21 / 51
コーヒーとCEOの秘密
21
しおりを挟む
「そうですか」それならあの東新宿の店で見かけた村上はなんだったのだろう。
「あまりいい印象をお持ちでないでしょうね。こんなことになって……当然よね」
「え」
駅への道を選んだことを少し悔やんだ。
この辺りは老舗の巨大ビルが立ち並び、まさに新宿といった光景が続く。
このゆとりのある摩天楼が好きなのに。
無言で歩いてコクーンタワーを過ぎ小田急百貨店が見えてくる。
「私が言っても仕方ないけれど、社の全員が望んでいたことではありません。村上さんも、元々は力になってほしくてお声がけしたのよ」
力になる…?
「……もっと言えば立て直しをしてくださる、再生専門家にお願いしたかったのよ、本当はね」
「そうですか…幹部の方なのですね」
「とんでもない、私なんて何も持ってない、思い知りましたわ」
だけど言い草はそうとしか。村上への態度も。
企業再生…そのあたりに会長との接点があったのだろうか。
会長の前職はアメリカでも珍しい優良なM&A、事業見直しを行うメディソン社だ。
だけどあの会長が、お父さまの会社のライバル社の再生事業なんて・・?
そもそも相手にしないのでは。
それが……婚約破棄の原因?
「あっという間にひっくり返されてしまって、私はすっかり悪者よ」
「お辛い立場…なんですか?」
「ええ」
えらくはきはきした受け答えに少々違和感を感じた。
「もはや金融屋ですわ。不動産や流動資産が主体の。右から左へ物を流すだけです」
この人は何かムーブメントを起こそうとしていたのだろうか。きびきびした態度とその容姿が不釣り合いに思えてしまう。会長の隣にいれば誰が見てもお似合いの恋人だろうけど。
「失礼かもしれませんが、企業文化って変えられないですよね」
「そうですね…。残念だけど」
気持ちはわかるが多くの大企業がそうなってきているのは事実。もっと多くの下請け孫請けに面倒な作業を丸投げし、何か問題が起これば切り離す。
生き残るための手段。
「それも選択肢の一つといいますか、実際多いですよね」完全に事業方針の違いよ。
「そうよね。……あなた、事務職の方ではないのね」
大通りと交差する信号が赤になりかけて、立ち止まった。
「ええ。でも事務職の業務がこなせるわけではありません、向いてなくて」…会長のお茶出しとかね。事務職関係ないけど。
「いいわね……私もあなたのようになりたかったわ」
「いいえ、私なんて」あなたこそ、会長にお茶くらいさっさと出せそうだけど? 見た目はすごくお似合いよ。
三津子は顔を向け少し驚いた。
マヤは……悲しげに遠くを見つめていた。
「きれいで…ご自分の意見をお持ちで…」
信号が変わり、足を出しかけたがマヤはその場に立ち止まっていた。
「マスコミを使って面白おかしく人心を煽ったのは間違いなく内部の仕業です。残念なのはそれを逮捕にもっていけないことです」
「逮捕??……」話が飛んでしまってるような。
どこか浮世離れして、見た目とギャップのある人だ。しっとりして、裕福なお嬢さんなら仕事なんてしなくてもよさそうだけど。
「社内にいる同じ志を持った社員を助けてあげたかったのよ」
「あまりいい印象をお持ちでないでしょうね。こんなことになって……当然よね」
「え」
駅への道を選んだことを少し悔やんだ。
この辺りは老舗の巨大ビルが立ち並び、まさに新宿といった光景が続く。
このゆとりのある摩天楼が好きなのに。
無言で歩いてコクーンタワーを過ぎ小田急百貨店が見えてくる。
「私が言っても仕方ないけれど、社の全員が望んでいたことではありません。村上さんも、元々は力になってほしくてお声がけしたのよ」
力になる…?
「……もっと言えば立て直しをしてくださる、再生専門家にお願いしたかったのよ、本当はね」
「そうですか…幹部の方なのですね」
「とんでもない、私なんて何も持ってない、思い知りましたわ」
だけど言い草はそうとしか。村上への態度も。
企業再生…そのあたりに会長との接点があったのだろうか。
会長の前職はアメリカでも珍しい優良なM&A、事業見直しを行うメディソン社だ。
だけどあの会長が、お父さまの会社のライバル社の再生事業なんて・・?
そもそも相手にしないのでは。
それが……婚約破棄の原因?
「あっという間にひっくり返されてしまって、私はすっかり悪者よ」
「お辛い立場…なんですか?」
「ええ」
えらくはきはきした受け答えに少々違和感を感じた。
「もはや金融屋ですわ。不動産や流動資産が主体の。右から左へ物を流すだけです」
この人は何かムーブメントを起こそうとしていたのだろうか。きびきびした態度とその容姿が不釣り合いに思えてしまう。会長の隣にいれば誰が見てもお似合いの恋人だろうけど。
「失礼かもしれませんが、企業文化って変えられないですよね」
「そうですね…。残念だけど」
気持ちはわかるが多くの大企業がそうなってきているのは事実。もっと多くの下請け孫請けに面倒な作業を丸投げし、何か問題が起これば切り離す。
生き残るための手段。
「それも選択肢の一つといいますか、実際多いですよね」完全に事業方針の違いよ。
「そうよね。……あなた、事務職の方ではないのね」
大通りと交差する信号が赤になりかけて、立ち止まった。
「ええ。でも事務職の業務がこなせるわけではありません、向いてなくて」…会長のお茶出しとかね。事務職関係ないけど。
「いいわね……私もあなたのようになりたかったわ」
「いいえ、私なんて」あなたこそ、会長にお茶くらいさっさと出せそうだけど? 見た目はすごくお似合いよ。
三津子は顔を向け少し驚いた。
マヤは……悲しげに遠くを見つめていた。
「きれいで…ご自分の意見をお持ちで…」
信号が変わり、足を出しかけたがマヤはその場に立ち止まっていた。
「マスコミを使って面白おかしく人心を煽ったのは間違いなく内部の仕業です。残念なのはそれを逮捕にもっていけないことです」
「逮捕??……」話が飛んでしまってるような。
どこか浮世離れして、見た目とギャップのある人だ。しっとりして、裕福なお嬢さんなら仕事なんてしなくてもよさそうだけど。
「社内にいる同じ志を持った社員を助けてあげたかったのよ」
0
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説
愛されなければお飾りなの?
まるまる⭐️
恋愛
リベリアはお飾り王太子妃だ。
夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。
そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。
ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?
今のところは…だけどね。
結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
私はあなたの母ではありませんよ
れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。
クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。
アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。
ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。
クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。
*恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。
*めずらしく全編通してシリアスです。
*今後ほかのサイトにも投稿する予定です。
【完結】王命婚により月に一度閨事を受け入れる妻になっていました
ユユ
恋愛
目覚めたら、貴族を題材にした
漫画のような世界だった。
まさか、死んで別世界の人になるって
いうやつですか?
はい?夫がいる!?
異性と付き合ったことのない私に!?
え?王命婚姻?子を産め!?
異性と交際したことも
エッチをしたこともなく、
ひたすら庶民レストランで働いていた
私に貴族の妻は無理なので
さっさと子を産んで
自由になろうと思います。
* 作り話です
* 5万字未満
* 完結保証付き
仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる