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治療薬 1

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 ミシェルとフレデリクの婚約が調い、兄弟という関係から全く新しい関係へと二人が歩み始めた時、またレオンから手紙が届いた。

「レオン……」
 きちんと別れたにも関わらず、こうしてレオンはまめに手紙を送ってくる。
 王都での暮らしや騎士団でどんなことをしているかなどの近況報告から始まり、ミシェルの体調を気遣う内容、そしていまだに自分はミシェルが好きだと文の端々ににじませてある。

 ミシェルは手紙を見てため息をついた。
 自分はすでにフレデリクとの婚約が決まっており、ミシェルが悪いわけでもないのにとてつもなく罪悪感に襲われる。
 このまま無視したり邪険にしてレオンを傷つけ、自暴自棄や意気消沈させたりして彼の人生を歪ませたくなかった。レオンは悪意を持ってミシェルを傷つけたわけではなかったし、ミシェルにとっては許せないことだったが不幸になってほしくはなかった。


 レオン・モンテ様

 いつもお手紙ありがとうございます。
 故郷を離れた都会で、一人で生活や仕事に励んでいるレオン様はすごいと思います。僕など実家でみんなに助けられて一人で何もできないのが恥ずかしい。
 僕はレオン様の正義感と優しさを尊敬しておりました。それは騎士にとって必要で、素晴らしい才能だと思うし、常に努力をしていたレオン様は立派な騎士になるとずっと思っておりました。でも次はその優しさはできれば大切な人に優先に向けてあげて欲しいというのが僕の最後の願いです。
 僕は兄様と婚約することになりました。もう王都に行くことはないと思いますが、レオン様もどうかご自分の幸せを見つけてください。レオン様の幸せを僕も心から願っています。
 王都を守る騎士として、今後ますますご活躍されることを一学友として応援しております。
                           ミシェル・ラフォン



 そんな手紙を出してからしばらくしてレオンから手紙が届いた。
 そこには、フレデリクとの婚約についてお祝いの言葉と騎士としてますます精進するという決意が述べられていた。これからは学友としてミシェルの幸せを祈ると書いてあるのを見て、ミシェルはその手紙を抱きしめて泣いた。
「ありがとう、レオン。レオンも絶対に幸せになって……さようなら」
 その様子を見ていたフレデリクがミシェルの隣に座る。
「大丈夫か?」
「うん。レオンが、僕と兄様の婚約にお祝いの言葉をくれたの。そして自分はもう大丈夫だって。騎士として頑張っていくからって」
「そうか」
 フレデリクはミシェルの涙を指で拭い、そのまま頬を包んでキスをした。
「ん……」
 フレデリクがやきもちを妬いているとはミシェルはわからない。
 少しいつもより性急に貪られて少々驚いた。


 ミシェルは無意識のままにフレデリクの体を抱きしめ返していた。
 そんなミシェルの体を支えるようにソファーに押し倒すとミシェルの舌を吸い出そうとするかのように吸い、そしてまた戻して何とも淫靡な動きを繰り返す。
 下半身がもじもじしてきたミシェルのミシェルにフレデリクの手が伸びてきて服の上から触れられた。
「んっ!」
と声が漏れて思わず跳ねてしまった体が恥ずかしくて顔に熱が集まる。
 するとはっとしたようにフレデリクは身を起し、
「すまなかった」
と言って起き上がりミシェルの体も抱き上げて座らせた。
「に、兄様。僕なんか……嫌なことしちゃった?」
 ミシェルはほてり始めた体を恥ずかしそうにすくめながら、不安そうに尋ねた。
「いや。……実は父上から婚姻前に手を出すと結婚させないと言われている。危なかった」
「え? お父様が?」
「気が付かなかったか? 婚約してから僕にすごい圧をかけてるよ」
 とフレデリクは笑う。
「知らなかった……」
 屋敷の中で父と兄が密かに攻防していたなどみじんも感じなかった。

 ミシェルは少し反応してしまったミシェルのミシェルを恥じ入るように、そして隠そうとするように足を摺り寄せて何もないふりをする。
「すまない、ミシェル。このまま放置はできないな」
「え⁈ な、何のこと⁈」
 ミシェルは真っ赤な顔して、とぼけようとした。
「こっちにおいで」
 しかし、フレデリクはミシェルの体をひょいと抱き寄せると自分の足の間に座らせたのだった。
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