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タイムリミット
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「お上手ですね」
上手いこと言うじゃない。でもそこで真に受けないのが私よ。
「……賞味期限の切れた、と付け加えておきますね。年甲斐もなく見苦しいところをお見せして本当に申し訳ありませんでした」
「いいえ。そんなことは……。そういえばあの時も同じようなことを言われてましたね。失礼ですが、お年は」
ダメ、女に年を聞くなんて。
「……僕は29です」
黙っていると、察したのか彼が先に名乗った。
「28です。今年なりました」
「そうですか。近いですね」
彼は再びにっこり微笑んだ。そして、
「あの、こういうところで言いにくいのですが、一度食事にでも行きませんか?」
「え?」
これってお誘いなの? 私はすんなりハイと言えなかった。
「え、ええ。いいんでしょうか。私、靴まで……」大体靴って一日で直るものなの(笑)。
「それはもう忘れてください。本当は今の話がしたくて来たんですから。あ、仕事のついでと言うのは本当ですが」
ドキドキするけど、「きゃー嬉しい!」とかできないって。岡地じゃないんだから。
だがしかし……
「あなたの番号教えていただけませんか。後ほど連絡します」
「あ、はははい」
慌てて番号を交換した。社会人の性か。きちんと挨拶されてしまっては無下にできませんわ。
「それじゃ、また」
彼は道に待たせていた高級車に乗り込んだ。
高そうな靴履いてたし、スーツも。お金持ちっていうのはどうやら間違いじゃなさそう。
格付けか、やめとこ、振り返ると、私と同じ事をしていた人物に気が付いた。
「へ~。今の人。先輩の何ですか? お客さんじゃなさそう」
「……見てたわね」
後輩の楠原くんだ。
「詮索は禁止よ」
「てことは完全プライベートなお知り合いですね? もしかして新しい彼氏?」
勝手に決めないで! 私は無視して現場に戻った。
彼の名はくすはらけんと。そこまで軽い子じゃないけど、今時の子には違いない。
髪短くて色黒体育会系だろうか。顔は普通。
『先輩と付き合うのって何か根性試されそうですよね~』
まだ何か言いたそうな、意地悪そうに笑う彼の顔を見てると、ふと以前楠原くんに言われた言葉が頭をよぎった。
『喧嘩になったときマジ悲惨なことになりそー』
そんなことも言われたっけ。失礼ね。みんなデカイ女に冷たいの。男よりも男らしい女だとかさんざん言われてきましたわ。
『こわいっすよねー。九州弁でまくしたてられると。一気にひいちゃいますよ』
極めつけはこれだ。どうも酒の席でお国言葉を連発しちゃうらしい。地元じゃ全然普通だと思うんだけどね。東京じゃやっぱ、受け入れられんとよ……。
女28歳。独身。身長175センチ。F県出身。バリバリの九州女。
この壁は相当、厚い。
上手いこと言うじゃない。でもそこで真に受けないのが私よ。
「……賞味期限の切れた、と付け加えておきますね。年甲斐もなく見苦しいところをお見せして本当に申し訳ありませんでした」
「いいえ。そんなことは……。そういえばあの時も同じようなことを言われてましたね。失礼ですが、お年は」
ダメ、女に年を聞くなんて。
「……僕は29です」
黙っていると、察したのか彼が先に名乗った。
「28です。今年なりました」
「そうですか。近いですね」
彼は再びにっこり微笑んだ。そして、
「あの、こういうところで言いにくいのですが、一度食事にでも行きませんか?」
「え?」
これってお誘いなの? 私はすんなりハイと言えなかった。
「え、ええ。いいんでしょうか。私、靴まで……」大体靴って一日で直るものなの(笑)。
「それはもう忘れてください。本当は今の話がしたくて来たんですから。あ、仕事のついでと言うのは本当ですが」
ドキドキするけど、「きゃー嬉しい!」とかできないって。岡地じゃないんだから。
だがしかし……
「あなたの番号教えていただけませんか。後ほど連絡します」
「あ、はははい」
慌てて番号を交換した。社会人の性か。きちんと挨拶されてしまっては無下にできませんわ。
「それじゃ、また」
彼は道に待たせていた高級車に乗り込んだ。
高そうな靴履いてたし、スーツも。お金持ちっていうのはどうやら間違いじゃなさそう。
格付けか、やめとこ、振り返ると、私と同じ事をしていた人物に気が付いた。
「へ~。今の人。先輩の何ですか? お客さんじゃなさそう」
「……見てたわね」
後輩の楠原くんだ。
「詮索は禁止よ」
「てことは完全プライベートなお知り合いですね? もしかして新しい彼氏?」
勝手に決めないで! 私は無視して現場に戻った。
彼の名はくすはらけんと。そこまで軽い子じゃないけど、今時の子には違いない。
髪短くて色黒体育会系だろうか。顔は普通。
『先輩と付き合うのって何か根性試されそうですよね~』
まだ何か言いたそうな、意地悪そうに笑う彼の顔を見てると、ふと以前楠原くんに言われた言葉が頭をよぎった。
『喧嘩になったときマジ悲惨なことになりそー』
そんなことも言われたっけ。失礼ね。みんなデカイ女に冷たいの。男よりも男らしい女だとかさんざん言われてきましたわ。
『こわいっすよねー。九州弁でまくしたてられると。一気にひいちゃいますよ』
極めつけはこれだ。どうも酒の席でお国言葉を連発しちゃうらしい。地元じゃ全然普通だと思うんだけどね。東京じゃやっぱ、受け入れられんとよ……。
女28歳。独身。身長175センチ。F県出身。バリバリの九州女。
この壁は相当、厚い。
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