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顛末
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今後の方針が決まると、レオンは王都に戻った。
扉の前で大きく一度深呼吸をする。
そして扉を開けると「お父さん」とマリユスが駆け寄ってきた。
「ただいま」
そのあどけない顔にレオンの胸が痛んだ。この罪のない子供まで傷つけることになる。
自分が中途半端に手を差し伸べたせいで、余計に傷つくだろう。「お父さん」と呼ばれていながら、守るどころか彼から母親を奪うことになる。謝罪の気持ちと後ろめたさで一杯だった。
加えて、これからの彼の行く末を考えると不憫さと同情を禁じ得なかった。
「今からお母さんと大事な話をするから二階で待っててくれるか?」
レオンは微笑んでマリユスの頭をなでた。
「は~い」
マリユスを見送っていると、ローズが笑顔でレオンを迎えた。
「長旅お疲れ様でした。婚約者の方とはやり直すことができましたか」
とお茶を入れながら白々しいことを聞いてきた。
「お二方の中がこじれたのは私も申し訳なく思っています。この責任は取りますから」
「責任だと? お前は魔法使いか何かか?」
殊勝な様子を見せてしおらしくいうローズに、苛立ったようにレオンは声を荒げた。
「何を言ってるんですか?」
突然のレオンの変貌にローズは驚いたように持っていたお茶のポットを揺らす。
「お前は殺した人間を生き返らせることができるのかと聞いている」
「な、何のことですか」
何のことかわからないというようにロザンナはお茶を入れる作業を続けるが、レオンの低い声にその手は震えている。
「お前が殺したリアン・テリエ殿の話だ」
ローズの顔はこわばり、今度はティーカップをガチャリと置いた。
「そんな人知りません!」
ローズがそう叫んだ時、玄関の扉が開いてリシャールが入ってきた。
「ロザンナ、久しぶりだな」
「リ、リシャール様⁈ どうして?」
驚愕し、思わずリシャールの名を呼んだローズは自白したも同然だった。
「やはり同一人物だったようだな。お前を本当はこの手で……」
リシャールは憎々し気にローズをにらみつけたが扉の方に向かって
「間違いありません、お願いします」
と言って騎士を招き入れた。
所属は違うがレオンの先輩にあたる騎士達だ。レオンはそっと頭を下げた。
二人の騎士は軽く頷くと、慣れた動作でローズを拘束した。
「ちょっとどういう事⁈」
「リアン殿殺害及び、貴族に対する詐欺行為、貴族同士の婚姻を潰した罪で貴様を拘束する。正式な裁判を経て処分が下される」
「放しなさいよ! そんな言いがかりよ! 証拠なんて何もないわ!」
「詐欺に関しては私とレオン殿が証言する。殺人に関してはこれからだがお前の体に尋ねてくださるだろう。だから姿を消したのだろう?」
リシャールが険しい顔でローズを見る。
「何かの間違いよ! 私には子供がいるの! あの子が可哀そうだとは思わないの⁈」
母親の叫び声と男たちの大声でマリユスが二階から降りてきてしまった。
「あれ? お母さんどうしたの? この人たち誰?」
するとローズは拘束された姿のまま、ぽろぽろ泣いて子供に縋り始めた。
「この人たち、お母さんを捕まえに来たの。お母さんは何もしていないのに。あなたと引き離しに来たのよ」
「やだっ! お母さんを放せ!」
子供はぽかぽかと騎士をたたくが何の効果もない。
レオンは罪悪感を覚えながら、その子を抱き上げた。
「お父さん! お母さんを助けてあげて! ねえ!」
「……お母さんは少しお話をしに行かなきゃならないんだ。お母さんが本当のことを話したら会えるようになるからな。それまで少しの間我慢だ」
それは刑が確定したら面会ができるというだけの話。
もうこの子が母親のもとで暮らすことはできず、今後は孤児院に行くしかないのだ。
「その子もこちらで預かろう」
そう先輩騎士が言ってくれたが、レオンは
「いえ、この子は私が責任をもって連れていきます。ありがとうございます」
と断った。
ギャーギャーと泣き喚くローズが騎士たちに連れていかれるのを家の外で見守っていたリアンはフレデリクに連れられてレオンの家に入った。
「リアン……」
「リシャ様。よく堪えてくださいました。ありがとう。もうこれで本当に思い残すことはない。幸せになって……」
ミシェルはフレデリクが止める間もなく、リシャールに抱き着くとその頬にキスをした。そしてリシャールの目を見つめると、涙を落とし
「必ず幸せになって。僕は……もう行かなきゃいけないみたい。あちらの世界で待っています」
そう告げると、急に全身の力が抜けたように崩れ落ちた。
「リアン!」
倒れる前にリシャールが抱き留め、それをフレデリクが受け取る。
「ミシェル、大丈夫か⁈」
フレデリクが慌てた様子でミシェルをソファーに寝かせ、衣服を緩めてやる。
レオンは泣いているマリユスを抱いたままその様子を見ているしかなかった。
フレデリクが呼びかけ続けているとミシェルの目が開いた。
扉の前で大きく一度深呼吸をする。
そして扉を開けると「お父さん」とマリユスが駆け寄ってきた。
「ただいま」
そのあどけない顔にレオンの胸が痛んだ。この罪のない子供まで傷つけることになる。
自分が中途半端に手を差し伸べたせいで、余計に傷つくだろう。「お父さん」と呼ばれていながら、守るどころか彼から母親を奪うことになる。謝罪の気持ちと後ろめたさで一杯だった。
加えて、これからの彼の行く末を考えると不憫さと同情を禁じ得なかった。
「今からお母さんと大事な話をするから二階で待っててくれるか?」
レオンは微笑んでマリユスの頭をなでた。
「は~い」
マリユスを見送っていると、ローズが笑顔でレオンを迎えた。
「長旅お疲れ様でした。婚約者の方とはやり直すことができましたか」
とお茶を入れながら白々しいことを聞いてきた。
「お二方の中がこじれたのは私も申し訳なく思っています。この責任は取りますから」
「責任だと? お前は魔法使いか何かか?」
殊勝な様子を見せてしおらしくいうローズに、苛立ったようにレオンは声を荒げた。
「何を言ってるんですか?」
突然のレオンの変貌にローズは驚いたように持っていたお茶のポットを揺らす。
「お前は殺した人間を生き返らせることができるのかと聞いている」
「な、何のことですか」
何のことかわからないというようにロザンナはお茶を入れる作業を続けるが、レオンの低い声にその手は震えている。
「お前が殺したリアン・テリエ殿の話だ」
ローズの顔はこわばり、今度はティーカップをガチャリと置いた。
「そんな人知りません!」
ローズがそう叫んだ時、玄関の扉が開いてリシャールが入ってきた。
「ロザンナ、久しぶりだな」
「リ、リシャール様⁈ どうして?」
驚愕し、思わずリシャールの名を呼んだローズは自白したも同然だった。
「やはり同一人物だったようだな。お前を本当はこの手で……」
リシャールは憎々し気にローズをにらみつけたが扉の方に向かって
「間違いありません、お願いします」
と言って騎士を招き入れた。
所属は違うがレオンの先輩にあたる騎士達だ。レオンはそっと頭を下げた。
二人の騎士は軽く頷くと、慣れた動作でローズを拘束した。
「ちょっとどういう事⁈」
「リアン殿殺害及び、貴族に対する詐欺行為、貴族同士の婚姻を潰した罪で貴様を拘束する。正式な裁判を経て処分が下される」
「放しなさいよ! そんな言いがかりよ! 証拠なんて何もないわ!」
「詐欺に関しては私とレオン殿が証言する。殺人に関してはこれからだがお前の体に尋ねてくださるだろう。だから姿を消したのだろう?」
リシャールが険しい顔でローズを見る。
「何かの間違いよ! 私には子供がいるの! あの子が可哀そうだとは思わないの⁈」
母親の叫び声と男たちの大声でマリユスが二階から降りてきてしまった。
「あれ? お母さんどうしたの? この人たち誰?」
するとローズは拘束された姿のまま、ぽろぽろ泣いて子供に縋り始めた。
「この人たち、お母さんを捕まえに来たの。お母さんは何もしていないのに。あなたと引き離しに来たのよ」
「やだっ! お母さんを放せ!」
子供はぽかぽかと騎士をたたくが何の効果もない。
レオンは罪悪感を覚えながら、その子を抱き上げた。
「お父さん! お母さんを助けてあげて! ねえ!」
「……お母さんは少しお話をしに行かなきゃならないんだ。お母さんが本当のことを話したら会えるようになるからな。それまで少しの間我慢だ」
それは刑が確定したら面会ができるというだけの話。
もうこの子が母親のもとで暮らすことはできず、今後は孤児院に行くしかないのだ。
「その子もこちらで預かろう」
そう先輩騎士が言ってくれたが、レオンは
「いえ、この子は私が責任をもって連れていきます。ありがとうございます」
と断った。
ギャーギャーと泣き喚くローズが騎士たちに連れていかれるのを家の外で見守っていたリアンはフレデリクに連れられてレオンの家に入った。
「リアン……」
「リシャ様。よく堪えてくださいました。ありがとう。もうこれで本当に思い残すことはない。幸せになって……」
ミシェルはフレデリクが止める間もなく、リシャールに抱き着くとその頬にキスをした。そしてリシャールの目を見つめると、涙を落とし
「必ず幸せになって。僕は……もう行かなきゃいけないみたい。あちらの世界で待っています」
そう告げると、急に全身の力が抜けたように崩れ落ちた。
「リアン!」
倒れる前にリシャールが抱き留め、それをフレデリクが受け取る。
「ミシェル、大丈夫か⁈」
フレデリクが慌てた様子でミシェルをソファーに寝かせ、衣服を緩めてやる。
レオンは泣いているマリユスを抱いたままその様子を見ているしかなかった。
フレデリクが呼びかけ続けているとミシェルの目が開いた。
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