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お店の仕事もひとくぎりがついたので、くるみおばさんは部屋のすみのイスにすわりました。
(あれ以来、ゆいかちゃんはお店に来ていないな。私が心をこめて焼いたパンが、まずいなんて……。もしかして、みんな本当は、心の中で「このパンまずい」って思ってるのかしら)
ふと、そんな思いが、頭の中をめぐります。
「ああ、もうだめかな。私のパンは」
くるみおばさんはすっかり弱気になって、つぶやきました。
そのとき。
「なに言ってるのですか! しっかりしてくださいよ!」
すぐそばで、小さな声がしました。
声の持ち主はなんと、売れ残ってそのままになっていたジャムパンです。
「まあ、あなたいったい……」
「ご主人は、すっかり弱気になってる。いつも元気で強いあなたが、どうしたんですか!」
ジャムパンはカゴから出ると、テーブルの上をとことこと歩いてきます。
くるみおばさんはびっくり、目をまるくしました。
「静かに耳をすましてください」
ジャムパンに言われ、そのとおりにしました。
すると…………。
「あーあ。私、まだ買われない。好かれていないのかしら」
「どうせ、ぼくはまずいんだよ」
「もう、やってられないわ……」
「どうしよう……。もうだめだ、オレは」
お店のあちこちから、小さな声が聞こえてきました。
(あれ以来、ゆいかちゃんはお店に来ていないな。私が心をこめて焼いたパンが、まずいなんて……。もしかして、みんな本当は、心の中で「このパンまずい」って思ってるのかしら)
ふと、そんな思いが、頭の中をめぐります。
「ああ、もうだめかな。私のパンは」
くるみおばさんはすっかり弱気になって、つぶやきました。
そのとき。
「なに言ってるのですか! しっかりしてくださいよ!」
すぐそばで、小さな声がしました。
声の持ち主はなんと、売れ残ってそのままになっていたジャムパンです。
「まあ、あなたいったい……」
「ご主人は、すっかり弱気になってる。いつも元気で強いあなたが、どうしたんですか!」
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くるみおばさんはびっくり、目をまるくしました。
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