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瀬尾くんの誰にも言えない秘密

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 大牟田の愚痴を聞きながら、やっと家に着いた。米子市某所、小さな川のそばに佇む神社が俺の実家だ。

「やっちゃん、お帰り」
「ただいま」
「3時からね。お願いね」
「うん」

 巫女姿の姉と言葉を交わし部屋に入って着替えてるとバタバタ廊下を走ってくる音が聞こえる。

「おにいちゃーーん、おかえりなさい!」
「……。りさ、勝手に戸を開けるな」

 いつもこうなんだから…。

「寝てろって言っただろう」
「もう治ったもん」
「ホントか?」
 先に制服のスラックス着替えなくてよかった。もう習慣だろうな。



 用意が整い社殿の奥でつながってる小部屋で準備に入る。



「よろしくお願いします」

 女性の声がして、社の中に入ってきた。

 父と姉が並びお祓いの儀式が始まる。
 祓詞を読み、目を閉じ頭を下げた女性の上で祭具を振るのだ。
 全国の神社とほぼ同じだ。

「まあ、お坊ちゃん、今日はどうも。お世話になります」
「こんにちは」


 …のまえに、俺も挨拶…。




◇◇



「はい、もういいですよ」
「え、私…」

 女性はきょろきょろ見まわした。俺は、別室から小窓を通して見ている。

「なんだか肩が軽い…」

 女性はびっくりした顔をして、「何があったのかしら…」

「もう大丈夫ですよ。お体お大事に」華代がそばについていた。
「……神様に診てもらったような…」
「そうですよ。ご熱心に念じてらっしゃいました」
 


 社殿の横にはご神木、大きなクスノキがでんとそびえ葉がいっぱいついた枝を伸ばし、もうそろそろ、春には葉が生え変わるだろう。

 女性はそれを見上げて、「だんだん」とほほ笑んだ。


 何度も何度もお辞儀をして女性は帰っていった。

「ありがと、やっちゃん、今日もあっという間ね」
「うん」




「お兄ちゃん、お仕事終わったー?」
「ああ」
 木造二階建ての母屋に戻ると、また絡まれた。寒いのでリビングのストーブつけっぱなしだ。煙突つきのストーブだ。俺はそこを横目に隣の自室に戻る。りさはついてきた。
「まだ寝てればいいのに。中途半端に歩き回るとまたぶり返すよ」
「お兄ちゃんのせいだもん」
「何が」
「……りさの風邪も治してよーー」

 りさは口を尖らせた。

「もっとひどい風邪だっだらいいのにな~~」
「狙ってかかるもんじゃないだろ」
 そもそもうちの家族はめったに風邪ひかないしな。代々長生きの家系だし。
「俺は医者じゃない」
「ホントにお祓いなのかな~」
「気持ちよく帰ってもらえたんだから、いいだろ」
「でも~~」

 それから機嫌が悪くなってなだめるのに時間がかかった。

 …………りさをみてやる必要がないのはいいことなんだよ、今幸せという証拠なんだから。深刻な悩み事がない方がいいだろう?


「うん。わかった」
「よし」
「お兄ちゃんて癒しの存在だよね。ずーっとお家にいてね。ぜーったいだよ」


 ・・・・・・。


 
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