすぎてるんだ」

 「新しい技術ってことじゃないの?」

 「僕も最初はそう思ったけど、森での出来事でさらに少し疑いは増した。魔物のグロさとかゲームにいる? 絶対に売り上げ落ちるよ? ましてや内臓までデザインするなんて異常だよって」

 「それもリアルさを追及してってことじゃ?」

 「そうだね、そういう捉え方もできる。だからあの時はまだ僕は何も言わなかった。けど、今は違う。ダイブ型のVRゲームにはいくつか法律で決まっているルールがあるんだ」

 「そうなの?」

 「以外に知られていないかもしれないけど、まず一つ。プレイヤーはいつでもログアウトできるようにする。そして、VR空間での不適切行為の禁止、最後は強い痛みの遮断だ。これらは命に関わったり、心に大きな傷を残したりすることからかならず順守するようになってるんだ。でも、このゲームはこの3つすべてが守られていない」

 「そうなの?」

 穂乃果はまだ事態についていけてないか、思考が停止しているように感じられる。

 「そうまずはログアウト、穂乃果もログアウトできなかったでしょ? これは明らかに異常だ。そして不適切な行為、さっきそれができてしまった。おっと、思い出さないでね。最後に痛みに関して、これはさっき穂乃果に殴られた時僕は意識を飛ばすぐらいに痛みを感じたから痛みを感じる抑制機能が働いていない。あのゲームの運営は日本の大企業だ。いくらテストとはいえこんなことは起きるはずもない。そしてまだ実証はできないけど、VRゲーム内では寝ることができない。寝たら自動的にログアウトするからだ。もし、今日ここで寝て、明日の朝ここで目を覚ましたら・・・」

 「ほ、本当に別の世界に来ちゃったってこと?」

 やっと理解が追いついてきたみたいだが、まだ冷静ではない。

 「もちろん、ラノベ読みすぎの僕の妄想って線も消えないけどさ」

 「わ、わかったわ。とりあえずは明日の朝考えましょう。自宅にいれば問題ない、もし万が一再びここで目を覚ましたら、その時は、その時は考えましょう」

 「そうだね、それでもいきなりごめんね」

 「そうよ、確認するにしてももっとやりかたあったんじゃない? ねぇ、そこんとこどうなのよ? ねぇ、たくみ君?」

 あ、あれ? また穂乃果さんが拳を握りしめてこっちに向かってくるんですけど?

 「あっ、思ったよりも穂乃果って胸あるね! 服を着てるとわからないもんだね!」

 「はい?」

 あっ、しまった。さっきまで我慢してたのに、落ち着いたとたん口から自然に。

 「どうやら、異世界じゃなくて、死後の世界に行きたいみたいね。おとなしくしてなさい」

 って、だめ。剣はだめだよ!! 部屋の中で振り回さないで。お願いだから。なんでもするから~!!

 あぁ、パトラッシュどうやら僕にもお迎えが来たみたいだ・・・・・・。

 

 ”氏名:タクミ  種族:人間  性別:男  年齢17歳
  職業:アークビショップ LV:100
  スキル:支援魔法 ディレイマジック 生活魔法 インベントリ
  ギフト:パーマネント
  装備:神罰のリング 聖法衣 飛翔靴 癒しの腕輪 ”
 
  所持金:453


 ”氏名:ホノカ  種族:人間  性別:女  年齢17歳
  職業:ナイト LV:32
  スキル:剣技 生活魔法 インベントリ
  装備:鉄の剣 鉄の胸当て 革の靴 回復のイヤリング”
  
  所持金:325
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