89 / 103
4話
13
しおりを挟む
都会を抜けると嘘みたいに田園風景が広がり、海沿いに御伽の国のような景色が続く。車は目指す、丘の上に立つ建物へ。
無事午前十時前に到着。可愛らしい木造の平屋がお目見えした。シンボルツリーはオリーブと月桂樹。軒先に淡い水色、ピンク、オレンジ……いろんな花が咲き乱れてる。
「いらっしゃい」
ずらっと並んだ人たちから一人、日本語で声をかけられた。「市川さん、会うのを楽しみにしてました」「ありがとうございます」
会長がさっと手を出して、
「紹介しよう、こちらがこの家の主、アラン・リードと妻のるりか」
「コンニチハ、ハジメマシテ」
肩上の茶色い髪、ヒゲがうっすら、細面の優しそうな人。私の想像図に近いアランさん。日本人の奥様るりかさんはふわふわの栗色の髪の毛に肌は真っ白で妖精みたいな透明感ある人だ。
「こちらがレオナルド・フォスターと妻のエリザベス」
フォスター夫妻、どちらも金髪。
「ハーイ」
大きな手を差し出した。恰幅のいいおじさま。背が高くでん、としてる。奥様は人形のように綺麗な長い金髪、大きな青い目。ものすごい美人ですね。レオナルドとエリザベスって、どこの国王、王妃よ。すげー。
「アランは舞台演出家、レオは分かるね、レックスのCEO。細かいことはあとでるりかに聞いてくれ」
えらい簡単な紹介だ。まあ英語で喋ってくれても要通訳だけどね。てへ。
会長はノーネクタイ、ノーベストでいつもよりはラフだけどやっぱりスーツ。
私はといえば、昨日結局高広くんと店を回り、紆余曲折の末、脱ファストファッションーーちょい上ランクの服にした。あんまり代わり映えしませんけどね。色味が高広くんテイストかな。ちょっとパステル調の明るい上下、ゆるトップスとゆるパンツだ。
「さて、作業に取り掛かるか。きみはるりかと中で準備してて」
「はい」
窯の完成まであと一仕事あるらしい。「市川さんは私と一緒に作業しましょうね。畑もあるのよ」とるりかさんにこり。日本人は会長とるりかさんだけで、あとはみんな海外の人。つまり英語で喋ってるわけでその会話の内容は私にはさっぱり。手入れされた芝生のお庭に流暢な英語が流れる。まるで海外の光景を目にして私は改めて思う。
やっぱ無理だわ。アメリカなんて。
全然進歩してない。英語アレルギーだろうか。英語で喋ってる人だらけの所に自分がいるところが想像できない。
今だって、たった五人喋ってるだけで頭がガッチガチに固まってしまう。
映画は字幕や吹き替えでカバーできるけど、洋楽とかほとんど聴かないし……。早口で何言ってるか全然わかんないんじゃね、つまんないし。化石のような頭だ。
その流れるような会話がいきなり途切れた。
「オー、ナルアキ……」流石にこれは私にもわかるわ。大きな声で、エリザベスさんは両手をかざした。
「Are you still saying that?」
「It’s nothing to do with you.---×××××……」
「No……!」
???
えらい剣幕で言い合ってる。身振り手振りすごいんですけど。
ええ、相手はもちろんナルアキーー会長です。
会長、何やってるの、よその奥さんとーー。
「ちょ、会長っ!」
止めようとした私をルリカさんが制した。
「あ、えーと……いつものことなのよ。ナルさんとエリーさん、き、気にしないで。喧嘩してるように見えてそうじゃないの。日常会話。大丈夫だから。ね、私と一緒に来て」
「え」
ーーいつも?
「あの、なんて……」言ってるかだけでも教えて欲しかったりして。
「いいから、いいから。大したこと言ってない」
「Elizabeth, would you please be quiet in front of your husband.」
「If you shut up first.」・・・・・
みんなは苦笑いしてる。ニヤニヤ。まだ続いてる……どう見てもケンカ……いやいや、うるさい英語を背に、振り返り振り返りるりかさんに案内されて家の中に入った。
****************
英語のセリフは読み飛ばしていただければ幸いです。
無事午前十時前に到着。可愛らしい木造の平屋がお目見えした。シンボルツリーはオリーブと月桂樹。軒先に淡い水色、ピンク、オレンジ……いろんな花が咲き乱れてる。
「いらっしゃい」
ずらっと並んだ人たちから一人、日本語で声をかけられた。「市川さん、会うのを楽しみにしてました」「ありがとうございます」
会長がさっと手を出して、
「紹介しよう、こちらがこの家の主、アラン・リードと妻のるりか」
「コンニチハ、ハジメマシテ」
肩上の茶色い髪、ヒゲがうっすら、細面の優しそうな人。私の想像図に近いアランさん。日本人の奥様るりかさんはふわふわの栗色の髪の毛に肌は真っ白で妖精みたいな透明感ある人だ。
「こちらがレオナルド・フォスターと妻のエリザベス」
フォスター夫妻、どちらも金髪。
「ハーイ」
大きな手を差し出した。恰幅のいいおじさま。背が高くでん、としてる。奥様は人形のように綺麗な長い金髪、大きな青い目。ものすごい美人ですね。レオナルドとエリザベスって、どこの国王、王妃よ。すげー。
「アランは舞台演出家、レオは分かるね、レックスのCEO。細かいことはあとでるりかに聞いてくれ」
えらい簡単な紹介だ。まあ英語で喋ってくれても要通訳だけどね。てへ。
会長はノーネクタイ、ノーベストでいつもよりはラフだけどやっぱりスーツ。
私はといえば、昨日結局高広くんと店を回り、紆余曲折の末、脱ファストファッションーーちょい上ランクの服にした。あんまり代わり映えしませんけどね。色味が高広くんテイストかな。ちょっとパステル調の明るい上下、ゆるトップスとゆるパンツだ。
「さて、作業に取り掛かるか。きみはるりかと中で準備してて」
「はい」
窯の完成まであと一仕事あるらしい。「市川さんは私と一緒に作業しましょうね。畑もあるのよ」とるりかさんにこり。日本人は会長とるりかさんだけで、あとはみんな海外の人。つまり英語で喋ってるわけでその会話の内容は私にはさっぱり。手入れされた芝生のお庭に流暢な英語が流れる。まるで海外の光景を目にして私は改めて思う。
やっぱ無理だわ。アメリカなんて。
全然進歩してない。英語アレルギーだろうか。英語で喋ってる人だらけの所に自分がいるところが想像できない。
今だって、たった五人喋ってるだけで頭がガッチガチに固まってしまう。
映画は字幕や吹き替えでカバーできるけど、洋楽とかほとんど聴かないし……。早口で何言ってるか全然わかんないんじゃね、つまんないし。化石のような頭だ。
その流れるような会話がいきなり途切れた。
「オー、ナルアキ……」流石にこれは私にもわかるわ。大きな声で、エリザベスさんは両手をかざした。
「Are you still saying that?」
「It’s nothing to do with you.---×××××……」
「No……!」
???
えらい剣幕で言い合ってる。身振り手振りすごいんですけど。
ええ、相手はもちろんナルアキーー会長です。
会長、何やってるの、よその奥さんとーー。
「ちょ、会長っ!」
止めようとした私をルリカさんが制した。
「あ、えーと……いつものことなのよ。ナルさんとエリーさん、き、気にしないで。喧嘩してるように見えてそうじゃないの。日常会話。大丈夫だから。ね、私と一緒に来て」
「え」
ーーいつも?
「あの、なんて……」言ってるかだけでも教えて欲しかったりして。
「いいから、いいから。大したこと言ってない」
「Elizabeth, would you please be quiet in front of your husband.」
「If you shut up first.」・・・・・
みんなは苦笑いしてる。ニヤニヤ。まだ続いてる……どう見てもケンカ……いやいや、うるさい英語を背に、振り返り振り返りるりかさんに案内されて家の中に入った。
****************
英語のセリフは読み飛ばしていただければ幸いです。
1
お気に入りに追加
1,201
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【R18】絶倫にイかされ逝きました
桜 ちひろ
恋愛
性欲と金銭的に満たされるからという理由で風俗店で働いていた。
いつもと変わらず仕事をこなすだけ。と思っていたが
巨根、絶倫、執着攻め気味なお客さんとのプレイに夢中になり、ぐずぐずにされてしまう。
隣の部屋にいるキャストにも聞こえるくらい喘ぎ、仕事を忘れてイきまくる。
1日貸切でプレイしたのにも関わらず、勤務外にも続きを求めてアフターまでセックスしまくるお話です。
巨根、絶倫、連続絶頂、潮吹き、カーセックス、中出しあり。
悪の組織のイケメンたちに捕まったのですが、全員から愛されてしまったようです。
aika
恋愛
主人公ユミは、ヒーローたちが働く秘密組織のしがない事務員。
ヒーローたちは日夜、人々の安全を守るため正義の名の下に戦っている。
ある朝目が覚めると、ユミは悪の組織のメンバーに誘拐され監禁されていた。
仮面で素顔を隠している悪の組織のメンバーたち。
ユミの前で仮面を外すと・・・彼らは全員揃いも揃ってイケメンばかり。
ヒーローたちに恨みを持つ彼らは、ユミを酷い目に合わせるはずが・・・彼らの拷問はエッチなものばかりで・・・?
どうやら私には悪者の心を惹きつける、隠された魅力があるらしい・・・!?
気付けばユミは、悪の組織のイケメンたち全員から、深く愛されてしまっていた・・・・!
悪者(イケメン)たちに囲まれた、総モテ逆ハーレムラブストーリー。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる