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さぁ、はじめようか
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「聞いたか?オズワルド団長、今度は聖女様に騎士宣言したとか」
「全く、図々しいもほどがある」
「ハーゼルゼット様という親の七光りで、いきなり隊長になり団長までさせてもらって、次は聖女の騎士になろうとは」
「とはいえ、宣言だろ?」
「金もある、ハーゼルゼット様の息子であるから身分もある、それに王宮騎士団長という肩書名誉もあるんだ、だから誓いでなくても聖女を狙える、全く羨ましいご身分だ」
城内ではもっぱらこの噂が話題を呼んでいた。
伝説の聖女に国民にも兵にも尊敬されているハーゼルゼットの息子が騎士宣言したのだ。
城内だけでなく街の間でも噂は広がっていた。
「王宮団長のダメ息子が調子に乗って聖女様の騎士になると言い張っているらしいぞ」
「身の程知らずにも程がある、まったく甘やかして育てられたのだろう」
「ハーゼルゼット様は素晴らしい方だが、息子は勲章一つ持ってないらしいぞ」
「聖女狙いか、欲深い男だ、そんなもの近づけられるとは宣言とかの制度なくせないのか?」
「聖女様大丈夫かしら…」
噂はどんどん捻じ曲がって広がっていった。
「言わんこっちゃない」
と、ジークヴァルト始め、事情を知るモノは頭を抱えた。
「お前さ、もう少し状況を考えて行動に移せよ、まったく‥怪力だけの無能が、こっちまで迷惑掛けるなよ」
「‥‥」
「大体お前など、伝説の聖女様が相手するはずないだろ?」
「伝説の聖女は関係ない」
「そういうとこだよ!それがダメなんだ、リディア様も迷惑がっているに決まっている、なぜお前はいつもいつも人の気持ちを考えない、周りに迷惑を掛けてばかりでほんとお前は、いい加減直せ!その性格!」
「なぜ決めつける?あいつ本人に聞いてもないのに」
「お前は馬鹿か!お前が暴走せんがためにリディア様も何も言えないってのがなぜ解らん!」
「大体、妹になったと言っても父さん母さんの命の恩人であり、リディア様は伝説の聖女様だ、あいつとはなんだ!言葉に気を付けろ!」
オズワルドの兄たちが息巻く。
「いいか、お前のその騎士宣言のせいで、俺達だけでなく、父さんも母さんもまた陛下や騎士たちも、そして聖女リディア様までも迷惑掛かってんだ!そのことを肝に銘じろ!」
「さっさと宣言取り消してこい!いいな!」
「‥‥」
そう言って、鼻息荒く兄達が去っていく後姿を黙って見送った。
「はぁ~~~、やっぱ出なくちゃダメ?」
「はい、さ、前をお向き下さい、髪を結いあげます」
イザークが美しいドレス姿を身に纏ったそのリディアの髪を器用に結い上げていく。
今日は交流を深めるため、上級貴族だけでなく下級貴族も含めたパーティだ。
徐々に民にもお披露目をし、階級の差をなくしていこうという試みのパーティの一つだ。
そういう理由から最近では何度もパーティが催される。
「はぁ~~~、やっぱりこういうの苦手なのよ、何とかなんないかなぁ~」
「さぁ、顔をお上げください、紅をさしましょう」
ブツブツ文句をいうリディアの顎を上げる。
この城に居る選択をしたからには仕方がない事とは言え、嫌なものは嫌だ。
「今回のパーティーは色んな方がお越しになります、危険が伴いますので私の傍を離れないで下さい」
「は~~~~い」
有無を言わさないイザークに観念するように返事を返す。
「少しの辛抱です、さ、参りましょう」
「私にはとても長く感じるわ」
「何事も慣れです」
そう言って手を差し伸べるその手にやれやれと手を乗せた。
「姉さま!!やっと来た!!!」
リディアを見つけリオが困った顔で駆け寄り抱き着く。
「リオ、その恰好…」
正装したリオにリディアが暫し見惚れる。
「あのおばさんが姉さまに恥をかかせたくなかったら正装なさいっていうからさ~」
着なれない正装に窮屈そうに襟元を触る。
「とっても似合っているわ」
「!」
肌は小麦色とは言え、顔立ちはイケメンなリオ。
正装するとアラビアン的な色気のある雰囲気を醸し出している。
(これは今夜のパーティ荒れるわね)
愚民の肌色とは言え、こんな色気あるイケメン、世の女子が放っておくはずがない。
しかもハーゼルゼットの養子とは言え息子となれば階級にも問題ない。
婚約相手までいかなくてもアバンチュールを求めて殺到するだろう。
「姉さまがそう言うなら…我慢する」
リオが頬染め、照れたように顔を背ける。
と、同時、リオの周りに女性陣が押し掛けた。
「?!」
どうやら話しかけるタイミングを待っていたらしい。
誰も寄せ付けない雰囲気を出していたリオが姉の姿にその雰囲気を解いたせいで一斉に押し掛けてきたのだ。
「ね、姉さまぁ!!」
「あ、あー、ハーゼルゼット夫妻に迷惑かけない程度にがんばって」
「そんなぁああ~~~~」
情けない声を上げる弟リオを後目にその場を去ろうとしてギョッとする。
自分の目の前も沢山の人だかりが出来ていた。
「ああ、あなたが聖女リディア様でございますか!」
「一目お会いしたいと思っていましたのよ!」
「~~~~、…どうも」
(はぁ~~~~面倒だわ)
我先にと群がる人々を苦笑いを零し見上げた。
逃げ出したい気持ちを抑えながら、対応していく。
本来なら当に逃げ出していただろう。
だが、あの優しいハーゼルゼット夫妻に世話になっている身。
ハーゼルゼット夫妻の名を汚さぬよう、仕方なく程よい程度に対応していく。
そんなリディアの前に人だかりは絶えない。
何てったって伝説の聖女と直に話が出来るのだから。
少しでも気に入られよう、顔を覚えてもらおうというように我よ我よと主張する。
流石にリディアも疲弊する。
「あ、あの少し席を―――」
「リディア様!私の名は――――」
リディアを離すまいと割り込んでくる。
この繰り返しに困り果てたその時だった。
「あーちょっとごめんあそばせ!よっとっ」
「うわぁああぁあ」
人だがりが怪力により人払いされ唖然とする中、見上げるその美しいドレスを身に纏った筋肉モリモリな女性を見上げた。
「キャ、キャサドラ?!」
キャサドラがドレスアップしてリディアの前に立つ。
「よっ、リディア」
「ど、どうしてここに…ってか、その恰好は?」
「私もこのパーティーに参加してるんだ、だからドレス着ないとだめだろ?」
「それはそうなんだけど…、あなた騎士じゃ…」
一応階級は関係ないと言えど貴族のみのパーティ。
騎士は参加できない筈だ。
「あら?言ってなかったっけ?私これでも侯爵家の娘よ」
「?!」
驚きのあまり言葉を失う。
「ちなみに、ディアとは遠い親戚ね、ジーク陛下とも幼い頃から一緒に遊んだ仲なの」
「!!!!」
そう言えばよくジークヴァルトとサディアスと共にいるキャサドラを見掛けた。
よく考えれば隊長クラスとは言え、ただの騎士がジークヴァルトとサディアスの傍によくいるのはおかしい話だ。
「そういう事だ」
「ジークも参加してたんだ」
「今日の姿もなかなかに美しいですね、聖女リディア」
ジークヴァルトとサディアスがリディアの両隣りに立つ。
「更に付け加えますと、キャサドラは昔はこんな筋肉女子ではなく線の細い美しい女性だったのですが…」
「ええ?!!」
更なる事実にリディアが驚愕する。
「それが、あのオズワルドに惚れ込み、あれよあれよとこんな筋肉もりもりに…」
「な‥‥」
唖然とする中、キャサドラが自慢げに力こぶを見せるその姿を見上げる。
「しかし、なぜ侯爵令嬢が騎士に‥‥?」
「元々私、男勝りでね、男に負けるのが嫌で騎士になりたいって家を飛び出しジーク陛下やサディアスに泣き縋ったの」
「あの時は参った…」
「ええ、本当に、騎士に入れてくれないなら死ぬとわめかれ仕方なく騎士になる事を許可したのです」
「そうだったんだぁ~」
感心し話を聞き入る中、ふと近くに居た貴族の会話が耳に届く。
「あそこ、あれ今噂の…」
「もう聖女様の騎士気取っているのかしら、図々しい」
壁際に立つオズワルドを見てヒソヒソと陰口をたたく。
それを聞いてキャサドラの表情が一変してムッとなった。
「キャサドラ、顔に出ていますよ」
「ここはパーティ会場だ、ドラ」
「だって!ああ、ムカつく!何で団長馬鹿にする奴らばっかなの!団長は凄いのにっっ」
「本来のあいつを誰も知らないから仕方なかろう」
「それに、彼の普段の対応や発言も問題があります、言われても仕方がありません」
「団長の言葉や行動には意味があるわ!それを誰も解ってないのよ、何で解んないのかなぁ~!リディアもそう思うでしょ?」
「へ?私?」
不意にふられて焦る。
そんなリディアに皆が注目する。
「団長ばっか馬鹿にされてムカつくってか可哀そうって思うだろ?」
「あ、あー…、何て言うか、仕方がないかと」
「えーっっリディアまで?!」
「当然でしょう、普段の行動や言動は大事です、彼は下僕も見事に演じた程、目的や作戦時の変貌は素晴らしいですが普段の行動や城内では誰にも合わす気が皆無なのが問題です」
「それはそうかもしれないけど、それこそ団長の良さだと思うんだけど…」
「お前はあいつと共に行動しているからそう思えるだけだ」
「でも何でここまで皆馬鹿にするのよ、納得いかないわ」
「えーと‥、その、仕方ないって言ったのはそうじゃなくて、彼が天才だからよ?」
「え‥?」
「天才だから仕方ないって事か??それこそ訳が分からん」
「ええ、天才なら敬れるもの、なら彼は何故馬鹿にされるのか…その理由を知りたいですね」
皆がきょとんとしてリディアを見る。
「団長は確かに天才だわ、いや神よ!‥‥でも何でそれが馬鹿にされる理由になるの?」
「そうです、天才ならば敬われるでしょう?」
「天才という事を知られていないからか?」
疑問を次々と口にする皆に頭を横に振るリディア。
「あの、では一体どうして天才だと馬鹿にされるのでしょうか?」
黙って傍に仕えていたイザークまでも興味津々に口を挟む。
「凡人は天才を馬鹿にして排斥したいものだからよ」
「? どうして排斥したいの?」
「理解できないからよ、凡人は共感性の生き物、天才は創造性の生き物、だから凡人には天才を理解できない、それで共感性のない不適合な天才は馬鹿で悪い子となり排斥しようとする、凡人は共感という恐るべき武器を振るって罰を与えようとする、正義の名のもとに」
「なるほど、ある意味正義感からの共感性のないものに罰を下しているという訳ですか…、又は逆に、おかしなことを言う馬鹿な奴と捉えているという事ですか…」
「そう、天才の言葉を凡人は理解できないから、何を突拍子もない事を言っているんだとなるわ」
「そか…共感性を大事にしているって事は周りに合わせる事が一番大切で、だとすると合わせない奴や同じ思想でない奴は悪い奴ってなるわけか‥」
「同調圧力で攻撃するって事ね」
「でも、敬われる天才もいるが、それをどう説明する?」
ジークヴァルトが顎に手を当てリディアを見る。
「ああ、それは二通りあるわね、ひとつは、キャサドラのように天才を見抜いたり、この人天才だと感じていてに敬う場合、だけどこれは圧倒的に少ない、だからほとんどの天才は馬鹿にされ疎外される運命辿ることが多いんだと思うわ」
「‥‥ふむ、歴史的な発明や発見は当時の信仰や常識ではあり得ない事で、そのために罪に問われ死刑処置を取られた偉人もいますね」
「もう一つは何だ?」
「もう一つは…、このパターンが殆どだと言っていい、凡人は秀才を天才と勘違いしているの」
「?」
思ってもない言葉に少し驚く。
「秀才を天才と?」
リディアが頷く。
「秀才は理論で攻め、数値とか物事を再現させる能力に長けているから、凡人は秀才を天才と思う」
「私にはそれ天才に見えるけど…」
キャサドラが首を傾げる。
「ああ、そうね、一見それって一般的に天才の条件のように見えるけど、秀才は元ネタがあるのよ」
「元ネタ?」
「うん、天才が考えた元ネタが」
「! なるほど、それを再現させ皆に解りやすい形にするから皆には天才として映る‥‥か」
「そういうこと、秀才の方がコミュ力高い人多い気がするし、自分のプレゼンテーションが上手い」
ニッコリとリディアが笑う。
「ちなみに、秀才はだから天才を見抜いている、自分には到底真似できない、その域にいけない事を悟っていて、それが尊敬にいけばいいけれど、妬みになる事も多いから嫉妬や、出る杭を打つようなことをしたり恐れたりするの」
「っ―――」
「…恐れ‥ですか…」
ジークヴァルトとサディアスが気まずい表情を浮かべる。
「天才って踏んだり蹴ったりじゃない」
「そうね、しかも凡人は世界の大多数を占めるから、秀才が天下の天才は迫害されやすい状態が出来上がるわ、大多数である凡人の共感、同調圧力という武器は威力半端ないから」
「そんなぁ~…団長…ああ!私は最後まで団長の味方になるわ!」
妄信的に信仰するオズワルド崇拝キャサドラが新たに決意を固めるようにぐっと拳を握りしめた。
「まぁ、人は殆ど混合だけどね、秀才と天才とか、凡人と秀才とか、天才と凡人とか色々合わさってて割合の違いが多いのかなと‥天才色が強いとか凡人色が強いとか、一部が突き抜けてるとか…」
「確かに、頭に浮かぶ奴らを当てはめると割合は違えど混合しているな…あいつは天才色がかなり強いという事か…生粋なぐらいに…」
そう言ってちらりとオズワルドを見る。
「世の中、秀才がインフルエンサーになる事が多いから、それがいい方ならいいんだけどね」
「搾取要素の強いものがなれば危ういな」
「元王妃のように…ですね、と、そろそろ」
周囲の目が、早く話が終わらないかと圧が強くなっていた。
「え~…もう疲れたぁ、足もパンパンよ」
そんなリディアをキャサドラが肩を抱き寄せある方向を指さす。
「なら、ここは何とかしといてあげるから、あっちの部屋で少し休んでくるといいわ」
その提案にリディアはパッと嬉しそうに顔を上げる。
「助かるわ!」
「さぁ、お行きなさい」
ジークヴァルトとサディアスが軽く笑って頷く。
リディアは軽く礼を言うように会釈するとイザークに連れられ、キャサドラに言われた通り教えてくれた部屋へと引っ込んだ。
「はぁ~疲れたぁああ~~~~~」
ソファーの背に項垂れる。
「お疲れ様にございます、何か飲み物を持って参ります」
「ついでに甘いものも…何かフルーツが食べたいわ」
「畏まりました、では適当にフルーツを見繕って持って参ります、少しこちらで休みお待ちください」
そう言うとイザークが部屋を後にする。
やれやれと改めてソファに凭れ掛かると、静まりかえった部屋の中で目を瞑った。
そんなリディアの隣がボスっと沈む。
ハッとして目を開け振り返るとオズワルドが高級ワインをビンごと口につけ美味しそうに喉を鳴らし飲んでいた。
「ふむ、なかなかに上手いな」
「‥‥ 何してるの?」
「休憩だ」
「‥‥」
騎士が姫の隣で姫以上に寛いでいるってどうよと心の中でツッコミを入れる。
(まぁ、それはいいんだけど)
「なんだ?欲しいのか?」
「いらない、今イザークが取りにいってくれてるし」
「なるほど」
そう言うとまた高級ワインを一口飲むオズワルドを見、やれやれとソファにまた深く凭れかけた。
「そう言えば」
「何だ?」
「聞きたかったんだけど」
「何を?」
「私を姫に騎士になるっての、‥‥何を企んでるの?」
リディアの質問に飲んでいた高級ワインから口を離す。
「この前の話聞いてなかったのか?」
「童話の話?大体、童話などただの物語だと鼻で笑いそうじゃない、あなた」
「そうか?意外と夢見る男だぞ?」
「‥‥、じゃ、その夢見る男はその童話のどこに魅かれたの?」
「強い敵をばんばんやっつけるだけで美しい姫を娶れる、美味しい話だろ?」
「なにその『もれなくついてくる』的感想」
「この世界じゃ『もれなくついてくる』のだからいいだろ?」
「‥‥」
「どうした?」
「何て言うか…」
「ん?」
「ガキね」
「はっ、男とはそういうもんだ、女が思っているほど大人じゃない」
笑いながらまた高級ワインを飲みだすオズワルドを見る。
(何だろう…この違和感、上手くかわされた?)
どこをかわされたのかと頭を巡らす。
今の話に何もおかしなところはない。
この男なら考えそうな発想だ。
(あ…、そうか、それを今も持っているってのがおかしいんだ)
これほど頭のキレる男が今もその夢を本当に持っているのだろうか?
「きっかけはそれかも知れないけど、それだけじゃないでしょ?今のあなたがその夢をまだ持っているなんて、どう考えても不自然過ぎるでしょ」
「そうか?俺は有言実行な男だと言うだけだ、皆も言っていただろう?」
オズワルドを知る人物たちは確かに言っていた。
目的を果たすためにどんな事にも耐え、成し遂げる男だと。
「それにお前にも好条件なはずだ、前の気配なくお前の近くまで来た敵といい、強者の敵が押し寄せる中、俺がいるのは心強いだろう?」
「イザークとリオがいるわ」
「あれらは確かに強いが、経験が不足している、お前の弟は力を得、過信からの今回のミスだ、まだまだお前を守るには甘すぎる」
「‥‥」
「どうだ?宣言を受け入れる気になったか?」
「宣言は受け入れなくてもなれるんじゃなかったっけ?」
「ああ、でも、お前が受け入れれば外野が黙る」
「そういうこと‥‥」
ジークヴァルトはじめ、皆がオズワルドの宣言には反対だ。
彼らを一発で黙らす方法はリディアが受け入れると言えばいい。
「どうだ、悪くない条件だろう?」
(だめだ、オズの思惑通りにこのままじゃ流される)
「あの時オズはいなかったじゃない、サディアスもあれから更に強化してくれてるし、ということはここに居ればあなたは必要ないでしょ?」
もちろん、気配なく近づける敵もいるという状態で強化しても危険な状況に変わりない。
オズワルドが騎士でいてくれるのはかなり心強い。
とはいえ、何となく思惑通りに話が進むのが解せない。
そこで、ふと思う。
(あれ?またはぐらかされてない…?話が違う流れになってる)
その言葉にオズワルドの飲む手が止まる。
「何を言っている、あの時――――」
キィ―――――
耳にドアが開く音を聞く。
(いったん、頭リフレッシュね)
喉もカラカラだ。
「イザーク、早く飲み物を――――?!」
イザークが戻ってきたと思って顔を上げたリディアの瞳が大きく見開く。
そこにはよく見知った無理に着飾った感のある二人の女性が立っていた。
「なっ…」
(1号2号!!?)
「全く、図々しいもほどがある」
「ハーゼルゼット様という親の七光りで、いきなり隊長になり団長までさせてもらって、次は聖女の騎士になろうとは」
「とはいえ、宣言だろ?」
「金もある、ハーゼルゼット様の息子であるから身分もある、それに王宮騎士団長という肩書名誉もあるんだ、だから誓いでなくても聖女を狙える、全く羨ましいご身分だ」
城内ではもっぱらこの噂が話題を呼んでいた。
伝説の聖女に国民にも兵にも尊敬されているハーゼルゼットの息子が騎士宣言したのだ。
城内だけでなく街の間でも噂は広がっていた。
「王宮団長のダメ息子が調子に乗って聖女様の騎士になると言い張っているらしいぞ」
「身の程知らずにも程がある、まったく甘やかして育てられたのだろう」
「ハーゼルゼット様は素晴らしい方だが、息子は勲章一つ持ってないらしいぞ」
「聖女狙いか、欲深い男だ、そんなもの近づけられるとは宣言とかの制度なくせないのか?」
「聖女様大丈夫かしら…」
噂はどんどん捻じ曲がって広がっていった。
「言わんこっちゃない」
と、ジークヴァルト始め、事情を知るモノは頭を抱えた。
「お前さ、もう少し状況を考えて行動に移せよ、まったく‥怪力だけの無能が、こっちまで迷惑掛けるなよ」
「‥‥」
「大体お前など、伝説の聖女様が相手するはずないだろ?」
「伝説の聖女は関係ない」
「そういうとこだよ!それがダメなんだ、リディア様も迷惑がっているに決まっている、なぜお前はいつもいつも人の気持ちを考えない、周りに迷惑を掛けてばかりでほんとお前は、いい加減直せ!その性格!」
「なぜ決めつける?あいつ本人に聞いてもないのに」
「お前は馬鹿か!お前が暴走せんがためにリディア様も何も言えないってのがなぜ解らん!」
「大体、妹になったと言っても父さん母さんの命の恩人であり、リディア様は伝説の聖女様だ、あいつとはなんだ!言葉に気を付けろ!」
オズワルドの兄たちが息巻く。
「いいか、お前のその騎士宣言のせいで、俺達だけでなく、父さんも母さんもまた陛下や騎士たちも、そして聖女リディア様までも迷惑掛かってんだ!そのことを肝に銘じろ!」
「さっさと宣言取り消してこい!いいな!」
「‥‥」
そう言って、鼻息荒く兄達が去っていく後姿を黙って見送った。
「はぁ~~~、やっぱ出なくちゃダメ?」
「はい、さ、前をお向き下さい、髪を結いあげます」
イザークが美しいドレス姿を身に纏ったそのリディアの髪を器用に結い上げていく。
今日は交流を深めるため、上級貴族だけでなく下級貴族も含めたパーティだ。
徐々に民にもお披露目をし、階級の差をなくしていこうという試みのパーティの一つだ。
そういう理由から最近では何度もパーティが催される。
「はぁ~~~、やっぱりこういうの苦手なのよ、何とかなんないかなぁ~」
「さぁ、顔をお上げください、紅をさしましょう」
ブツブツ文句をいうリディアの顎を上げる。
この城に居る選択をしたからには仕方がない事とは言え、嫌なものは嫌だ。
「今回のパーティーは色んな方がお越しになります、危険が伴いますので私の傍を離れないで下さい」
「は~~~~い」
有無を言わさないイザークに観念するように返事を返す。
「少しの辛抱です、さ、参りましょう」
「私にはとても長く感じるわ」
「何事も慣れです」
そう言って手を差し伸べるその手にやれやれと手を乗せた。
「姉さま!!やっと来た!!!」
リディアを見つけリオが困った顔で駆け寄り抱き着く。
「リオ、その恰好…」
正装したリオにリディアが暫し見惚れる。
「あのおばさんが姉さまに恥をかかせたくなかったら正装なさいっていうからさ~」
着なれない正装に窮屈そうに襟元を触る。
「とっても似合っているわ」
「!」
肌は小麦色とは言え、顔立ちはイケメンなリオ。
正装するとアラビアン的な色気のある雰囲気を醸し出している。
(これは今夜のパーティ荒れるわね)
愚民の肌色とは言え、こんな色気あるイケメン、世の女子が放っておくはずがない。
しかもハーゼルゼットの養子とは言え息子となれば階級にも問題ない。
婚約相手までいかなくてもアバンチュールを求めて殺到するだろう。
「姉さまがそう言うなら…我慢する」
リオが頬染め、照れたように顔を背ける。
と、同時、リオの周りに女性陣が押し掛けた。
「?!」
どうやら話しかけるタイミングを待っていたらしい。
誰も寄せ付けない雰囲気を出していたリオが姉の姿にその雰囲気を解いたせいで一斉に押し掛けてきたのだ。
「ね、姉さまぁ!!」
「あ、あー、ハーゼルゼット夫妻に迷惑かけない程度にがんばって」
「そんなぁああ~~~~」
情けない声を上げる弟リオを後目にその場を去ろうとしてギョッとする。
自分の目の前も沢山の人だかりが出来ていた。
「ああ、あなたが聖女リディア様でございますか!」
「一目お会いしたいと思っていましたのよ!」
「~~~~、…どうも」
(はぁ~~~~面倒だわ)
我先にと群がる人々を苦笑いを零し見上げた。
逃げ出したい気持ちを抑えながら、対応していく。
本来なら当に逃げ出していただろう。
だが、あの優しいハーゼルゼット夫妻に世話になっている身。
ハーゼルゼット夫妻の名を汚さぬよう、仕方なく程よい程度に対応していく。
そんなリディアの前に人だかりは絶えない。
何てったって伝説の聖女と直に話が出来るのだから。
少しでも気に入られよう、顔を覚えてもらおうというように我よ我よと主張する。
流石にリディアも疲弊する。
「あ、あの少し席を―――」
「リディア様!私の名は――――」
リディアを離すまいと割り込んでくる。
この繰り返しに困り果てたその時だった。
「あーちょっとごめんあそばせ!よっとっ」
「うわぁああぁあ」
人だがりが怪力により人払いされ唖然とする中、見上げるその美しいドレスを身に纏った筋肉モリモリな女性を見上げた。
「キャ、キャサドラ?!」
キャサドラがドレスアップしてリディアの前に立つ。
「よっ、リディア」
「ど、どうしてここに…ってか、その恰好は?」
「私もこのパーティーに参加してるんだ、だからドレス着ないとだめだろ?」
「それはそうなんだけど…、あなた騎士じゃ…」
一応階級は関係ないと言えど貴族のみのパーティ。
騎士は参加できない筈だ。
「あら?言ってなかったっけ?私これでも侯爵家の娘よ」
「?!」
驚きのあまり言葉を失う。
「ちなみに、ディアとは遠い親戚ね、ジーク陛下とも幼い頃から一緒に遊んだ仲なの」
「!!!!」
そう言えばよくジークヴァルトとサディアスと共にいるキャサドラを見掛けた。
よく考えれば隊長クラスとは言え、ただの騎士がジークヴァルトとサディアスの傍によくいるのはおかしい話だ。
「そういう事だ」
「ジークも参加してたんだ」
「今日の姿もなかなかに美しいですね、聖女リディア」
ジークヴァルトとサディアスがリディアの両隣りに立つ。
「更に付け加えますと、キャサドラは昔はこんな筋肉女子ではなく線の細い美しい女性だったのですが…」
「ええ?!!」
更なる事実にリディアが驚愕する。
「それが、あのオズワルドに惚れ込み、あれよあれよとこんな筋肉もりもりに…」
「な‥‥」
唖然とする中、キャサドラが自慢げに力こぶを見せるその姿を見上げる。
「しかし、なぜ侯爵令嬢が騎士に‥‥?」
「元々私、男勝りでね、男に負けるのが嫌で騎士になりたいって家を飛び出しジーク陛下やサディアスに泣き縋ったの」
「あの時は参った…」
「ええ、本当に、騎士に入れてくれないなら死ぬとわめかれ仕方なく騎士になる事を許可したのです」
「そうだったんだぁ~」
感心し話を聞き入る中、ふと近くに居た貴族の会話が耳に届く。
「あそこ、あれ今噂の…」
「もう聖女様の騎士気取っているのかしら、図々しい」
壁際に立つオズワルドを見てヒソヒソと陰口をたたく。
それを聞いてキャサドラの表情が一変してムッとなった。
「キャサドラ、顔に出ていますよ」
「ここはパーティ会場だ、ドラ」
「だって!ああ、ムカつく!何で団長馬鹿にする奴らばっかなの!団長は凄いのにっっ」
「本来のあいつを誰も知らないから仕方なかろう」
「それに、彼の普段の対応や発言も問題があります、言われても仕方がありません」
「団長の言葉や行動には意味があるわ!それを誰も解ってないのよ、何で解んないのかなぁ~!リディアもそう思うでしょ?」
「へ?私?」
不意にふられて焦る。
そんなリディアに皆が注目する。
「団長ばっか馬鹿にされてムカつくってか可哀そうって思うだろ?」
「あ、あー…、何て言うか、仕方がないかと」
「えーっっリディアまで?!」
「当然でしょう、普段の行動や言動は大事です、彼は下僕も見事に演じた程、目的や作戦時の変貌は素晴らしいですが普段の行動や城内では誰にも合わす気が皆無なのが問題です」
「それはそうかもしれないけど、それこそ団長の良さだと思うんだけど…」
「お前はあいつと共に行動しているからそう思えるだけだ」
「でも何でここまで皆馬鹿にするのよ、納得いかないわ」
「えーと‥、その、仕方ないって言ったのはそうじゃなくて、彼が天才だからよ?」
「え‥?」
「天才だから仕方ないって事か??それこそ訳が分からん」
