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コーヒーとCEOの秘密

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 前会長とともに彼の後をついていくとその先に見覚えのある人物が手を振っている。

「クジョーサーン」
「おお」

「お元気ですか、ミス・アカシ」

 いつか中東に野球部が遠征したときに話を交わしたサーダーン国のスポーツ相だ。関係者と思われる一団が3塁側ダックアウト上に席を陣取っている。
 スーツ姿で太い黒縁の眼鏡をかけたスポーツ相と挨拶後しばらく英語で会話が進み、関矢は三津子のそばに寄った。

「実は中東~インド~アセアン諸国で野球リーグを作ろうという動きがあるんですよ」
「まあ、そうなの」
「特にサーダーンの皇太子殿下がご熱心で。自国に野球を定着させたいそうです」
「へえ」
「それで、日本の野球からいろいろ学びたいと視察団がいらしてるんです」
「視察」

 ーーーそういえば、会長とご一緒したとき熱心に話されてたわね。殿下は野球がお好きだとか。

「メジャーや日本のプロ野球は敷居が高いけど、日本には社会人野球がありますからね。レベルも高くてそこから選手や指導者を派遣してほしいと」
 以前からそういう流れはあった。数は少ないが親善試合を両国で開催した。
「あともう一つ目的があって。どこの国も基本暑いじゃないですか」
「そうね」
「ドーム球場を建てたいそうです。国民が大勢集って快適に長時間楽しめる施設を作りたいと言われているんです。冷房完備の」
「あら、いいお話ね」

 ーードームねえ。

 外国の話ね。と三津子は全く他人事に聞いていた。
 ビッグプロジェクトだが今の自分は蚊帳の外だ。

「赤石さん、前言われてたのはこれじゃないですか」
「え?」

 野球部の事業化の件で関矢を巻き込もうとしてたんだった。

「ああ、あれ。……現実を見ているところよ」
「いずれ戻られるんでしょう? 赤石さん、一緒にやりましょうよ」
「え、ええ」

 ーーー売り込みをかけるのかしら。私は今やりたいんだけど。

「前会長にもいいお知らせができるといいのですが」

 関矢は集団に目をやった。
 前会長はスポーツ相と楽しそうに話している

「赤石さん、早く戻ってきてくださいよ~。中東渉外の椅子が待ってますよ」
「そんな。まだまだでしょ」

 関矢はやけに明るい。そのまま彼らと一緒に観戦し、関矢らと接待に行くスポーツ相と握手をして別れた。

 球場を後にし会長は穏やかな笑みを浮かべながら言った。

「ひとまず安心といっていいのかね」
「ええ。そんな感じでしたけど」

 自分に丸投げ…ではなかったのだろうか。水面下で何か進行中?
 関矢はまだ何か言いたそうに見えたが。

「とりあえず、野球部消滅なんてことにならなければいいんだがね」
「ええ」

 ーーー存続のめどは立ったのかしら。

 事業化は無理としても。ドーム球場建設は有り余るオイルマネーの使い道の一つだろう。関矢が目を輝かせていたのは球場建設のオファーがあるからか。

 ーーーでもドーム球場…勝算はあるの?
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