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第1章 イーチ村

1-1 次の世界へ

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 僕の名前は山田巧(ヤマダ タクミ)今年で17歳になる。

 どこにでもいる極々平凡な男子高校生だ。

 まぁ、すぐ隣の家にかわいい幼馴染がいるので、平凡じゃないってツッコミを各方面から受けるし、それを受止める心構えはできている。

 同級生からは、お前うらやましすぎ、と言われることも何度かあった。

 そのかわいい幼馴染の名前は神崎穂乃果(カンザキ ホノカ)といい年齢も僕と同じ17歳で、こっちは運動神経抜群で頭もそれなりにいい、所謂優等生というやつだ。

 見た目に関して、まずは顔から。今どきのモデルさんみたいにしゅっとした顔立ちでかわいいというよりは綺麗系だろう。そしてさらっとした薄茶の長いストレートの髪が腰に届くほど伸び、瞳も少し茶色がかっている。身長は高くもなく、低くもなく、150㎝半ばぐらいだろう。そして、スタイルはというと、腰にはくびれがしっかりとでておりモデルを思わせるほどのスラッとした体形だ。胸はどうだろう、見た感じ他の女子と差はなさそうだけど、詳しくはわからない。いつか触る機会でもあればわかるだろうか。

 まぁ、ないな。

 そんな見た目よし、頭よし、運動もできる。3拍子そろった彼女はクラスでも人気者だ。実際いろいろなやつに告白されたという話を聞く。が、彼女はすべて断っているらしい。だれか思い人でもいるのだろうか?

 さて、話は変わるが、今日はその穂乃果といっしょにゲームをやることになっている。

 最近話題のゲーム「フリーライフ オンライン」。これはVR空間にダイブしその世界で自由に生きるというゲームだ。舞台はよくある中世ヨーロッパに魔法が足された世界。そこで魔物を狩る冒険者になるもよし、武器を鍛える鍛冶師など生産職を極めるもよし。他のプレイヤーを襲う盗賊にだってなれるのだ。

 異世界で自由な人生を、これがこのゲームのコンセプトである。

 そんな世界で俺と穂乃果は冒険者として別の人生を満喫している。

 まぁ、忙しい彼女と暇な俺とではログイン時間に差がありLVもかなり開いてしまっているのだが。

 「巧、今日は頼んだわよ。私がガンガン攻撃していくからフォローよろしくね」

 約束の時間になりVR世界にダイブするとすぐに穂乃果が話しかけてきた。

 「わかってるって。僕は支援特化だから言われなくてもそうするし。でもイベントボスはなかなかの強敵らしいから、装備とかちゃんと整えて――」

 「わかってる、わかってるわよ。言われた通り、武器も防具もミスリルシリーズで固めたし、アクセサリーも回復系と追加ダメージのやつ付けてきたわよ」

 僕の声を遮りそう切り返す。学校だともっとちゃんとしたしゃべり方なのに僕だけだと気を抜くらしくこんな話方になる。

 みんな騙されてるよ。

 「それで、アイテムは?」

 「・・・・・・」

 さっきまで自信満々だったのに、急に固まる穂乃果。

 まぁ、ゲーム初心と言ってもいい彼女だから仕方がないのかもしれいけど。
 
 「僕が一人で戦うならこのままでも―」

 「ごめん、ごめん。ちょっと待っててアイテム買ってくるから―」

 「いいよ、今回は僕がアイテムはもつから、早くボス戦に行こう」

 「ありがとー、巧」

 駆けだしそうになる穂乃果を止めると、まるでそういわれると予想していたのように素早くお礼を言う。

 対狙ってよね、この展開をさ。

 穂乃果とPTを組み、ギルドへ向かう。

 そこでイベント開始地点になる人に話しかけると僕たちは広い草原のフィールドに飛ばされた。

 現れたのは黒いスーツを着た人型の敵。大きさも自分たちと変わりないぐらいだ。

 イベントのボスにしては地味だし、事前の情報だとドラゴン系だった気がするけど。まぁ、いいか。

 「穂乃果、行くよ。作戦はいつも通り」

 「ええ、私が攻めて、あなたが支える」

 その通りなんだけど、なんかかっこつかないよな、その言われ方だと。

 穂乃果が剣を掲げボスへ突進する。

 ゲームの中の僕は支援特化の魔法職。回復からバフ・デバフまでなんでもござれだ。

 そして穂乃果は攻撃特化。スピードタイプでヒットアンドアウェイのスタイルだ。

 ボス戦の最中、僕はひたすらに回復とバフに勤めた。

 正直なところ、支援特化とはいえ僕はLV100。バフをかけて殴れば穂乃果ぐらいのダメージは与えられると思うが、形式美というものは必要だ。

 いや、ホントに。僕が攻撃に参加すると穂乃果が機嫌悪くなるからじゃないよ。

 「ホライズン・スラッシュ!!」

 おっと、どうやら穂乃果のラッシュの前にボスのHPも残りわずかだ。

 さて、今回アイテムも提供して、戦闘もおぜん立てして揚げんだからラストアタックぐらい譲ってもらってもいいよね?

 僕はボスの後ろに回り込み、拳を幾度か叩き込む。

 ボスヘイトは穂乃果に集まっているから簡単に回りこめた。

 そして、”ミッション コンプリート”の文字が浮かび上がった。

 「もぉー、巧!! いいとこ持っていって、許さないん・・だからね?」

 うん?

 疑問に思った時すでに僕の視界は暗転し、変な浮遊感を味わった。これは通常のゲームの転移とは違う。
 
 イベント特別の仕様か!?

 目の前の暗闇が晴れる。次に現れたのは、白い空間。そして、

 ”次なる世界に移行します。持ち込む得点をそれぞれお選びください。
 
 *ラストアタックボーナス*
  ・現在の装備品持ち越し OR 所持アイテム持ち越し

 *真ボス撃破ボーナス*
  ・基本セット + お金1000億ギール OR ステータス持ち越し

 *真ラストアタックスペシャルボーナス*
  ・特殊スキル OR 移行キャンセル             


   ラストアタックボーナス
     :ボスを打ち取ったプレイヤーが対象

   真ボス撃破ボーナス
     :真のボスを倒したPT全員が対象   
   
   ラストアタックスペシャルボーナス
     :真のラストアタックを行ったプレイヤー”

 という表示だ。

 次の世界、ってことはヴァージョンアップや続編か出るのかな。それのベータテストみたいな感じで先行体験とか。このボーナスってのは移行得点みたいなものか。

 モンスターのハンターなゲームでも無印からGに行くときは引き継ぎとかあったし。

 内容は見たままだと思うけど、最後の移行キャンセルってのはちょっと意味がわからない。まぁ、そんなことは関係ないか選ぶものは見た瞬間すでに決まっているのだ。

 俺は3つタップして最後にOKを押す。

 すると今度は白い光が俺を優しく包む。そして、先と同じような浮遊感が次に来る。そして、光がどんどん強くなり視界がホワイトアウトする。

 演出過剰じゃないですか?

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本日23時に2話目を更新します。
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