「ええ、天才なら敬れるもの、なら彼は何故馬鹿にされるのか…その理由を知りたいですね」
皆がきょとんとしてリディアを見る。
「団長は確かに天才だわ、いや神よ!‥‥でも何でそれが馬鹿にされる理由になるの?」
「そうです、天才ならば敬われるでしょう?」
「天才という事を知られていないからか?」
疑問を次々と口にする皆に頭を横に振るリディア。
「あの、では一体どうして天才だと馬鹿にされるのでしょうか?」
黙って傍に仕えていたイザークまでも興味津々に口を挟む。
「凡人は天才を馬鹿にして排斥したいものだからよ」
「? どうして排斥したいの?」
「理解できないからよ、凡人は共感性の生き物、天才は創造性の生き物、だから凡人には天才を理解できない、それで共感性のない不適合な天才は馬鹿で悪い子となり排斥しようとする、凡人は共感という恐るべき武器を振るって罰を与えようとする、正義の名のもとに」
「なるほど、ある意味正義感からの共感性のないものに罰を下しているという訳ですか…、又は逆に、おかしなことを言う馬鹿な奴と捉えているという事ですか…」
「そう、天才の言葉を凡人は理解できないから、何を突拍子もない事を言っているんだとなるわ」
「そか…共感性を大事にしているって事は周りに合わせる事が一番大切で、だとすると合わせない奴や同じ思想でない奴は悪い奴ってなるわけか‥」
「同調圧力で攻撃するって事ね」
「でも、敬われる天才もいるが、それをどう説明する?」
ジークヴァルトが顎に手を当てリディアを見る。
「ああ、それは二通りあるわね、ひとつは、キャサドラのように天才を見抜いたり、この人天才だと感じていてに敬う場合、だけどこれは圧倒的に少ない、だからほとんどの天才は馬鹿にされ疎外される運命辿ることが多いんだと思うわ」
「‥‥ふむ、歴史的な発明や発見は当時の信仰や常識ではあり得ない事で、そのために罪に問われ死刑処置を取られた偉人もいますね」
「もう一つは何だ?」
「もう一つは…、このパターンが殆どだと言っていい、凡人は秀才を天才と勘違いしているの」
「?」
思ってもない言葉に少し驚く。
「秀才を天才と?」
リディアが頷く。
「秀才は理論で攻め、数値とか物事を再現させる能力に長けているから、凡人は秀才を天才と思う」
「私にはそれ天才に見えるけど…」
キャサドラが首を傾げる。
「ああ、そうね、一見それって一般的に天才の条件のように見えるけど、秀才は元ネタがあるのよ」
「元ネタ?」
「うん、天才が考えた元ネタが」
「! なるほど、それを再現させ皆に解りやすい形にするから皆には天才として映る‥‥か」
「そういうこと、秀才の方がコミュ力高い人多い気がするし、自分のプレゼンテーションが上手い」
ニッコリとリディアが笑う。
「ちなみに、秀才はだから天才を見抜いている、自分には到底真似できない、その域にいけない事を悟っていて、それが尊敬にいけばいいけれど、妬みになる事も多いから嫉妬や、出る杭を打つようなことをしたり恐れたりするの」
「っ―――」
「…恐れ‥ですか…」
ジークヴァルトとサディアスが気まずい表情を浮かべる。
「天才って踏んだり蹴ったりじゃない」
「そうね、しかも凡人は世界の大多数を占めるから、秀才が天下の天才は迫害されやすい状態が出来上がるわ、大多数である凡人の共感、同調圧力という武器は威力半端ないから」
「そんなぁ~…団長…ああ!私は最後まで団長の味方になるわ!」
妄信的に信仰するオズワルド崇拝キャサドラが新たに決意を固めるようにぐっと拳を握りしめた。
「まぁ、人は殆ど混合だけどね、秀才と天才とか、凡人と秀才とか、天才と凡人とか色々合わさってて割合の違いが多いのかなと‥天才色が強いとか凡人色が強いとか、一部が突き抜けてるとか…」
「確かに、頭に浮かぶ奴らを当てはめると割合は違えど混合しているな…あいつは天才色がかなり強いという事か…生粋なぐらいに…」
そう言ってちらりとオズワルドを見る。
「世の中、秀才がインフルエンサーになる事が多いから、それがいい方ならいいんだけどね」
「搾取要素の強いものがなれば危ういな」
「元王妃のように…ですね、と、そろそろ」
周囲の目が、早く話が終わらないかと圧が強くなっていた。
「え~…もう疲れたぁ、足もパンパンよ」
そんなリディアをキャサドラが肩を抱き寄せある方向を指さす。
「なら、ここは何とかしといてあげるから、あっちの部屋で少し休んでくるといいわ」
その提案にリディアはパッと嬉しそうに顔を上げる。
「助かるわ!」
「さぁ、お行きなさい」
ジークヴァルトとサディアスが軽く笑って頷く。
リディアは軽く礼を言うように会釈するとイザークに連れられ、キャサドラに言われた通り教えてくれた部屋へと引っ込んだ。
「はぁ~疲れたぁああ~~~~~」
ソファーの背に項垂れる。
「お疲れ様にございます、何か飲み物を持って参ります」
「ついでに甘いものも…何かフルーツが食べたいわ」
「畏まりました、では適当にフルーツを見繕って持って参ります、少しこちらで休みお待ちください」
そう言うとイザークが部屋を後にする。
やれやれと改めてソファに凭れ掛かると、静まりかえった部屋の中で目を瞑った。
そんなリディアの隣がボスっと沈む。
ハッとして目を開け振り返るとオズワルドが高級ワインをビンごと口につけ美味しそうに喉を鳴らし飲んでいた。
「ふむ、なかなかに上手いな」
「‥‥ 何してるの?」
「休憩だ」
「‥‥」
騎士が姫の隣で姫以上に寛いでいるってどうよと心の中でツッコミを入れる。
(まぁ、それはいいんだけど)
「なんだ?欲しいのか?」
「いらない、今イザークが取りにいってくれてるし」
「なるほど」
そう言うとまた高級ワインを一口飲むオズワルドを見、やれやれとソファにまた深く凭れかけた。
「そう言えば」
「何だ?」
「聞きたかったんだけど」
「何を?」
「私を姫に騎士になるっての、‥‥何を企んでるの?」
リディアの質問に飲んでいた高級ワインから口を離す。
「この前の話聞いてなかったのか?」
「童話の話?大体、童話などただの物語だと鼻で笑いそうじゃない、あなた」
「そうか?意外と夢見る男だぞ?」
「‥‥、じゃ、その夢見る男はその童話のどこに魅かれたの?」
「強い敵をばんばんやっつけるだけで美しい姫を娶れる、美味しい話だろ?」
「なにその『もれなくついてくる』的感想」
「この世界じゃ『もれなくついてくる』のだからいいだろ?」
「‥‥」
「どうした?」
「何て言うか…」
「ん?」
「ガキね」
「はっ、男とはそういうもんだ、女が思っているほど大人じゃない」
笑いながらまた高級ワインを飲みだすオズワルドを見る。
(何だろう…この違和感、上手くかわされた?)
どこをかわされたのかと頭を巡らす。
今の話に何もおかしなところはない。
この男なら考えそうな発想だ。
(あ…、そうか、それを今も持っているってのがおかしいんだ)
これほど頭のキレる男が今もその夢を本当に持っているのだろうか?
「きっかけはそれかも知れないけど、それだけじゃないでしょ?今のあなたがその夢をまだ持っているなんて、どう考えても不自然過ぎるでしょ」
「そうか?俺は有言実行な男だと言うだけだ、皆も言っていただろう?」
オズワルドを知る人物たちは確かに言っていた。
目的を果たすためにどんな事にも耐え、成し遂げる男だと。
「それにお前にも好条件なはずだ、前の気配なくお前の近くまで来た敵といい、強者の敵が押し寄せる中、俺がいるのは心強いだろう?」
「イザークとリオがいるわ」
「あれらは確かに強いが、経験が不足している、お前の弟は力を得、過信からの今回のミスだ、まだまだお前を守るには甘すぎる」
「‥‥」
「どうだ?宣言を受け入れる気になったか?」
「宣言は受け入れなくてもなれるんじゃなかったっけ?」
「ああ、でも、お前が受け入れれば外野が黙る」
「そういうこと‥‥」
ジークヴァルトはじめ、皆がオズワルドの宣言には反対だ。
彼らを一発で黙らす方法はリディアが受け入れると言えばいい。
「どうだ、悪くない条件だろう?」
(だめだ、オズの思惑通りにこのままじゃ流される)
「あの時オズはいなかったじゃない、サディアスもあれから更に強化してくれてるし、ということはここに居ればあなたは必要ないでしょ?」
もちろん、気配なく近づける敵もいるという状態で強化しても危険な状況に変わりない。
オズワルドが騎士でいてくれるのはかなり心強い。
とはいえ、何となく思惑通りに話が進むのが解せない。
そこで、ふと思う。
(あれ?またはぐらかされてない…?話が違う流れになってる)
その言葉にオズワルドの飲む手が止まる。
「何を言っている、あの時――――」
キィ―――――
耳にドアが開く音を聞く。
(いったん、頭リフレッシュね)
喉もカラカラだ。
「イザーク、早く飲み物を――――?!」
イザークが戻ってきたと思って顔を上げたリディアの瞳が大きく見開く。
そこにはよく見知った無理に着飾った感のある二人の女性が立っていた。
「なっ…」
(1号2号!!?)
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