34 / 51
瀬尾くんの誰にも言えない秘密
4
しおりを挟む
大牟田の愚痴を聞きながら、やっと家に着いた。米子市某所、小さな川のそばに佇む神社が俺の実家だ。
「やっちゃん、お帰り」
「ただいま」
「3時からね。お願いね」
「うん」
巫女姿の姉と言葉を交わし部屋に入って着替えてるとバタバタ廊下を走ってくる音が聞こえる。
「おにいちゃーーん、おかえりなさい!」
「……。りさ、勝手に戸を開けるな」
いつもこうなんだから…。
「寝てろって言っただろう」
「もう治ったもん」
「ホントか?」
先に制服のスラックス着替えなくてよかった。もう習慣だろうな。
用意が整い社殿の奥でつながってる小部屋で準備に入る。
「よろしくお願いします」
女性の声がして、社の中に入ってきた。
父と姉が並びお祓いの儀式が始まる。
祓詞を読み、目を閉じ頭を下げた女性の上で祭具を振るのだ。
全国の神社とほぼ同じだ。
「まあ、お坊ちゃん、今日はどうも。お世話になります」
「こんにちは」
…のまえに、俺も挨拶…。
◇◇
「はい、もういいですよ」
「え、私…」
女性はきょろきょろ見まわした。俺は、別室から小窓を通して見ている。
「なんだか肩が軽い…」
女性はびっくりした顔をして、「何があったのかしら…」
「もう大丈夫ですよ。お体お大事に」華代がそばについていた。
「……神様に診てもらったような…」
「そうですよ。ご熱心に念じてらっしゃいました」
社殿の横にはご神木、大きなクスノキがでんとそびえ葉がいっぱいついた枝を伸ばし、もうそろそろ、春には葉が生え変わるだろう。
女性はそれを見上げて、「だんだん」とほほ笑んだ。
何度も何度もお辞儀をして女性は帰っていった。
「ありがと、やっちゃん、今日もあっという間ね」
「うん」
「お兄ちゃん、お仕事終わったー?」
「ああ」
木造二階建ての母屋に戻ると、また絡まれた。寒いのでリビングのストーブつけっぱなしだ。煙突つきのストーブだ。俺はそこを横目に隣の自室に戻る。りさはついてきた。
「まだ寝てればいいのに。中途半端に歩き回るとまたぶり返すよ」
「お兄ちゃんのせいだもん」
「何が」
「……りさの風邪も治してよーー」
りさは口を尖らせた。
「もっとひどい風邪だっだらいいのにな~~」
「狙ってかかるもんじゃないだろ」
そもそもうちの家族はめったに風邪ひかないしな。代々長生きの家系だし。
「俺は医者じゃない」
「ホントにお祓いなのかな~」
「気持ちよく帰ってもらえたんだから、いいだろ」
「でも~~」
それから機嫌が悪くなってなだめるのに時間がかかった。
…………りさをみてやる必要がないのはいいことなんだよ、今幸せという証拠なんだから。深刻な悩み事がない方がいいだろう?
「うん。わかった」
「よし」
「お兄ちゃんて癒しの存在だよね。ずーっとお家にいてね。ぜーったいだよ」
・・・・・・。
「やっちゃん、お帰り」
「ただいま」
「3時からね。お願いね」
「うん」
巫女姿の姉と言葉を交わし部屋に入って着替えてるとバタバタ廊下を走ってくる音が聞こえる。
「おにいちゃーーん、おかえりなさい!」
「……。りさ、勝手に戸を開けるな」
いつもこうなんだから…。
「寝てろって言っただろう」
「もう治ったもん」
「ホントか?」
先に制服のスラックス着替えなくてよかった。もう習慣だろうな。
用意が整い社殿の奥でつながってる小部屋で準備に入る。
「よろしくお願いします」
女性の声がして、社の中に入ってきた。
父と姉が並びお祓いの儀式が始まる。
祓詞を読み、目を閉じ頭を下げた女性の上で祭具を振るのだ。
全国の神社とほぼ同じだ。
「まあ、お坊ちゃん、今日はどうも。お世話になります」
「こんにちは」
…のまえに、俺も挨拶…。
◇◇
「はい、もういいですよ」
「え、私…」
女性はきょろきょろ見まわした。俺は、別室から小窓を通して見ている。
「なんだか肩が軽い…」
女性はびっくりした顔をして、「何があったのかしら…」
「もう大丈夫ですよ。お体お大事に」華代がそばについていた。
「……神様に診てもらったような…」
「そうですよ。ご熱心に念じてらっしゃいました」
社殿の横にはご神木、大きなクスノキがでんとそびえ葉がいっぱいついた枝を伸ばし、もうそろそろ、春には葉が生え変わるだろう。
女性はそれを見上げて、「だんだん」とほほ笑んだ。
何度も何度もお辞儀をして女性は帰っていった。
「ありがと、やっちゃん、今日もあっという間ね」
「うん」
「お兄ちゃん、お仕事終わったー?」
「ああ」
木造二階建ての母屋に戻ると、また絡まれた。寒いのでリビングのストーブつけっぱなしだ。煙突つきのストーブだ。俺はそこを横目に隣の自室に戻る。りさはついてきた。
「まだ寝てればいいのに。中途半端に歩き回るとまたぶり返すよ」
「お兄ちゃんのせいだもん」
「何が」
「……りさの風邪も治してよーー」
りさは口を尖らせた。
「もっとひどい風邪だっだらいいのにな~~」
「狙ってかかるもんじゃないだろ」
そもそもうちの家族はめったに風邪ひかないしな。代々長生きの家系だし。
「俺は医者じゃない」
「ホントにお祓いなのかな~」
「気持ちよく帰ってもらえたんだから、いいだろ」
「でも~~」
それから機嫌が悪くなってなだめるのに時間がかかった。
…………りさをみてやる必要がないのはいいことなんだよ、今幸せという証拠なんだから。深刻な悩み事がない方がいいだろう?
「うん。わかった」
「よし」
「お兄ちゃんて癒しの存在だよね。ずーっとお家にいてね。ぜーったいだよ」
・・・・・・。
0
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説
愛されなければお飾りなの?
まるまる⭐️
恋愛
リベリアはお飾り王太子妃だ。
夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。
そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。
ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?
今のところは…だけどね。
結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
私はあなたの母ではありませんよ
れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。
クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。
アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。
ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。
クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。
*恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。
*めずらしく全編通してシリアスです。
*今後ほかのサイトにも投稿する予定です。
【完結】王命婚により月に一度閨事を受け入れる妻になっていました
ユユ
恋愛
目覚めたら、貴族を題材にした
漫画のような世界だった。
まさか、死んで別世界の人になるって
いうやつですか?
はい?夫がいる!?
異性と付き合ったことのない私に!?
え?王命婚姻?子を産め!?
異性と交際したことも
エッチをしたこともなく、
ひたすら庶民レストランで働いていた
私に貴族の妻は無理なので
さっさと子を産んで
自由になろうと思います。
* 作り話です
* 5万字未満
* 完結保証付き
仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる